【ストレッチーズ主催ライブ『お返し体育』特別インタビュー:前編】「お世話になりました」という感謝を込めたライブです ~ケビンス・コマンダンテ・シシガシラ編~

2023年5月23日(火)、ストレッチーズ主催のライブ『お返し体育』が開催される。これは、ストレッチーズが「いつもライブに呼んでいただいている先輩や後輩に『お返し』をするため」のライブ。

ストレッチーズ。『お返し体育』の由来は、「岡崎体育」の語感

ゲストは、ケビンス・コマンダンテ・シシガシラ・ナイチンゲールダンス・ななまがり・ヤーレンズ・わらふぢなるお・金の国(4月12日現在/他調整中)。ライブシーンを中心に活躍する人気芸人が集う、事務所混合の豪華ライブとなる。

★チケットは4月15日(土)10時から販売開始予定:https://ticket.rakuten.co.jp/stage/comedy/rtprwst/

主催ライブの開催は「ほぼ初めて」というストレッチーズ。ふたりは、なぜこのライブを行うことにしたのか。その背景に加え、インタビュー前編ではケビンス・コマンダンテ・シシガシラに関する話を聞いた。

当たり前のように呼ばれてばかりではいけない

———『お返し体育』はお世話になった方をゲストにお呼びするライブだそうですね。どのような背景で開催に至ったのでしょうか?

福島 敏貴(以下、福島): 以前から吉本さんのライブに呼んでいただくことが多かったんですが、こちらからお呼びすることはできていなくて。昨年も「お世話になった方を呼ぶライブをしたい」という話はあったんですが自分たちの力も無いし、どうやったら良いのかも分からない。今年こそはさすがに現実化させたいということで、事務所にも相談して開催することになりました。

高木 貫太(以下、高木): こんなふうに自分たちが主催するライブは、ほぼ初めてですね。9年目にしてやっとです。最近は、週1~2回は無限大や神保町のライブに出てるんじゃないか?くらいお世話になってるんですよ。僕らのライブに出ていただくことがお返しになるかは分からないですけど、「お世話になりました」という感謝を込めたライブです。当たり前のように呼んでいただいてばかりは、良くないなと思って。

———吉本の芸人さんから「吉本外のライブに出ることで鍛えられる力がある」と伺ったことがあります。ストレッチーズさんにとっても、主戦場ではない舞台に立つことで得たものがあるのでしょうか?

高木: あると思います。吉本のライブは、普段僕らが出ているライブとはお客さんの層や反応が違いますね。ライブにもよりますけど、比較的ポップな感じがします。吉本のほうが王道で、キャッチーなネタがウケやすいような……。どんなライブでもウケるネタを作りたいので、ネタを試すにあたりめちゃめちゃありがたい場ですね。

福島: 『M-1』のネタ選びでも、かなり参考にしてるんですよ。主戦場であるK-PROのライブで1から新ネタを作り磨き上げた上で、吉本のライブで迷いのある部分を試すんです。そこでウケたら「大丈夫」と思えますね。

———吉本のライブに出て成長できた背景があるからこそ、お呼びする方は吉本の芸人さんが多かったんですね。

高木: 僕らとしては「吉本の芸人さんを外のライブに引っ張りだそう」みたいな気持ちで呼んだんですけど、結果、吉本の芸人さんばっかりになっちゃって。結局、お客さんの層は変わらないんじゃないか?という説が浮上しております(笑)。

福島: 吉本さん主催で、こういうメンツのライブあるな、って。

高木: 僕らが普段ゲストで出ているようなライブを僕らが主催するという、意味の分からない構造にはなってます。「ワラムゲ!」だと思われちゃう可能性がある。

福島: 企画とかもいろいろ考えてるので、その辺で違いを出していきたいですね。

———吉本以外だと、わらふぢなるおさん(グレープカンパニー)とヤーレンズさん(ケイダッシュステージ)をお呼びするんですね。

福島: そうです。そこは、“まぶし”ました。ご本人たちにもバレたんですけど……。

高木: このままだと吉本のライブになっちゃうんで、わらふぢなるおさんとヤーレンズさんをお呼びしました。他事務所のおじさんで、なんとかまぶして……(笑)。

福島: お兄さんじゃないです、おじさんです。まぁ、“まぶし”というのは冗談なんですけど(笑)。でも、今回お呼びするゲスト案はすぐに決まったんですよ。やっぱり主催ライブをやるなら僕らふたりとも「面白い」って思っている方を呼びたいじゃないですか。そう考えたとき、今回来てくださる皆さんはお世話になってるかどうかは置いといても、そもそもネタがすごく好きな人達なんです。そこがマッチしていたので、スムーズでしたね。

———お世話になっているし、ネタも大好きな芸人さんが揃うんですね。せっかくなので、今回ゲストに来る芸人さんのお話を聞かせてください

カサグランデで出会ったケビンス

———ケビンスさんとは、どんなつながりがあるんですか?

高木: 仁木さんが以前住んでいた、カサグランデを通して仲良くなりました。カサグランデで、コロナ禍に173時間生配信をやったんですよ。そのときに僕もお邪魔して、けっこうな時間カサグランデにいて。そこに、たまたまケビンスを組む前のコンボイさんも遊びに来てて。どうやら、ふたりもここで仲良くなったのを機にコンビを組んだみたいです。
ケビンスを組んでからたくさん呼んでくれたんですけど、中でも無限大でやってる『演芸平和公園』ってライブがすっごい楽しいんですよ。いろんなライブに出てますけど、5本の指に入るくらい面白いと思ってます(笑)。『M-1』準決勝に初進出したタイミングも一緒で、結果発表後に悔しい思いを共有したりもしていて。それで、すんなりと「ケビンスを呼ぼう」という話になりました。

※カサグランデ:ママタルト檜原、ZAZY、男性ブランコ平井、サンシャイン坂田、大久保八億らが住んでいた家

———ケビンスさんのどんなところが魅力的だと思いますか?

高木: コンボイさんは、雨に濡れるとすごいかっこいいですね。

福島: コンボイさんは、飲み会終わりのタクシーですごい気を遣ってくれます。「福島が近いルートで帰ろうな」って言ってくれたり、タクシーをすぐ呼んでくれたり。タクシーのさばき方がすごくうまくて、めちゃくちゃ男前です。

———おふたりより、コンボイさんのほうが年下ですよね。芸歴的には先輩なんですか?

高木: 先輩ですね。初めてお会いしたカサグランデ生配信のとき、先輩であることは確認したんですよ。でもコンボイさんの人当たりが良すぎて、「同期だったっけ?」って思っちゃって。それで、久しぶりに会ったとき普通にタメ口で話しきって、終わったあとに気付いて「先輩でしたよね、すみませんでした」って言ったら、「あー大丈夫!俺、そういうのやってないから!」って。コンボイさん、芸歴は「やってない」らしいです(笑)。

———コンボイさんは、裏でもそんな感じなんですね!

高木: 全然、裏表ないですね(笑)。仁木さんは、お笑いが好きすぎて本当に薄気味悪いっすね。「趣味ないんですか?」って聞いても「女の子と遊んだりしてないんですか?」って聞いても、「別に」と。「なにしてんですか?」って聞いたら、「今はネタを書くのが楽しすぎる」って言ってて(笑)。そんなヤツいるんだと思って「薄気味悪いな」って言っちゃいました。そのくらいお笑いにストイックというか、この世代の芸人で1番ネタ書いてるかもしれないですね。

コマンダンテはスタイルが良すぎる

———コマンダンテさんとストレッチーズさん、関係の深いイメージがあまりありませんでした。

福島: 出会いは、2019年のお正月「コマンダンテno寄席」に急に呼んでくださったときですね。そのとき「面識ないのに呼んじゃってごめんね」みたいに言われたんです。こちらとしては、「知っててくださって光栄です!」という感じですよ。そこからはコロナもあってしばらくあいちゃったんですけど、昨年有楽町でツーマン(コマンダンテと漫才師さん/2022年5月26日)に呼んでいただいて。そこからだいぶ距離が縮まった感じがありますね。劇場に僕らが行くと話しかけてくれたり、僕らの楽屋にずっと安田さんが座ってくれてたり。

高木: 2018年の『M-1』準々決勝で、僕らの次の出番がコマンダンテさんだったんですよ。後からGYAOで知ったんですけど、僕らのネタを掴みに取り入れてて。「準々決勝なのにこんなアドリブを入れるんだ、すごいな」と思ってたら、翌年のno寄席に呼んでくれたんです。コマンダンテさんは先輩で僕らにとってはずっと見ていた人でもあるし、呼んでいただけたときはすげぇ嬉しかったですね。

福島: 昨年ミキさんとツートライブさんのライブ(ミキ・ツートライブの逆襲漫才!/2022年9月19日)に一緒に呼んでいただいたときも、コマンダンテさんは僕らのネタを取り入れてくださいましたね。

———コマンダンテさんの「ここが好き」というところを教えてください。

高木: カッコいいっす。

福島: スタイル良すぎる。

高木: 安田さんも一見カッコいいんですけど、顔はあんまりっていうところもポイントです。スタイルはめっちゃ良いです。

福島: 石井さんは怖いぐらい若く見える。

高木: ツーマンのとき「若すぎてさすがにキモイ」って話をしました(笑)。

高木Twitterより

シシガシラのドギツイ縛り

———シシガシラさんは、ネタ見せ会のメンバーですよね。

福島: そうですね。だいぶ先輩で、ヤーレンズさんが繋げてくださったのが始まりだと思います。ただ、僕はかなり前に接触してるんですよ。芸歴1年目のころセブンイレブンで夜勤バイトをやってたんですけど、深夜によく来るお客さんがいて「なんか芸人っぽいな」って思ってたんです。その人は毎回アメスピライトだけを買ってて、夜中で変なお客さんが多い中、すごく丁寧な方だったので印象に残ってて。で、その後『M-1』で見て「コンビニでたばこ売った人だ!」と気付いたんです。それが、当時ヨコハマホームランだった脇田さんでした。

———実はだいぶ前に出会ってたんですね。シシガシラさんの「ここがすごい」と思うポイントは?

高木: シシガシラさんって、ハゲ漫才なので毎回“発明”をしなきゃいけないんですよ。僕らも新しい発明が必要なネタ作りをやっているという意味で、シシガシラさんとネタの作り方が近くて。でも僕らと圧倒的に違うのは、シシガシラさんは「ハゲを活かす」というドギツイ縛りを入れていること。そのうえで面白いネタを作り続けてるって、ヤバすぎますね。ネタ作りの面で、だいぶ尊敬してます。ネタ見せ会のとき、浜中さんは「お客さんから見てどうか」という俯瞰のアドバイスをくれるんですよ。こういう視点があるからこそ、強烈な脇田さんと一緒にいてバランスがとれるんだろうなと思います。

———ストレッチーズさんが入る前は、モグライダーさんがネタ見せ会のメンバーだったんですよね。『M-1』決勝進出を機に、抜けられたとか。

高木: 出井さん・脇田さん・僕が入っているグループLINEがあるんですけど、日程調整していて僕らだけNGの日があると、ふたりから「いい加減にしろ!ツギクル優勝したからって、どっか行っちゃうんだろ!こっちは暇なおじさんいくらでも知ってるんだよ!」って、意味の分からない脅され方をします(笑)。「暇なおじさんだったら何組でも召喚できるんだから、クビにするからな」と(笑)。そんなことを言われながら、仲良くやらせていただいてます。

取材・文:堀越 愛