竹内ズ主催のストイックライブ!新ネタバトル『新参者3』を徹底レポート

2021年4月3日(土)、『新参者3』が新宿Fu-にて開催された。『新参者』は竹内ズが主催する“新ネタ採点バトルライブ”で、今回で3度目の実施。2020年9月以来、約半年ぶりの開催となる。ライブには、芸歴1~5年目の人力舎所属芸人&他事務所ゲストが出演。若手が新ネタを披露し、3名の先輩芸人が100点満点で審査する。ライブ中に順位が発表される臨場感に加え、先輩芸人の講評も聴ける贅沢なライブである。出演者だけでなく観客までも、“ネタ見せ”さながらの緊張感に飲まれそうなバトルライブをレポートする。

『新参者3』は、4月1日~6日に開催された『バカ爆走!』(人力舎若手お笑いライブ)全8公演のうちのひとつ

〈出演者〉
■人力舎所属芸人
大仰天、げん、翳りゆく部屋、ジャンク、竹内ズ、カルブンコ、へんてこぼういず、燻製、キャプテンバイソン
■ゲスト
ガクヅケ(マセキ芸能社)、サノライブ(K-PRO)、可児正(フリー)
■MC
アナクロニスティック
■審査員
三福エンターテイメント、内間 一彰、トンツカタン・森本 晋太郎

いかちゃん不在で“ガチ”審査!

MCはアナクロニスティック(長谷川 巧貴・ホビー)。二人によると、数あるバトル系ライブの中でも「すべての順位が出るライブはなかなか無い」そう。上位が発表されるのは普通だが、『新参者』は最下位までの順位が発表される。更に『M-1グランプリ』と同様100点満点で細かく採点する上、披露するのは“新ネタ”。お客さんの反応がまったく分からない新ネタで競う、ストイックなライブが幕を開けた。

アナクロニスティック(左:長谷川 巧貴、右:ホビー)

審査員は三福エンターテイメント内間 一彰トンツカタン・森本 晋太郎の三名。

左から、三福エンターテイメント、内間 一彰、トンツカタン・森本 晋太郎。ネタ以外はマスクまたはマウスシールドを装着

第1弾・第2弾『新参者』の審査員は、三福エンターテイメントアナクロニスティック・長谷川いかちゃんの3名だったそう。三福によると、いかちゃんが審査員にいると「出る側も気楽にネタができた」。長谷川は、「僕や三福さんが1点差とかで(繊細な)採点をしている中、いかちゃんが0点・30点・50点・100点でつける」と振り返る。いかちゃんは、下ネタや喧嘩ネタは0点、ご飯の話題が出るネタは100点など、独特の目線で審査をしていたそう。出演芸人にとって癒し的存在だったいかちゃんだが、この日は不在。今回の『新参者』は、よりリアルな審査が行われるため“ガチ”感が増すという。

森本によると、前回も審査員に誘われたが「自分が審査をするなんて……」という考えがあり1度断っているそう。だが、竹内ズ・がまの助の「どうしても」という想いに根負けして審査員に。「スケールの小さい巨人師匠」として(!?)満を持して審査員に加わった。審査員が客席の最前列に座ったところで、ネタパートがスタート。

厳正な抽選で決まった香盤は、下記の通り。

【前半戦】
①大仰天
②カルブンコ
③げん
④竹内ズ
⑤翳りゆく部屋
⑥へんてこぼういず

【後半戦】
①サノライブ
②燻製
③可児正
④ジャンク
⑤ガクヅケ
⑥キャプテンバイソン

ネタパート前半戦

トップバッターは大仰天(田口 優斗・木場 知徳)田口の「ラジオパーソナリティになりたい」という願望から、漫才がスタート。木場が「弟子入りしよう」と提案し、二人は『すき家』の店内放送を担当する高森 浩二さんのもとへ。そこで出会う人々との攻防を、独特の世界観で描いた。

大仰天(左:田口 優斗、右:木場 知徳)

2番目は、カルブンコ(藤岡 勇人・シャトル)によるコント。山で足を負傷した藤岡のためにシャトルが救助要請するが、「救助費用で100万円くらい自己負担がかかる」ことが判明。善意で救助隊を呼んだにも関わらず、費用をめぐり思いがけない争いが起こる。

カルブンコ(左:シャトル、右:藤岡 勇人)

3番目に登場したのは、ピン芸人・げん。音響ミスでやり直しをする場面があったが、トラブルも笑いに変え「満員電車」が舞台の一人コントを披露。電車に揺られる見事なジェスチャーも相まって、客席からは常に笑いが起きていた。

げん

4番目は、本ライブ主催の竹内ズ(竹内 大規・がまの助)。バンドマンを夢見て上京する息子と父親のやりとりを、コミカルに演じた。親子の応酬と切なげなBGMが不協和音を生み出し、竹内ズならではの世界観を披露。

竹内ズ(左:竹内 大規、右:がまの助)

5番目に登場したのは、翳りゆく部屋(内田 圭治郎・北村 拓郎)。独特のつかみから漫才がスタート。様々な「無意味な例え」が繰り出され、ツッコミが翻弄される様子が面白い。

翳りゆく部屋(左:北村 拓郎、右:内田 圭治郎)

前半ラストに登場したのは、へんてこぼういず(貫井 桂・仁木 修平)。「昭和のアニメを観る活動をしている」二人を演じた。他と比較できない唯一無二のコントに客席が戸惑いつつ、悲鳴のような笑い声が上がる。

へんてこぼういず(左:貫井 桂、右:仁木 修平)

前半6組のネタが終わるとMC&審査員が舞台に上り、換気を兼ねた中MCへ。思ったよりあっという間に前半が終わったという森本は、「お笑いライブ、マジ楽しいわ」と原点回帰した様子。また、森本へんてこぼういずが特に印象に残ったとし、ネタ中に“見えそうで見えなかった貫井の乳首”について熱弁していた。

へんてこぼういず・貫井の乳首を真似るトンツカタン・森本

ネタパート後半戦

後半戦トップに登場したのは、ゲストのサノライブ。「のど自慢大会」に出場するも、緊張のあまりわけが分からなくなってしまう青年の様子を一人コントで披露。

サノライブ

次に登場したのは、燻製(チップ・zabu・見並 慶一)。二人しか生徒がいない田舎の高校に、転校生がやってくるところから物語はスタート。全編でナレーションが流れ、セリフは一切なし。三人は音声に合わせて動くという、新感覚の青春コントが繰り広げられた。

燻製(左:チップ、中:見並 慶一、右:zabu)

3番目に登場したのは、ゲストの可児正。ひったくりに遭った男性が警察を訪れるところから、一人コントがスタート。男性の正体はネタバレになるため明かせないが、“まさか”の人物。モノマネを交えた特殊な設定の一人喋りに、客席から笑いが起きる。

可児正

4番目に登場したのは、ジャンク(小森 瑠斗・山下 瑞生)。漫才の入り口は、「休みの日に凧揚げしてた」というセリフ。そのとき出会った“凧揚げを知らない子ども”との、やや狂気を感じる会話を振り返る。

ジャンク(左:小森 瑠斗、右:山下 瑞生)

5番目に登場したのは、ゲストのガクヅケ(船引 亮佑・木田)。出前でおでんを頼んだのだが、カラシが入っていない。「すぐ持ってきてください」という木田のセリフから、異様なガクヅケワールドが始まった。セリフは冒頭のひとことのみ。ポップなBGMに合わせて動く二人が、観客の想像力を掻き立てる。

ガクヅケ(左:木田、右:船引 亮佑)

トリを飾ったのは、キャプテンバイソン(高野 哲郎・西田 涼)西田が「銀行で食べるフランスパンが1番美味しいなぁ」とパンを食べていると、銀行強盗がやってくる。……が、様子がおかしい。高野演じる強盗の“謎理論”に、観客も西田とともに翻弄される。

キャプテンバイソン(左:高野 哲郎、右:西田 涼)

全ネタ終了後に、MC・アナクロニスティック&主催・竹内ズがゲストを迎えトーク。最初に登場したのは、ピン芸人の可児正サノライブがまの助によると、サノライブは同期だが「いじめっ子気質」のため敬語で話しているそう。また、昨年事務所を辞めフリーになったため、芸歴は「無」という可児正。「フリーになると芸歴が無くなる」という独自理論を展開した。

左から、長谷川 巧貴、竹内 大規、がまの助、可児正、サノライブ、ホビー

サノライブ可児正には、同い年&京都出身という共通点がある。二人とも大学時代にお笑い活動をしており、当時からお互いのライブを観に行っていたそう(……だが、可児正の芸歴は「無」である)。また、新ネタバトルということもあり「楽屋がピリついていた」という話題に。サノライブによると、特にピリピリしていたのが竹内ズ。ネタ合わせ時、「(竹内と)目を合わそうとするのに合わない」と言うがまの助に対し、「だって意味あります?」と竹内が返す一幕も。

続いて登場したのは、ガクヅケがまの助が一方的にファンで、この日のオファーに繋がったそう。

ガクヅケ(左:船引 亮佑、右:木田)。木田の身体的特徴が話題になったが、レポートでは自粛

ガクヅケは毎月単独ライブを実施しており、がまの助は毎回観に行っているという。『新参者3』に出演したため、4月の新ネタが合計8本になったというガクヅケ。「(竹内ズが)呼んだせいで……」と一瞬ピリっとしたが、「いっぱいネタできて、ありがとう!」と木田がフォロー。

まるで「ネタ見せ」!結果発表へ

審査が終了し、ついに結果発表。点数は、審査員一人あたり100点。結果は最下位から発表される。

最初に呼ばれたのは、「山での救助」がテーマのコントをした、カルブンコ森本の「配役が逆の方が良いのでは」というアドバイスに、審査員一同が賛同。内間は「(二人の)熱演だけで、異常に面白かった」と評した。

審査員の的確なアドバイスに“食らう”カルブンコ

次に呼ばれたのは、燻製可児正。同点で10位タイとなった。

「高校」を舞台にナレーションのみのコントを演じた燻製に対し、同じパターンがずっと続き「あまり変化が無かった」と指摘する内間。どう展開していくのかワクワクしていたこともあり、「物足りなかった」と感想を告げた。三福はセリフ無しのネタに対し「誰かだけは(実際に)喋ってる」ような構成も良いのでは、とアドバイス。森本も「生声のほうが、圧で巻き込める」と言う。コントのオチに関しては、三名とも高評価。内間は「良いもん見たなと思った」とコメントした。

審査員のコメントが「身に染みた」という燻製

ひったくりに遭った男性を演じた可児正のネタは、審査員内でも評価が割れた。90点を付けた森本は「(観ていて)不思議な感覚になった」と言う。言葉選びのセンスを評価した上で、「(スタンスが分からないため)見方だけ最初に教えてくれれば、より良かった」とアドバイス。三福は、「(演じた対象に対しての)好きという気持ちが届かなかった。そこは欲しかった」と指摘した。

「このセンス、僕には無い」と評価する森本と、可児正

第9位は、「無意味な例え」に関する漫才をした翳りゆく部屋。審査員三名の中で最高点を付けていた三福は「可能性を感じた。絶対良くなる」と伝えた上で、「ボケが同じパターンだった」と指摘。ボケの質を上げていく、もしくはツッコミのワードを変える必要があるとコメント。内間からは、「自分の言葉で喋れている」ことはすごく良いという評価。しかし、ワードを凝ったほうが良いという三福のアドバイスに対し「(翳りゆく部屋のツッコミは)感情でいけるタイプだと思うので、ワードが凝ってなくても……」と反論する場面も。

ネタ見せさながらのアドバイスを真剣に聴く、翳りゆく部屋

第8位は、「のど自慢大会で緊張」という一人コントをしたサノライブ森本は、「この着眼点でネタが1本できるということは、とんでもなくコントを量産できるんだと思った」とコメント。内間サノライブのガタイの良さを踏まえ、「緊張しちゃうっていうのがもしかしたら似合わないのかも」と指摘。サノライブは堂々としているように見えるため、外見とネタで食い違いが生まれているのかもしれない。三福はネタの構成に関し細かく言及し、具体的なアドバイスを伝えていた。

森本は、審査票に「でけぇ」と書いていたそう

第7位は、「ラジオパーソナリティになりたい」という漫才をした大仰天内間は「異常に面白かった」と高評価。三福は「精度は高かった」としつつ、ネタ中に出てきた状況描写を細かく振り返りながらアドバイス。また、森本は「目隠しを外された直後、(眩しいため)しばらく目をつぶっている」という田口の細かな演技を評価。

木場は、なにをメモっているのだろうか……

第6位は、「凧揚げ中に子どもとした会話」をテーマに漫才をしたジャンク。高得点を付けていた森本は、「上手いし達者」と評価。内間は「自分の好みではあるが……」と踏まえ、コントに常に入っているのではなく「戻ってきた方が良くなるのでは」とアドバイス。「(漫才コントを抜けた)二人の掛け合いをもっと見たかった」と伝えた。また、三福によるとジャンクの漫才は「(子どもがかわいそうなため)いかちゃんなら間違いなく0点」。「いかちゃんが審査員の場合は最下位の可能性がある」といかちゃん視点を持ちながらも、個人採点は比較的高得点だったそう。

1位だと思っていたため客席の後ろで見学しており、慌てて登場したジャンク

第5位は「満員電車」が舞台の一人コントを披露した、げん。93点と高得点を付けた森本は「満員の感じを出すのがめちゃくちゃ上手い」と、げんの動きを評価。三福が「もっと演技が上手ければ……」と言うと、げんのことが好きという森本は「新ネタだからね」とフォロー。三福は、細かい描写の追加など「やれることはまだある」としつつ「ネタ自体は問題ない」と内容を評価。「とにかく顔が面白かった」と言う内間は、げんが纏う独特の雰囲気を含めて「素晴らしい」とコメントした。

満員電車内の描写を再現する、げん

第4位は、「上京する息子と父親」のコントを演じた竹内ズ内間は「段々と息子の異常性が際立ってくることにワクワクした」と、ネタ中に感じた感情の変動に言及。曲・ストーリー・演技のすべてが良かったという森本は、思わず「息子は上京を止めて欲しかったのでは?」と考察までしてしまったそう。三福は「今までの竹内ズだったら、2回目のボケをかぶせていた。今回は違うボケをしていた」と成長を評価。が、がまの助に対し「おめぇのツラが、もっと“どっちつかず”のツラ」の方が良い、というアドバイスも。

竹内ズが想定していなかったところまで「思わず考えを巡らせてしまった」森本

第3位は「銀行強盗」のコントをしたキャプテンバイソン。審査員全員が90点以上を付け、1年目ながら上位に食い込む健闘を見せた。96点と高得点を付けた森本は、「ツッコむときの顔がめちゃくちゃ良い」とコメント。三福も「可能性を感じた」と評価していた。

キャプテンバイソンは、「伏線を回収したから」と勝因を分析

第2位は、「昭和のアニメを観る活動をしている」コントをしたへんてこぼういず。なんと、森本は100点を付けていたという。ネタに出てくるくだりすべて、“観たことがない”類のものだったため「飽きさせないコントだった」と高評価。「普段やらないツッコミを頑張った」と言う仁木に対し、内間も「完璧だった」と称賛。

「乳首がギリギリ見えるかどうか」の状態を維持する貫井に対し、森本は「若手がやる芸じゃないのよ!」と叫ぶ

栄えある第1位に輝いたのは、ガクヅケ内間は「ネタ中に、思わず心の中でツッコんでしまった」ほど、ネタに没頭したと言う。また、三福ガクヅケの“あえて言わない”構成に言及。並のコンビであれば言葉に出してしまうツッコミを「ひとことも言わないのがすげぇ好きだった」とし、「外国の人が見ても分かるネタ」だと高評価。

ガクヅケのネタは“とある事情(下ネタ)”により、いかちゃんがいたら最下位だったかもしれない

新ネタを8本作り、さらにゲストでありながら1位を獲得したガクヅケ。文句なしの結果に大きな拍手が起こり、ライブは終演。『新参者』は、ネタを観るだけでなく真剣な講評まで聴くことができる贅沢なライブである。第4回の開催が待ち遠しい。

人力舎主催ライブ『バカ爆走!』は、毎月6日間開催されている。緊急事態宣言のため5月は中止だが、6月以降に再始動を予定(情勢によるため、最新情報はHPを確認)。6月の『バカ爆走!』では、人力舎の新所属芸人発表も予定されている。

『新参者』主催の竹内ズ・がまの助は、コラム「たのしい主催ライブ」で“主催ライブ”に対する想いを綴っている。本ライブレポートと併せ、こちらも是非読んでみてほしい。

また、竹内ズは今後も主催ライブを実施予定。最新情報は、がまの助または竹内のTwitterをチェックしよう。

●がまの助Twitter:https://twitter.com/Gama7727
●竹内Twitter:https://twitter.com/shinjyotsuyoshi

撮影・文:堀越 愛

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