《ドンデコルテ インタビュー》もう失敗するわけにはいかない。結成6年でM-1決勝進出!「優勝したら、戦った人たちにお辞儀してから喜びます」

NSC14期の渡辺銀次と、19期の小橋共作。5年差の先輩後輩コンビ・ドンデコルテは、結成から6年で『M-1グランプリ』決勝への切符を手にした。コンビ歴だけを見ると順調に見えるが、二人には紆余曲折の過去がある。

2026年1月24日の単独ライブ『こびりつく』は、現時点ですでに完売(立見席販売中)。注目度急上昇中のドンデコルテは、『M-1グランプリ』決勝を直前に控えた今、なにを思うのか。

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決勝進出決定の瞬間

———M-1決勝進出おめでとうございます。決勝進出が決まった瞬間の気持ちから聞かせてください。

渡辺銀次(以下、渡辺): 本当にびっくりしたし、リアクションできませんでした。準備不足でしたね。

小橋共作(以下、小橋): 一発目に呼ばれたんでね。

渡辺: 「よっしゃ!」とか言えば良かったと思っていましたね。でも「いや、俺にはできねえか」とかも考えて。

———驚かれたということですが、準決勝での手応えはどうだったのでしょうか。

渡辺: 手応えはあったんですけど、手応えは去年もあったのでわからないなと。この感覚を全部信じられるわけじゃないなと思っていましたね。

小橋: 1番目に呼ばれたのはびっくりしましたけど、めっちゃ嬉しかったですね。僕はちゃんとガッツポーズしているし。手も叩いてね。

渡辺: えっ音まで出したの?あれは若くないとできないんですよ。

小橋: 俺も若くないよ。

渡辺: でもできたんだ。

小橋: もっと大きな声で「よっしゃ!」と言おうとしたんですけど、負けた人たちの姿が目に入って変な声が出ました。

渡辺: ……と考えると、サッカー選手って変ですよ。ゴール決めた後、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル代表FW)はすごい喜びますけど、決められた人のこと考えたらできないよ。

小橋: 変だね。

渡辺: うれしいのもわかるんだけど、「負けたことないの?」って思っちゃう。

小橋: 僕は野球が好きなんですけど、最近のプロ野球選手はホームラン打ってもガッツポーズしなくなってるんですよ。打ったってことは、打たれた人がいるわけだからね。

渡辺: あの場で喜ぶには、失敗体験が多すぎますね。撮られてるんだからやれやって話なんですけど、できなかったですね。喜んではいるんですけど、それを表現できないんですよ。敗北した人がいない場だったら喜びますよ。だからもしM-1で優勝したとしても、戦った人たちにお辞儀してから喜ぼうかなと。

———素晴らしい姿勢ですね。

渡辺: だってさ、めっちゃ悔しいぞ、あれ。

小橋: そうだね、優勝者発表のときって、後ろに芸人たちが集まってるもんね。負ける人がいなければ喜べるんだったら……彼女できたとか素直に喜べるかもしれないですね。

渡辺: ひとりのことだったら喜べるかもしれないですね。彼女とか、飯が美味くできたとか、そういうのですかね。

小橋: ただ、彼女ができたとしても、その方に過去フラれた人もいるわけじゃないですか?

渡辺: たしかに。まぁ、それは、目の前にその人がいなければ……。

小橋: なるほどね(笑)。

本番はいつも通り楽しくすごす

———M-1グランプリ決勝まで1週間を切りました(12月15日取材)。今の率直な思いはいかがでしょうか。

渡辺: まだ緊張はないですね。楽しみともちょっと違って、「ちゃんとM-1にふさわしいネタをやりたい」という覚悟のほうが近いです。

小橋: ナベさんがやってくれるので、僕は楽しみなだけですね。もう準備はしてくれてるので、いつも通り楽しくすごす。それだけですね。

———大舞台に立つという緊張はないですか?

小橋: 想像したんですけど、観客は普段のライブくらいの人数だと思うんですよ。キャパで言えば準決勝のほうが緊張すると思うんですよね。あと、僕は、立ち位置的に審査員も目に入らないので。

渡辺: 俺、見えるんすよねー……。

———2024年に初めてM-1準決勝に進出し、この1年はネタを磨いてきたと思います。どういう想いを抱えてここまでやってきましたか?

渡辺: ネタでいうと「良いものができたな」という感じはありましたね。2本つくったんですけど、どっちも良いので。

小橋: 僕も、ウケは感じますね。今年は芸人さんに「めっちゃ良いね」とか「多分決勝行くよ」とか言ってもらうことが多くて、どんどん自信につながっていきましたね。

———周囲の芸人さんで、特に決勝進出を喜んでくれた人は誰ですか?

渡辺: 僕は、カゲヤマ益田ですね。ずっと、益田の家に住まわせてもらってるんですよ。あと、益田の家で一緒に暮らしていた相席スタートの山添寛とか……いわば“兄弟”たちですね。芸人を辞めた相方からも連絡ありました。

カゲヤマ益田の実家“益々荘”に住むメンバーの公式YouTubeチャンネル『それいけ益々荘

———益田さんのご家族も喜んでくれていそうですね。

渡辺: もちろんそうですね。「良かったね」というのと、「さみしくなるね」の言葉をいただきました。そろそろ益々荘からの卒業も近いなと。

小橋: 卒業は決定なの?

渡辺: いや、まずは後任を見つけてから。家は人が住まないと悪くなるという側面もあるので、空けるわけにはいかないですね。

小橋: バイトのシフトみたいなこと?

渡辺: いや、そんなネガティブなことではなく。嬉しいことだからね。

———後任の候補者はいそうですか?

渡辺: 過去にはからし蓮根の伊織ラッキーも住んでいたので、大阪芸人が上京したときに家見つかるまでとか……。ただ、“ご両親に迷惑をかけない若手”となると急激にいなくなるんです。「先輩の実家に住んでも良い」って言うヤツはご両親に迷惑かけそうなので、難しいんですよね。益田・益田母・益田父と、3次面接までありますから。

小橋: 結婚して金ない後輩に、家族で住まわすっていうのもありよね。

渡辺: うん、それくらい広いからね。全然住めますし、子育てもできます。

———小橋さんのまわりでは、誰が喜んでくれましたか?

小橋: みんな声かけてくれたんですけど、一番喜んでくれたのはタモンズさんとかトットさんとか、M-1を卒業した先輩ですね。同期はまだ戦っているんで、喜んでいても「俺も」という気持ちがありますから。

紆余曲折を経て今のスタイルに

———M-1に関しては2024年に準決勝進出、2025年は決勝進出と結果が出ていると思います。それ以前の活動はいかがだったんでしょう。

渡辺: 劇場ではウケていたので、そういう意味では「うまくいっている」と言うことも可能な感じでした。

小橋: 2022年と2023年のM-1は、2年連続三回戦で落ちてるんですよ。でも、自分たちのなかではその2年間も手応えはあったんです。だから、なんなんだろうなって。

———ネタは早い段階から手応えがあったんですね。

渡辺: 最初はユニット組んで、ネタがウケてから正式に組みましたから。「もう失敗するわけにはいかない」というおじさんの動きですよね。

———小橋さんからのアプローチで結成に至ったそうですね。結成前、渡辺さんにはどういう印象を抱いていたのでしょう。

※参照:ドンデコルテ結成の話 M-1 2019から2020に向けて(小橋note)

小橋: 「すごい上の先輩」って感じです。お試しコンビで何人かとやったんですけど、全員面白いのに、俺とやっても掛け算にならなかったんです。でもナベさんとやったときは掛け算になっていると感じたので、「やりたいな」と。

渡辺: 今の形になるまでも紆余曲折がありました。ふたりとも強いツッコミが好きだったんで、小橋にもそれを求めていましたけど、強いツッコミのときはウケなかった。やる人間のキャラクターに合う・合わないがあるなと。

小橋: 僕はブラックマヨネーズさんに憧れていたので、本当は小杉さんのツッコミをやりたいわけですよ。危なかったな(笑)。

———渡辺さんが演説のように喋り続けるネタのイメージが強いのですが、あの形にたどり着いたのはいつごろだったのでしょうか?

渡辺: 4年前にはあの形ができていたんですけど、今とはやり方やしゃべり方が違いました。過去、朝にやる寄席があって、お客さんも我々もちゃんと目がさめていない、声も出ないくらいの時間帯だったんですよ。「元気良くやったらスベるな」と思って、落ち着いてやったらすごいウケたんです。それが最初でしたね。それで「使える」とわかって、M-1用に直した感じです。

小橋: 元々ウケるネタではあったんですけど、ウケきらないネタで……本当に、偶然の産物ですね。

———今年、決勝に行けたのはなぜだと思いますか?

渡辺: 恋愛をテーマにしたネタじゃなくなったことはでかいでしょうね。恋愛ネタも悪いことではないんですけど、M-1的ではないというか……。恋愛は全員が共感できるので、安易な道ではありますよね。決して、悪いことではないんですけど。

———ネタづくりをしている方ならではの視点ですね。

渡辺: いろんなネタを考えて、そのなかからM-1に合うものを研ぎ澄ませていく感じですね。

小橋: だから、恋愛のネタ自体は今年もいっぱいありますよ。

渡辺: ありますあります。恋愛相談をするような“しゃばみ”と私が正反対なので、相性良いというか。しゃばいことを求められるというか。

———最近、お笑いで「しゃばい」という言葉をよく聞くようになりました。

渡辺: 使われますね。おそらく、(ゆにばーす)川瀬名人が最初につかったんですよ。結局は価値観の問題なので、どこまでがしゃばいとするか人によって違いますけどね。

———僕から見ると、ドンデコルテさんはしゃばいの対極にいるように思います。

渡辺: そうかもしれないですね。だからこそしゃばい話題が似合うし、お客さんが一気に卑近に感じるというか。卑しく近いと書いて、卑近。

小橋: 「ひきん」……。どういう意味なんだろう。

渡辺: あとで調べてください。

小橋: あ、はい。

銀次には拒否権がない

———M-1決勝後、自分たちはどうなっていると思いますか?

渡辺: 必ず仕事は増やしていただけると踏んでいるんです。増えるに値する器を持っているかどうかが見られるんだろうなと思っています。あとは、めちゃくちゃ忙しくなったときに健康でいられるかどうかが一番心配。メンタルもフィジカルも健康でいられるのか、それがわかる時期になるんじゃないですか。

小橋: コンビ共通して言えることなんですけど、“同じこと”を言いたくないんですよ。楽屋でしゃべったことを舞台でやらなかったりする。リハでやってみてウケたらそれをやるべきなんですけど、やりたくないんですよね。

渡辺: 甘いんだよね。まだプロフェッショナル力が。

小橋: そう。でも決勝後は同じような質問もいっぱいされると思うから。そこのプライドは捨てていいはずなんですけど。

渡辺: 慣れないと。

小橋: エピソードトークも何回もしないといけないだろうけど、できない可能性があります。

渡辺: 決勝後は、そのあたりも調べたいですね。

小橋: 賞金の使い道とかも何回も聞かれましたけど、全部違うこと言っちゃった(笑)。一貫性がないやつと思われるかもしれないですけど、そういうことじゃないですよ。

———体力的な心配のお話もありましたが、無理は利くほうですか?

渡辺: 忙しいことより、寝られないことへの恐怖がありますね。めっちゃ寝るタイプなんですよ。仕事でいろんな場所に行くのは良いんですけど、家に帰って寝られるかというところ。ここを削られたらイライラするかもしれません。

———メンタル的にはどうですか。

渡辺: 有吉弘行さんも言っていますけど、売れるって「馬鹿に見つかる」ということですから……僕はエゴサは怖くてできないタイプなんですけど、今後はより一層SNSから離れないとなと思います。

小橋: 本当に大事だと思う。

渡辺: 山添がX辞めたのも、マジで羨ましくて。

小橋: SNSいらないくらい売れればいいよね。

渡辺: そう!そこまで行けたら良いですね。

———小橋さんは、忙しくなることに不安はないですか。

小橋: これまで忙しかったことが一度もないので、未知数ですね。

———エゴサはしますか?

小橋: 僕はしますね。

渡辺: 小橋から報告してくるんですよ。聞きたくないのに。

小橋: 聞きたくないのはナベさんの勝手だけど、言うのも僕の勝手なので。

渡辺: 僕に拒否権がないのは変ですよね。

友だちの弟

———渡辺さんの同期(14期)は、個性豊かなメンバーが揃っていますよね。特に影響を受けた同期はいますか?

渡辺: 全員ですよね。具体的に誰かの名前をあげるのは、(あげなかった人を)「こいつは違う」って言ってるみたいで、嫌なんです。山添もそうだし、ダイタク、ネルソンズ、カゲヤマ……THE GREATEST HITSのフレンドリー田崎ってやつもいます。(EXIT)りんたろー。なんかは、いち早く売れましたしね。

———近い存在が先に売れることに対し、焦りはなかったですか?

渡辺: ありましたけど、出さないようにしてました。

小橋: 焦りを出しちゃったほうから負けていくからね。

渡辺: 負けるというより、焦った振る舞いをする先輩たちを見たときに嫌だったんです。腐り芸みたいのがありますけど、そうではなく、楽しくお笑いをやってる振る舞いをするようにしていました。悔しさはありますし、「クソが」という思いはありましたよ。

———これまで、お笑いを辞めようと思う瞬間はなかったんですか。

渡辺: ありましたよ。今は『(株)プリッとChannel』をやっているあごキングとSasukeは同期なんですよ。2~3年目のとき、ざしきわらしというコンビだったんですけど、コーナーライブでコロッケさんのモノマネしているのを見て息できないくらい笑ったんですよ。そのときは敵わないなと思い、辞めようかなと思いました。でも辞めなかったのは、普通に次の日もやんなきゃいけないことがあるからですよね。向き合う時間がなかったおかげかもしれないです。

———渡辺さんの同期の多くは、M-1からは卒業されています。寂しさを感じることはありませんでしたか?

渡辺: それは、神保町の劇場にいるときに耐性がついていますから。

小橋: ひとりで戦うことにね。

渡辺: ひとりで戦うとか言うなよ。でも、本当にそうなんだよな。本当は寂しさを感じていたと思いますけど、麻痺させてる感じかな。だから、漫才劇場の所属芸人が渋谷・神保町一緒になって本当に嬉しかったんです。同期のカゲヤマとダイタクがいるんでね。

———劇場で一番上というのは、嫌なものなんですね。

渡辺: 本当に嫌ですよ。

小橋: 芸人って甘えん坊が多くて、兄さんが好きなんですよ。

渡辺: そう。兄さんがいると、なんにもプランがない状態で動きはじめられるんですよ。最後は頼れば良いやという勝手さが通用するというか。助けていただける。

———渡辺さんはかなりしっかりもののイメージですが、それでも一番上は嫌なものなんですね。

渡辺: もちろんです。次男ですから。銀次という名前が示す通り。金太の弟の感じですから、銀次は。

小橋: 末っ子次男。

———小橋さんは先輩と組んでいるので、渡辺さんに甘えることができるのでしょうか?

小橋: うーん。ないと言えば嘘になるかもしれないですけど、コンビなのでそこまでないですね。ただ、5年上なので、ナベさんの同期の先輩たちに弟みたいな感覚を持ってもらってる感じがするんですよね。特にカゲヤマさんとか。

渡辺: 友達の弟みたいな。

小橋: カゲヤマさんとかがその感じでかわいがってくれるので、すごい助かりますね。嬉しいし。

お客さんの前でやる漫才が楽しい

———小橋さんの世代だと、ネタではなくSNSで脚光を浴びている芸人さんも多いですよね。そのなかで、ネタに集中できた理由はありますか?

小橋: ただ、SNSに向いていなかっただけです。YouTubeやラジオを自主的にやっていた時期もあったんですけど、ふたりだけの空間でやってもなにも楽しくないんですよ。

渡辺: 自主でやっている人たちって、本当にすごいですよ。ニューヨークがYouTubeでやっているニューラジオも、聞いているスタッフさんがいるじゃん。笑かす対象が現場にいるってマジ大事。ふたりっきりだとせっかく面白いやり取りでも、「面白かったのにな……」ってなるんです。ラジオの向こうで聞いてはくれているんですけど、生で感じることはできないですから。

小橋: ひとりでTikTokやってバズってる人いるじゃないですか。ひとりでセットして毎日やっているって、本当にすごいですよ。

渡辺: 想像力が豊かだよね。面白いのができて、「これが世界中の人たちに伝わるんだ」って想像できるわけだから。そこが我々にはないんですよ。

小橋: 僕らは、お客さんの前でやる漫才やライブが楽しかったってだけですね。

———歳は少し離れていても、おふたりの感覚は近かったんですね。

渡辺: かもしれないですね。

小橋: YouTubeで稼いでいる同期を見て、僕から「YouTubeやろう」と言ったこともあるんですよ。でもナベさんは、この未来が見えていたから「えー」という感じで。

渡辺: だから、YouTubeをはじめた当初は企画をひねり出してやっていました。

小橋: 俺も編集を一応やってみようとしたんですけど、本当に成長しないんですよ。楽しくないから。

渡辺: うん、やんなきゃと思ってやっているだけだからね。

小橋: タイトルが大事とは聞いているんですけど、適当につけたりするようになって。

渡辺: アップして待つ時間とか、ギガファイル使う時間が本当に嫌なんだよな。「今日YouTube撮る日か」と思うと、メンタルやられんだよ。不登校の子が思う「行きたくねえな」という感じになっていました。

小橋: 今後やらないというわけではないですよ。それこそ、スタッフさんがついてくれればちゃんとやる可能性もあります。

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ライブ「小橋家」?

———小橋さんが刺激を受けた芸人はいますか?

小橋: オダウエダとか素敵じゃないかあたりですね。オダウエダは元々大阪なんですけど、デビューからこっち(東京)にいるからほぼ同期っていう感覚なんですよね。EXITの兼近もいるけど、もう見えないくらい売れてるので刺激とかはないです。だから、オダウエダが『THE W』で優勝したときにすごく刺激をもらいましたね。

渡辺: お前、女王に叙々苑食わせてもらったんでしょ?

小橋: あれは植田の優しさであり、防衛本能で。「叙々苑を食ったことがない」というテーマのネタがあって、植田はそれを「めちゃくちゃ面白い」と評価してくれていたんです。だから、「このネタを潰さなければ」と僕に叙々苑を食わせたんですよね。リアリティをなくするためにね。それからそのネタはあんまりやってないです。

———オダウエダさんとはネタのタイプが全然違いますが、それでも刺激を受けるんですね。

小橋: ライバルではないですけど、刺激はありましたね。あと、YouTubeで跳ねてるエレガント人生とか。中込悠とはバイトを一緒にやっていて、食えるようになってバイト辞めるところも見ましたから。俺も早く食えるようにならないとなと思いました。

———小橋さんはお兄さんも芸人ですが、そこで刺激はないんでしょうか。

小橋: お兄ちゃんは刺激にはならないですね。

渡辺: なんで?

小橋: お互い頑張ってるからですかね。

渡辺: じゃあ刺激になるじゃん。まず名前出そうよ。

小橋: そっかそっか(笑)。プロダクション人力舎所属で、魂ずのコバシって言うんですけど。頑張ってるのも知っているし、ウケているのも見るから。刺激というか、家族も一緒に頑張ってるなっていう感覚ですね。負けたいとか勝ちたいとか、お兄ちゃんに対してはないんで。

渡辺: でも俺は「小橋のお兄ちゃん」として見るじゃないですか。もっと活躍してほしいと思っていますよ。面白いですから。

小橋: 悔しいのが、兄弟でコラボしたらお客さん喜ぶと思っていたんですけど、僕らの主催ライブにお兄ちゃん呼んでもお客さんが全く増えず(笑)。

渡辺: コラボの旨味みたいなものがなくてね。

———吉本と他事務所(プロダクション人力舎)で兄弟って、珍しいですよね。

小橋: 今やったらどうなのかな。ライブ「小橋家」試してみたい。

渡辺: そういうタイトルに寄せたらあるかもな。

単独ライブ『こびりつく』に向けて

———あらためて、2026年1月24日開催予定の単独ライブ『こびりつく』についても伺わせてください。単独に向けて、どんな想いですか?

渡辺: 毎年1月と6月に単独ライブをやっているんですけど、『こびりつく』の開催を決めたときはM-1決勝に行くなんて思っていないとき。だから、当初と想いは変わりましたね。決勝に行った人間にふさわしいものにしなければと、背負う量が増えましたね。

———図らずもハードルが上がってしまったというか。

渡辺: 自分のなかでですけどね。単独ライブだから、お客さんは「ドンデコルテを見たい」と思って来てくださるんですけど、自分のなかでハードルができちゃいましたね。

小橋: 求められていることをやったほうが良いのか、どうなのか。僕らは、漫才だけじゃなくコントもやるんですよ。

渡辺: (コント師の主戦場である)YOSHIMOTO ROPPONGI THEATERでも、出番もらっていたんです。

小橋: 良い意味でお客さんを裏切るなら……漫才はやらず、60分コント?

渡辺: 「60分コント」は、ネタ書いてないほうが言って良い言葉じゃない。

小橋: じゃあ、それはないということですね。

渡辺: お客さんの層がバラバラになると思うので、求められているものに応えられるかどうかはちょっと不安ですね。でも、絶対にやりたいことはあります。

———劇場のチケットも完売し、注目度も上がっていますね。

渡辺: 渋谷(よしもと漫才劇場)で完売するなんて初めてですよ。

———うれしいのか驚きなのかどういう感情が近いですか。

渡辺: いやー、「長かったな」と。

小橋: びっくりでしたよ。今年1月に開催した単独ライブは、M-1敗者復活から2週間かけてゆっくり売り切れたんですよ。

渡辺: それは神保町(よしもと漫才劇場)のほうで、渋谷よりも劇場が少し小さいんです。

小橋: そういうことを繰り返してきたので、決勝行ったとしても……

渡辺: 放送日に完売すれば良いなと。

小橋: という感じだったんですけど、決勝決まってすぐに「完売しました」と連絡が来て、すげえなと思いました。

———劇場完売に加え、さらに配信が売れる可能性もありますもんね。

渡辺: 配信を売るためにも、M-1でスベるわけにはいかないですね。

———どんなライブを見せたいかは決まっているのでしょうか。

渡辺: いろんなネタをやりたいですね。コントもですけど、初めてのお客さんにご挨拶もしないといけない。我々は寄席も大好きで、初見のお客さんにウケるような漫才・コントを見せたいので、そういうのをつくりたいです。あとは、なぞなぞとか、お客さんとコール&レスポンスするようなネタがひとつもないので、そういうのもつくりたいなと思います。シマッシュレコードさんという方がいて、お客さんからお題をもらって歌うというネタがすごいんですよね。ああいうのを持っておきたいです。

———時間がないなか、やることが山積みですね。

渡辺: 本当ですよ。でも、今単独に向き合ったら自分含め全員から怒られますから。

———最後に、これから配信を購入するか迷っている方へメッセージをお願いします。

渡辺: タイトル通り“こびりつく”単独にしたいなと思います。こびりつく映像って嫌なもんばっかりなんですよ。それを変えることは不可能だけど、嫌なだけじゃなく我々の映像を追加するというか……。

小橋: 配信の良いところは、家でお酒飲みながら見られることなんですよ。だから、「バカだこいつら」とげらげら笑ってもらえるものにしたいですね。

渡辺: 視覚的にもな。「聞いてなかった、今」ってなっても戻らなくて良いようなね。

小橋: そうそうそう。

渡辺: あと小橋が沖縄出身なんですけど、それを全面に出したがらないんですよ。ただ、三線は持っているんです。

小橋: 三線もね、たまには弾いたりしてますけど……。沖縄の宝になりたいんで、僕は(笑)。

渡辺: 三線、弾かないなら俺に貸してくれ。練習するんで。三線もお楽しみに。

小橋: 三線もやりますね、じゃあ(笑)。

PROFILE

ドンデコルテ

左:小橋共作
右:渡辺銀次

★公式プロフィール:https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=7310
★公式YouTubeチャンネル:ドンデコルテ公式ch

文:まっつ

編集, 撮影:堀越 愛