「M-1は全部が入った福袋」まずはここで結果を出したい【ママタルト インタビュー（後編）】

インタビュー後編では、目標にしている芸人や賞レースへの想い、「風穴」ライブへの意気込みなどについてお話を聞きました。ユニット「風穴」（さすらいラビー・ストレッチーズ・ひつじねいり・ママタルト）のネタライブは、12月26日に草月ホールで開催予定。今年を締めくくる、最高の時間になること間違いなしのライブです。チケット予約がまだの方は、是非お早めに！
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インタビュー前編はこちら：「このままじゃブサイク労働者になる」 相方の言葉で向き合い方が変わった　【ママタルト インタビュー】

漫才をコントにしたら、たくさん“ガン”が見つかった

—目標にしている芸人さんはいますか？

檜原 洋平（以下、檜原）：　（霜降り明星の）粗品君ですね。高校からの友達で、最近はM-1の相談もしてます。他にも相談に乗ってくれる人はいますが、優勝してるだけあってアドバイスが本当に良くて。他の人は漫才の“中身”のことを言うんですけど、粗品君はM-1をいっぱい研究したんで「M-1のお客さんってこうやからこれはいらんと思う」とか。M-1そのもののことを教えてくれるんですよ。すごい頼りになります。

―センター試験の対策のようなイメージでしょうか？

檜原：　そうです（笑）。他の人は勉強法を教えてくれるんですけど、粗品君は試験自体の対策を教えてくれるみたいな。憧れますね。僕も優勝してみんなに教えたい。

大鶴 肥満（以下、肥満）：　僕は、ずっとサツマカワRPGさんを尊敬してます。サツマカワさんは、常にお笑いのことを考えてるんですよ。1年だけ一緒に住んでいたことがあるんですけど、ずっとネタ作りしてるので家にあんまり帰ってこないんです。すごくストイックだから、報われてほしい。一緒にいた時間が長いので、より尊敬するしカッコいいと思います。

―お二人とも、大先輩というよりは意外と身近なところに目標があるんですね。

肥満：　そうですね。あんまり遠いとミーハーな気持ちになっちゃうんで。

―今はテレビやライブだけでなく、YouTubeなど芸人さんが活躍できる場が増えています。お二人が重要視しているのはどこですか？

檜原：　よく言ってるのが「無名でテレビに出ても僕らの力量では突破できないから、まずはM-1頑張ろう」って。M-1は全部が入った福袋みたいなイメージなんで、ここで結果を残せたら他も良い感じになる気がするんですよ。

肥満：　同意ですね。

檜原：　僕らは、自分に自信が無いんです。いろんな場面で「僕なんて」とひよってしまうんですよ。ライブは自由に楽しくできるんですけど、やっぱりテレビになると「僕の言うことなんて面白く思われないだろう」みたく思ってしまう。M-1で結果を出して、自分に自信がついたら変わるかもって思ってます。

肥満：　YouTubeやSNSでバズることを目的にやるのってしんどいと思うんですよ。そういうのって賞味期限がめっちゃ早いので、すぐに次を出さないとしぼんじゃう。M-1で優勝したら、過去に投稿した『ママタルトのエキサイティングステーション』（YouTubeラジオ）の再生数も爆上がりすると思うんで（笑）。バズるのを目的にするんじゃなく、僕たちに実力をつけてバズらせたほうが楽だなと思いますね。

—今年のキングオブコントは、準決勝まで進出されましたね。M-1で結果を出したいというお話がありましたが、なぜコントを？

檜原：　キングオブコントのためにコントを新しく作る、ということはないんですよ。普段やっている漫才を、座ってしただけ。でも、漫才をコントにすることで気付くところも多いんです。「漫才やったらここは適当に言ってたけど、コントにするなら丁寧に言わないと意味分からなくなっちゃうな」みたいな。漫才をコントに焼き直すことで気付けることがあったんで、出場して本当に良かった。

肥満： 　1度（漫才をコントに）翻訳して、再翻訳したらめちゃくちゃキレイになった、みたいな。

檜原：　1度コントにしたおかげで、そのまま漫才やってたら気付けなかった“ガン”みたいなところに気付けたんです。来年も、また漫才をコントにして出たいなと思いますね。

ネタ作りのバランス

—ネタは檜原さんが作っているんですよね。ネタ作りはどのように行っているんでしょうか？

檜原：　新ネタをおろすライブの前日に、慌てて喫茶店に行って作ります。昔のM-1のレポートを見ると、ネタのタイトルだけずらーっと出てくるんですよ。「ボート」とか「レストラン」とか。そのタイトルから良いのを見つけて作ってます。

肥満：　（ネタ作りは）100：0ですね。新ネタライブが無いと作らないからってスケジュールに入れるんですけど、俺は毎回止めるんですよ。「大丈夫？しんどくない？」って。「俺はいける」って言うんですけど、いざ本番になると「なんでお前ネタ作ってないんだ」って言われたりも。

檜原：　「大鶴肥満も1個考えてくるべき」みたいな。

—檜原さんに労力が偏っているので、単独ライブのお給料でバランスを調整しているそうですね。

肥満：　そうですね。最初の単独は、俺のあがり（収入）は2万で良いよって言いました。ネタ10本も作ってくれたし、これで給料半々なんておこがましい。

檜原：　大鶴肥満は、覚えるのがすごく早いんですよ。台本貰って1回練習したら覚える。僕は（作っているのに）間違えるけど、大鶴肥満は間違えずにできるんですよ。ってことは、ライブ前日の4時間と当日の昼以降さえあれば単独ライブができるのに、お給料が半々なのはおかしい、って。

肥満：　でも実際は優しくて、もう少しくれたんですけどね（笑）。

―ちなみに、お二人にとって、「売れる」ってどういうことだと思いますか？

肥満：　めっちゃむずいですけど、旅ロケをして受け入れてもらえたら「売れた」って思うかもしれないですね。

檜原：　確かに。今ってロケに行っても、（相手からしたら）“知らない人”なので。“もちろんご存知の人”として話せたら楽しいだろうな。

肥満：　「誰だっけ？」でなく、旅ロケで名前を呼んでもらえたら「売れた」ですね。

—お二人は今、GERA放送局やstand.fmでラジオをやっていますよね。檜原さんは昔ハガキ職人をしていたそうなので、特別な想いがあるのでは。

檜原：　僕は中学生の頃、ラジオにいっぱい大喜利を送ってて、読んでくれる人（パーソナリティ）のことを“神様”だと思ってたんですよ。だから、普通にニヤニヤします。この人たちにとったら、僕が神様なのかなって（笑）。あと、全部読んでます。

―全部？

檜原：　最近、毎週1700通くらい大喜利が送られてくるんですよ。普通に読んだら7時間くらいかかるんですけど、僕は全部読んでます。昔自分が送っていたとき、パーソナリティが読んで選んでくれてると思ってたんですよ。多分スタッフが絞ってくれてたと思うんですけどね。だから、僕は自分で良いものを選びたい。

行けなかったら「悔しい」と思われるようなライブに！

—「風穴」はけっこう歴史の長いユニットですよね。なにか印象に残っている思い出はありますか？

檜原：　元々、僕の前のコンビとストレッチーズとさすらいラビーの3組が、前の事務所（タイズブリック）でやっていた『風穴ライブ』がはじまりですね。1度『地球の笑い方～イギリス～』っていう「イギリスにまつわるコント」をやるライブをやったことがあります。1か月バイトを休んで、1日10時間くらい稽古して、小道具もお金出しあって……でも、すっごい面白くなかったんです。終わったあと、片山（勝三）さんから「縁を切らせてください」ってLINEが来て……縁を切られた片山さんに久々に縁を結びなおしていただいて、僕は本当に嬉しい。

※12月26日のユニットライブは、片山勝三が運営する「WLUCK」が主催

—そういえば、肥満さんは大学時代に片山さんから「いつまでこんなことやってんの」と言われたことがあるそうですが……

肥満：　『学生HEROES！』（『学生才能発掘バラエティ 学生HEROES！』テレビ朝日/ 2010～2017年放送）のオーディションで野球漫才をしたんですよ。そしたら（審査員をしていた）片山さんに「今何年生？」って聞かれて「4年です」って答えたら、「いつまでこんなことやってんの？」って。ぞわっとしました。

檜原：　「男の嗜み」を、「男の立浪」って言うパンチラインがあって。それが全然片山さんにハマらなかった（笑）。

肥満：　コンビどちらも縁切られてますね（笑）。

檜原：　今度のライブでも集団コントをやろうぜって言ってるんですよ。また片山さんに縁を切られるかもしれない。そこも楽しみにしてほしいですね。

—12月26日の『「風穴」～M-1決勝おつかれさまライブ～』への意気込みをお願いします。

肥満：　まーごめってことかな。

檜原：　昔風穴でライブをやっていた頃は全く集客できなくて。小学校の友達にまでLINEして、それでも30人くらいしか集まらなくて。貫ちゃん（ストレッチーズ・高木貫太）が、間違って福島（ストレッチーズ・福島敏貴）に送って、「その日は出る予定があるから無理」って返信が来る……みたいなことがあったくらい、お客さん呼ぶのに苦労してたんです。それから5年くらい経ったので、（草月ホールを)満席にできるくらいまで続けたんだ！っていうことを実感したい。チケットをまだ取ってない人は、慌てて予約してください。

肥満：　それに見合うように頑張るので。行けなかったら「悔しい」って思われるようなライブにします！

＜ママタルト｜プロフィール＞
2016年4月1日結成。サンミュージックプロダクション所属。

左：檜原 洋平（ひわら ようへい）
1991年7月27日生まれ。174cm/79kg。大阪府出身。神戸大学卒。趣味はカレー作り。特技はぷよぷよ。

右：大鶴 肥満（おおつる ひまん）
1991年7月20日生まれ。A型。182m/170kg。東京都出身。明治大学卒。趣味は漫画を読むこと。特技はぷよぷよ・実況パワフルプロ野球・金券のレートが分かる・食べ放題。

★公式サイト：https://sunmusic-gp.co.jp/talent/mamatarte/

インタビュー：さとうなつ、撮影：秦 法爾、編集：堀越 愛