あなたは攻撃タイプ?守備タイプ?馬力違うマンが無双する現代に考える可否。【ヤーレンズ出井隼之介「可否伝」23杯目】

ヤーレンズ・出井隼之介さんが物事の良し悪しを綴る連載『可否伝』。出井さんセレクトの「今月のコーヒー」情報とともに、心が揺れた“良し悪し”を語ります。

8月の可否

パワフルな人を指してよく『馬力がある』という表現をする。

なんで人なのに馬なんだよ『人力が高い』でいいだろなんて思ってた時期、またボクシングに蹴り技がないと思っていた時期、僕にはありました。

しかし、実際に溢れんばかりのパワーとスタミナで突き進む人を目の当たりにすると、それはまさしく『馬力』としか形容できないと気づく。

「俺はハードに働き、ハードに遊び、そしてハードに死ぬのさ」

これは言わずと知れた元ボクシング世界ヘビー級王者マイク・タイソンの言葉だが、この言葉を地で行くような“馬力が違うマン”があなたの周りにもいるんじゃないだろうか?

仕事もバリバリやっていて、毎日のようにジムに行ったり、飲みに行ったり、サウナに行ったりしてるのに、休みの日はゴルフだ旅行だ、みたいな、馬力無い人間からすると、ただただ羨ましい活動量。

ちなみに前出のマイク・タイソンは一晩で24人の女性と関係を持った事があるらしい(諸説あり)ので、もはや生物として違うし、全盛期のあのフットワークは、ボクシングは地面を蹴るスポーツなんだと思わされる。

芸人の売れている先輩に“馬力が違うマン”が多い。運動能力や心肺機能が高いとかそういう体力じゃない。脳みそも肉体も疲労への耐性が異常に高い。

昔の日本人は、平日はバリバリ働いて、休日に消費で自己実現をしていた。旅行やドライブで『充実した休み』を楽しむために、日々を頑張っていた。

ところが今は『仕事で自己実現』みたいな言説が流行っている。やりたい事やる、起業や夢追いが推奨されている。そうなると馬力がモノを言う。

人間をざっくり2種類に分けてみる。

攻撃タイプ=バチバチに競ったり、何かを打ち果たしたり、追い込んだりする際のアドレナリンで動く人。

守備タイプ=落ち着き、安らぎ、安定によって得られるセロトニンに幸福感を感じる人。

この後者の守備タイプの人までもが、時代のムードで『仕事での自己実現』を選んでしまうと、それはもう大変。

夢があるなんて言われてる仕事、例えば芸人なんて選ぼうもんなら、アドレナリンがバンバン出るような局面がいっぱいあって、そこには攻撃タイプの人間が集結していて、そこを“馬力違うマン”が無双している。そんな所では休んでいる場合ではなく、守備タイプの人はどんどん消耗していってしまう。

なぜ売れている芸人に"馬力違うマン"が多いか。仕事の性質上、攻撃と守備の境目がどんどんなくなってくるからだと思っている。

例えば「休みの日にリラックスのためにゴルフに行く事でゴルフ番組に出られる」みたいなスーパー売れっ子循環ができるのだ。

アドレナリンとセロトニンの両取り。休む事すら仕事になる、エネルギー無限回収ループ。ますます守備タイプなんてつけ入る隙がない。

芸人に限らず、持っている性質や馬力の違いが『やりたい事をやろう』な現代を幸福に生きる鍵となっているが、それに乗れない人、生きにくさを感じる人も当たり前に沢山いる

いつかのコラムにも書いたが、迷ったり立ち止まったりブレたりする事こそが人間らしい行動であると思うから、

僕に世の中を変える力は無いけど、誰か疲れた人がいたら、それが世の中に疲れた守備タイプの人でも、バーンアウトしてしまった攻撃タイプの人でも、誰でも安心して笑える場所ではありたいなと、最近つくづく思う。

そんな事を言いながらも、我々は今年もM-1にエントリー完了。アドレナリン全開。戦って勝ち得たい場所がある。


~8月の可否~

可→みんなが安心して笑える場所を作る

否→無闇に夢を追いかけさせる風潮、馬力がモノを言い過ぎる世界

今月のコーヒー【08珈琲】

08珈琲(秋田)

雰囲気も珈琲も最高な、秋田の有名店。何度も秋田には行っているのになぜか行きそびれていた。行けて良かった。

PROFILE

ヤーレンズ・出井隼之介

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文:ヤーレンズ・出井隼之介
編集:堀越 愛
写真&サムネイル:ヘンミモリ