対極にいるからこそ、補い合える存在【ひつじねいり インタビュー(前編)】

性格や見た目、言葉使い、生い立ち……何もかも真逆に見えるコンビ・ひつじねいり。コンビ結成は2019年2月と歴史は浅いですが、2020年の『M-1グランプリ』で準々決勝に進出するなど、東京の若手を盛り上げる存在です。今回は、そんなひつじねいりの二人にインタビューさせていただきました。前編では、芸人を目指したきっかけやお互いに対して思うことなどをご紹介します。

元いじめられっ子といじめっ子

―お二人が芸人を目指したきっかけを教えてください。

松村 祥維(以下、松村): 僕は大阪出身で、“面白いやつが1番偉い”みたいな自治体にいたんですよ。昔からデブとかブスとかでいじられてたんですけど、面白いこと言うたら認めてもらえる環境なんですよね。だからちぃちゃい頃から天職やとは思ってたけど、仕事にする勇気はなかなか無く……結局、大学卒業間近でお笑い誘われて、「本気でやろう」と思ったという。ほんまに特別なエピソードは無いんよな。なんやろな、逆境やね。ベタやけど、いじめられてた状況でも周りを見返すことができる武器やったんで。

細田 祥平(以下、細田): お笑い好きになったのは、多分M-1がきっかけです。僕は逆に、ちょっといじめっ子だったかもしれないです。“いじめっ子お笑い”をしてて……僕で嫌な思いをした同級生がいるかもしれないです。大学でお笑いサークルに入ったんですけど、同じサークルにストレッチーズの二人や真空ジェシカの川北さんとかがいて。割とプロになる人もいたりして、自然と「プロに行くのもありかな」と。踏ん切りをつけるというより「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」と、みんなでプロになりました。

―「いじめられっ子」、「いじめっ子」と、対極なお二人なんですね。どのようにして組むことになったんですか?

細田: 前のコンビだった頃からライブシーンで知り合いでした。お互い解散して、僕が誘いました。

松村: 早々に声かけてくれたのが細田やったんで、あんまり自分の中で迷うことなく。自分も早く次の環境に行きたいし、細田も細田で面白い人なのは分かってたんで。

細田: 解散して4日後くらいには「組みます」と。

松村: 無理やったら無理で、違うと思ったら「やっぱ違う人とやる」でも良いから、とりあえずやろうと。

―「ひつじねいり」というコンビ名の由来を教えてください。

細田: 史上最もおしゃれな理由です。トリプルミーニングですから。

松村: こいつが「祥平」で僕が「祥維」って名前で、「祥」って漢字が一緒。コンビ名考えているときこの漢字が目に入って、「ここ一緒やなぁ」みたいな。これうまいこと、ほぐしたり入れたりして考えよか?ってなって。

細田: 「羊」という字が入ってるんで、羊と言えば睡眠。睡眠と言えば「たぬきねいり」……そしたらたまたま「祥」の字の中に「ネ」も入ってて。

松村: 「羊」「ネ」「入り」でいくか!と。

細田: まだ1回もダサいって言われてないかもしれないね。

松村: そうやね。多分由来があるからなんすよね。無かったら、「なんやその、たぬきをひつじに変えただけの!気持ち悪いわ~」ってなる。

細田: たまたま良いのがあったね。

松村: お母ちゃんにもらった名前をね、大事に使わせてもうてます!っていう、ハートフルなエピソードでございます。

何もかも真逆の二人

―お互い尊敬していることはありますか?

松村: おっ、聞かしてもらいましょか?どういうところ?言うてよ!

細田: 良いところ!?度胸っすかね?僕めちゃめちゃ緊張しぃで。M-1の予選でルミネに希望者が殺到して、「有楽町シアターに行ってくれるコンビいませんか?」と言われたんですよ。「ルミネには強豪しか残らないのか?じゃあ有楽町に行ったほうが良いのか?」ってうろたえてたら、どっしり「ルミネで行こう!」(笑)。

松村: 不動でしたね。「そんなうろたえてどないする?まだまだ先は長いで~」言うて。

細田: ネタ中もどっしり。あんまり緊張してるところ見たことない。肝座ってんな~って。自分に無いんで、良いなって思いますね。根性野郎。

松村: おっしゃる通りやで、ほんま。

―松村さんはいかがですか?

松村: 僕は勢いだけで賑やかしみたいな人なんですけど、(細田は)頭が切れる。ネタは細田が書いてるんですけど「こういう切り口あんねんな~」と。面白いくだりをパッと考えられるところとか、頭の回転の速さはやっぱ達者やなぁと。タイプが真逆ですね。見た目もシュッとしてるし。あと、割かしこの雰囲気の人って遠ざけられがちなんですけど、好いてる芸人さんが多い。

細田: 嬉しいです。

松村: ほんまはもっと、ひとりでポツーンなってもおかしくない感じなんやろうけど。普通に良いやつなんやなって。

―逆に、不満に思うことはありますか?

松村: 自分でも言ってましたけど、メンタルですよね。

細田: メンタル弱すぎ。

松村: あ~もう、そんなバタバタせんでええで~みたいな。もっとどっしりしたらええのに。自信が無いのかどうか分かんないですけど、もっと構えといたらもっと面白い人に見えんのになぁ。

細田: しゃあないです、それは(笑)。

松村: 弱気になりがち。そんなことならんでええで。

細田: (松村は)がさつ、ですねぇ。

松村: そうね。がさつ……がさつやねぇ。

細田: 緊張しない分、ネタ合わせもあんまりしたがらないんですよ。「大丈夫やろ」って感じで。で、けっこう飛ばしたりする。練習不足がもろに出る。

松村: 「しゃーない!」言うて。「そんなもん、練習したかて飛ぶときは飛ぶんやから!」言うてやってますね!

細田: ツメが甘い。

松村: ほんま真逆。(細田は)ネタ合わせめっちゃしたい。この前、ライブまで3時間くらいあったときもその間ずっとネタ合わせしようとしてきて。“漫才モンスター”と呼ばれるあのエルシャラカーニのセイワ(太一)さんが、細田に「お前、それはやり過ぎや」って。

細田: ドクターストップが……(笑)。

松村: それはネタのオーバードーズですよーって止められて(笑)。お互い、バランスやなぁ。

ネタ作りの役割分担

―東京の方と大阪の方が組むというのは珍しいと思うんですが、ネタの作り方など気を付けていることはありますか?

松村: 多分、細田は「面白いことを1文で伝えたい」と思ってるんですよ。だからセリフが長くなる。でも関西人の性やと思うんですけど、会話のリズムを出したほうが面白く聞こえるし、上手く見えるんちゃう?と。台本もらってから「ここ短くしたら?」とかはあります。

細田: 音感担当かもしれないです。

―ネタをもらってから、関西のエッセンスを入れる感じですか?

松村: そうですね、関西のエッセンス……って言うと、関西人のフリしてるみたいになりません(笑)!?エッセンスは勝手に入ってくるんですよ、僕のオリジナルのものが。でも実は、組んだ頃さすらいラビーの中田(和伸)に、「細田は昔から面白い発想するけど、テンポを軽視しがち」って言われたことがあって。「あ、なるほどね」と。

細田: 分かんないんだよね。

松村: そこは自分が多少できてるんちゃうかな、と思うんで。良い具合に融合できたらええかなと。

―松村さんは、ネタだけでなくSNSなどでも「THE関西人」という感じですよね。これはあえてやってるんですか?

松村: そうですね。ナイチンゲールダンスの(中野)なかるてぃんが細田に、「松村さんのコテコテの関西のおっさんみたいな感じ、ネタに出したほうが良いんじゃないですか?」って。それまでは邪魔かと思ってシュッとした関西弁にしてたんですけど、今はそのまんま出してます。

―過剰にしているわけじゃなく、素のままなんですね。東京に染まってしまうということは無いんですか?

松村: そこは多分、負けん気。ちょっと濃くなったと思います。大阪に帰ると「あれ?なんかコテコテなってるな」って言われるんで。負けたらあかん!って。

<ひつじねいり|プロフィール>
2019年2月14日結成。マセキ芸能社所属。

上:松村 祥維(まつむら よしつな)
1988年7月2日生まれ。O型。171m/80kg。大阪府東大阪市出身。立命館大学中退。趣味はスポーツ(球技全般)、麻雀、呑み歩き。特技は激辛料理早食い、ソフトテニス(学生時代大阪府選抜候補)。

下:細田 祥平(ほそだ しょうへい)
1991年11月30日生まれ。A型。178cm/63kg。埼玉県さいたま市出身。慶應義塾大学卒。趣味はキャッチボール、5㎞ランニング、ブログを書く。特技はホームランを打つこと。

★公式サイト:https://www.maseki.co.jp/talent/hitsujineiri
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インタビュー・撮影:秦 法爾、撮影・編集:堀越 愛、協力:せんかわ

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