『紅しょうがは好きズキ!』(ラジオ関西Podcast)インタビュー 『うなげろりん!!』の姉妹番組が目指すのは“外で聴けない”ラジオ

今年2月、大阪の人気若手芸人が大挙して上京するというニュースがお笑いファンを騒がせた。熊元プロレス、稲田美紀のコンビ・紅しょうがもそのうちの1組だ。

上京のタイミングでスタートしたPodcast番組『紅しょうがは好きズキ!』は、もともとラジオ関西で放送されていた地上波番組『紅しょうがのきざまんといて!』『Clip(火曜日)』の流れを汲んだ形となる。

各所で話題をさらい続ける『マユリカのうなげろりん!!』の姉妹番組(なんとプロデューサーまで同じ!)とあって、ラジオ好きからの注目度は高い。

5月下旬現在、番組開始から6度の配信を経て『紅しょうがは好きズキ!』はそんな期待のハードルを余裕で飛び越えた。Podcastランキングのコメディ部門では常に上位に食い込み、SNSで見られるリスナーからのリアクションも絶賛ばかり。なにより、紅しょうがの会話はいつも楽しげなのが聴いていて心地よい。

勢いに乗る新番組の収録現場にお邪魔して、パーソナリティふたりにラジオの現在地を聞かせてもらった。

「好きな麺類」で40分話せる紅しょうが

ーーーPodcastで冠ラジオが再開されるにあたって、こういうふうにやっていこう、という話し合いはチームの皆さんでされましたか?

熊元プロレス(以下「熊プロ」): 私ら、もちろん芸人なんですけど……。

稲田美紀(以下「稲田」): え、なになに(笑)? 「私ら、もちろん芸人なんですけど」?

熊プロ: もちろん芸人なんですけど、芸人さんのラジオって大喜利のコーナーが多いじゃないですか。私も聴くぶんにはめっちゃ好きなんですけど、そういうのは一旦ほかの芸人さんたちにお任せして。私らはなんでもないテーマのフリートークでおもろくできたらいいなと思ってます。違い見せれたらなって感じです。

稲田: 大喜利できへんって言ったほうがええで?(笑)

ーーー稲田さんも同じ意見ですか? 

熊プロ: 稲田さんも違い見せれたらなって感じ?

稲田: 一緒にせんといてよ(笑)。

熊プロ: そうですかー。

稲田: 私は朝起きてから寝る前まで常にラジオを流してるんで、ボーっと聴いてられる番組が好きなんですよ。熊プロさんの“なんでもない”フリートークじゃないですけど、なにかしながらでも聴いてられるようなラジオがいいなと思ってます。ガンガン大喜利するラジオも面白いんですけど。

―――そうした番組のベースの部分は『紅しょうがのきざまんといて!』時代から変わらず?

稲田: そうですね、変わらずやれたらいいですよね。どっちがなにをしゃべるかとかも、そんなにきっちり決めん感じで。「幸せになろうよ」(編注:紅しょうがが自身の恋愛事情を報告するコーナー)とか、地上波時代から引き継げるものは今もやってますし。

熊プロ: 今日もコーナーで好きな駄菓子をずっとしゃべってましたけど、ああいうのも元々『きざまんといて!』でやってたことなんです。

稲田: 当時は2時間番組やったんで、好きな調味料だけで40分ぐらいしゃべることもあったんです。ようそんなテーマ一本でここまで話せるな、ってマユリカから言われてました。

熊プロ: 「好きな麺類」とかね(笑)。今考えたらだいぶ頑張ってましたね。楽しかったですけど。

稲田: Podcastは30分なんで、地上波時代比べたらめっちゃ短く感じますね。全然もっとしゃべりたい。

ーーー『紅しょうがは好きズキ!』を聴いていると稲田さんが熊プロさんの話に大笑いされているのが印象的で。すごく良い関係性だなと思いながら聴いています。

稲田: 熊元さんはヒトが普通に生きてたら起きないことばっかり起きてますから……笑ってまいますね。

ーーープライベートでもラジオの関係性と変わらず?

熊プロ: なんでもない話は結構しますよね。

稲田: 今日はこれ食べたいな、みたいな細か〜い感覚が似てるんですよ。

熊プロ: 「肉も魚も好きやけど、今日は魚かな」みたいなね。

稲田: 金銭感覚とかも。お互いそんなにケチらない。

熊プロ: ネタ合わせで、喫茶店入って軽く食べようかっていうときに「ネタ合わせやねんから安いとこでええやん」っていうのも全然わかるんすけど、1000円超えてても一旦全然入れますよ、みたいな。

稲田: まあ後から文句言うことはあるけど。

熊プロ: そういうところの感覚が一緒なのはラジオをやるにしても良いですよね。

ーーーラジオをされてる方って、番組でしゃべるからほかの場所ではコンビの会話が減っちゃうみたいイメージもありますが。

熊プロ: 「これ言いたいけど、番組があるからまだあれか」っていうのはたしかに出てきたかも。稲田さんの出会い系アプリの話も、前やったら普通にしゃべってくれたんですけど、今はコーナーになっちゃったんで。

稲田: 初見のリアクションが欲しいですからね。だからプライベートでは表で言えへんことしか話さんくなるというか、悪口だけになっちゃってます。

熊プロ: 楽屋ではほんまに嫌なことばっかりしゃべってますね(笑)。

ーーーラジオ用に生活もちょっとずつ変わっていくものですか? 番組のフリートーク用のネタを作りに出かけることもあったり?

稲田: 恋愛の話なんて家におっても生まれないんで、ないときはどっちにしろ街に出るしかないですね。仕事になりすぎたら嫌やな、とは思ってますけど。

熊プロ: 「幸せになろうよ」も稲田さんが毎回やとあれやから、私もたまには行くことになってるんです。

稲田: 一応交互になってて。

熊プロ: 行こう行こうと思いながら実際あんまり行けてないんですけどね。腰が重くてずっと家にいます。

ーーーたしかに、熊プロさんのフリートークは家の話が多いかもしれません(笑)。

稲田: 熊元さん、ほんまに家の話ばっかりしてますよね。

熊プロ: もう5月になったんで、さすがに家以外のことも話さないといけないですよね(笑)。ずっと家におるから、家の話ばっかりなる。そろそろ家から出ないと。

稲田: まあでも最近まで単独があったんで、終わったら外行こうとは思ってました。

熊プロ: 私も今週テーマパークとか行こうと思ってます。

稲田: ええやんええやん(笑)。

マユリカと一緒にいすぎるのも……

ーーー上京されて∞ホールに所属になりましたが、劇場周りのお話もまだラジオでするほどは?

稲田: 私はまだ劇場メンバーとはそんなに遊んでないかも。

(マユリカ中谷さんが楽屋入りされる)

稲田: またパーマ当てた?

中谷: 当ててないよ? ……え? 変ちゃうで?

熊プロ: 変ちゃうらしいです(笑)。

ーーーでは、まだ劇場では個人活動が多いですか?

熊プロ: いやいや、私らが上京するタイミングはありがたいことに関西メンバーも多かったですから。居場所がないなんてことは全然なく。

稲田: 劇場におる人も、もともと大阪時代から知ってる方ばっかりなんで。懐かしい気持ちになるくらいです。

ーーーたしかに、現在の∞ホールは上京組が多いですよね。

熊プロ: そうでなんですよ。 

稲田: 阪本がラジオで「居場所ない」って言ってるけどあれ嘘よな?

熊プロ: 全然居場所ありますよね。

稲田: マユリカはみんなに好かれてますし。劇場の人も、どこにおってもしゃべりかけてくれるような人しかいませんから。阪本が勝手にひとりでおることがあるだけで。

ーーー先程からマユリカさんのお話も出ていますが、同じラジオ関西のPodcast枠ということで意識される部分もありますか?

『マユリカのうなげろりん!!』公式YouTubeチャンネルより

熊プロ: 『うなげろりん!!』はずっと聴いてましたよ。マユリカさんは普通の話を広げていくチカラがすごいです。

稲田: ……え? あんな広げへんラジオなくない? 中谷だけはあれやけど阪本なんかまったく広げてないやろ。

熊プロ: そうか……広げるというか、話をつっつく感じっていうんですかね。なんでもない話でもおもろい展開に持っていく嗅覚が阪本さんはやっぱすごいじゃないですか。

稲田: ああ、そういうことね。

熊プロ: 中谷さんもなにかやるってなったらひとつはおもろいことが起こりますし。……でも最近はおふたりと一緒におりすぎて、線引きがバカになってしまってるんですよ。

ーーー線引きですか?

熊プロ: マユリカさんやからこそ許されてるキモさのラインってあるじゃないすか。普通の人やったら絶対許されへんような。マユリカさんとずっと一緒におるせいで、キモさが移りそうになってまうときがあるんです。イケるじゃないかと思って私もそういう話をしちゃうんですけど、全然あかんことのほうが多いんで。これはほんまに気を付けなあかん。

グッズの話、進んでます?

ーーー番組ではグッズのお話もされていますが、案はまとまって来ましたか?

稲田: 今日も番組がはじまる前にちょっとしゃべったりしたんですけど、まだなんにも決まってないですね。

熊プロ: 番組でも案が出てたタンクトップとか、あとは女性でも男性でも使えるからポーチがいいんじゃないかとかね……なんせ稲田さんがどうしても無地がいいって言うので(笑)。

稲田: 無地がいいですね。あってもすかしたら見えるくらいでいいです。

熊プロ: 「ラジオ関西」っていう文字グッズに入れません? 私「ラジオ関西」って字面好きなんですよ。

稲田: 絶対入れへん方がいい! なにこれ?ってなるよ。 

熊プロ: そうですね……じゃあめっちゃリアルなぬいぐるみとかどうですか? 私らの着せ替え人形とか。え、着せ替え人形ありじゃないですか? ちゃんとしわもあって、稲田さんのほくろも描いて、髪もね、一本一本息を吹いたらファっとなるような。

稲田: なんかこだわり多くない? お金かかるのはたぶん無理やで?

熊プロ: 高いか。たしかに予算的に一発目じゃないよな。

稲田: こんなん言ったらあれですけど、一回目はほんまに売れなあかんらしいので。

熊プロ: そうなんですよ。絶対に買ってもらえるやつを作らないといけない。

稲田: 二回目はなんでも良いらしいです。マユリカの写真集も二回目なんで。だから一回目はマジで考えよ。

マユリカファースト写真集「Perfect!!」

外で聴けないラジオにしたい

ーーー最後に改めて『紅しょうがの好きズキ!』の聴きどころをおふたりから聞かせていただけますでしょうか。

熊プロ: プライベートの話はなにも隠さずに全てさらけ出してるほうやと思うんです。「幸せになろうよ」なんて、どう考えても稲田さんのマイナスプロモーションですからね(笑)。そういう話も嘘なくしゃべってるところが私は面白いんじゃないかと思います。裸感といいますか。それを楽しんでもらえたらなと。

稲田: 今のところ聴いてくれてるのは女性のほうが多いらしいんですよ。

熊プロ: 女性の方からは「そんなんあんま言わん方がいいよ」っていうようなところまで「共感できます!」って言ってきてくれるんでありがたいですね。男性の方にはまあ、こんな女おんねやっていう感じで聴いてもらえたら。

ーーー番組終わりの小噺のコーナーもストイックすぎて聞きどころだと思います。あのコーナーは誰から提案されたのですか?(編注:『好きズキ!』では番組終わりに熊元プロレスが小噺をひとつ披露する。)

熊プロ: 番組がはじまるときに、私から。

稲田: かっこいいな(笑)。

熊プロ: 私エピソードトークが一番苦手で。ふたりでしゃべるぶんにはお互いで補足し合ったりできるんですけど、自分の言葉だけで面白く聴かせるって本当に難しいじゃないですか。やからラジオの最後、綺麗に締めないといけないところで「小噺を話しますよ!」って風呂敷広げたら緊張感が乗っかって練習になると思ったんですよね。

稲田: 私は無理せんでええでってずっと言ってるんですけどね(笑)。

熊プロ: 1回目から聴いてくれたら、どんどんいい感じになってくると思うので楽しみにしてください。最後まで絶対続けるんで。でも逆にあれか、仕上がってもうて、ただただ面白い話ってなったらあんまか……

稲田: いやいや、それでいいんやで(笑)。

熊プロ: それはそれで続けたらええんか。面白い話をただしゃべったらええんか。

ーーー稲田さんはいかがでしょうか。

稲田: ラジオ番組の名前で検索したときに「笑ってもうた」「電車で聴かんかったらよかった」みたいなリアクションを見かけることあるじゃないですか。あれってめっちゃ褒め言葉やと思うんです。自分もマツエクしてもらってるときにラジオ聴くんですけど、マユリカの番組で笑ってもうてマツエクが変な感じになることがあって。自分らの番組もそうなればいいなと思うんですよね。

熊プロ: たしかに良い意味でみんなが家だけでしか聴けないような、外で聴けないラジオになったらいいなと思いますね……ごめんなさい今稲田さんのやつを勝手にまとめてしまいました。

稲田: たしかに、今なんか話盗られてましたよね(笑)?

熊プロ: 外で聴けないラジオにしたいです。これ私が言ったことにしてもらって良いですか?

稲田: そうですね、そういう感じになればと思います(笑)。

文・編集:福田駿 撮影:堀越愛

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