ササキは夢を語り、せじもは現実を見る。最強のバランスで「売れる」【ねじ インタビュー(後編)】

秋田出身芸人・ねじは、2019年に「秋田住みますプロジェクト」を成功させました。東京・秋田を行き来しながら活動をしていましたが、2021年1月末に独立を発表。インタビュー後編では、今後の展望や、ねじならではの「売れる」の定義をお話しいただきました。(前・中・後編の後編/前編中編

お笑いフェスで、「田んぼ-1グランプリ」!?

―今後は、どんな活動をしていきたいと思っていますか?

ササキユーキ(以下、ササキ): まずは、お笑いのフェスですね。高橋優君(秋田県出身のシンガーソングライター)が音楽のフェスやってるけど、お笑いにはフェスが無い。それを僕が主催でやっちゃおうと。僕の頼みなら出てくれる東京の芸人、多分いっぱいいるし。(フェスをやりたいと)伝えると、「ノーギャラでも出るよ」って言ってくれる人がいっぱいいるから。もちろんノーギャラでは頼まないけど、そういう人たちがいるから。お笑いのフェス開きたいなと。

※『秋田CARAVAN MUSIC FES』。秋田県内で毎年実施している野外音楽フェス。(2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止)

―お笑いのフェスは、いつくらいに開催したいと思っているんですか?

ササキ: 最低でも2年以内ですね。ご時世的にもすぐは難しいから、コロナが収束しだい。理想は、9~10月くらいのお米の収穫時期。稲刈りしたお米で作ったものを出店で売れたら、フェスっぽくないですか?

せじも: 田んぼでお笑いライブやったのも面白かったなぁ。あれみんなにやってほしいね(笑)。田んぼの中でライブやってほしい。

ササキ: 田んぼ-1グランプリ(笑)。

せじも: お客さんは田んぼの周りを囲むんですよ、ドリカム(DREAMS COME TRUE)のライブみたいに(笑)。

ササキ: 良いように言うなよ(笑)。

田んぼの真ん中でネタをするねじ(提供:NPO法人草木谷を守る会秋田県潟上市)

ササキ: あと、単独ライブ、カルチャースクール、劇団とかもやってみたい。ラジオドラマとか、映像でもショートドラマくらいなら作れるかもしれない。冠番組も欲しい。いろいろやりたいことがあって、そのために仲間を集めていきたいですね。

―せじもさんはどんなことをやっていきたいですか?

せじも: 秋田で、テレビのレギュラーは欲しいですね。局のYouTubeでも良いけど、秋田で活動している意味があることができたらなと。あと、温泉のレポってだいたい女性だと思うんですけど、それを男性としてやりたいですね。胸元を映すとか。

ササキ: バカみたいなことをね。

せじも: 田舎だからということを理由にしないで、バカみたいな面白いことをやりたいですね(笑)。あと、大人になってから秋田の良さが分かるようになって。酒や食べ物も美味いし、県内には良いところがたくさんあるし。そういうのをちゃんと紹介できてないんじゃないかと思うんで、やっていきたいですね。

―東京の活動で考えていることはありますか?

ササキ: 秋田生活のリアルな部分をYouTubeで流すのって、興味持ってくれる東京の人がいると思うんですよ。冬になったら水抜きをしてから寝ないといけないんだよとか(笑)。凍っちゃうのよ、水道管が。膨張して破裂しちゃうのよ。

せじも: そうそう。引くよね(笑)。

ササキ: 秋田での生活をYouTubeで紹介するとかは、割と東京の人も興味あるんじゃないかなと思えるので。あと、2か月に1回くらい阿佐ヶ谷ロフトさんとかで「報告会」みたいなライブはやりたいですね。

売れるとは、「自由である」こと

―お二人にとって、「売れる」ってどういう状態だと思いますか?

ササキ: 僕はね、ルフィ(モンキー・D・ルフィ。漫画『ONE PIECE』/尾田栄一郎)みたいなこと言うんですけど、「この世界で1番自由なやつ」になることです。

せじも: (笑)。

ササキ: お笑い界で自由なやつが「売れてる」んですよ。好きなことやって生きていけてたら、売れてんじゃないの?って思うんすよね。これマジで俺の性格の良くないところなんですけど、バラエティ番組とか出してもらっても心底楽しくないんですよ。……あー、こういうの良くないな。

せじも: 大丈夫、ずっと良くないから(笑)。

ササキ: 呼んでくれたこと自体は嬉しいし反響あることも嬉しいんですけど、心の底から嬉しいか、楽しいかって言ったら違うんですよね。単独ライブ終わった瞬間とかの方が心の底から楽しいし「やって良かった~」と思う。「これを1から作ったんだ」って思うと本当に楽しいんですけど……やっぱり誰かが作ったものの中だと、例えば僕らがやりたいネタがあっても「それよりこっちの方が」とか「尺的にどうだ」とか。それでやっても、「楽しかった!」とはならないですよ(笑)。だから、うーん……賞レースで優勝しても、もしかしたら辛いことの方が多いかもしれないとか思っちゃったりする。そういう番組にいっぱい呼ばれるわけじゃないですか。そこで100点を出さないといけないって、大変だろうなって。

いろんな番組に出ることがゴールではないし。って思ったら、今の時代ってYouTubeとかでなんでもできるし、メディアだって自分で作れる。なら自分でやって、好きなようにゴールまでたどり着ければいいんじゃないかって思うんですよね。多分、いつか『キングオブコント』に挑戦することもあると思うんですけど、それは完全に“営業”だと思うんですよ。「自分たちのやりたいことをもっと伝えるためにあの称号が必要だ」、と思って獲りに行く。……でも、多分みんなそう思ってますよ。良い意味でお笑い芸人はバカなので、言語化できてないだけであって(笑)。

売れるとは、「技術を売る」こと

―せじもさんは、いかがでしょうか。「売れる」とは?

せじも: 「お金にすること」じゃないですかね。やってきたことを。

ササキ: めっちゃ頼りになるんですよ。せじもさんは。

せじも: 賞レースを頑張った時期もあるけど、1年くらい「どうしたらいいかなぁ」と気持ちが(お笑いに)向かない時期があって。「売れる」ってロマンありますけど、ロマンじゃ別に家賃払えないし(笑)。生きていけないわと思って……現実主義かもしれないですけど、お金があれば絶対心の余裕は生まれるから。お笑いをするためにバイトをするのは心が死んじゃうし、(芸人を)15年やってきたなりのものがあるわけだから。(お笑い芸人としての)「技術を売る」っていうことが、僕は「売れる」ってことだと思いますね。

ササキ: せじもさんの「売れる」は、夢みたいな「売れる」と違って、「売る」ことなんですよね。「売れる=大成功」じゃなくて「これ作ったんで買ってください」、で買ってもらうことが「売れる」。現実的な感覚を持ってるよね。

せじも: (芸人は)お金が無いことを言い訳にして、やりたいことができてない感じがするんですよね。「こんなに面白いことをしてるのにお客さんが少ない。結果赤字でした」みたいな。その瞬間は「芸人っぽい」けど、1か月のうち1日だけそういうことをしても、残り29日は“死”でしょ?と。だったら、工夫して黒字にする方法を考えて、ちょっとでもバイトを減らしたほうが絶対に良いのに。

ササキ: そうね。

せじも: うん。だからなるべく、ねじの単独ライブやるときは、お金が無くても時間を使って黒字にする方法を考えたり。なるべくそうしようとしてきたんで……だから、そうですね。「売れる」ってのは、「お金にすること」ですね。

ササキ: 頼りになるでしょ。

せじも: (笑)。

ササキ: 優秀なんですよ、せじもさんは。この前秋田で密着受けて、一人でインタビュー受けたんです。「(秋田での)お金どうするんですか?」って聞かれて、少し困ったんですよ。俺お金なんて考えたことないから(笑)。あれ?普通に考えたらお金気にするよなと思って……で、なんで気にしなくて済むんだろうと思ったら、せじもがやってくれてるからなんですよ。僕は「夢を語る」担当で、せじもさんは「現実的に売る」担当。これでバランスとってるコンビだから。

せじも: (笑)。

ササキ: だから、俺に(お金のことを)聞くとなんかバカみたいになっちゃうよって(笑)。なんか不安になった。で、あらためてせじもさん頼りになるんだ、みたいな。

せじも: だから、一人でライブには出ない。酒の席に行った方が、まだお金になる(笑)。

ササキ: (一人で出ても)生産性が無いか(笑)。僕はせじもと違って営業が苦手なんですよ。せじもは「なんかありませんか?なんでもやりますよ!」って言ってくれるんですよ、大人だから。だけど僕は、「これやるんで!誰かいませんか?」ってタイプなんですよ(笑)。そこはね、お互いの得意なジャンルで仕事を増やしていきたいな。

―すごくバランスが良いですね。

ササキ: このバランスを褒めて欲しいですね(笑)。意外と気付かれてないと思うんですよ。ボケとかツッコミのバランスって注視されると思うんですけど。商売としての感覚のバランスは、だいぶ良い。

せじも: たまに「せじもさん、社会人とか営業、めっちゃ向いてますよ」って言われますね。なんとなくの感覚はあるのかもしれないですね。

ササキ: ライブシーンで、ここ(商売のバランス)を考えられている芸人はあんまりいないんですよね。

せじも: できれば、(芸歴)15年行ってる人は全員考えたほうが良いんですけどね。

【最初から読む】「秋田に帰るのではなく、行く」秋田行きは全国区への布石

ライター:堀越 愛、撮影:宮下 若葉


<ねじ|プロフィール>
2010年結成。フリー。

右:ササキ ユーキ
1984年7月2日生まれ。176cm。B型。秋田県出身。秋田県立金足農業高等学校を卒業後、東京アナウンス学院に進学・卒業。趣味は格闘技、プロレス。柔道初段、少林寺拳法二段。ポケモンイベントオーガナイザーの資格を持つ。甘党。

左:せじも
1984年12月3日生まれ。B型。162cm。秋田県出身。秋田県立金足農業高等学校卒業。特技はギター、ラグビー。建設機械車輛(3t未満)の免許、山の知識検定(ブロンズコース)の資格を持つ。

★ねじチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCm1l0PwXh88CRosgx7V3Msg
★問い合わせ先:nejisasaseji@gmail.com

PERFORMERS

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  • ササキユーキ(ささきゆーき)/ねじ

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