目指すは遊園地。流れ星☆が見据える、いち抜けた先にある新しいお笑いのかたち【流れ星☆単独ライブツアー『我道』直前インタビュー】

2023年7月29日(土)の岐阜公演を皮切りに、流れ星☆の単独ライブツアー『我道』がスタートする。神奈川・茨城・北海道・愛知・大阪・群馬とまわり、ラストの東京公演は9月23日(土)。毎年様々な地域で単独ライブを開催しており、ライブにはお笑いファンのみならず様々な層が訪れる。

流れ星☆のネタは、ポップでまっすぐだ。彼らのネタを見るとき“知らなければ笑えない”捻った知識は必要なく、すべての瞬間が面白い。ストレートでぶつかってくるような直球のネタは、清々しくかっこいい。……ただ、流れ星☆は最初からこうだったわけではない。話を聞くと、苦悩の果てに見つけ出した流れ星☆なりの美学が浮かび上がってきた。

★単独ライブツアー『我道』情報はこちらから:https://www.bsfuji.tv/nagareboshi/

漫才のスタイルを変えたら評価が変わった

———流れ星☆さんのネタは、見る者を選ばず老若男女にウケる印象があります。『THE SECOND』では、たきうえさんの「こっちは娯楽映画撮ってんのにニッチなフランス映画に負けた感じ」というツイートが話題になりましたね。

たきうえ: あのツイートで軽く炎上したんですけど、けっこういろんな芸人から連絡いただいたんですよ。「僕も同じ気持ちだよ」とか「たきうえさんの言うとおりです」って。でも、俺に賛同すると炎上しちゃうから誰も表では言ってくれない。隠れキリシタンみたいな感じ(笑)。でもプロとしていろんな考え方があるので、なにが間違ってるとかではなく、どんな考え方でも正解なのかなと思います。

ちゅうえい: 相方としてはたまったもんじゃないですよ。「流れ星☆のキャラ的にあれは言っちゃダメなんじゃないか」とか心配されたりしました(笑)。けど考え方は人それぞれなんで、こいつが言うように間違いも正解もない。あれはたきうえ個人の意見として受け取ってもらって、コンビとしては「お笑いをよくわからない人でも腹を抱えて笑える」ようなネタを常に目指してます。

たきうえ: そうですね。ただ、最初からそういう考えだったわけではないんですよ。昔はめちゃくちゃ尖ってました。それこそ「M-1で優勝したい」って気持ちが大きくて。「ネタで評価されたい」って思ってたのでネタにはすごいこだわってたし、万人受けとかまったく考えてませんでしたよ。むしろ“キャッチーでポップ”みたいには思われたくなかった。とはいえ、老若男女が審査するオンバトの成績は良かったので皮肉なもんですけど(笑)。

———現在は誰でも笑えるようなネタをしていますが、そもそもおふたりのお笑いのルーツはなんだったんですか?

ちゅうえい: 俺のルーツは、「家族が笑ってくれるとうれしい」ですね。それが、「クラスでウケるとうれしい」みたいに規模が大きくなって。俺は陽キャで、常に目立ちたいタイプ。先生の真似をしたりしてクラスで笑いを取ることに快感を覚えて、それが派生して芸人になったんだと思います。

たきうえ: 僕のルーツは漫画ですね。昔『コミックボンボン』ってのがあったんですよ。『コロコロコミック』のライバル誌で、大半の小学生はコロコロ派だったけど僕はボンボン派。ちょっとマニアックで、みんなが読んでないような漫画を読むのが好きでしたね。あと、おかんが持ってたので『パタリロ!』って少女漫画を読んでて、これは流れ星☆のネタにも繋がってる気がします。すごい美少年が変なブサイクに振り回されるみたいな(笑)。ほかには『ついでにとんちんかん』とか『ハイスクール!奇面組』とか……その辺がルーツですね。たぶん、ちゅうえいは“自分”でお笑いをやるタイプ。僕は“脳みその中身”を表現するみたいなタイプだと思います。

ちゅうえい: 俺はクラスの真んなかで笑いを取りたいから、わかりやすい顔芸とか動きとか屁。ポップですよ。でもこいつは、ちょっと捻じれてた気がしますね。

たきうえ: 本当はそうなんです。「老若男女にウケるネタ」っていうのは、ここ10年くらいで思いはじめたことなんですよ。明確に考えが変わったのは、2011年『THE MANZAI』初年度で決勝に残れなかったとき。

———どういう流れで変わっていったんですか?

たきうえ: まず、初期の『M-1グランプリ』で1回も決勝に行けずラストイヤーを迎えたのが大きな出来事ですね。

ちゅうえい: 当時の規則では、2009年がラストイヤーでね。

※2001年~2010年の『M-1グランプリ』は、出場資格が「結成10年以内」だった。2010年で大会が終了し、2015年に復活。その際、出場資格は「結成15年以内」に変更された。流れ星☆(当時は「流れ星」)は2000年結成のため2009年がラストイヤー。

たきうえ: 賞レースを諦めてたときに、新しく『THE MANZAI』がはじまったんですよ。「また賞レースに出れるんだ」とうれしく思ったけど、決勝に残れなかった。僕らと同期くらいのナイツやオードリーはすでに売れてて、下馬評では「次は流れ星だろう」って言われてたんです。認定漫才師50組には残れたけど、決勝に行けなくて。

ちゅうえい: そうそう。『M-1』って、決勝に行けるのが10組なので狭き門ですけど、『THE MANZAI』初年度は16組でね。

たきうえ: 16組には「さすがに残れるだろう」って思ったけど……

ちゅうえい: 一緒にライブに出て“横並び”だと思ってた芸人が軒並み決勝に残るなか、俺らだけ受からなかった。

たきうえ: そうそう。ハマカーンとかね。

ちゅうえい: それから、磁石やエルシャラカーニ。

たきうえ: そういう人たちがみんな決勝に行って、俺らが決勝に行けない。それが本当にショックだったんです。

ちゅうえい: 恥ずかしくてね。

たきうえ: そこで折れました。マジで「お笑い辞めようか」くらいまで行ったんですよ。それまでのアイデンティティを、全否定されたような気がして。

ちゅうえい: もう言い訳ができないですからね。『M-1』は狭き門だし当時は「吉本の大会」と思ってたんで言い訳ができた。でも『THE MANZAI』は16組だし、決勝に残った半分近くは吉本以外の芸人。「そこにも入れないのか」と、けっこう参っちゃったんですよね。

たきうえ: それで、僕は考えたんですよ。今までの流れ星は死んだ。芸人を続けるためには、今までと同じことをやっても意味がない。そこで初めて、「売れよう」と思ったんです。それまでは「売れたい」とか一切思ったことはなかったけど。

ちゅうえい: 「賞レースで決勝に行きたい」だけだったね。

たきうえ: そうそう。で、売れるためにどうするか。それまでは漫才をお客さんに見せてたけど、これからは「ちゅうえいをプレゼンしよう」って決めたんです。前はちゅうえいのギャグと漫才を分けてたんですけど……逆に言うと、昔は僕の漫才に“ちゅうえいのギャグという不純物”を入れたくなかった(笑)。

ちゅうえい: 俺のギャグは、漫才中じゃなくてライブのエンディングとかでやってたんですよ。

たきうえ: それを、漫才のメインに組み込もうと。負けた次の日に、こいつをマックに呼び出してそう伝えました。そしたら、えらいもんでちゅうえいの鼻の上に思いっきりニキビができてて(笑)。思春期でも吹き出物とか出ないタイプだったのに、ストレス感じてんだなと思いました。

———それは、負けたことのストレスですか?

ちゅうえい: 「漫才にギャグ入れよう」って言われて急にニキビが出たわけじゃないですよ(笑)。16組に入れなかったのももちろんショックでしたけど、「こいつらも決勝行けてないから大丈夫か」って思ってたヤツらがことごとく決勝に上がるなか、自分たちだけが行けない。それが本当にショックでね。すっごい痛いニキビができました。先っぽが白くならない、いっったいニキビです。

たきうえ: どうでも良いわ(笑)。でもそこからは早かったですね。漫才のスタイルを変えて、直後にラママのライブに持っていったんですよ。そしたら『おもしろ荘』のスタッフさんがそれを見ていて、オーディションに呼ばれたんです。

※渡辺正行が主催する若手育成ライブ

ちゅうえい: それまでは『おもしろ荘』のオーディションに行っても、箸にも棒にも掛からなかったんですよ。それなのに、そのときは5次予選くらいまであるなか3次予選からシードみたいな感じで呼ばれて。「これは今までのネタとは違うな」と思いましたね。

たきうえ: その辺から、業界側の考えがわかるようになってきました。それまでは「面白い漫才」をつくりたかったんですけど、これってみんながやってる当たり前のことなんですよね。広告的に言うと、ターゲットがわからなくて響かない。それを「ちゅうえいというギャグやるおじさんがいるコンビ」と差別化することで、「流れ星はギャグ漫才なんだ」とアピールできる。

———漫才のスタイルを変えたことで、老若男女がターゲットになったんでしょうか?

たきうえ: スタイルを変えて、営業メインで戦うようになったのがきっかけですね。当時、芸人は営業をちょっとバカにしてたんですよ。お客さんに寄せたベタなネタを「営業ネタやっちゃったよ~」みたいに自虐するとか、芸人にとってあんまり評価の高くない仕事だったんです。でも、俺らはこんだけポップになったんだから絶対に営業が強いと思って。ちゅうえいと事務所を説得して営業に力を入れはじめたとき、“老若男女を笑わせる”難しさに気付いたんです。

———その難しさとは?

たきうえ: たとえば、デパートの営業。迷子のお知らせが流れたり赤ちゃんが泣いたりするんで、漫才を見てくれる土壌ではないんですよ。ネタ中に写真を撮られたり指さされたりすると、気が散って漫才できないから「エレベーターを止めてくれ」って言う芸人もいると聞いたことがあります。

ちゅうえい: エスカレーターじゃない?

たきうえ: エスカレーターか。でも、俺らは逆に「その環境を利用しよう」と。ちゅうえいがエスカレーターに乗ってギャグしたり、赤ちゃんが泣いたら「泣きやませるギャグをやりますからね~」とやってみたり。置かれた環境を全部取り込んだ漫才をするようになって、ほかの芸人と差別化を図りました。老若男女を意識しだしたのは、この辺からですね。このころから、どこでも通用する漫才をつくるようになりました。

ちゅうえい: 老若男女というか「お笑いに興味ない人でも面白い」ことを意識するようになりましたね。デパートなんて、通りすがる人の足を止める作業ですから。そう考えると、元々俺らは路上でコントやってたんですよ。

たきうえ: 下北沢でね。

ちゅうえい: 芸人をはじめたばかりのころ、事務所の入り方もわからなくて毎日のように路上コントをやってました。で、事務所に入って5年くらい経ったとき、もう1度路上でやってみたんですよ。そしたら、すんげぇ恥ずかしくてなんもできなかった(笑)。だから、あのころの俺らは凄かったなと思いましたね(笑)。そう考えると、デパートとかでやってる感覚は路上時代に似てるかもしれない。

———芸人をはじめた当初に、原点があったんですね。

ちゅうえい: ネタどうこうより、まずは興味ない人の足を止める。そこは今に繋がってるのかもしれません。

たきうえ: そうね。賞レースに向けて、劇場できっちり一生懸命漫才をやってる芸人を見ていて思うのは、「すげぇ恵まれた環境でやってることに気付いてないんだろうな」ってことですね。

ちゅうえい: でも、それはそれで間違いじゃないんですよ。ネタという作品をどんどん崇高にしていくという意味では、そういう環境じゃないと成り立たない。それもそれで良くて、俺らがまったく違う畑に行ったってだけですね。

目指すは新しい単独ライブの形

———メジャーになるほど、ネタをやらなくなる芸人も多いと思います。一方、ずっとネタをやり続けている流れ星☆さんにとって単独ライブはどのような位置付けにありますか?

たきうえ: 「たきうえ」と「ちゅうえい」っていう船があるとしたら、単独ライブは「港」ですね。年に1回は、ふたりが戻ってくる場所。これがあれば、あとはそれぞれ好きなことをやってても良いんじゃない?って感じですかね。

ちゅうえい: それから、存在証明。年1回単独ライブをやることで「自分はお笑い芸人だ」って思い出します。いろんな仕事が増えて自分は「なにをやってるんだろう?」って思ったとき、ライブを続けていないと“軸”を見失っちゃうんですよ。

たきうえ: 軸がないと、僕もただの大家さんになっちゃう。

ちゅうえい: 今は、大家のほうが軸太いんじゃないの?

たきうえ: そうですね、そっちのほうが太くなってきてるかも(笑)。個人的に、単独ライブをやりはじめた理由は、シティボーイズさんに憧れたことなんです。大竹まことさんのラジオに出たのがきっかけでライブに誘っていただいたんですけど、当時はよく知らなかったんで正直行きたくなかったんですよ(笑)。でもいざ行ったらめちゃくちゃ面白くて、あまりにも凄いのでお客さんのアンケートも全部読ませてもらいました。そしたら「やっと息子と来れるようになりました」とか書いてあって、「何歳のときからファンなんだ!?」と。俺らの常識では、ファンって1~2年でどっかに行っちゃうんですよ。「一生大好きです!」って言ってても、すぐいなくなっちゃう。

ちゅうえい: 「一生大好き」って言ってるファンレターに書いてあったメールアドレス、なんやったっけ?

たきうえ: ノンスタイルドットラブ(nonstyle.love)。

ちゅうえい: (笑)。

たきうえ: よくわかんないし、ファンって短命だと思ってたんですよ(笑)。でもシティボーイズさんのファンはそうじゃない。そして、メンバーは普段全然違うことをやってるけど、年に1回ツアーで戻ってくる。それってかっこいいなと。俺の根本には、シティボーイズさんへの憧れがありますね。振り返ってみると、芸風とか全然違いますけど(笑)。

———流れ星☆さんの単独ライブには親子席もありますし、シティボーイズさんのように長く愛されるという意味で、今後もやり続けていく意義がありそうですね。

ちゅうえい: やり続けられる環境が続けば良いなとは思いますけど、もしかしたらいずれは“単独ライブ”って形ではなくなる可能性もありますね。サーカスみたいになってる可能性がある。単独ライブとはあくまでも今までのかたちであり、遊園地みたいな?わかんないけど。

たきうえ: なに言ってるか僕もわかんないですけど(笑)。

ちゅうえい: とにかく、“単独ライブ”ってカテゴリではなくなるかもしれないですよね。

たきうえ: でも、たしかにそうなりたいですね。俺らは芸人として「いち抜けた」ってなりたいんですよ。お笑いを好きじゃない人でも、デートで「流れ星☆が楽しいことしてるから観に行こう」みたいな存在。

ちゅうえい: そうそう。「楽しませたい」って気持ちはなにも変わらないんですけど、いわゆる“単独ライブ”とは違う形になっていきたいですね。

たきうえ: アトラクションって感じですかね。

ちゅうえい: そう、だから遊園地って言ったの(笑)。

たきうえ: うん、良いよ良いよ。すごい良い。遊園地とか、水族館とかね。

ちゅうえい: え、水族館はやだ。大体、俺が水槽のなかに入らされるんだから(笑)。まだぼんやりですけど、そういう方向に行く可能性はありますね。

ちゅうえいトークから“ニッチなフランス映画”まで

———最後に、単独ライブツアーに向けて意気込みをお願いします。

ちゅうえい: ぶっちゃけ、俺はどんなネタをするかまだわかってません(笑)。とりあえず言えるのは、「なにも考えずリラックスした状態で来てください」ってこと。うちのライブは、本当になにも考えなくて良いんで、ただ笑いたい人だけ来てください。普段からお笑いを観てるような方は、箸休め感覚で(笑)。

たきうえ: お笑いが好きな人は、『THE SECOND』の続きだと思って来てほしいですね。

ちゅうえい: え、そうなの?それってマイナスプレゼンじゃない?

たきうえ: そんなことないです。『THE SECOND』のような楽しみ方ができるライブです。

ちゅうえい: ごめん、どういうことか全然わかんないんだけど(笑)。

たきうえ: 老若男女が楽しめるのが軸にありますけど、今年は「セカンド用のネタ」も入れますから。

ちゅうえい: たぶん、「たきうえとちゅうえい」ってことだと思う(笑)。『THE SECOND』の続きってのは、“ニン”の面白さが多めになってるってことですかね?

たきうえ: そうですね。

ちゅうえい: お客さん参加のネタもやる?

たきうえ: お客さんとちゅうえいが会話する「ちゅうえいトーク」もやる予定です。ディズニーランドにタートル・トークってアトラクションがあるじゃないですか。あれをちゅうえいでやろうと思ってます。あと「ギャグギャグディスコ」っていう、ちゅうえいのギャグをみんなで叫ぶ洗脳コーナーみたいなのもあります!

ちゅうえい: ……だから、「お笑いライブを観る」というより「遊園地に遊びに行く」感覚で来てもらいたいですね。気を付けていただきたいのは、次の日になったら俺らがなにをやってたか全部忘れます(笑)。それくらいバカなことをやるので、気楽に来てほしいですね!

たきうえ: 今年は、来年の『THE SECOND』を見据えたネタも用意してますよ。“ニッチなフランス映画”のネタも、あえて用意しました。一度は否定しましたけど、「そういうのもつくれるよ!」ってね。

ちゅうえい: 「そういうのもつくれるよ」って言っちゃうのは、すごくダサいね(笑)。

流れ星☆ PROFILE

左:ちゅうえい
右:たきうえ

★公式プロフィール:http://asaikikaku.co.jp/talent/profile/nagareboshi
★ファンクラブ:流れ星☆ オフィシャルファンクラブ「STAR CLUB」
★YouTube:流れ星TV【公式】

文, 編集:堀越愛

撮影:ヘンミモリ

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