『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。
‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。
今月のテーマは、「『キングオブコント2024』を振り返る」。
★春とヒコーキが読者のお悩みに答える連載「VIP ROOM HARUHIKO ~秘め問い~」はコチラから
theme.『キングオブコント2024』を振り返る
ver.ぐんぴぃ
M-1グランプリが佳境を迎えている。今さらキングオブコントの振り返りなんざノらないかもしれないがどうかご容赦ください(現在、準決勝発表直後)。十九人がんばえ〜!研修テレビ組がんばえ〜!研修テレビ〜!足引っ張っちゃってごめん〜!優しい人は気を遣って春とヒコーキも(KOCの)準決勝行ったから!と添えてくれてる。気を遣わせちゃってごめん〜!こうなりたくなかったから誰かは落ちててくれと思ってごめん〜!!全員優勝して研修テレビを死者蘇生させてほしい!聞かれてないですが後ろでMの振り返りもやらせてください。今のところ鉄人小町が1番笑いました。
今年、キングオブコントで初めて準決勝に到達できました。準々決勝で人生でもなかなか味わえないドカ笑いをいただき、これで落ちたら賞レースには縁がないんだなと覚悟していました。無事35組に選ばれてこりゃ決勝テレビも射程圏内かと天狗鼻を伸ばしたのも束の間、雲の上までそびえ立つ準決勝の壁が眼前に。爪も立たないほどツルツルした壁に途方に暮れる中、ファイナリスト達が階段で頂点を目指してスイスイ登っていく。信じられない。まるで歯が立ちませんでした。
では具体的にはどのように歯が立たなかったのか。たとえば小道具の一つをとってもそうでした。
春とヒコーキは演技で魅せられるタイプではないので、演出で勝負に出る傾向があります。演出というのはかなり大ざっぱに言えば音響照明だったり、衣装や小道具だったり。
準決勝は「VTuber」というネタで、僕たちの中ではかなり大掛かりな道具を使いました。設置に30分ぐらい準備がかかる厄介なネタです。いろんな場所でやらせてもらいましたがその都度迷惑がられてきました。デカすぎる小道具、これは目立てるんじゃないか、なんて甘い考えを抱いていました。
大誤算だったのは吉本チームの小道具力。劇場がある彼らは大きい道具を使えるのが当たり前。だって置く場所があるから。
むしろ大きい道具をフリにいかにくだらないことをやるか、みたいなフェーズにいました(ロングコートダディさんやニッポンの社長さん、いぬさんなど)。大きい道具をそのまま真正面から使うようじゃ見劣りする。遅れて見えてしまう。「VTuber」は切り口自体はベタなものだったのでこりゃダメだと白旗を挙げました。吉本さんが羨ましい。でもこれは他事務所を選んでいるので言いっこなしです。来年は違う戦い方をしなければなりません。
バカだなぁ〜と思わせるネタも作りたい。普通のお笑いなんざ見飽きている準決勝ファンが、構えて見ているお客さんがそれでもガードを下げてしまうようなネタを。そういえば緊張はそんなにしませんでした。初日がトップバッターだったんですけど、出番直前にファイヤーサンダー﨑山さんが「(トップなら)来年頑張りやw」と言ってきたから。その後も目が合うたび言ってきた。なんて悪いお人。来年も準決でお会いしたい。
他の賞レースの振り返りもさせてください。
ラフターナイトの年間チャンピオン大会。去年に引き続きめちゃくちゃ楽しい賞レースですが、楽しいだけで終わってしまいました。
普通におとなしくネタを披露したって印象に残らないと踏んだ我々は、一か八かオチで大暴れして殴り合う大ズル漫才「誕生日会」をやりました。
比較的お笑いスケベが客席に多い大会なのでお祭り騒ぎにしたいなとも思っていました。候補に「ダウ90000に入りたいデブ」があった時点でお察し。客席から飛び降りてお客さんを威嚇したり配信カメラに飛びつくなどハメを外しておりました。
これも誤算だったのはセンチネルやポテトカレッジの存在。始まる前にネタ合わせしてるトミサットの口から「チンポが〜」って聞こえて嫌な予感したんだよなぁ。続くポテカレの下ネタや、トークコーナーでハイパーペロちゃんさんが女性アナウンサーを見て「オンナー」と駆けずり回るなどとにかく荒れた大会になり、逆にしっかりネタを披露したかが屋さんが順当に優勝する始末。大会を通してあまりの下ネタの多さに偉い人が怒ったらしいので、かが屋さんが勝ってくれて本当に良かった。弱者戦略に頼らずに済むよう、ちゃんとネタを磨こうと思います。
M-1グランプリ。こちらは3回戦でゲームオーバー。正直なところ3回戦までいけたら御の字でネタが動画になればいいなぁという志の低さだったんですけど、バチが当たったのかオチを全カットされてしまいました。無音でかつおぶしみたいに踊ってた。普通に歌を歌ったせいでして配信でも言えないような下ネタを叫んだわけではございません。
目標どおり3回戦で負けたけど、悔しかった。4分でやりたいネタもあったので。
ただ動画を見返すに、漫才は苦手だし下手くそだぁ。土岡はまだしも僕。真横を向いちゃってるし、滑舌のせいで潰れているところがあるし。漫才の間じゃなかったり。8年目の技量ではない。なんか芸人コンサル風の文章を書いちゃったな。芸人コンサル、息の根をとめるだけじゃ全然足りない、ウシジマ君に出てきそうな拷問を浴びせないとダメ。俺やりますよ肉蝮。
敗因はあまり場数も踏めなかったこと。2年前は恵比寿にあるクラブの営業でもM-1ネタを叩いたりして、元10億円の山内に一生イジられたが(セックスと叫ぶのが1番ウケる会場だった)そんなこともできなかったな。キングオブコント予選も調整はできなかったが、不思議とコントは勝ち上がれる自信があった。漫才は稽古がないと難しい。
最後に。ボケとツッコミが逆にした方がいいってコメント、百億回聞きました。評論家の方々。
そんな初手はもちろん試しています。土岡がボケのネタもあります。YouTubeで妙に顔バレしているからそう思うのでしょうけど。僕らを知らない人は土岡がボケとは到底思わないので難しい(僕がボケの形すぎるから)。
まだまだ挑戦しがいがありますね。グダグダ申し上げましたが、どうか春とヒコーキの来年の賞レースにご期待ください。
ver.土岡
2008年、第一回のキングオブコントが開催発表されたとき、高校生のぼくはびっくりした。M-1とR-1はあるけれどコントの大会はない、という状態が長年続いていたので、勝手にもうないものだと思っていた。開催発表からしばらくして、大会のホームページの「1回戦出場者」が更新されるようになると、毎日サイトを見に行って誰が出るのか確認していた。そして、1回戦出場者に「バナナマン」の名前が載った日、またびっくりした。既にバナナマンさんはもう大会に出ない立ち位置の人だと思っていた。テレビでも売れているし、何より「コントがすごくて面白いのは証明済みだろ!?」と思っていた。それでも目指す、コントの一番になるための場所。それがキングオブコントに抱いた最初の印象。
2024年、芸歴8年目で初めて準決勝進出。そして敗退。
普段からライブで一緒になる芸人で、既に準決勝を経験してる人はちらほらいるが、あの人たちはもうこの戦いに身を置いていたのか、と思った。
準決勝の中でも特に大きくウケている人たちは、シンプル、ないし、シンプルに見せることができる人たちだと思った。普通はシンプルなことでは他の芸人と差別化できないし、面白い状況まで辿り着けないから、複雑なことをしてしまう。でも、上の人たちは、シンプルでも面白いことができるし、面白いことをシンプルにすることもできている。自分の脳みそを太字で出せるようにする。それにはもっと自分の内側をめくる作業と、表現する技術やパワーが必要。難しいけど、それができるようになったら最高。
決勝戦の生放送は、タイタンの芸人十数名でレンタルルームを借りて見た。シティホテル3号室さんが決勝進出したので、それをみんなで応援しようと集まった。賞レースは、目標であり、切実な自分事であると同時に、夢中にさせられるショーであることは変わらない。と、賞レースを見て育った世代の芸人はみんな思っているだろう。
ドキドキしながらシティさんの出番を見守り、シティさんがウケて高得点を取るとみんな歓声を上げた。しかし、シティさんは惜しくも最終決戦には残らず。するとみんな、応援する人をラブレターズさんに切り替えた。ウエストランドの河本さんも一緒にいたので「河本さんはラブレターズさんと同期で仲良いし」とか「おれらもライブでたまに一緒になるし」と、自分たちの視聴モチベをキープするために、みんなでラブレターズさんを身内ということにした。そしてラブレターズさんの優勝で「うおー!やったー!」と大歓喜。節操がない。ただ、河本さんはラブレターズさんの優勝が決まった瞬間にボロボロ泣き出して、そこだけは本当に身内の絆だというのは注釈しておく。
ラブレターズさんの特に1本目のコント「光」(どんぐりのネタ)が、意味の分からない笑いの取り方をしていてすごかった。親の愛、夫婦の絆が溢れるほっこりしたストーリーだけど、笑いの取り方は「ほっこり系コント」と言い切れない、異常なテンションだった。クライマックスでどんぐりをぶちまけた瞬間、「ほらやっぱり関係ないじゃん!全く意味不明なことで面白くなってる!」と思って、笑いながらおののいた。一組だけ「なんで笑ってるのか意味不明」という状況を作り上げたから優勝したんだな、と感じた。
上に行けば行くほど、「自分」だったヤツが輝く戦い。優勝することが目的じゃなく、それを目指したその先で、めちゃめちゃ「自分」でしかないものを作れるようになるための場所。それが今キングオブコントに抱いている印象。
PROFILE
タイタン 所属
左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗
★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
★公式YouTube:春とヒコーキ / バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】
INFORMATION
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