2019年9~10月に「秋田住みますプロジェクト※」を行い、集大成として実施した単独ライブに1,008人を動員した秋田出身芸人・ねじ。その後東京と秋田を行き来しながら活動を続けていましたが、2021年1月末、「事務所からの独立」と「ササキユーキの秋田移住」を発表しました。インタビュー前編では、プロジェクト後の変化や事務所を辞めた経緯を中心にお話を聞きました。(前・中・後編の前編/中編・後編へ)
※2か月秋田に住み、その間は無料でイベントに出演するというプロジェクト。「秋田=ねじ」を確立すべく、自己プロデュースの一環として実施。滞在資金はクラウドファンディングで集めた。
「勝負に出たら、良いことあるんじゃないか」-プロジェクト後、バイトを辞めた
―「秋田住みますプロジェクト」を実施したことで、秋田での知名度が上がったと思います。仕事やプライベートの変化はありましたか?
せじも: 増えました、秋田の仕事が。
ササキユーキ(以下、ササキ): 11月1日の単独ライブでプロジェクトが終わって、すぐ忘年会・新年会のシーズンに入ったんで。けっこう毎週(秋田に)行ってたよね。
せじも: 毎週行ってたね~。
ササキ: 行ったら2~3個(イベントに)出て、みたいな。あ、これは「(秋田住みますプロジェクト)やって良かったな」ってね。確実な変化があったというか、「変わりそう」って思い始めました。それで、バイト辞めましたね。なんとなく算段があったんですよね。
―バイトを辞めても、稼ぎ的には大丈夫かな、という感じですか?
ササキ: (稼ぎが)あるだろうというほどでもないけど、「辞めてみようかな」みたいな(笑)。ここで勝負に出たら、良いことあるんじゃねーか?という感じです。
せじも: あれ以降、声のかかり方が全然変わりましたね。崎ジャス(イオン土崎港店)でイベントやったら、パンパンになるくらいお客さんが入って……初めて見た光景でした。
ササキ: あれ嬉しかったね~。小学校の頃、休みの日によく親に連れてってもらったところだったから。僕もせじもも。
せじも: そうそう、唯一近いロッテリアがそこでね(笑)。
ササキ: あと、ゲームセンターあるのもここだけだった(笑)。だから休みになると、そこに行くみたいなね。
せじも: 子どもの頃から行ってたところだから。そこをパンパンにできたのは嬉しかった。
―「秋田住みますプロジェクト」を経て、だいぶお仕事が増えたんですね。
ササキ: そうっすね。あと、その時期の熱い話題だったんですよ、ねじ。秋田で1,000人集めてニュースにもなったし。だから「お前、あの単独ライブ行ってないの?」みたいな……行った人は「良いな」って思われるような。そういう話題になってたんで。それは肌で感じるものがあったよね。
せじも: うん。
「ひじゃかぶがじゃめかす人ですよね?」
―では、だいぶ秋田のファンが増えたんですね。
ササキ: 秋田の人は確実に増えたな、っていう感じはしました。YouTubeの配信やってると「(講話で)学校に来てくれてありがとうございました」みたいな、中高生からのコメントも来るしね。
せじも: 来るね。あと、「孫がYouTubeで見てます」みたいな。
―知名度も上がって、気付かれることも増えそうですね。
ササキ: そうですね。結婚式の余興に行ったときホテルのロビーにいたら、隣の式場にいたいかついお兄ちゃんが近づいてきて……「ひじゃかぶがじゃめかす人ですよね?」「ひじゃかぶがじゃめかす人ですねぇ」って(笑)。顔バレはするようになったんじゃないですかね。
仕事が減って、「ここしかない」と事務所を辞めた
―コロナ禍ということで、ライブなど仕事が減っていたのではと思います。その不安定な状態でフリーになる決断をしたことに、驚きました。なぜ2021年1月末で事務所を辞めたんでしょうか?
ササキ: 秋田で2か月やったとき(2019年9~10月)には、僕らの心の中では「辞めたい」という気持ちはあったんですよ。
せじも: そうね。
ササキ: 事務所に入ってることが(仕事の)ブレーキになることも多くて、やり辛さも感じて。これだったら辞めたほうが楽だなと思うことはあったりして。
せじも: 辞めたほうが、選択肢が増える感じがあったんだよね。
ササキ: でも秋田で始まったレギュラー番組も事務所を通してるわけだし、辞めるって言い辛いな、タイミング無いなと。で、コロナが流行りだして、(2020年の)夏くらいかな。せじもと「どう思う?もう今じゃね?」と話して。この混乱に乗じて辞めるしかなくね?みたいな(笑)。
せじも: そうね、このタイミングだなぁと思って。火事場泥棒みたいですけどね(笑)。ちょうどコロナで(事務所を通した)仕事も無くなってきてたしね。
ササキ: だから、1年半がかりで辞めた感じなんですよ。
せじも: 「ここしかねぇ」と思って。仕事が決まってくる前の今が、一番自由な状態かなと。
―事務所を離れるだけでなく、ササキさんだけ秋田に行くというのもびっくりしました。
ササキ: これはほんとに、タイミングですね。地元の方が貸してくれて、去年「ねじハウス」として一軒家を借りてたんですよ。そこを年末に解約して新しく拠点作ろうとなったとき「俺が住んじゃえば良いんだよな」って思ったんですよね。事務所も辞めたし、ライブに出たければ(東京に)来れば良いし。東京に住んでる意味無いな……と思って「そうしちゃう!?」という(笑)。「思い切って行っちゃうか!」みたいな。で、相方は一応結婚もしてるからね。
せじも: 一応ね(笑)。
ササキ: せじもはすぐに(秋田に)行ける感じでもないから、自分だけ。
―新しい家探しはスムーズに進んだんですか?
ササキ: 選択肢がなくて(笑)。
せじも: ネットで不動産検索してもいつの情報か分かんないし、結局不動産屋さんに行くのが一番良いじゃないですか。でも秋田って、ネットに載ってる情報がほぼ最新なんですよ(笑)。隠してる物件とか一つも無いんです。
ササキ: 東京みたいに入れ替わりが激しくないから、全部(ネットに)上げてくれてる(笑)。「載ってなければ無いです」みたいな。
せじも: そうそう。「実は……」みたいなのが一つも無いっていう。あれはびっくりしましたね。
ササキ: 選択肢がなくて、そういう意味ではすんなりではありましたね。駅から徒歩40分です。
―徒歩40分……?
せじも: 近い。めちゃめちゃ近い。
ササキ: めちゃくちゃ近いです。駅近物件ですよ、近くにコンビニありますしね(笑)。
東京に負けて秋田に行くのではない
―ササキさんが秋田に行ってしまうと、東京のファンの方は寂しいですよね。
ササキ: コロナが流行ってからライブが月に2~3本になって、配信で観てもらうのがメインみたいな感じだったんで、あんま変わんないんじゃないですかね。そういう意味で、少し準備ができたんじゃないかという(笑)。観る頻度はそんなに変わんないのかなと思うんですよね。
―確かに。今後も東京のライブに出ると思いますし、頻度は変わらないのかもしれないですね。
ササキ: この前土井さん(元・ゴールドラッシュ)と飲んだとき良い言葉で言語化してくれたんすけど、「秋田に帰る」じゃなく「秋田に行く」なんですよ、僕ら。その感覚が自分たちの中でちゃんとしていれば大丈夫なのかなと思いますね。「秋田に帰る」ってちょっと、東京に負けた感が出ちゃうじゃないですか。
せじも: 都落ちね。
ササキ: 全然そんなつもりは無いし、むしろ全国区になるための“名刺代わり”としてやってるプロジェクトの一環なんで。
―じゃあ、いずれ東京に戻ることも考えてるんですね。
ササキ: ですね。でも最低2年は秋田に住もうと思ってます。秋田の家はそのまま残して、東京にも家借りれるくらいになってたら最高だなとは思ってます。東京は椅子1個置ければいいんで(笑)。
せじも: 懺悔部屋じゃねぇか(笑)。
ササキ: 雨さえ凌げれば良い(笑)。
―今後は秋田と東京に分かれて活動していくんですよね。コンビ内単身赴任って、なかなか前例がない気がします。
ササキ: プリンセス金魚がいます。
せじも: 名古屋と東京でね。大前(りょうすけ)は、名古屋に何のゆかりも無いんですけど。
ササキ: 一緒にトークライブやるくらい仲良かったんで、(大前が名古屋に行ったときから)「やられた」感はありました。面白いことするなぁみたいな。だから、僕ら的には斬新なことしてる感じはあんまりないんですけど、「斬新なことしてる顔」はしたほうが良いなと思ってます(笑)。
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<ねじ|プロフィール>
2010年結成。フリー。
右:ササキ ユーキ
1984年7月2日生まれ。176cm。B型。秋田県出身。秋田県立金足農業高等学校を卒業後、東京アナウンス学院に進学・卒業。趣味は格闘技、プロレス。柔道初段、少林寺拳法二段。ポケモンイベントオーガナイザーの資格を持つ。甘党。
左:せじも
1984年12月3日生まれ。B型。162cm。秋田県出身。秋田県立金足農業高等学校卒業。特技はギター、ラグビー。建設機械車輛(3t未満)の免許、山の知識検定(ブロンズコース)の資格を持つ。
★ねじチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCm1l0PwXh88CRosgx7V3Msg
★問い合わせ先:nejisasaseji@gmail.com
INFORMATION
PERFORMERS
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せじも/ねじ
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ササキユーキ(ささきゆーき)/ねじ