『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。
今月のテーマは、「『R-1グランプリ』について」。
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theme.『R-1グランプリ』について
ver.ぐんぴぃ

R-1グランプリ、今年は特に面白かったと評判ですよね。今井らいぱちさんのネタで腹を抱えて笑いました。ジャルジャルさんのIndeedのCMまでかなり面白かったです。
僕は参戦していないので、大会の中身に対してあまり語る資格はないかなぁと思います。
ピン芸って本当に豊かで素晴らしいですよね。
僕は街裏ぴんくさんの漫談をみて芸人になろうと踏み切った、みたいなところがあって。
ぴんくさんの嘘漫談の深さ。一人の価値観でしか作られていないから、誰にも邪魔されないからこそ到達した深淵に食らってしまって。(当時は)売れてなくてもこんなに面白い人がいるのか!芸術だ!と。芸術なら売れなくても楽しいだろうと開き直らせてくれたのです。ぴんくさんのおかげでこの道を選んでいます。
ピン芸の延長で、一人でやる凄さについて考えることがあります。
小説家の安部公房さんの講演テープを聞く機会がありました。確か「ハリウッド映画がなぜつまらないか」という議題でした。
ハリウッドでは脚本家が一人で物語を考えることは稀です。たくさんの脚本家が知恵を出し合って作品の方向性を決めていきます。多くの手が介入するからこそ、安定したクオリティが担保されています。
しかし安部公房はこの制作スタイルが凡庸化を招くと批判します。会議で話し合いながら作品を作ると、言語化できない部分を作品に投影できない、と。
会議で大人数を納得させられる物語は“間違いがない”。しかし、言葉にならない無意識の領域を取りこぼしてしまうのだと。それじゃあつまらないから、なるべく一人で考えるべきだと安部さんは語っています。たしかに安部公房作品は無意識が昇華されている気がします。
海外のアニメーターが宮崎駿に驚愕するのはそういう点ですよね。一人の頭で突き詰めて考えているからこそ、訳の分からないものが映像に溶け出る。「喋らないカオナシをメインの敵にしたいんだけど」って会議だったら却下されそうだもんなぁ。「庵野はどうだろうね」なんて無理。
閑話休題。ピン芸人がもっと人気になればいいのに、といつも思います。
海外のスタンダップコメディアンが、1回の公演で何万人も動員して。ネットフリックスと契約して何十億も稼ぐ、みたいなの、超かっこいいですよね。
今はコンビ芸人の関係性がフォーカスされがちで。ピンは売れないよ、と嘆くシーンを楽屋で見かけます。でも僕は全てのピン芸人を尊敬しています。自分にはできないので。
僕はピン芸から逃げ続けています。芸歴はもうすぐ10年目になりますけど、ピンネタは一度しかやったことがありません。まだ健在だった竹内ズにピンネタを見せる、みたいな企画で。確か、漫談のような、ギャグのような、宴会芸のようなことをした記憶がうっすらあります。そんなんでも怖かったです。
R-1グランプリも出たことがないです。「ちょうどドラマの時期と被ってるから」とかなんとか言い訳して。
もうね、覚悟がないんです。白状します。脳みそを見られるのが恥ずかしい。どういう価値観か、とか。さして大した人間じゃないことがバレることが怖いのでしょうか。怖いのでしょう。芸人辞めちまえ案件です。
でもね、やらなきゃダメだなと。ネタをやるのが、多分そんなに好きじゃないんだと思います。でも
ネタを考えないと生き残れないなって本気で感じます。
こたけ正義感が10年後のことを考えて漫談を始めたと語っていました。自分も、一人で戦える何かが必要でしょう。
ver.土岡

R-1グランプリ、今年も面白かったし、今一番「どう変化していくんだろう」と目が離せない大会になっている。去年の決勝前にYouTubeに公開されたファイナリスト密着で、友田オレが「もうR-1をいじるノリは終わらせる」と言っていた。ウエストランド井口さんがM-1の舞台で発したR-1へのイジりは痛快だったけど、そこからのR-1は「もうそんなことは言わせないぞ」という意思に燃えていて、大会自体が世間と戦っていてカッコいい。R-1グランプリという主人公が目的に向かって走るドラマを帯びている。そのために、ピン芸を、ピン芸人をリスペクトする熱さがたぎっている。
大会キャッチコピーの「わかってほしい。いや、わかられてたまるか」が、ピン芸人の異常性を表していて素晴らしかった。「そうそう、そうなんだよ!」と、強く思った。みんなに面白さを伝えて笑わせたい気持ちと、誰にも理解できないとこまで行って出し抜きたい気持ち。後者は、芸人だけじゃなく全人類を「自分と同じ人間なんだからライバルだ」と思ってる節があるから生まれる感情なんだろうか。ピン芸人は、どこまでも独りよがりになれるという意味で、漫才やコントよりも圧倒的にそのキャッチコピーが似合う。自分はR-1に何度も出場して2回戦止まりという芳しくない戦績。今回は出場しなかったがいつか再挑戦したい気もするし、R-1に出場しなくとも、ネタに限らなくとも、「ひとり芸はやるべき」とR-1が思わせてくれた。
最終決戦に残った3名の方はみんな、1人だからこそ、複雑なことをシンプルに見せることができている、そんな気がした。今井らいぱちさん、パワポが流れていく速度と、取り繕うダサさにめちゃ笑った。らいぱちさんがボケかと思ったら振り回される側で、でも調子に乗って自業自得な姿はやっぱりボケでもあって。それが同時に存在するのは演者が一人だからだと思う。お抹茶さんは、バカバカしいようで人を出し抜き続けているのがすごい。ポップで分かりやすく見えるけど、実は全然分かりやすくないことをやってると思う。それを分かりやすいと思わせるって、特殊能力だ。ドンデコルテ銀次さんも、ピンだから伝わるニュアンスがあったと思う。世の女性のためと言いながら実は自分のための演説であることを誤魔化しながらしゃべる、という感情の機微。あれをコンビでやったら相方が全部取り締まらないといけなくて、ドンデコルテさんならそれも絶対面白いんだけど、ピンだと取り締まりされない面白さを浴びることができる。3名ともピンネタだから行ける入り組んだ世界まで行っていて、一人だからストレートに伝わってきた。
コンビやトリオを組まずに一人でやっているピン芸人は、芸人の中でも一際、自分の世界を極めすぎて異常になっていく人たちだと思う。でも、そんな「わかられてたまるか」性をそもそも持つお笑いを一人じゃなく誰かとやっているコンビ・トリオ芸人の方が変で、ピン芸人こそ正しい形とも思える。そんな哲学的すぎる生き物の大会を20年以上続けているR-1は深い。
PROFILE

タイタン 所属
左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗
★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
★公式YouTube:春とヒコーキ / バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】
INFORMATION

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