大阪に誕生した新劇場「よしもと道頓堀シアター」潜入レポート!東西を結ぶ、芸人たちの“きっかけ”をつくる劇場へ

2025年3月26日(水)、吉本興業の新劇場「よしもと道頓堀シアター」がオープンした。

写真提供:吉本興業株式会社

よしもと道頓堀シアターは、吉本所属芸人や社員たちの自由な発想を表現する、新たな企画開発の場。レストランシアターとして本格的なフード・ドリンクも提供し、さらに外国人観光客も意識したインバウンド公演も実施。“お笑い”を軸足に置いた、新たなエンターテインメント空間となる。

……と、なんだかおもしろそうな雰囲気を醸している吉本興業の新劇場・よしもと道頓堀シアター。百聞は一見に如かずということで、現地取材へ!よしもと道頓堀シアターが目指す未来や見どころについて、支配人に教えてもらった。

★よしもと道頓堀シアターHPはコチラから

芸人や社員の「やってみたい」を実現する劇場

支配人の池本さんによると、よしもと道頓堀シアター(以下、道頓堀シアター)は「芸人や若手社員の発想を実現させる場」として誕生した新劇場。関西にあるほかの劇場は、よしもと漫才劇場と森ノ宮よしもと漫才劇場が約300席、なんばグランド花月が約900席……と、チャレンジングな企画を行うにはハードルが高い。一方、よしもと道頓堀シアターのキャパシティは110席ほど。関西では小規模の常設劇場であり、芸人や社員が「やってみたい」と思う企画を実現できる場所として誕生した。

舞台が横に広く、関西の劇場のなかではお客さんと演者の距離がもっとも近い。照明機材が充実しており、様々な演出ができるそう

池本支配人いわく、道頓堀シアターでは「券売は考えず、『これ本当にうまくいくのか?』みたいな企画も積極的に打っていく」。最初は小規模の開催だったとしても、回を重ねるにつれて注目度が上がり、別の大きな劇場で実施できるような企画に育てば……と、チャレンジングな企画が羽ばたくための“一発目”を開催できる劇場をコンセプトにしているという。

客席の様子(レイアウトは随時変更)
客席後方部には、テーブル&ソファ席も

また、道頓堀は大阪のなかでも特に外国人観光客の多いエリア。インバウンド客向けに、週2回ほど英語&非言語表現のショー『Yoshimoto Comedy Night OWARAI』も開催している。

『Yoshimoto Comedy Night OWARAI』より(映像は東京公演の様子)

『Yoshimoto Comedy Night OWARAI』には、大道芸人として活躍するもりやすバンバンビガロのようなパフォーマーはもちろん、スーパーマラドーナのような漫才師も出演。スーパーマラドーナは、ネタを英語に翻訳し、暗記して挑んだそう。

出演者たちは、慣れない英語を使いながら舞台に立っている(提供:吉本興業株式会社)

道頓堀シアターは「所属芸人がいない」のも強みのひとつ。大阪吉本所属の芸人はもちろん、これまであまり関西での出番がなかった東京所属芸人にも、平等に出演機会がある。「出演芸人の、知名度や人気は問いません。ここでライブをして、いずれその評判を聞いたほかの劇場から声がかかるようになったら良いなと考えています。また、東西の懸け橋にもなりたい。皆さんのやりたいことを、小さいところから大きくしていくきっかけになれたら」と池本支配人は語る。

取材した4月28日には、「 企画ダブルアートの12才協会『HARDCOREトーク倶楽部』 〜 エロい話をする回 〜 」、「武智ライブ」の2公演が行われていた。いずれも芸人が企画したライブ

道頓堀シアターの支配人に就任する前、池本さんはヨシモト∞ドーム(渋谷)のチーフプロデューサーを務めていた。当時と比較して驚くのが、「土日の寄席公演は毎回50枚程度当日券が売れる」こと。「大阪に来たからにはお笑いを見に行きたい」という観光客が多いようで、例えば「NGK(なんばグランド花月)に行ったが満席だったのでこっちに来た」という流れもあるそう。「劇場同士の連携を感じるとともに、大阪は本当に“お笑いのまち”なんだと実感している」という。

よしもと道頓堀シアター(ビル6階)の入口から見える風景。道頓堀には、グリコの大看板など観光客がイメージする“大阪”がたくさん。なんばグランド花月やよしもと漫才劇場からも徒歩圏内なので、劇場間の移動も苦にならない

道頓堀シアターは、食事をしながら公演を楽しめるレストランシアターでもある。ほかにも食事をしながら公演を見られる劇場はあるが、厨房が完備され「ちゃんと調理して提供する劇場は、ほかにはない」そう。

フードメニューはすべて劇場併設の厨房で調理。業務委託で料理長を迎えているため、本格的な食事を楽しめる。また、ここで働く芸人アルバイトたちも飲食経験豊富なメンバーが揃っているそう
フードメニューは既製品ではなく、よしもと道頓堀シアター誕生にあたり開発したものばかり(メニューは変更の可能性あり)
ドリンクメニューも豊富。アルコールを飲みながらお笑いライブを観ることも可能(メニューは変更の可能性あり)
芸人人気No.1は「手ごねハンバーグのロコモコ」。公演が続くとなかなか食事をとる時間がないが、道頓堀シアターは劇場内でフードを購入できるので、そういう意味でも好評とのこと
支配人のイチオシはクラシックバーガー!ハンバーグが肉厚で、食べ応えがすごい!!

5月10日(土)からは、土日の寄席公演で『よしもとお笑いレストラン』がスタート。これは、食事とお笑いをダブルで楽しめる公演。『よしもとお笑いレストラン』は、「食事ありきで見てもらうのを当たり前の環境にしたい」という想いで企画された。

『よしもとお笑いレストラン』の公演チケットは、フードメニューがセットになっている。また、ライブ中もフードやドリンクをオーダー可能!(提供:吉本興業株式会社)

劇場内に厨房があるという環境を活かし、今後は芸人考案メニューにも力を入れるという。

「 企画ダブルアートの12才協会『HARDCOREトーク倶楽部』 〜 エロい話をする回 〜 」開催にあたり、ダブルアート・真べぇが考案したのが「とろとろチーズぶっかけポテト」。試作を繰り返し、牛乳の量を細かく変えるといった工夫の結果、固まりにくい“とろとろ”チーズが完成した

新たに吉本常設劇場として誕生した、よしもと道頓堀シアター。今後どんな場所にしていきたいか聞くと、池本支配人は「“きっかけづくり”の劇場にしたい」と言う。これまでは実現できなかった新しい視点でライブを打つことができるので、芸人たちにとって新しいきっかけの場になりそうだ。またインバウンド志向の強い劇場でもあるため、「日本のお笑いが世界に通用するための開発の場になれば」と展望を語った。

よしもと道頓堀シアターでは、寄席から企画ライブまで、毎日多彩な公演が開催されている。公演スケジュールは、劇場HPで確認を。また、土日に行われる『よしもとお笑いレストラン』にも注目。お笑い×食事を楽しめる新しいエンターテインメントとして、大阪観光で立ち寄ってみるのも良さそうだ。

文, 編集, 撮影:堀越 愛