おじいちゃんおばあちゃんも手を叩いて笑うような漫才師になりたい【真空ジェシカインタビュー(後編)】

2020年は『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』のレギュラー化や『M-1グランプリ』などで注目を集めた真空ジェシカ。インタビュー後編では川北さんの「2年後理論」や出てみたいテレビ番組など、今後の展望についてお聞きしました。(前・後編の後編/前編へ)

デカい会場で漫才単独をやりたい

—アクの強い芸人を呼んだ主催ライブ『寄席崎心中』を今年2月に初開催されました。ライブの反響はありましたか?

川北: 内々だからだと思うんですけど、割と評判はいいですね。芸人も喜んでくれて。

ガク: 川北が出演者を決めているので、僕も見たことがない若手がいたんで袖で見ていて楽しいライブでした。今後もやっていって広まっていったらいいなと思います。

川北: 僕らが人力舎に入ったときって「実力派」って呼ばれるような地に足のついたネタをする人が多くて。僕はもうちょっと「なんやねんこれ」みたいなネタが好きなので、もっとそういうネタをやらないのかなと思ってました。最近後輩を見てみたら“どこに出しても恥ずかしいようなネタ”をやっているような人がたくさんいたので(笑)。これは(彼らを)出す場所があった方がいいと思って、そういうネタをやっているやつらを集めて『寄席崎心中』をやりましたね。

—もう一つの主催ライブとして漫才の単独ライブを開催されています。今後の展望はありますか?

川北: 今までは1番出ていた劇場ってこともあって(新宿)バティオスでやってたんですけど、最近は北沢タウンホールもすごくいいなって思うようになりました。でも僕らの漫才単独って30分くらいで終わっちゃうんで(笑)。採算も取れないしやらせてもらえないと思うんで、引き続きバティオスになるかもしれないですね。北沢タウンホールとかでできたらいいなとは思っています。

ガク: バティオスは劇場として良すぎるもんな。でもデカいところでできたらいいですよね。

芸人が素を見せることについて

—ネタやライブの裏側やプライベートの自分を積極的に公開する芸人さんが増えているように感じます。そんな中で真空ジェシカのお二人は素の自分を見せることを回避しているように見えますが、素を見せることについてお二人はどのように考えていますか?

川北: やっぱりそれも絞ってるからだと思うんですよね。僕、結構絞るのが好きなんで。徐々に徐々に増えていくと思います。今は『M-1』の2回戦に絞ってるんで(笑)。

ガク: じゃあ、芸人が裏を見せることに別に抵抗があるわけではない?

川北: うーん。でも、ただ俺が素を見せてもシコってスプラトゥーンやってるだけなんで。

ガク: (笑)。

川北: 全然面白くないと思うんで……。まあでも徐々になんか考えてっていうのはありますね。

—今後、ゆくゆくはということですね。ガクさんはどうですか?

ガク: 僕も見せたくないと思っているわけではないですけど、あんま見せ方がよくわかってないんで……。ちょっとずつリハビリしてできるようになっていきたいなっていう感じですね。

川北: ただ、ネタどうこうの話はゲェーって感じですね。絶対にゲェーですね。それは(笑)。

—ネタの解説とかは……。

川北: ゲェーですね(笑)。

—自分が観客だったら、裏側ではなくネタだけを見ていたいからということですか?

川北: そうですね。あとお笑いの「ここをこうやって笑いをとるんだ」みたいな話をしてるときって、お笑いなのに笑いが起きていないというか。超つまんないじゃないですか。だからネタ合わせもすごい嫌いで、全然しなくて。だからそこが大丈夫な人はネタ合わせも好きなのかなって思いますね。ネタ合わせってどうしてもなんか、ねえ。

ガク: まあね。

川北: ネタ合わせはどうしても説明とかになるんで。アレルギーみたいなものかもしれないですね。

—ネタの裏側を見せることに抵抗があるとのお話でしたが、以前どこかで川北さんがネタの発想法みたいなものをお話されていて驚いたのですが。

ガク: ちゃんと答えてたんですね。

川北: それはパワハラを受けてただけですね。

ガク: (笑)。答えさせられた?

川北: 言わないと許さない空気だったんで。そういう時はそれっぽいこと言って乗り切りますね。

—ガクさんはネタ作りの様子などを見せることについて抵抗はないですか?

ガク: 別にないですねー。好きかと言われるとそんなことはないのかもしれないですけど、別に抵抗とかはないですね。

2021年は我慢の年。でも手は抜かない

—川北さんは「ライブシーンでの勢いの2年後にテレビや『M-1』での勢いがつく」という「2年後理論」を提唱されています。この理論でいうと真空ジェシカの2020年は注目される年で、2年後の2022年に『M-1』決勝進出になるかと思います。2021年はどんな一年にしたいですか?

川北: 今まで通りライブを頑張っていこうかなって思ってます。でもどう頑張っても我慢の年になることは確定してるんで。来年に向けてメンタルを強化する日々ですね。

—「我慢」とはどういう……?

川北: 絶対に決勝に行けないんで、今年は。

—それは勢いが昨年よりも落ちるからということですか?

ガク: いや、自分でその2年後理論を立てたからそうなってる(笑)。自分で決めてんだよ。

川北: 行けるって言われた次の年はみんな落ちてるんで。

ガク: そんなことないよ。探してみれば行けている人もたぶんいるよ。

川北: どう頑張っても我慢の年に……(笑)。

ガク: 我慢したがってんじゃん(笑)。

—では今年は『M-1』決勝進出を目指すのではなく、ライブで地道に頑張るということですね。

川北: はい。だからって手を抜くとかそういう話ではなくて。ただ「(決勝に)行けない」っていうのが確定してるだけで。

ガク: (笑)。

川北: つらいですね。気づいてしまったんで。

—ガクさんは今年をどんな年にしたいですか?

ガク: まず『歌ネタ王』決勝に行きたいです。あとは引き続き川北についていきます。「売れてやるぞ」みたいなのじゃなく、何も考えずに何か好きなことできたらいいですね。

川北: 「売れてやるぞ」とは思っててほしいんですよ。ただ今年は絶対に売れないんですけど。「売れてやるぞ」って思ってないと来年売れることはできないんで。そこは勘違いしないでほしいですね。

ガク: (笑)。僕は2年後理論もよくわかってないんで……。

川北: みんなひっくり返ると思います。「(2年後理論は)ほんとだー!」って(笑)。

漫画を描きたい(川北)、仕事は全部引き受けたい(ガク)

—お二人の趣味や特技を活かして今後やってみたい仕事はありますか?

川北: もともと漫画家になりたかったんで、漫画を描きたいですね。このご時世、勝手に描いて発表することもできるんですけど、やっぱりお金をもらって描きたいですね(笑)。

ガク: 仕事として(笑)。

—『ギガラジオ』のサムネイルは2コマ漫画みたいになっていますよね。

川北: (『ギガトーク』と『ギガメール』で)ちょっと変えてますね。こんなんですね。

『真空ジェシカのギガトーク』2019.9.12のサムネイル参照

ガク: それかい。

川北: こういうギャグっぽい感じの絵を描きたいですね。

—ガクさんはいかがですか?

ガク: 今、エロ漫画のコラム(『COMIC快楽天』/ワニマガジン社)を書かせてもらっていて。エロ漫画の仕事ができるっていうのは、もうゴールを達成したも同然なんですけど。書くのは楽しいんで書く仕事もやりたいですし……。振られた仕事を1個も断ることなく、全部引き受けたいっすね。

—書きたいテーマはありますか?

ガク: ないですねー。単純に「書ける人かっけぇ」っていう憧れだけです。「書けますよ」というよりは「書けるようになりたい」という気持ちです。

おじいちゃんおばあちゃんも手を叩いて笑うような漫才師に

—今後出てみたいテレビ番組はありますか?

ガク: なんでも出たいですね。クイズ番組、ロケ番組……。あ、でもロケはやりたいですね。去年『新shock感!』に出させてもらって。全然思い通りにはならなかったんでめちゃめちゃ難しくて。これを楽しめるようになったらめちゃめちゃ楽しそうだなとは思ったんで、外ロケをやりたいですね。

—川北さんはいかかですか?

川北: 『笑点』とか出たいですね。

—演芸のコーナーってことですか?

川北: もちろん。回答者なんて恐れ多い。でもゆくゆくは回答者も……。自分が出るんだったら何色の着物なんだろうとか考えることはありますね。

ガク: 考えたりする?

川北: まあでも、まずは演芸コーナーからやらせていただきたいですね。

ガク: 別にあそこは『笑点』という番組の登竜門じゃないから(笑)。

—『笑点』に出演したい理由は何ですか?

川北: あそこが頂点だからじゃないすかねぇ。

ガク: でもお客さんはおじいちゃんおばあちゃん……。

川北: 最高じゃん。

ガク: 最高なの!?(笑)

川北: 何を良くないことみたいに。

ガク: いやいや、おじいちゃんおばあちゃんを笑わせられた経験が今までないから。

川北: でもそこまで行きつくってことですよね。

ガク: なるほどね。

川北: 自分らがおじいちゃんおばあちゃんに寄せていって笑わすんじゃなく、おじいちゃんおばあちゃんもマジで手ぇ叩いて笑うような漫才師になれたらいいですね。

犬も幸せになるような生活

—最後に、お二人にとって「売れる」とはどんな状態のことだと思いますか?

ガク: 何かデカい野望があるわけじゃなく。達成したいことは「バイトを辞めてお笑いのみで飯を食う」くらいですね。

川北: 僕は最終的には犬を飼えたらいいんで。犬を飼えたら売れてるって言えますね。

ガク: 頑張れば飼えそうだけどな。

川北: 猫ならまだしも……(笑)。

ガク: 猫も大変ではあるよ。

川北: ちゃんと犬のことも考えてあげないとダメよ。「飼える」じゃなくて、犬も幸せになれるような。犬が金を稼いでくれるわけないからさ。子どもだったら育てたら親孝行してくれる可能性もあるじゃん。でも犬はゼロだからね。

ガク: でも犬のYouTubeチャンネルとかもあるしね。

川北: お前、それはもう人間のエゴですよ……。

ガク: (笑)。

川北: 犬を飼えたらいいですね。

【前編を読む】ルーツは大学受験にあり?賞レースとの向き合い方

ライター:西田 瑞希、撮影:秦 法爾、編集:堀越 愛


<真空ジェシカ|プロフィール>
2012年5月結成。プロダクション人力舎所属。

右:ガク(本名:川俣 岳/かわまた たける)
1990年12月3日生まれ。172cm/49kg。B型。神奈川県出身。趣味・特技は妖怪の知識。青山学院大学卒業。

左:川北 茂澄(かわきた しげと)
1989年5月23日生まれ。B型。172cm/55kg。埼玉県出身。趣味・特技は野球観戦(埼玉西武ライオンズ)・日本習字(八段)・剣道(三段)・ぷよぷよ(大分5位)。慶應義塾大学卒業。

★公式プロフィール:http://www.p-jinriki.com/talent/shinkujesica/
★真空ジェシカ公式YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCePaZ2UkSfEUarY2HNm52fw/featured

PERFORMERS

  • 真空ジェシカ/ガク

    プロダクション人力舎所属

    ・Twitter:@gakegakegake

    ・Instagram:gakumeshi


  • 真空ジェシカ/川北 茂澄

    プロダクション人力舎所属

    ・Twitter:@kawktk


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