個性派ピン芸人同士のユニット・都トムはくっつきすぎず、離れず友達のまま〈GEININ DATABASE file.6 都トム〉

編集部が「次のスター」として注目するお笑い芸人に話を聞く新連載『GEININ DATABASE』。

芸歴や事務所に制限を設けず、今注目したい芸人さんを取り上げる新企画です。お笑い専門メディアを掲げるWLUCK PARKだからこそ、いち早く次のスターに注目したいと考えました。

第5回に登場していただくのは、都トムさん。

フリーで活動中の可児正さんとジンセイプロ所属の高木払いさん。それぞれがピンの活動で注目を集めるお二人のコンビ結成は話題となりました。『第5回AUN』にも出場していただく都トムさん。謎多き注目コンビの結成から現在地までをお伺いしました。

結成より先にコンビ名があった

ーーー都トム結成について「あの可児正と高木払いが組んだ!」と、いちファンとしてオオッ!となったのですが、組んだ瞬間の話を聞かせていただけますか?

可児正(以下、可児): 僕が今年の『R-1』で1回戦敗退した日に、その勢いで高木さんに組みませんかと持ちかけました。

高木払い(以下、高木):そうでしたね(笑)。

可児: 賞レースを『R-1』だけに絞っちゃうのもあまりよくない気がして。『M-1』も『キングオブコント』も出れたほうがピンとしてもいい方向に向かうと思ったので、組みましょうと。

ーーーじゃあ、結成日は『M-1』に申請している通りなんですね。

高木: 結成日は適当に書いてるコンビが多いと思うんですけど、僕らはちゃんとそのまま。

ーーーコンビ結成前から仲は良かったんですか?

高木: よく遊んでました。ネタもやってないのにふたりのユニット名だけ先にあったんですよ。今は「都トム」っていう名前ですけど、もともとは「都会(とかい)のトムソーヤ」っていう名前で。

可児: 『都会(まち)のトム&ソーヤ』っていう作品があるんですけど、当時は知らなくて。

高木: 新宿にある宇宙村というお店にふたりで行ったときに、でっかい隕石が飾ってあるんですけどその前で一緒に写真撮りなよみたいなノリになって。従業員のおじさんが写真を撮ってくれることになったんですけど、僕らが並んで写真撮るよってときに急に「お~都会のトムソーヤだねえ」ってことをおっしゃって。

可児: それまでふたりともマスクしてて、写真撮るときにマスクを外したらその瞬間に「都会のトムソーヤ」だって。

高木: それがやけにしっくりきたというか。

可児: 店員のおばさんとかもそうだそうだ!みたいに言ってくれて。満場一致で「都会のトムソーヤだ」っていうから、ネタをやってないけどふたり揃ったら都会のトムソーヤだってふざけて名乗ってました。

高木: そのまま賞レースに都会のトムソーヤでエントリーしたんです。『M-1』って通過するとTwitterにコンビ名が発表されるじゃないですか。僕らの名前もTwitterにあがったんですけど、そしたら本家の小説のほうの『都会のトム&ソーヤ』ファンの方がそれを見つけて。反応をみたら、あれ、ちょっとあんまりいい印象を持たれてないぞ、と。

可児: 僕たちもそこで初めて『都会のトム&ソーヤ』っていう児童文学があると知りまして……。僕もそっちのファンの立場だったらそう感じると思うんですが、あまりいい気分はしないかもなと。

高木: それで、名前をぎゅっと短くして「都トム」にしました。実際フルで言うとちょっと長かったし、都トムって略されて呼ばれたり自分らでも言ったりしてたんで、結果としてちょうどよかったです。

面白い人は面白い。芸人もお客さんも

ーーーちょっと全然話を変えてしまうんですけれども、周りの芸人さんでこの人は強いなみたいな人っていますか? ネタとかキャラとかとにかくすごいなと感じる人。

可児: ワタナベの先輩なんですけど、トリオのぎょねこさん。単純にネタが面白いのはもちろんなんですけど、ぎょねこさんは小学校から幼馴染の3人で。思い出の深さには敵わないなと思います。僕らも幼馴染っぽい感じはあるんですけど、仲良くなり始めてからまだ2年ぐらいなんで。

高木: かなり近場になってしまうんですけど、牛女・佐野さんはやっぱりすごいなって身近に見てて思いますね。毎月新ネタを10本程やるライブをされているんですけど、その10本のクオリティを見るともう地肩が違うというか。どうしてもいっぱいネタやると、イマイチのネタって出てくると思うんですけど、そのレベルがめちゃくちゃ高いというか全然イマイチじゃなくて。面白くないことを思いつかないんじゃないかと思うぐらい突出していますね。

高木: ネタだけじゃないですね、noteに変な気持ち悪い文章とかを載せられてるんですけど、それも漏れなく面白くて。本当につまんないことが体の中にないのかなって思います。

可児: おしっこに見えるスポーツドリンクについてずっと考察してるnoteがあるんですけど、面白いです。

高木: 僕なんか、どうにか自分の面白くない部分を表に出ないように隠しているんですけど、そういうのがそもそもないのかなって。本当に芸人初のパターン(笑)。佐野さんは面白いです。もちろん可児さんも面白いですけど。

可児: いらないですよ(笑)。僕はガクヅケの船引さんをずっと尊敬してて、会うと緊張してしまっていまだにちゃんとしゃべれないですね。感性が近いっていうのはおこがましいですけど、 なんだか他人だと思えなくて。僕の本当の兄よりも兄っぽいというか。

高木: 前にライブの打ち上げがあったときに、可児さんと船引さんが隣になったんですけど、可児が普段飲まないお酒を浴びるように飲んでて。

可児: お酒の力を借りないと船引さんとしゃべれなくて。真っ赤になりながら、勇気を振り絞って「広末涼子に似てますよね」ってそれだけは伝えることができました。このあいだ単独ライブをやったときに、船引さんから「あの単独ライブの映像観せてください」ってDMが来たのも、すごいうれしかったですね。

高木: 僕は船引さんとは仲良くしてて。船引さんが64のドンキーコングをクリアするまで僕がずっと観てるっていうのをやってた時期があるぐらい、仲良く遊んでました。

ーーー船引さんって割と後輩付き合いがよいというか?

高木: いや、たぶんそんなにないほうだと思います。

可児: 高木さんはね、そういう人と絡むのがうまいんですよ。

高木: 面白くていい人には、行かないともったいないと思うんです。すごくいい人で面白い人って、基本行列ができるんです。行列できてないって言ったらあれですけど、船引さんはもう知る人ぞ知るみたいな感じなのかなって。すごい仲良くさせてもらってて、今も普通に遊びたいぐらいですけど。

可児: でもなんか面白いお客さんに面白いって、Twitterで感想で書いてもらうのもうれしいですね。一目置いてるお客さんに面白いって言われると。

ーーー一目置いてるお客さんですか?

可児: 僕、お客さんのアカウントをフォローするくらいTwitterを見てるんですけど、面白いお客さんっていうのがいて。

高木: 信頼できるというか、この人の感想には一貫性があるなみたいな。可児さんの中でこの人は、というお客さんが何人かいるみたいです。

可児: 実名出すのはあれですけど。noffaさんとかですね。う〜もさんとか(笑)。

高木: お客さんの名前をそんなに列挙してる記事ないよ(笑)。ドキッとするでしょ、こういう記事も読みそうだし。

ーーー面白いお客さんというのがいらっしゃるんですね。

可児: そう僕、芸人とお客さんを分け隔てなくフォローしてて。記憶力もいいんで、全部覚えてるんですよね。この前も浅草の隅田川をふたりで歩いてたら、いつも来てくれてるお客さんとたまたま会って。お話ししたんですけど、僕がその人の情報知りすぎてて、引かれちゃいました。

高木: めちゃくちゃ引かれてましたよ。本当にお客さんの出身地とか知ってるんで。

ーーー嬉しさ半分、怖さ半分。

可児: 出身地知ってる上にすごい自然に情報を会話に入れ込むんで。「あ、でも福島も寒いですよね」みたいな。それが気持ち悪いと思います(笑)。

お笑いが楽しすぎる!

ーーー可児さんはお笑い芸人としての経歴が珍しいと聞きました。

可児: フリーの期間と事務所に入ってた期間とまたフリーになってが、それぞれ1年とか半年とかのスパンで。RTAじゃないですけど、1面に使う時間がほかの人より短かったんです。

高木: 養成所から芸人になる人と、学生お笑いから芸人になる人と、大喜利界隈から芸人になる人、この全部を網羅してる唯一の数少ない芸人と可児さんは言われてて。養成所に入って、学生お笑いもやって、大喜利界隈でも活動していました。

可児: 意外とその3つやってる人っていなくて。ハチカイの警備員さんも、大喜利と学生芸人はやってるけど養成所は経由してない。大久保八億さんも養成所と大喜利はやってるけど、学生芸人はやってない、みたいな。

高木: この3つをちゃんと全部通ってるのは、本当に可児さんぐらい。

可児: あと意外とすごい社交的なんで。養成所でも他のクラスの人含め、僕だけ全員と仲良かったです。

高木: 例外は大学のときだけですよね。

可児: 大学のときは友達がひとりもいなくて。高木さんもそうですよね?

高木: そうですね、僕も大学のとき友達はひとりもいませんでした。

可児: そこが一緒なんですよ。大学が楽しくなかったから養成所に入って、だから今お笑いがすごい楽しいんですよね。

高木: 大学の人たちは、もちろんみんなお笑いがそんな好きなわけじゃないし、特にグループでなにかやったりもしないから友達ができなかったんですよね。4年間塩付けにされた状態から養成所に入った途端にみんな志が同じでお笑いの話もできて。趣味が絶対合うメンバーが揃っていたので、養成所の友達とはいまだに仲良くしています。

可児: お笑いがちょっと楽しすぎて。前にひかるぶんどきさんと3人で遊んだことがあるんですけど、僕と高木さんがお笑いの話し出したらぶんどきさんが「いや、今はもうお笑いの話やめましょうよ」みたいなことを言い出して。僕それで本当に内心キレてて(笑)。

高木: 今はいいじゃないですか、ってよくわかんないですもんね(笑)。

可児: じゃあやめちまえよ!と思って。嫌いなんすよ、オフのときにお笑い芸人はお笑いの話やめようみたいな風潮。

高木: たしかにね。お笑いの話したくないなと思ってても、お笑いの話がはじまったらもう話しちゃう、くらいのなんか感じはありますよね。

ーーー熱いふたりなんですね。

可児: 楽しいだけです(笑)。

ーーーネタの話でバチバチしたりすることはありますか?

可児: まったくないです。

高木: それはそうですね、僕はもう任せてます。

可児: 一番最初に漫才作ったときは、こうしてくださいみたいなことは言いましたけど、それ以降は……高木さんがあれなんですね、セリフを覚えるのが苦手で。

高木: ピン芸って基本的に自分が考えたことやるじゃないですか。だから、ピンネタのときってネタ飛ぶとかがないんですけど。

可児: フリップもあるしね。

高木: そうなんですよ、自分がやりやすいスタイルでやってるので。

可児: 今までの高木さんの芸人人生ってあんまりセリフを覚えるっていうことがなかったんでコンビ組んでそこが大変だったと思うんですけど、今はなるべくセリフを覚えなくて済むようなネタを作ってます。

高木: そうですね。かなり気を遣わせています。

いろんな人と絡んでいきたい

ーーーコンビとしての目標は決まっていますか?

高木: テレビに行けたら一番いいと思います。

可児: そうっすね、ピンの僕のネタってぶっちゃけ、著作権とかの関係であまりテレビ向きではないと思うんです。たまにテレビのオーディションの連絡をいただくんですけど、消去法でネタを選んでる状態なので。コンビだとどのネタも出せるので、そういう意味でコンビのほうがテレビを目指しやすいなっていうのは思いますね。

高木: そこはちょっとお客さん目線じゃないですけど、都トムでテレビとか出たらアツいというか、うれしいだろうなとは思います。

ーーーコンビの方向性のような、ふたりで共通して認識してるものって、他にもありますか?こういうことやらないとか、こういう方向性で行こうみたいな。

高木: 『M-1』の3回戦行けたらいいねとかいうやんわりしたものはありますけど、お互いにルール化してるものは特にないです。僕はそれがユニットのいいところだなと。互いにピン芸人で、そこはドライというか。

可児: たまにもうそろそろ新ネタライブやりますかとか言ってやるぐらいで、それ以上は別に。普通に遊んでるだけに近いです。

ーーー1年後までにやれてたらうれしい仕事というか、ちょうど1年後くらいにこれに出られたら嬉しいみたいな仕事はありますか?

可児: 最近、アイドルの方とかと一緒にライブに呼ばれる仕事がありまして。そのときにアイドルさんと芸人がフリートークする時間があって、自分たちで言うのもあれなんすけど、異様にクロストークが上手かったんです。

高木: 都トムが。

可児: なので、アイドルの人たちとか 芸人じゃない人たちとなんかするみたいな機会が増えたらいいですね。

取材(文・写真)、編集:フクダ

<都トム|PROFILE>

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