【真空ジェシカ×長﨑周成】元祖コンビ大喜利王と創始者が語る!AUN史座談会《『AUN』パンフレット 特別公開》

2023年1月14日(土)、第5回『AUN~コンビ大喜利王決定戦~』が開催された。白熱試合の末優勝したのは、真空ジェシカ。第4回大会でYes!アキト&サツマカワRPGに敗退したが、絶対的コンビ大喜利王者として返り咲くこととなった。

第5回『AUN』では、初の公式パンフレット『AUN magazine vol.1』を販売。巻頭特集として、AUN創始者である放送作家・長﨑周成×真空ジェシカの対談が収録されている。今回は、特別に本対談の完全版を公開。誌面にはおさまりきらなかった内容もふくめ、長﨑と真空ジェシカによる貴重な対談をお届けする。(取材は2022年12月上旬に実施)

★公式パンフレットは現在オンラインショップで販売中!
※申し込み締め切り:~2023年1月28日(土)

2020年12月26日、第1回『AUN』が開催された。新しい「コンビ大喜利の大会」の構想が始まったのは、その年の夏。放送作家・長﨑周成の発案だった。この大会で三連覇したのが、真空ジェシカ。言うまでもなく2年連続の『M-1』ファイナリストだ。彼らの躍進に恩恵を受けるように、「AUN=コンビ大喜利の大会」というイメージはお笑いファンに定着した。大会を考案した長﨑と、元祖“コンビ大喜利王”真空ジェシカに『AUN』について話を聞いた。

ツイ消しされた過去

———皆さんは、学生時代から面識があったそうですね。

ガク: そうですね。大学生が出れる『学生HEROES!』っていう番組でお笑いの大会があって、僕らが1期生で、決勝に行って。

長﨑周成(以下、長﨑): 僕はストレッチーズやさすらいラビーと同期で、3期生でした。

川北茂澄(以下、川北): え、2期生じゃない?

長﨑: 3期生です。

川北: 2期生。

ガク: 自分で3期生って言ってんだよ(笑)。サンストレンジと同期のイメージがあるから。当時、ママタルト檜原が組んでたコンビね。

長﨑: 僕らの代は、サンストレンジが優勝しました。

川北: それが、ミキだよね。

ガク・長﨑: ん?

川北: ミキ。

ガク: 違う、3期(さんき)ね。読み方が違う。ミキって言うと、兄弟漫才師みたいになっちゃうから。

川北: ニキは?

ガク: 2期に優勝したのは、安全ナイフ(現ひつじねいり細田と、現ストレッチーズ高木が組んでいたコンビ)。

川北: え、ケビンスじゃなかったっけ?

ガク: ケビンスは、仁木(にき)。仁木恭平と山口コンボイのコンビ。

川北: あぁそっか、その辺がごっちゃになる。ここがごっちゃになって無くなった大会なんで……。

ガク: 違います。当時はまだケビンスもミキも結成してない。

———……その時期からの、知り合いということですね。

川北: もちろん。

長﨑: 『学生HEROES!』にOBが出る回があって、真空ジェシカさんは確か人力舎チームで出られてましたよね。そこで初めてお会いしました。僕、忘れもしないんですけど、2013年8月4日に……

川北: 忘れもしないな(笑)。

長﨑: 川北さんが、「カジナガサキ面白い」ってツイートしてくれたんですよ。

川北: え!ツイートするって相当ですね。

長﨑: これがめちゃくちゃ嬉しくて。で、あらためてツイートを探したんですよ。そしたら川北さんのツイートが無くなってまして、僕のリプだけが残ってて……(笑)。本当に嬉しかったんでずっと覚えてて、いつかお伝えしたいなと思ってたんですよ。

痕跡

川北: あの頃、すごい変なネタやってたよね。

長﨑: そうですね。初めて東京でライブやるっていうことですげぇテンション上がっちゃって。相方が「飲もうぜ」って言い出して、下北沢でライブ前に何杯かひっかけて(笑)。飲みながら思いついた、“抱き合いながらクルクル回って出てくる”ってネタをやって、めっちゃスベりました。

川北: それも含めて面白かった(笑)。

長﨑: で、片山さん(スラッシュパイル)に舞台袖で「どうした、あれ。テンション上がったか?」って言われて(笑)。

ガク: こわ!!!

川北: これはもう片山さんも大喜びだと思って見てたけど、そこは冷静だったんだ(笑)。

ガク: スベるのはあんまり好きじゃなかった(笑)。

長﨑: あれを「面白い」って言っていただけたのが川北さんだけで……(笑)。

川北: じゃあ面白くなかったってことだ(笑)。

ガク: 酔っぱらいのノリが川北にハマったんだ(笑)。

川北: あと、カジナガサキは“変なものの名前を紹介するだけ”のネタもやってた。説明を順番にしていくみたいな……

長﨑: そうですね、やってました(笑)。

ガク: こんな覚えてるってことは、本当に面白かったんだ。

川北: “変なことやりー”だったんで。

———長﨑さんは、当時の真空ジェシカさんの印象は覚えてますか?

長﨑: 「学生芸人出身の、めちゃくちゃ面白い人達」ですね。かんちゃん(ストレッチーズ高木)とかからそう聞いてたんで、お会いできて本当に嬉しくて。だからこそ、そういう人がツイートしてくれたのも嬉しかったんですよね。

川北: まさかツイ消ししてるとはな。

ガク: 恥ずかしいツイートだと思ったのか。

川北: 1回、全部消したことがあって。それだけ残しときゃ良かった。プロフィールに固定しておけば良かった。

切り替えができないやつが落ちる大会

———では、そろそろ『AUN』の話題に……。考案者の長﨑さんに質問です。どんなきっかけで、コンビ大喜利の大会をやろうと思いついたんですか?

長﨑: きっかけは、『クイック・ジャパン』さんから「一緒に賞レースを作りませんか」って言っていただいたことですね。漫才やコントではなく、コンビで戦える新しい種目を考えたいですよねという話になって「コンビ大喜利とかどうですか?」と。大喜利ライブの、“相方やMCと一体になって生み出す面白さ”みたいなものが好きなんですよ。

———『AUN』は大喜利に入る前の“わちゃわちゃ”が人気ですよね。そういうノリのことですか?

長﨑: いや、そこは真面目にコンビ大喜利をやりたいと思ってます(笑)。真空さんやAマッソさんがめちゃくちゃやり始めてから、もう手に負えなくなりました。

ガク: 熱い“大喜利の”大会をやろうとしていたのに(笑)。

川北: 大喜利の中で、そういうことをやってくれってことだよね。

ガク: 完全に別でやってる(笑)。

川北: 大喜利が始まったら、「よし」ってなる(笑)。その切り替えができないやつが落ちる大会です。

———あの“わちゃわちゃ”は、運営側が依頼したのではなく芸人さんが自主的にやっているんですか?

長﨑: 1回も「やってくれ」とは言ってないです。時間押すから会場に怒られないかビクビクしてるんですけど、めっちゃおもろいから、全然良いです(笑)。

川北: 「わちゃわちゃをやってくれ」って言われてたら、すぐに大喜利してたと思う。

ガク: 言われてないからやってるね。

川北: ラッキーでしたね。

———“わちゃわちゃ”が生まれたのは、第1回『AUN』のAマッソさんVS真空ジェシカさんのときでした。

ガク: そうそう。コンテンポラリーダンスみたいなことをAマッソさんがやってましたね。そのときは大喜利してなかったもん。確かAマッソさんが「答えない」みたいなボケやってて。

川北: それで俺らも答えない感じになって。そういうノリをしてたら、いきなり“ピンポン”って早く終わらせたいだけのポイントが入った(笑)。

ガク: それで勝った(笑)。

———『AUN』のお題は、すべて長﨑さんが監修して決めています。シンプルな大喜利とコンビ大喜利では、お題の作り方は変わるんでしょうか?

長﨑: 回答の片方がフリになるのではなく、両方に目線があることを意識してますね。コンビの回答、両方がむっちゃおもろくなるというか……例えば「『S 接客』と『M 接客』が選べるファミレスのサービスをそれぞれ教えてください」というお題は、SにもMにも目線があります。両方に「おもろ」「おもろ」って思えて“阿吽の呼吸”になるのが良いのかなと思って。片方の回答だけでも面白いし、それが相乗的にもなってたら良いなと思ってますね。

川北: 世界に一人だけじゃないですか?コンビ大喜利のお題を考えてる人(笑)。

———回答する側として、良いと思うコンビ大喜利のお題はありますか?

川北: 独立しているお題は考えやすいかもしれないですね。相方の回答を踏まえても良いけど、踏まえなくても良い。

ガク: そうね。SとMのお題とかまさに。

長﨑: もっと、『AUN』をヨソでもやってくれないかなと思ってて……

川北: えっ!そういう気持ちあるんだ。僕だけのものっていうのではなく。

長﨑: みんなで楽しんでほしいって思ってます(笑)。

川北: そうなんだ。ちょっと増えてきた感じはあるよな。普段のライブでもちょいちょいあるよ。

長﨑: 嬉しいっすね。コンビ大喜利の1番を決める大会が『AUN』であれば良いな、とは思ってます。

川北: でもお題を考えられる人が周成しかいない。

ガク: お題職人は一人しかいない(笑)。

長﨑: お題募集もやったりしてて、けっこう送っていただけるんですよ。

川北: 俺スナさんとか。

ガク: 「俺スナ」って出るだけで、会場が盛り上がる(笑)。

加害者と被害者

———芸人さんの間で『AUN』の話題になることはありますか?

川北: 話題になるというか、ライブで大喜利をやったとき、コンビでなんかやると「AUNすんなよ」みたいになることはある。

ガク: あー、言われるね。あと『AUN』で優勝した次の日、芸人から「おめでとうございます」って言われることはある(笑)。

長﨑: じゃあ、もっと優勝賞品を豪華にしたほうが良いですね。

ガク: ただでさえ豪華じゃん(笑)。第1回のとき賞品があること知らずにみんなふざけてたら、「クイック・ジャパンに載れる」とかすごい特典があって、「これちゃんと勝ったほうが良いやつだ」って気付いて(笑)。そのあとから、ランジャタイさんがちゃんと大喜利をやるようになった(笑)。

川北: 対戦したとき危なかったよな。

ガク: 「ランジャさんなら余裕っしょ」と思ってたら、マジで負けそうになった(笑)。

———第2回大会の賞品は、テレビ版『AUN』の出演権でしたね。収録で印象的だったことはありますか?

川北: 春日さんですね。『学生HEROES!』のMCで、当時お世話になってたんで。

ガク: それ以来の再会だったから。

川北: 楽屋挨拶に行ったら奥じゃなく手前に春日さんが座ってて、「来たねぇ」と。収録で最初ふざけて、サミットとウミットのお面をかぶって「サミットで勝ったものをウミットで売ろう」みたいなことを言ったら、みんな「シーン」って……

ガク: めちゃスベりして。

川北: そのとき、かつての絆があったので春日さんだけが「トマトとかね」って言ってくれて。

ガク: 絆があったから(笑)。

川北: 春日さんがいなかったら“スンッ”てそのまま終わって、「さぁ、ということで!」ってなってた。春日さんおかげ。

長﨑: あと、ガクさんが逆ニッチェを忘れたとき。あのときは、なんとか真空さんにあのボケをやってもらいたくて(笑)。

ガク: ライブ版『AUN』のスタッフさんたちが、「真空ジェシカに小道具が無いのはまずい!」って(笑)。めちゃくちゃ焦ってくれた。

川北: 小道具が無いとやることが無いからな。

ガク: 材料を買いに行ってすぐ作ってくださって。

長﨑: 僕らは逆ニッチェを分かってるんですけど、作ってくれたADの子に全然伝わんなくて(笑)。

ガク: たしか、ちょうど収録が始まるギリギリのところで完成した(笑)。

川北: すごかったな。

長﨑: あれは嬉しかったですね。

ガク: 申し訳なかった(笑)。

川北: おかげさまでね、大爆笑とれたしな。

ガク: 使われてねぇんだよ。オープニングのダイジェストみたいなところでちょっと映っただけ(笑)。

川北: そうだっけ。厳しいな、なかなか。

———ライブ版の運営的には、テレビ版で真空ジェシカさんに出ていただけたのはすごく嬉しいことですよね。

長﨑: 出ていただけたことも嬉しいし、逆ニッチェの材料を買いに行ったときとか、僕の中で父性と母性が爆発してました(笑)。ライブからテレビに真空さんを送り出して、そこで「めちゃくちゃウケてほしい」みたいな想いがすごいあって。それで、裏でみんな走り回るという(笑)。めっちゃ思い出に残ってますね。

———父性、さらに母性までも(笑)。『AUN』はMCのBKBさんとの関係値も深まりそうですね。

川北: 『AUN』が延びに延びるから、いつも3時間くらいBKBさんが大慌てしていて。終わったあとに鼻血出してたこともある(笑)。そのせいか、BKBさんは僕らを同じ境遇というか「同じ苦しみを味わった仲間」みたいな感じで見てくださるんですよ。僕らは別に3時間出ずっぱじゃないんで、普通に楽しくやってるんですけど(笑)。

ガク: 本当は、加害者と被害者。

川北: でも「一緒に頑張った」みたいな(笑)。

ガク: 『AUN』で初めてお会いしたんですけど、すごい良くしてくださってますね。2021年『M-1』決勝の前説をBKBさんがやられてて、そこでお会いしたときも「頑張れ」って言ってくださったり。親みたいな目線で見てくれてる感じがあります。

AUNKO大喜利

———過去の『AUN』を振り返って、特に印象に残っていることはありますか?

川北: 第2回でママタルトと戦ったとき「『浦島太郎』のあらすじを、ネタバレしないよう配慮して教えてください」っていうお題があったんですけど、まーごめ(大鶴肥満)が全然答えられなくて、まーちゃんごめんねってなりましたね。

ガク: 大鶴肥満が浦島太郎を知らなくて、急に答えられなくなっちゃった(笑)。

川北: あれはラッキーだったな。

長﨑: そういうこともあるんだと思って、気を付けようと思いました(笑)。

———長﨑さんはいかがですか?

長﨑: 毎回の決勝ですね。めちゃくちゃ盛り上がる。

川北: 決勝は“大喜利”になるよな。時間も押してるし(笑)。

ガク: 「なにもやらず、すぐ席に着いてください」って言われるから(笑)。

長﨑: 第4回の怪奇さんとの決勝は、見応えしか無かったですね。本当に“殴り合い”で。

川北: 決勝は運要素も面白いね。みんなバーッて答えるから、手を上げててもバイクさんがこっちを見てないとかもある(笑)。でも、それもありで面白い。早押し機械を入れたらまた変わってきちゃうのかなと思いますね。みんな優勝はしたいけど、そこまでシビアじゃなくても良いみたいな感じがあります。

———出演者目線で、『AUN』のここを改善したらもっと良くなるというご意見はありませんか?

川北: いや、なんも無いですマジで。でもなんだろうな、カナメストーンさんを勝たせてほしい……って言ってもなぁ。大喜利弱いんだもんなぁ。

ガク: そうねぇ。

———コンビ大喜利をやったら面白そうという芸人さんはいますか?

川北: あー、やっぱりダウ90000。

ガク: むずいって(笑)。面白そうだけどね。全員で来て欲しい。

川北: 虹さん(虹の黄昏)出てないですよね?

ガク: 出てほしいな。

川北: 虹さんにライブ呼んでもらったときに「AUNKO大喜利」っていうのをやらされて、ボコボコにされました。僕ら、そのライブでチンチンのボケをやろうと思って小道具を用意してたんですけど、ネタリハで虹さんがそれよりもおっきいチンチンを持ってて。「ボケるのやめよう」ってなって(笑)。

ガク: これには勝てない(笑)。

川北: 普通のチンチンの大きさでは勝てない(笑)。虹さんのは、ガトリングみたいなチンチンでね。

長﨑: 虹さん、大喜利は強いんですか?

川北: 強い……ときもあります。あとはヨネダ(ヨネダ2000)とかも強そうだな。

ガク: テレビで出てましたけど、ライブ版でマヂラブさん(マヂカルラブリー)見たいっすね。“わちゃわちゃ”見てみたいです。

文・編集:堀越 愛、写真:さくらの

PROFILE

真空ジェシカ

左:ガク
中:川北茂澄

★公式プロフィール:https://www.p-jinriki.com/talent/shinkujesica/
★ラジオ:真空ジェシカのラジオ父ちゃん
★ラジオ:真空ジェシカのギガラジオ


長﨑 周成@shuuuuuusei

地上波テレビ番組やYouTube、Netflix Japanなどで企画構成を行う放送作家。元学生芸人で、大学時代は「カジナガサキ」として活動。同期にママタルト檜原(当時はサンストレンジ)らがおり、真空ジェシカより2期下の後輩。当時は『学生才能発掘バラエティ 学生HEROES!』に出演し、大阪と東京を行き来しながら活動していた。2022年に著書『それぜんぶ企画になる。』(左右社)を発売。

PERFORMERS

  • 真空ジェシカ/川北 茂澄

    プロダクション人力舎所属

    ・Twitter:@kawktk


  • 真空ジェシカ/ガク

    プロダクション人力舎所属

    ・Twitter:@gakegakegake

    ・Instagram:gakumeshi


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