ヤーレンズ・出井隼之介さんが物事の良し悪しを綴る連載『可否伝』。出井さんセレクトの「今月のコーヒー」情報とともに、心が揺れた“良し悪し”を語ります。

10月の可否
郷土愛ってなんなんだ。
僕はプロフィール上神奈川県出身となっているが、中学1年まで神奈川県横浜市に住んでいたので、正確に表記するのであれば『横浜生まれ、神戸育ち』ということになる。
これはかなり気取って聞こえる。これ以上気取ろうとすると、フィレンツェやウィーンで生まれる必要がある。
さらに正確を期すなら、神戸の病院で生まれたのち、すぐに横浜に引っ越しているのだが、そこまで言うとさすがにややこしいのでこれはもう省略している。前田敦子のプロフィールにおける『ふくらむスクラム』である。ちょっと違うか。
さて、生まれ育った町、神戸も横浜も大好きだが「自分がその街を本当に愛しているのか」
ずっとピンと来ずにいた。
それは例えば郷土愛が強い人と話している時。自分はこの熱量で故郷の事を語れないな…と思ってしまう事がしばしばあったからだ。
恐らく横浜も神戸も、すでに“おしゃれな街”として多くの人に愛されている。だから自分まで声高に「好きだ」と言わなくてもいいと思っていたという事もあるだろう。
対照的に、本籍地である両親の出身地富山県には、幼い頃から何度も訪れていて、むしろこちらに郷土愛に近いものを抱いている自覚があった。富山には祖父母がいた事もあり、安心ややすらぎの象徴として今でも心にあり続けている。
そんな僕でも、自分に宿る郷土愛を感じられる瞬間が訪れた。
それは、妻を初めて神戸に連れて行く時だった。謎の「かまさなければいけない」という使命感が芽生え、身の丈以上の鉄板焼き屋さんを予約し、神戸牛を食べてもらったのだ。
冷静になるとただの見栄張りの様な気もするが、行動原理が「神戸が大した事ないと思われたくない」だったので、あれは明確に郷土愛の発露だった。
今までいろんな出身地の人と関わった。地元が好きな人がいれば、嫌いな人もいる。郷土愛というのはどこから生まれるのだろうとずっと不思議に思っている。その土地に愛された記憶なのだろうか。
そんな事を思っていたら、先日相方が地元である大阪府池田市の観光大使に就任した。
相方も日頃からさほど郷土愛を口にする人ではないのだが、いざそういうものに就任するとなると身が引き締まったのか、最近は地元での思い出などをよく喋るようになった。
その大使の就任式の後、瀧澤池田市長と歓談する時間があったのだが、そこで思わぬ事が発覚した。市長は池田の出身ではなく、僕と同じく神戸市の出身。しかも中学も部活も一緒だったのだ。
そこからは相方をほったらかして、池田市役所の市長室で神戸の郷土トーク、それも近くのバス停やお肉屋さんの名前などかなりローカルな話に花が咲いてしまうという一幕もあり、終始和やかに式は終わった。いい場だった。地元にちゃんと帰りたくなる。
~10月の可否~
可→郷土愛を表現する事
否→自分の郷土愛に気づかない事
今月のコーヒー【時計のない喫茶店】
『時計のない喫茶店』(札幌)


ようやく行けた札幌の有名店。かなり挑戦的な豆を扱っていて痺れた!

PROFILE

ヤーレンズ・出井隼之介
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文:ヤーレンズ・出井隼之介
編集:堀越 愛
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