芸人に縛られない、でもやるからには頑張るだけ【囲碁将棋 インタビュー(後編)】

185センチの長身にスーツを纏い、存在感ある漫才に定評がある芸人・囲碁将棋。ライブ出演のほか、ラジオやテレビなどで広く活躍する芸歴17年目の漫才師です。2021年には公式YouTubeで「絶景漫才」を始めるなど、新しい試みも。インタビュー後編では、二人の仕事との向き合い方、そして今後についてお話を聞きました。(前・中・後編の後編/前編中編

動物に食われたい

―お二人ともご結婚されてますが、結婚したことで考え方など変化はありましたか?

文田大介(以下、文田): 妻と子どもがいて張りはあるけど、正直、窮屈ではある。なんだろ、相方とライブの話をずっとしてても口論にも喧嘩にもならないのに、(家族の)イベントの話だとめちゃくちゃ喧嘩になるから。今までは自分一人で走ってたけど、割れ物を背負いながら走ってる感じ。「割れちゃう割れちゃう!」って。そんな感じですね。

―娘さんをInstagramにUPしてますよね。あれは、どんな経緯から始めたことなんですか?

文田: あれはねぇ、最初は妻に対する攻撃だったんですよ。喧嘩して出てっちゃったとき、勝手に娘の写真載せたら嫌がるかなって。で、「何考えてんの、載せないでよ」って連絡来たけど、「でもお前家にいないから」って。その流れで、「どうせやるなら、この可愛い顔載せて」って。投稿を見た妻のお父さん・お母さんが「(孫の)写真見れて嬉しい」となったのか、徐々にOKになって。

根建太一(以下、根建): 怖すぎるわ。

文田: だから、俺も娘を出したいとは思ってなくて。本人に嫌だって言われたら多分止める。

―お子さんには、お父さんが芸人ということは伝えてるんですか?

文田: 仕事のことは知ってる。子どもが嫌だって思うような芸人活動はしたくないね。

―お二人が「したくない」と思う仕事ってありますか?

文田: 若いグラビアアイドルとかと、キャッキャするタイプの仕事は嫌い。鼻の下伸ばしたくない。

根建: 「やりたくない」というより、やってみたいのは体を張るタイプの仕事。僕「尾形軍団」(パンサー・尾形貴弘が率いる軍団)に入ってて。尾形さんって鬼体張ってるじゃないですか。正直、あのー、1年目とかの頃は尾形さんなんて馬鹿にしてたんですけど……

文田: 思ってたとしても言うなよ(笑)。

根建: 汚れ芸人だと思ってたんですけど、最近ちょっとカッコよく見えてきて。だから、尾形さんでもできないようなことやってみたいです。本当の(実弾が入っている)ロシアンルーレットとか。あと動物に食われるとか、本当に危険なやつ。

文田: 怖いよ。

根建: もしそれで片腕とか失ったら、誰かが一生面倒見てくれそうじゃないですか。

文田: 面倒見てくれないよ。

根建: そんくらいの気持ちでいきたいなと思ってるんですよ。正直、片腕無くても生きていけるじゃないですか。

「絶景漫才」YouTube、新しくお店を始めたみたいで楽しい

―2021年から、YouTubeで「絶景漫才」を始めましたよね。なぜこれをやろうと思ったんですか?

文田: なんかね、カナダから「なんでYouTubeやらないんですか?YouTubeやってないの囲碁将棋だけです」ってファンレターが届いて。その子が日本に来るときに会ってみたら、企画書作ってきて。根建は変なプライド発揮して、「YouTubeやったら(芸人じゃなく)YouTuberじゃん」って(YouTubeが)めちゃくちゃ嫌いで。時代が8年くらい遅れちゃっててね。

根建: やめろ(笑)。

文田: 20年とは言わないけど8年くらい遅れちゃってるから、多分相方はやんないと思うなって言ったけど、その子の熱量が凄くてね。他の芸人YouTube観ると、スタジオで撮ったネタは笑いも無くて滑ってるし、ライブシーンを切り取ってもYouTube用じゃないし……と思って、(その人が持ってきた)パペット漫才をやろうかなと。で、一緒にやってる作家にも会わせたら、普段意見言わないのに「本当に面白いと思ってるんですか?ほかにやりたいことないんですか?」って言われちゃって。で、昔からやりたいと思ってた「絶景漫才」の話をしたら、「それ良いじゃないですか」って。

―キレイなところでやりたいと。

文田: 正直、僕らはネタなんて人前に残る形でやりたくないから。だから、最終的に「ネタつまんねぇけど、映像良いな」ってなるようなものならやるって言ってね。今は漫才をしてる画が多いけど、ゆくゆくは人がいないくらいの状態にしたい。

―絶景に、漫才だけが響いてるみたいな……

文田: 難しいね、YouTube。観てるだけだと「こうしたらいいじゃん」って思うこといっぱいあったけど、自分でやると分かんない。でも、今は新しくお店を始めたみたいで楽しい。

―センターマイクは自前なんですよね。

文田: 高いよね、センターマイク。ジャンク品で5万円くらいした。数少ない、自分のサンパチマイクを持ってる芸人だと思う。

「人が繋いでくれた」ラジオの仕事

―ラジオ番組をいくつも担当されてますよね。思い入れの強い番組はありますか?

文田: 一番思い入れあるのは、「レディオ湘南(藤沢エフエム放送)」っていうコミュニティFMの、誰も聴いてない『湘南ワンダーチャンス』って番組。当時、22歳だった新卒のマネージャーが最初にとってきてくれた仕事で。本当は辞めたいんだけど(笑)、その子の最初の仕事だから。

根建: 「この人たち本当に芸人?」くらいの、聴いてられない話してる。

文田: どうしても収録を休まなきゃいけない週があって、どうにかなんないか相談したら、「あ、大丈夫です!1本余ってる収録あるんで」って言われて。よくよく聞いたら、2週連続で同じ収録を流したことがあるって。考えられないでしょ。収録なのに、ラジオで1番大事なスポンサーの名前が入る前に終わっちゃうとかもあった。普通は大事故なのに、凄いっすよ「レディオ湘南」。

根建: そこで10年くらいやらせてもらってますね。

文田: それと、川崎フロンターレの番組(『囲碁将棋と明日美のハッピーフロンターレ!!!』/ラジオ日本)もやってるんですけど、これもそのマネージャーが繋いでくれた仕事なんですよ。契約社員だったから3年でマネージャー辞めちゃったんだけど、そのあと川崎フロンターレに就職してね。更に、元々FMヨコハマにいたディレクターがラジオ日本に行って、その縁で二人が繋いでくれた番組なんですよ。人が繋いでくれてますね。あとはGERA(『情熱スリーポイント』)か。好きなこと言えるし、反響あるし、仕事に繋がる可能性もあるからずっとオーディション受けてるくらいの感じでやってるよね。

根建: お笑いラジオやらせてもらってるなーと感じるのはGERAですね。

文田: 一番難しいのもGERA。ハガキ職人さんとかリスナーもついてくれてるから、美容師さんが独立してお客さん連れていくみたいな感じで、他のラジオやるときもついてきてくれるようなファンが獲得できたかな、と思う。

根建: そもそも作家が入ってるのもGERAだけだしね。(作家の)二人ともお笑い知ってるし。

文田: 最近の若手情報とか教えてくれるのはめちゃくちゃ嬉しい。同業者のこと分かんなくなったら、老けた感じ出るもんね、かっこ悪いというか。この情報化社会において同業者分かんないって、もうオワコン、アンテナ張ってないんかってなっちゃう。ほんとに張ってないからなんとも言えないけど(笑)。

50歳になっても、M-1で勝負できるネタを

―囲碁将棋は芸人評価が高いイメージがあります。これまで同業者に言われて、心に残ってる言葉はありますか?

文田: 評価高い風だと思うんですよ。よく知らない女性アーティストが雰囲気ある感じで歌ってると、「業界評価高いんだろな」って思うでしょ。俺らそれだと思うんですよ。

根建: あー。雰囲気でやってる可能性あるな。……僕は1番お世話になったのが、POISON GIRL BANDの阿部(智則)さんなんですけど、普段はめちゃくちゃふざけてる人なんですよ。真面目なことは一切言わないし、全ボケの人。でも初期の『M-1』で敗者復活終わりに一緒に帰ってたとき、急に「今年でM-1終わります」って発表があって。そん時、阿部さんに「お前ら、来年以降、下手したら毎年(決勝)行っててもおかしくねぇのにな」って言われたときは1番嬉しかったですね。褒められたことなかったし、初めて真面目なこと言われて。

この日着ているトレーナーは、「(POISON GIRL BAND)阿部さんから貰った」もの

―『M-1』の話が出たのでお伺いしたいんですが、お二人にとって賞レースってどういう位置づけだったんですか?

文田: 2015年で、賞レースへの熱は終わったかな。良い感じのネタもできて、自分としても「これは行ったな」と思って。でも(準決勝で敗退して)「これでダメなんだ」と思って。2016からは、もうどっちでも良かった。肩の力抜いて、好きなことやって。

根建: そうね。

文田: ラストイヤー(2019年)だけはちょっと違ったけど。急にみんな笑ってくれるな、みたいな。ラストイヤー、ちょっとチャンスあるんじゃないの?って思ったけど、ネタ終わりに思わず「ダメだ」って言っちゃうくらい滑って、終わった。変に期待して、難しいね。

―お二人にとって、「売れる」ってどういうことだと思いますか?

根建: テレビに出てるとか、単純に「知名度」だと思います。

文田: 「売れる」の基準がみんなに知られてること、テレビに出てることだと思うんですけど、僕はそういう面では別に「売れたくない」。ネガティブな意味ではないですけど、みんなに知られたいとは思ってないという意味で売れたくない。テレビにめちゃくちゃ出たいとかはないですね。

―5年後、10年後の未来、どういう活動ができたら理想だと思いますか?

根建: 俺、今と変わってなくて良いなと思ってるんですよ。『R-1ぐらんぷり』(2011年)チャンピオンの、佐久間(一行)さんっているじゃないですか。佐久間さんって、ずっと『R-1』で優勝できそうなネタばっかり作ってるんですよ。そういうのに憧れてるっていうか、50歳になっても、『M-1』で勝負できそうなネタを作れていたら良いなと思いますね。

文田: 確かに、佐久間さん理想形かも。

根建: この人、なんでこんな尖ったネタ作り続けるんだろうって思ってて。でも凄いじゃないですか。いまだに、誰もやったことのないネタ作り続けてるから。

文田: かっこいいよね。僕は、現状を保つためにも上を仰がなきゃとは思ってます。5年前よりは今の方が良いな、10年前よりは今の方が良いよなって思えるように。

―最後に、二人にとって「芸人」ってなんですか?

文田: 生き方。

根建: めっちゃ冷めた言い方かもしれないですけど、「職業」でも良いですか?

文田: 深いかもしれない。

根建: 職業だと思ってます。芸人って凄い仕事だってひとつも思ってなくて、別にいつ辞めても良い。転職しても良いと思ってます。なんていうか、「芸人だから売れなかったら辞めなきゃいけない」とも思ってないし、逆に「売れてても辞めて良い」と思ってる。「自分は芸人だ」ということに縛られがちじゃないですか。僕はこいつに誘われて芸人やってきて、向いてるって1度も思ったことない。でも、やったからには頑張ってるってだけ。そんな感じなんです。

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インタビュー:立川ヒロナリ、ライター・撮影:堀越 愛


<囲碁将棋|プロフィール>
2004年4月結成。吉本興業所属。NSC東京校9期。神奈川県住みます芸人。

左:文田 大介(ふみた だいすけ)
1980年6月20日生まれ。185cm /85kg。B型。神奈川県茅ヶ崎市出身。趣味は水を飲む/利き水/麻雀/ポーカー/格闘技/将棋/インラインスケート。

右:根建 太一(ねだて たいち)
1981年3月23日生まれ。O型。185cm /70kg。神奈川県横浜市出身。趣味は野球観戦(巨人戦)/車/ロードバイク。特技は車モノマネ/スキー。

★公式プロフィール:https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=2784

・囲碁将棋 Official YouTube Channel:https://www.youtube.com/channel/UCAv_–GiVVh6W3p_hP2UAxQ
・囲碁将棋 Official Twitter:@IGOSHO185
・囲碁将棋Instagram:igo.sho

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