「金銭的な事情で芸人を辞めてほしくない」。芸人を応援できるオンラインチップサービス『ココロヅケ』の活用法とは 【「ココロヅケ」開発者×勝又 インタビュー】

『ココロヅケ』は、投げ銭することで気軽に応援の気持ちを届けられるオンラインチップサービスだ。もとは飲食店での活用を前提に開発されたが、現在はお笑いやスポーツ、演劇など様々なジャンルで“頑張っている”人を直接応援できるサービスとして活用が広がっている。利用方法も簡単で、LINEがあれば登録可能。

『ココロヅケ』を考案したのは、株式会社Off AXIS社長の水吉隼一さん。「頑張っている人が報われる世の中にしたい」という想いから、芸人への導入を促進している。その気持ちに賛同し『ココロヅケ』を広めようとしているのが、兄弟コンビの勝又(2018年に解散後、弟は芸人を引退。兄のaniはユニット活動等で芸人を続けている)。芸人にとって、『ココロヅケ』にどんな活用性があるのか?Off AXIS社長の水吉さん・社員の佐久間さん、そして勝又の二人に話を聞いた。

★(お笑いファンの方へ)『ココロヅケ』はコチラから
★(芸人さんへ)『ココロヅケ』を導入したい方はm-hirayama@offaxis.jpにお問合せを

ライブ中心で活動している芸人と相性が良い

———『ココロヅケ』とは、どんなサービスなんでしょうか?

Off AXIS 佐久間大翔(以下、佐久間): ひとことで言うと、簡単に投げ銭を送れるシステムです。もともとは、コロナ禍でダメージを受けた飲食店のために開発したシステムなんですよ。飲食代とは別に、お客さんからチップをいただけたら面白いんじゃないかと思って。何店舗かの飲食店で導入していただいたんですけど、店員さんが「投げ銭ください」と言うのはなかなかハードルが高い。それもあって「芸人さんやスポーツ選手のほうが相性良いんじゃないか」という考えになりました。それで、勝又さんをはじめとして『ココロヅケ』を使っていただいている方にも協力いただきながら、芸人さんへの周知を進めたいと思っているところです。

「ココロン」を購入すると、『ココロヅケ』を使っている芸人にチップを送ることができる。100ココロン=300円

Off AXIS 水吉隼一(以下、水吉): 芸人を続けたいけど金銭的な事情で諦めないといけない方って、すごく多い気がするんですよ。スポーツ選手や役者さんなどもそうだと思いますけど、有名になる前はアルバイト生活をしている方が多いですよね。『ココロヅケ』は、そういう人たちがやりたいことを続ける環境をつくるために応援できる仕組みなんです。コロナ禍で外出を控える人が増えて投げ銭文化が育ちましたけど、今はライブハウスにも人が戻ってきている。ここ数年で生まれた投げ銭文化を、このまま活かせないかなと思ってます。日本人って親切な方が多いので「応援したい」という気持ちを簡単に形にできるシステムがあれば、活用してくださるんじゃないかなと。

『ココロヅケ』に登録すると、導入している芸人に直接「ココロン」を送れる

———芸人さんに『ココロヅケ』の話をした際は、どんな反応でしたか?

水吉: 「すごく良い!」という反応でした。最初は本当に需要があるか分からなかったので、知り合いの芸人さんに話を聞いたんです。そうしたら「リアルにめちゃくちゃ役に立つ」と。いわく、地下に埋もれている芸人は山ほどいて、彼らを応援してくれている人もたくさんいる。だから「そこをうまく繋げられたらすごく良いと思う」と言っていただけました。

勝又・ani(以下、ani): 僕も、話を聞いて「芸人の文化と合うんじゃないか」と思いました。元々、芸人の世界には“おひねり”という投げ銭に近い文化があります。その現代版みたいなイメージだなと思いましたね。

左から、水吉さん・佐久間さん・弟さん・aniさん

———芸人目線で見て、『ココロヅケ』と相性が良さそうなのはどういう芸人さんですか?

ani: ライブ中心で活動している芸人ですね。ライブはギャラをたくさんいただけるわけではないので、出演料にプラスでお金が入れば芸人を続けやすいと思います。芸人を応援しているお客さん的にも、「サポートしたいけどどうしたら良いか分からない」という方はいると思うんですよ。

———たしかに、応援しているからと言って現金を渡すのは憚られますね(笑)。『ココロヅケ』は少額からでも送れるので、それも良さそうです。

ani: ですよね(笑)。現金を渡すよりはライトに応援できるし、芸人からも感謝のコメントが送られてくる。そういうのも良いなと思いますね。

———ちなみに、ライブ界隈で知名度があっても収入は厳しいものなのでしょうか?

ani: そうですね……。バイトをやって、ようやく生活できている芸人が多いと思います。ライブって準備もいりますし、移動しないといけないので出る回数にも限界があるんですよ。

勝又・弟(以下、弟): ライブ中心の活動で食えている人って、一握りだと思いますよ。出演費は数千円なことが多いですし、交通費や衣装代、小道具代もかかる。そう考えると、ただでさえ多くない出演費もすべてが収入になるわけではありませんしね。

ani: お笑いライブのチケット単価も、1000~1500円程度と安い。演劇だと1公演5000~6000円ってこともありますけど、お笑いライブでそのレベルってほとんどない。主催者の方もギリギリでやってると思うので、芸人にたくさん渡せないですからね。

弟: 有名な芸人さんでも、単独ライブは入場料だけではペイできないこともあるみたいですよ。だからグッズをつくって、それが売れたらようやくトントン。

ani: ただ、チケット代を上げちゃうとお客さんも来にくいですよね。まずは見てもらいたいと思うと、なかなか単価は上げられない。と考えたとき、『ココロヅケ』だったらやりたい人だけが投げ銭するので良いなと思います。

まずは100人導入が目標!

———すでに『ココロヅケ』を導入している芸人さんは、どんな成果が出ていますか?

水吉: 単独ライブ後、『ココロヅケ』を通して計2万円くらい収入を得ることができたという話を聞いています。お客さんもライブを観て熱い気持ちになるのか、「もっと応援したい」と思ってくださるみたいで。もっと『ココロヅケ』が浸透して、芸人さん・お客さん双方にとってこういうことが当たり前になれば良いなと思いますね。ただ、システムはもっとブラッシュアップしたくて……。実は、『ココロヅケ』の開発費は当初2~300万の予定だったんですよ。でも気付いたら、すでに700万円以上かかってる。泣きそうです(笑)。

弟: それ、言っちゃって良いんですか?(笑)

水吉: 今考えている改修を実行すると、さらに100万円くらいかかる予定です。でも、僕らが『ココロヅケ』から得られた利益は現時点でまだ5万円くらい(笑)。今は、ガチンコの慈善事業みたいになってます。

弟: サービスを使う側としては、ありがたい話ですけど……(笑)。

水吉: もう引くに引けないところまで来てます(笑)。でも、本当に可能性あると思ってるんですよ。いろんな芸人さんに使っていただいて、少しずつ認知度を上げていきたいですね。

———まずは、何人くらいの芸人さんに使っていただけるのが目標ですか?

水吉: 最低でも100人くらいの芸人さんに使っていただければ、きちんと「事業」として成り立つかなと思ってます。お客さんから彼らに投げ銭をしていただければ、一部が僕らにも利益として入ってくるので。

芸人は「助けて」と言える職業!?

———勝又さんから芸人さんに『ココロヅケ』の紹介をすると、どんな反応がありますか?

ani: けっこう、みんな興味を持って聞いてくれますよ。

弟: 「面白そう」と言ってくれますね。僕ら的には、紹介したサービスによって芸人が損をするのは嫌なんです。たとえば登録がすごく面倒くさいとか、先にいくらか支払わないと使えないとか。でもその辺は、水吉さんも「絶対に損することはない」と言ってくれたので安心してオススメできています。水吉さんは「お金がなくて辞める芸人は見たくない」ってすごく言ってくれるんですけど、僕らも活動休止している理由が”お金”なんですよ。お金さえあれば、ずっとネタをやっていたかった。だから『ココロヅケ』がもっと早くできていて、毎月家賃代くらい入ってきていたら、まだ続けてたんじゃないかな……と、そんなことを思ったりもします。仲良い芸人もみんなお金で苦労してるんで、うまく活用してほしいですね。

水吉: 少し前までは、お金がなくて活動できないのも「しようがないこと」だと思ってたんですよ。厳しい世界だと思いますし。でも、やっぱり頑張ってて面白い人には報われてほしい。芸人さんは、身を削って頑張ってるわけじゃないですか。そこに対して「なにかできないか」という気持ちが、今はすごく大きくなりました。6月に『ココロヅケ』主催のライブをやってみて思ったんですけど、芸人さんって「投げ銭してください」って言いやすい職業ですよね(笑)。飲食店だと「そんなこと言えない」という感覚が大きいですけど、芸人は「助けてください」とか正直に言いやすい(笑)。僕は、これが「良い」と思ってるんです。そもそもおひねり文化のある世界ですし、それがオンラインでできるのが当たり前になれば良いなと。だから、僕らも破産しない程度にお金をかけて、サービスを育てていきたい。そうすれば、いつか僕らも報われるだろう……そう思いながらやってます。芸人さんにとって導入のデメリットはないですし、『ココロヅケ』で毎月5万、10万稼げるようになったらだいぶ変わりますよね。

———バイトで稼ぐのではなく、『ココロヅケ』で収入があったほうが芸人さんもネタに時間をかけられますね。

ani: そうですね。たとえば、アメリカってチップ文化があるじゃないですか。アメリカでは基本給が少なくても、チップで稼ぐ人が多い。芸人もどちらかというとそっち寄りだと思うんです。出演費などの給料のほかに自分たちがやったことに対する報酬があれば、芸人も続けやすくなる。『ココロヅケ』がもっと普通になったら、だいぶ生活が変わると思いますよ。

———勝又さんは、今後どんなふうに『ココロヅケ』を使いたいと思っていますか?

ani: 7月にココロヅケと一緒にライブをやるので、まずはそこで使いたいと思ってます。芸人だけではなく、アイドルやパフォーマーに出ていただく予定なんですよ。アイドルとか、特に『ココロヅケ』と親和性ありそうですよね。だからそれも楽しみです。

ココロヅケライブ
・会場:新宿ファンタジーホール
・住所:新宿区四谷4-9 新宿44ステーションビル8階
・開場:19:45 開演:20:00
・チケット料金:2000円(購入はこちら:https://tiget.net/events/258697
〈YouTube配信〉https://youtube.com/live/DxE90KPznd4?feature=share

いつか「ココロヅケがあって良かったね」と言ってもらえるように

———今後、『ココロヅケ』でどんなことができるようになったら良いと思いますか?

水吉: 個人的には、投げ銭をしてくれた方への対価をつくれたら良いなと思っています。物販だったら、お金を支払ったらグッズが手に入りますよね。『ココロヅケ』にもそういうものをうまくつくれないかと思っていて……。たとえばYouTuberに投げ銭するのは「コメントを読んでほしいから」だったりするじゃないですか。物販とコメント読みの間で、なにかできないかなと……。

弟: たとえば、世に出てないショートコント動画が観られるとかどうですか?ライブではできないような、滑ったネタを毎月出すとか(笑)。ファンの方だったら、1回コーヒー飲むの我慢して「今月のボツネタ見よう」って思っていただけるかも。

水吉: お礼のメッセージを自動返信で送れるので、そこにそういう動画URLを貼り付けることは今でもできるんです。でも芸人さんって、面倒なことはなるべくやりたくないですよね?(笑)いかに芸人さんにとって面倒じゃないように場所を整えるか、僕らで考えることも必要だなと思ってます。それから『ココロヅケ』を使っている芸人さんのなかには、お客さんからココロヅケが入っていることに気付いていない方も結構いるんですよ。

ani: そうなんですね!

水吉: 誰かが投げ銭を飛ばしてくれたら、メールかなにかで通知が来るようなシステムを開発中です。今は、自分で自分のアカウントを見にいかないと分からない仕様なんですよ。まさか、こんなに気付かれないとは。芸人さんって、思っていた以上に芸事以外はやりたくないのかもしれません(笑)。

———最後に、芸人さんやお笑いファンの方にメッセージをお願いします。

水吉: 実は、僕自身プロスポーツ選手になりたくて大学卒業後に就職をしなかったという過去があります。やりたいことを続けていくのは、並大抵のことじゃないですよね。それを知っているからこそ、頑張っている人が報われる世の中になってほしいと思ってます。みんながみんな成功できるかと言うとそうじゃないけど、チャンスがある限りサポートしていきたいなと思っていて。『ココロヅケ』で一発大きく当ててやろうと思ってるわけではなく、芸人さんたちの会話のなかで「ココロヅケがあって良かったね」と思っていただけるような、芸人さんの歴史に残るようなものにしていけたらと思っています!ぜひ、活用してみてください。

勝又

★(お笑いファンの方へ)『ココロヅケ』はコチラから
★(芸人さんへ)『ココロヅケ』を導入したい方はm-hirayama@offaxis.jpにお問合せを

文, 編集:堀越 愛

撮影:フクダ