「このままじゃブサイク労働者になる」 相方の言葉で向き合い方が変わった 【ママタルト インタビュー(前編)】

体重170キロと79キロのデコボコ(!?)コンビ、ママタルト。1度見たら忘れられない風貌と安定したネタの面白さから、若手芸人の中でも高い注目を集める存在です。今回は、前編・後編に渡りママタルトの二人にインタビュー。前編では、芸人を目指したきっかけやコンビの危機、仕事に繋げたい趣味などを伺いました。

所属の決め手は、“キレイだった”から!?

—お二人が芸人を目指したきっかけを教えてください。

大鶴 肥満(以下、肥満): これがほんとに恥ずかしい理由なんですけども、太っていることの免罪符になるからですね。もしサラリーマンだったら、周りから「ものすごい太ってるやつがいるな」という目で見られるんですけども、芸人になって売れてしまえば「〇〇さんだ」と思われる方が先に来るはずなんですよね。

檜原 洋平(以下、檜原): “知らないめっちゃ太い人”から、“見たことあるめっちゃ太い人”に変わる。

肥満: そうなると人生が相当変わるんで。それが1番強いかもしれないですね、芸人になったきっかけは。

檜原: 僕は、就活でAVの会社に内定もらってるんですよ。でも研修期間に、当時コンビを組んでいた宰務(翔太)君から電話かかってきて「やっぱお笑いやった方が良いで」と言われて。その電話にホイホイ乗って、(相方が先に東京に出ていたため)上京しようと。入社直前に「辞めます」って言いました。そしたら「表に出る仕事は年齢関係あるけど、裏方は年齢関係無いから、夢が2つあるなら年齢関係ある仕事から追いかけたら良いよ」って言ってもらえたんです。それでお笑いやることにしました。

—コンビを組んだきっかけはどういったものだったんですか?

檜原: 同学年で共通の友達も多いってことで、最初は“友達の友達”みたいな感じでしたね。

肥満: (檜原が)前に組んでいたコンビは学生芸人の大会で優勝したりしてたんで、もちろん名前は知ってました。出会った第一印象は、“やけに距離感詰めてくる”人。初めてライブで一緒になったとき、「一緒に帰ろうや」「飯食って帰ろうや」ってすごいグイグイ来て。

檜原: 出会ったのが、“次の相方を探す1日目”みたいな日だったんですよ。当時同居していたZAZYから「次はすごい太った人を探したほうが良い」ってアドバイス貰って。ちょうどその次の日にすごい太った人がいたんで、すぐ声かけました(笑)。

—ある意味、運命的な出会いだったんですね(笑)。事務所をサンミュージックに決めたのは、何か理由があるんですか?

檜原: 元々(肥満は)太田プロの養成所に通ってて、卒業のタイミングで僕と組んだんです。ネタ見せに通ってたんですけど、所属できなくて。ほかの事務所も受けたんですけどうまくいかず……サンミュージックを受けたら今のマネージャーに会って。

肥満: 「こんなに清潔感のあるデブは見たこと無い」って言われて。

檜原: 「君は目もキレイだし、肌もツルツルだ。こんなにきれいなデブっていたんだ」みたいな。すごい絶賛してくれて。全然、肌ツルツルじゃないんですけど。

肥満: ボロボロだったんですけどね。

—肥満さんがマネージャーさんに刺さったんですね。

肥満: そうですね。僕がキレイだったから。

コンビ存続の危機は、まさかの……

―お互いの尊敬しているところを教えてください。

檜原: 大鶴肥満って170キロあるんですよ。フットワーク軽くライブに出ようとか思えるのが、まず凄い。僕は23歳のときから20キロ太って今80キロちょっとなんですけど、それだけでも角に腰を打ったりするんですよ。あと単純に疲れるし。それが、こっからあと90キロ太ってよくその生活できるなと。

肥満: 俺発信で「プール行こうぜ」とか言います。

檜原: 170キロもあったら家から出たくなくなるはずなのに、夢を持って頑張ってる。相当すごいことなんですよ。急に僕がこの体に入ったら、しんどくて無理。

肥満: 我慢強いです、僕は。急に僕の体に入ったら、立てなくなるくらい痛くて倒れるかも(笑)。

檜原: ちょっとした階段で、死ぬ前くらい息切れたりするんですよ。それなのに、ハシゴしてライブに出てる。しんどさよりも大きい夢があるんだなって。身体の負担を気にせずライブに出るのは偉いと思います。

—肥満さんは、1日何ステージくらいなら立てると思いますか?

檜原: ライブ会場まで電車に乗ったり歩いたりするので、結構しんどいはず。

肥満: 6までは頑張れるかな。(先日檜原が)4ステ目で声が枯れてたんで、僕の体力が持つか声が持つかの勝負。7からはタクシー使わせてくれってなりますね。

檜原: 前までは、「電車に乗って1日に何本もライブに出るなんてバカげてる」みたいなこと言ってたんですよ。でも僕は、大鶴肥満に「この生活が40になっても50になっても続くと思うからしんどい。あと1~2年で売れなかったら辞めるつもりで挑んだら、頑張れるんじゃないか?」って言って。

肥満: 「このままだったらブサイク労働者になって終わる」って言われたとき心に響いてしまって。

檜原: 普通の人は働いて幸せになれますけど、僕とか大鶴肥満は別にカッコよくないし、普通に働いてもたいして幸せにはなられへんから。それなら今頑張ったほうが良い、みたいな。

肥満: そこでハッとしました。「そうか、俺はブサイク労働者なんだ」って気付けて、ライブに出ようって意識になりましたね。

—階段をワンフロア上がるだけで息が切れるとのことですが、漫才は大丈夫なんですか?

肥満:漫才は大丈夫ですね。

檜原: 大鶴肥満は上下の移動に弱くて、平地の横移動は大丈夫なんです。だから、移動のとき坂があると、どんなに遠回りになっても、ビルをハシゴして登りきる。

肥満: どこにエレベーターやエスカレーターがあるか探して行くんです。前はゴンドラみたいな感覚でバスに乗ってました。

—肥満さんはいかがですか?檜原さんの良いところ。

肥満: めちゃくちゃ優しいと思います。本当に怒らない。でも1回ひわちゃんのベッドで寝ようとしたらめちゃくちゃ怒られた。

檜原: バネが弱まってるのに飛び乗ってきたから、そのときはほんとに怒りました。

肥満: それくらいですね。

檜原: あ、漫才で「どーもー」って出ていくときに(肥満が)びしょびしょだったんで「ちゃんと顔拭いてから出るようにして」って揉めたことあります。何度言っても汗を拭かずに出て行こうとするんで、「意味わからんか!?俺の言ってることの意味が分からんのやったらちゃんと説明するけど」みたいな。

肥満: 俺も「なんでこんなに怒ってるんだ。俺は顔拭いてるぞ」と。

檜原: お互いに「顔拭け」、「拭いてる」って揉めて。でもゆっくり確認したら……

肥満: 俺が「ほら、拭いたでしょ」って顔拭いて見せたんです。

檜原: 自分がハゲてきてるって分かってなくて、顔がここまで(眉毛くらい)だと思ってたんです。

肥満: 生え際が思っていたより上だったんです。

檜原: 自分はハゲてないと思ってるから眉毛くらいまでしか拭いてなくて。ちゃんと話し合ったら「俺ってここが生え際なんだ。汗はここまで拭かなきゃいけないんだね」と。それでわだかまりが解けたことがありました。

肥満: これに気付けなかったら、危なかったかもしれないです。

檜原: 拗ねてわざと拭いてないと思ってたんですよ、1か月くらい。大事件でした。

『ぷよぷよ』はお笑いに通ずる

—お二人が毎日やっているルーティーンはありますか?

肥満: 僕たちは『ぷよぷよ』でございますね。

檜原: 毎日1~2時間はやってます。

肥満: 今日もやってから来ました。

檜原: 大学3年のとき、真空ジェシカの川北(茂澄)さんに「『ぷよぷよ』はお笑いに通じるところがあるからやったほうが良い」って言われて。川北さんや貫ちゃん(ストレッチーズ・高木貫太)と遊びたいっていう気持ちで、去年から始めて一生懸命練習しました。毎日やってるんで、M-1の前日とかは露骨に弱くなるのが分かるんですよ。「弱くなってるってことは、今緊張してるんだ」って客観的に気付ける。

肥満: 『ぷよぷよ』もお笑いと一緒で、強くないと戦える相手がいなくなる。だから「強くならないと」と思ってやってますね。お笑いと『ぷよぷよ』は似てるんです。

—そんなに『ぷよぷよ』をやっているんですね。今後お仕事に繋がれば良いなという希望もありますか?

檜原: そうですね、解説とか。

肥満: 関東芸人だったら、僕らが1番強いかもしれないってくらいやってますね。

檜原: 僕らは『ぷよぷよ』についてはマニアックなところがあるんで、もしプロの人に会えたら“イチローに会う”くらい興奮すると思います。本当に『ぷよぷよ』の仕事してみたいですね。

<ママタルト|プロフィール>
2016年4月1日結成。サンミュージックプロダクション所属。

左:大鶴 肥満(おおつる ひまん)
1991年7月20日生まれ。A型。182m/170kg。東京都出身。明治大学卒。趣味は漫画を読むこと。特技はぷよぷよ・実況パワフルプロ野球・金券のレートが分かる・食べ放題。

右:檜原 洋平(ひわら ようへい)
1991年7月27日生まれ。174cm/79kg。大阪府出身。神戸大学卒。趣味はカレー作り。特技はぷよぷよ。

★公式サイト:https://sunmusic-gp.co.jp/talent/mamatarte/

インタビュー:さとうなつ、撮影:秦 法爾、編集:堀越 愛

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