「『ドンココ』がSNSにたくさんいる理由は僕らにも分からない」魅力をまとう真逆の兄弟〈GEININ DATABASE file.2 ドンココ〉

編集部が「次のスター」として注目するお笑い芸人に話を聞く新連載『GEININ DATABASE』。これは芸歴や事務所に制限を設けず、今注目したい芸人を取り上げる企画です。賞レースで結果を残しているなど、すでに知名度の高い芸人以外にもおもしろい芸人はたくさんいます。お笑い専門メディアを掲げる『WLUCK PARK』だからこそ、いち早く「次のスター」に注目したいと考えました。『GEININ DATABASE』第2回に登場していただくのは、ワタナベエンターテインメント所属の芸人・ドンココ。真空ジェシカやママタルトに愛され、お笑いファンの注目を一身に集める存在である兄弟ミックス芸人ドンココさん。なぜか目を離すことができない彼らの関係性や憧れの先輩、今後の目標について幅広く伺いました!

ドンココ(左:大久保裕オーサーオロナ、右:大久保龍フォスター)

芸人になって何も得られなくても、芸人である方がいい

———ドンココさんはなぜ「芸人になろう」と思ったのでしょうか。

大久保裕オーサーオロナ(以下、裕): 小さな頃から『はねるのトびら』などを見ていて、お笑いへの憧れがありました。大学を出るときに芸人になることは考えたんですが、リスキーすぎると思って就職しました。割と大手の企業に就職したので、お金はもらえたし仕事も楽しかったんですけど、そのまま死にゆく未来が見えたというか。もし今から死ぬまでに起こることが全てわかるとしたら、このままだと今後の人生があんまり面白くない気がして。芸人になって最悪何も得られなくても、芸人である方がいいと思って芸人になりました。

———かなり強い意志で芸人を目指されたんですね。

裕:そうですね。2020年の10月くらいからワタナベコメディースクールに入りました。

———ということはM-1グランプリのナイスアマチュア賞を取った時は、まだ養成所にも入っていなかったんですね。

裕: はい。その時は「とりあえずM-1に出てみよう」と龍を誘いました。たぶん龍は別にお笑い芸人になろうとは思っていなくて、ただM-1に連れてこられて、という感じだったと思います。

大久保龍フォスター(以下、龍): 裕は話している感じでもわかる通り、ちょっと暗くて、頭が固くて、でも少しトゲがあってという性格で。ずっと「なんか心配だな」と思っていました。(笑)

———龍さんも芸人には興味があったんですか?

龍: 僕も元からお笑いは好きだったんですけど、パフォーマーになるつもりはありませんでした。誘われた当時、デザインの専門学校に行っていて、自分が考えたものを形に落とし込んでそれをどう面白いか伝えることはしていたんですよ。「お笑い芸人にならないか」と誘われて考えてみると、お笑いも表現も同じなのかな、と思いました。ついでに裕を見ていて心配だったので「一緒にいてあげるか」くらいの感じで芸人になりました。

裕: お前さぁ……。毎度そう言うけど本当なの!? お笑い芸人に誘ったタイミングでは、龍は卒業直前で、その時点で卒業後の進路も何も決まってなかったんですよ。それで「心配だったから」は話が綺麗にまとまり過ぎてるよ!

龍: 考えがあって就職しなかったんだよ。僕は表現をして生きていきたいと思ってたから、自分を模索している中で芸人の話がきて「ああ、全部綺麗に収まるな。面倒も見れるし、やりたいことも模索できるし」って。

兄弟だけど性格は真逆

———兄弟でコンビを組んでいて、苦労することはありますか?

龍: 兄弟なので気心は知れているんですけど、あまりにも性格が真逆ですね。裕は考えすぎるところがあってプライドも高いと思っていて。僕は反対に「プライドは持っていても仕方がないじゃん」という考え方なんです。ふわふわしているというか、そんなにしっかり考えていないというか。そこで意見が対立することはありますね。ネタ作りでも話がなかなか進まないこともあるんですけど、相手が他人じゃないのでどこまで行っても兄弟喧嘩で収まっている気もします。

裕: そうだね。揉めても「こいつキツイな」とかはない。他の人だったら……。

龍: 裕はこの性格なんで、多分僕以外とコンビを組んでいたら、うまくいかない気がします(笑)。

———ネタ作りの話が出ていましたが、普段どのようにしてネタを作られていますか。

裕: 僕たちはまだ1年目で、まだ確立したネタの作り方がないんですよね。

龍: 基本裕が元のアイディアを考えて、2人で話し合うことが多いです。僕たちはハーフで、兄弟で、性格もちょっとひねくれてて、コンビとしての情報量が多い自覚があるので、何をどのくらい見せていくのか、そのコントロールが難しいですね。

———ネタを先輩に相談されることはありますか?

龍: それがまた、裕が卑屈なので……。(笑)ワタナベってすごい先輩がたくさんいるので、裕には「先輩に相談したら」って言うんですけど。

裕: そうですね……。絶対相談はした方がいいんですけど、仮に僕が誰かに相談されたときに、そんなに親身になれるかなって思っちゃって。だから人に頼りすぎるのはどうなんだろうなって。でも龍は人に相談するタイプで、アドバイスをもらった結果としてネタがよくなった経験はあるので、もう少し人に頼れるようになりたいと思っています。

———芸人を目指すときに事務所を選ぶ理由は様々だと思いますが、なぜワタナベエンターテインメントを選んだのでしょうか。

裕: さっきの誰も助けてくれないっていう考え方に近いんですけど、どこの事務所を選んでも成功する人は成功するし、しない人はしないと思っていました。なので、土日コースがあって会社員でも通えるワタナベに決めました。

龍: 僕はワタナベで活躍している人はキャラクター性が強いと感じていて、そこに可能性を感じました。

ドンココが連呼される理由は、僕らにも分からない

———面白い若手芸人は数多くいると思いますが、同期や若手芸人で意識している芸人さんはいらっしゃいますか?

裕: 吉本興業の軍艦さんです。ワタナベは養成所を半年単位で卒業するので、厳密には違うんですけど、軍艦さんはほとんど同期で。ライバルと思っている訳ではないですけど、一番最初にイメージしたのは軍艦さんですね。ライブも観に行きました。

龍: 僕はぱーてぃーちゃんさんですね。キャラクター属性で勝手に意識しています。菅野さん(すがちゃん最高No.1)はすごく戦略家で、1年単位で計画を立てていて、しかもちゃんと実現していっているんですよ。あとはセンチネルのトミサットさん。ウガンダとのミックスである自身の見た目を生かして、お笑いの形として綺麗に出来上がっているので尊敬しています。

裕: 僕もトミサットさんは尊敬しているんですけど、トミサットさんのエピソードがTwitterでドンココの話として書かれてバズっちゃうことがあるんですよね。その逆もあるんですけど。いいエピソードも悪いエピソードも混ざっちゃうのはどうなんだろうとおもっています。

———では、この芸人さんに「面白い」と言われたい・認められたい、と思う芸人さんはいらっしゃいますか?

裕: 一度『水曜日のダウンタウン』の30秒で一番面白い芸人を決める「30-1グランプリ」という企画に出演させていただいたことがあったんですけど、ダウンタウンの松本さんが笑ってくださった時はすごく嬉しかったです。特定の誰かに認められたいというのは今はまだないですけど、芸人になる前から好きだった人に笑ってもらうのはやっぱり嬉しいです。強いて誰かというと、一回その経験があるダウンタウンさんと、事務所の先輩でラジオも聞いているハライチさんです。

龍: 僕も今までテレビで観ていた事務所の先輩に「面白かったよ」と言われるのが嬉しかったです。『有吉の壁』に出演させていただいた時に、ロッチの中岡さんが「ネタとか資料とかをみて面白かったから一緒にやりたいと思ったんだよ」って言ってくださって、本当に嬉しかったです。他にもハナコの秋山さんも「これから活躍すると思う」って言ってくださって、震えるほど嬉しくて、初めての感覚でした。あと、僕もラジオが好きなので、ハライチさんにお会いして、認められたいです。

———先輩芸人といえば、真空ジェシカさんやママタルトさんに非常に可愛がられている印象なのですが、そもそも一体なぜこのような関係性になっているのでしょうか。

裕: 僕は大学生のころお笑いサークルに所属していて、大会に出たことがあるんですけど、その大会のMCが真空ジェシカさんだったんです。その時に少し舞台上でお話ししました。正直、自分のことを覚えているわけがないと思っていたんですけど、芸人になってからオーディションで川北さんにお会いしたときに声をかけてくださって、すごく嬉しかったです。それが2021年の11月頃なんですけど、半年後、突如として「ドンココ、ドンココ」と……。こんなにドンココが連呼される理由は、僕らにも分からないです。

真空ジェシカ川北のTwitterより引用

———ママタルトさんにもよくコンビ名を出されているようですが、ママタルトさんとの接点はなんですか?

裕: ママタルトの大鶴肥満さんは、所属していたお笑いサークル(木曜会Z)のOBです。OBがサークルに来る機会があって、肥満さんとはその時にお話ししました。それから6年後、突如として「ドンココ、ドンココ」と……。僕らが皆さんより知っていることはそれだけです。

龍: 名前をたくさん呼んでもらって、ありがたいんですけど。肥満さんいわく、「昔から濁音のある4文字が好きだった」らしいです。たまたまTwitterでドンココと書いてあるのを見て、そこから取り憑かれてしまったということだと思います。

裕: この状況はありがたいと思っていて、僕たちも考察している状態です。あくまで考察の材料をお伝えすることしかできません…。

大鶴肥満のTwitterより引用

何があっても芸人はやめたくない

———テレビ出演や先輩との関わりなど話題の尽きないドンココさんですが、1年後までに、「こんな仕事ができていたら嬉しい」という目標はありますか?

裕: すごく具体的に絶対成し遂げたいという目標は、M-1で3回戦まで行くことです。挑戦的な目標だと準々決勝ですね。

龍: 僕は具体性は一つもないんですけど、若手数人でやるような、『はねるのトびら』とか、『めちゃイケ』とか、勢いのある若手を選んで一発当てるような番組に選ばれたいです。まだ自分達にそこまで技術があるとは思ってないですけど、僕らは見た目が派手なので、分かりやすい存在になれると思います。グループの中でやれることもいっぱいあるんじゃないかっていうのはすごく考えています。

裕: 紅一点、じゃないんですけどパッと見で目立つことができる。

龍: そういう立ち回りもできたらいいですね。

———逆に未来のお話として、「これができたら芸人やめてもいい!」といった、究極の目標はありますか。

裕: 僕はありません。最初にお伝えしたとおり、先の見えた会社員をやめて、楽しい人生にするために芸人をやっています。何があってもやめたくないです。

———今後の芸人人生で、一番やりたいお仕事はなんですか?

裕: 深夜ラジオをやってみたいですね。

龍: 僕もラジオやりたいです。僕たちをみて、最初は見た目で入ってくる方が多いと思うんですけど、やっぱり中身で評価してもらいたいというのは2人ともあるので、ラジオをやって喋りだけで評価されるのは幸せなことだと思います。

裕: 『マイナビ Laughter Night』に出れたのは嬉しかったなぁ。

龍: そうだね。声だけのネタで評価してもらって嬉しかったです。あとはさっき言ったような『はねるのトびら』とか『めちゃイケ』のような番組をやりたいです。『はねるのトびら』や『めちゃイケ』で活躍していた方々って、今さまざまなジャンルで活躍されていますよね。

———確かにバラエティやテレビの枠を飛び越えて、多方面で活躍されている方が多いですね。

龍: 僕はゲーム音楽が好きなんですけど、ゲーム音楽の魅力を発信している芸人さんはまだ少ないんですよ。だから、僕が発信して、好きな人が増えたらいいな、という夢があります。そこまでいけたら本当に幸せだと思う。芸人はいろいろなところの仲介役になっていて、なんでもできる。僕もそんな存在になりたいです。

———最後の質問です。芸人になる前夜の自分になにか一言かけるとしたら、なんと伝えますか?

裕: まだ1年目なので最近の話ですが……「今より楽しいと思うよ」って。

龍: 僕は裕の性格、根性を叩き直してやる!みたいな気持ちではじめたので、「お前の思ったより裕は頑固だ。まだなかなか手強いぞ。頑張れよ!」って伝えたいですね。

文:たになか 撮影:堀越 愛 編集:福田

<ドンココ|PROFILE>

ワタナベエンターテインメント 所属

左:大久保裕オーサーオロナ

右:大久保龍フォスター

★公式YouTube:ドンココの兄弟百番勝負

PERFORMERS

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