【ラニーノーズ 上京後初単独『We Are Runny Nose!!!!』インタビュー】満ち足りた大阪生活を脱し、東京で新たな挑戦。「食わず嫌いしていた人にも知ってほしい」

芸歴13年目、ともに今年37歳のコンビ・ラニーノーズ。2019年には『歌ネタ王決定戦』で、お見送り芸人しんいちや、友近、ゆりやんレトリィバァ、ナイツらを破り、見事優勝。ギターと歌を武器に“音曲漫才”で大阪を席巻してきた彼らが、今年4月に、拠点を地元大阪から東京へと移した。

8月1日(金)に上京後初の単独ライブ『We Are Runny Nose!!!!』を開催するラニーノーズに、単独インタビューを敢行。上京の狙いや手応えを聞いた。

芸歴1年目みたいな決意

———ラニーノーズの芸風は「東京のほうが合う」とずっと言われていたようですが、芸歴13年目にして東京へ来て、手応えはどうですか。

山田 健人(以下、山田): 劇場によりますね。ルミネ(theよしもと)とかはめっちゃやりやすいんですよ。でも、渋谷のよしもと漫才劇場はちょっとムズいです。多分、音が壁を回ってるんかな。

洲崎 貴郁(以下、洲崎): すり鉢状だからね。

山田: コロッセオみたいな劇場なんでね。相方がギター弾いて歌ってるときの音量がめっちゃ大きく感じるんで、僕のツッコミの声量がどれくらいだとちょうどいいのかわからん。ちっちゃいかもしれへんし、逆にでかすぎるんかもしれへんし。

———お客さんの反応というよりも、空間との相性がまず課題?

山田: 劇場によって全然違いますね。まぁとりあえず、大きい声出してやっていきたいなと思ってます。

洲崎: 芸歴1年目みたいな決意やな(笑)。

———ルミネはやりやすいとのことですが、たしかに客層も幅広いので、ラニーノーズの音曲漫才は一瞬でハートを掴みそうですね。

山田: それはあるかもしれませんね。こないだも10分尺のラスト、歌でバーっと盛り上げて拍手喝采で終わるネタやったんですけど、それもけっこう盛り上がってくれて。

洲崎: 最後、ほんまにコンサートみたいに盛り上がるんでね。舞台袖にも芸人が見に来てくれて、お客さんと同じ感じで拍手してくれるんですよ。

山田: ああいう盛り上がり方って、東京の芸人さんからすると珍しいらしくて。僕らとしてはNGK(なんばグランド花月)でも同じことやってたんで不思議な感じですけど。

———ちなみに劇場の楽屋は、居心地どうですか?

山田: 良いですよ、楽屋見たら大阪の芸人さんが半分以上おったりするんで。渋谷の劇場って、奥にテーブルとイスがあるんですけど、そこにはもう大阪芸人しかいない。東京の芸人をまとめてたダイタクさんが不在だった間に大阪芸人が場所をとってしまった感じで、ちょっと申し訳ないですけど……(笑)。

洲崎: 東京の方々はたまり場にいるんで、僕はそっちに行くようにしてます。いろんな人と喋っときたいんで。

———東京の芸人と、大阪から来た芸人の架け橋になりそうな存在は誰ですか?

山田: 同期だったら、そいつどいつですかね。(松本)竹馬は大阪芸人が集まってる楽屋にもいたりするし。(市川)刺身も話しやすいです。

僕らはパンクロックのDIY精神

———最近はお笑いと同じ熱量で音楽活動をする芸人も増えてますよね。だからお笑いも音楽も両方やるラニーノーズさんの活動スタイルは、時代にフィットしてきたのかなと思ってたんです。

山田: でも、みなさんはお笑いで認めさせたあとでほかのことはじめてるじゃないですか。僕らは先にやりすぎてる(苦笑)。

———YouTubeをはじめたのも早かったですよね。結成3年目の2014年に、チャンネルを開設しています。

山田: そうですね、僕らはパンクロックのDIY精神なんで。所属こそ吉本ですけど、仕事ないときから自分たちでやりたいことは全部やってきました。まぁそうやって好きなことばっかやってる分、反発があるのも仕方ないですよね。そろそろ結果出して、ネガティブな意見もひっくり返さなあかんなと思ってますけど。

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———ラニーノーズにとっての「結果」って、なんですか?

山田: それこそ賞レースやと思ってますね。キングオブコント。音曲漫才のイメージが強いと思いますけど、コントもあるんやぞっていうのを見せていきたいです。

———芸歴13年目、今年で37歳になるラニーノーズのふたりは、なぜ今、東京進出したんですか?

洲崎 自分らが「13年目」とかはあんまり思ってなくて、ほんまに心機一転の思いです。それに、いつかは東京行くって思ってたんですよ。このまま大阪で骨を埋めるとは思ってなかった。せっかく東京に来たんで、これまでラニーノーズを食わず嫌いしてた人とか、そもそも知らなかった人たちにも知ってもらいたいですね。

山田: 僕は大阪で満ち足りてしまってたんですよね。神社の境内に面した家で、窓の外を眺めながら、コーヒー飲んで瞑想する生活してて。「もうこれ余生やん」と思ってしまったんです。だから新たに挑戦しようと。

———2年前に、大阪芸人が大挙して上京したことも大きかったですか?

洲崎:  たしかに、2 年前に行っても良かったんですよね。実際、ちらっと話してました。

山田: 先輩方が行ったタイミングで、「じゃあ俺らも行けるやん」とはなりました。だから、2024年の段階では行くことは決めてたんです。ただ、Runny Noizeっていうバンドのほうのメンバーとか、YouTubeチームが大阪にいるんで、すぐには動けなかった。

———洲崎さんはお子さんもいて、家族で移住するのは大変じゃなかったですか?

洲崎 「いつか行く」って話はずっとしてたんで、それを見据えた上で奥さんも動いてくれてました。大阪で仕事探すときも、東京にも支店があるところを探して働いてくれたし、なんやったら行くって決めた1年前から物件も探してくれて。そのへんはめっちゃ感謝してます。

山田: 俺なんか、最初は住む家もなかったのに。6月には結婚式挙げて、めちゃめちゃバタバタしてた(笑)。

———山田さんの生活も、ようやく落ち着いた?

山田: そうですね。仕事でも、大阪時代に仕込んでた『アメリカズ・ゴット・タレント』に出演できたり、バンドのMVも公開されたり、良い流れになってます。大阪にいる頃はアイディアが生まれても先延ばししがちだったんですよ。でも東京行くって決めたら、大阪で最後に好き勝手やったろうって思って、むちゃくちゃなことばっかやれました。ツートライブさんには「お前ら、東京に逃さへんぞ」って言われましたけど(笑)。

7月1日に公開された『I fell in love with a ZOMBIE〜俺はゾンビに恋をした〜2025』のMV

洲崎 大阪に行くの、ちょっと怖いですもんね(笑)。

山田: そもそも僕らは大阪が長すぎたんかもしれません。本当は僕ら、住む場所変えるのって得意なはずなんですよ。もともとバンドでカナダに1年住んだりしてたし。この先もロスに拠点を移すかもしれない。インド、アフリカだってあり得ます。

単独ライブはアホなことする

———『アメリカズ・ゴット・タレント』にも出ましたし、たしかに海外進出は現実味があります。

山田: ほんまに良い経験をさせてもらいました。あそこの空気を吸ったことで、「イングリッシュ音楽漫才」をやっていきたいなって思うようになりましたから。

———東京どころか世界も視野に入っていますね。

山田: こないだ新婚旅行でインドネシアに行って「インドネシア住みます芸人」と話したんですけど、やっぱり漫才は理解してもらえないらしくて。

———言語の壁ですか?

山田: いや、言葉っていうより、ふたりの人間がステージに上がって、初めてその話題をしゃべるみたいな“テイ”が意味わからんらしくて。日本では、漫才のネタは何度も舞台にかけてるっていうのが暗黙の了解ですけど、そこがよくわからないっぽい。だけど、そこに音楽をつけたら「そういう出し物なんだ」ってわかってもらえるらしいんです。

———漫才というフォーマットを受け入れてもらう第一歩として、音曲漫才はわかりやすいと。

山田: そうですね、ギターと歌があって音楽のなかで面白いことを言ってるというテイにすれば、いけるんちゃうかなって。だからこれからは英語版のネタをどんどん試していきたいんですけど……。

———なにか気がかりがあるんですか?

山田: 一回だけ、英訳したネタを外国の人に見せたことがあるんですけど、全然笑わへんくて。あそこで心折れたまんまなんですよ。

洲崎 データ少なすぎるやろ(笑)。山田が連れてきた無口な外国人、たったひとりのデータやから。

山田: 僕のお兄ちゃんの友だちの彼氏でしたね。最後までしゃべらんと帰ってった。まぁ懲りずにイングリッシュ音曲漫才やっていきたいです。

———8月1日、渋谷よしもと漫才劇場で上京後初の単独ライブ『We Are Runny Nose!!!!』を行います。どんなライブになりますか?

山田: 音曲漫才もそうですけど、コントもたくさんやりますし、『ゴッド・タレント』を経て、外国人でも笑えるようなネタとかもやるつもりです。『We Are Runny Nose!!!!』というタイトル通り、僕らのやってきたこと、好きなこと全部やります。

洲崎 僕らのことをまだ知らない東京の方々に、「ラニーノーズってこんなことアホなことしてんねや」って思ってもらいたいですね。

———アホなことですか。

洲崎 僕らって、実は「ほぼ裸」みたいなネタもあったりするんですよ、お尻出してたりとか。

———そのイメージは、たしかにないですね。

山田: 東京の人には意外と知られてないですからね。

洲崎 変にシュッとしたイメージついてるみたいですけど、そういうアホなことも好きなんです。

山田: 今回は大阪でもともと応援してくれた人も、東京で初めて見る人も楽しめる公演にしたいですね。

———個人的に、ラニーノーズさんに追い風が吹いている気がしてるんです。コントに力を入れたいと上京したタイミングで、コントを中心にした劇場「YOSHIMOTO ROPPONGI THEATER」ができたり、おふたりがずっと力を入れていたホラーのブームが来ていたり。

山田: いや、ホラー小説は、おもんなさすぎて一回炎上してるんですよ(苦笑)。吉本の上の人からも「ホラー小説はもう書くな」って怒られましたし。

———あれは災難でしたね……。

洲崎 もはや世間からしたら、ラニーノーズってあの一連の騒動のイメージしかないですから(笑)。

山田: まぁでもほんまに渋谷が漫才劇場に変わったり、六本木にコント向け劇場ができたり、『ゴット・タレント』に出れたり。個人的にも追い風は感じてるんで、勢いに乗っていきたいですね。

PROFILE

ラニーノーズ

左:洲崎 貴郁
右:山田 健人

★公式プロフィール:https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=5185
★公式YouTubeチャンネル:ラニーノーズのラニーラニーラニー【公式】

文:安里和哲

編集, 撮影:堀越愛