バラバラの出自、それぞれのスタイル。『M-1』のもとに集まった猛者たちは互いを認め合い、さらに強く【『漫才至上主義』インタビュー ver.WEST – 黒帯×チェリー大作戦 -】

『漫才至上主義』は、シシガシラ・ダイヤモンド・黒帯・チェリー大作戦の4組による東西縦断ユニットだ。『M-1グランプリ』で「あと一歩で結果を残すだろう」と期待される4組が手を組み、2022年3月に始動した。以降、東京・大阪で交互にライブを開催。福岡や沼津などの劇場にも赴き、時間をかけて漫才を磨き上げてきた。

2022年11月12日（土）にヨシモト∞ホールで開催された『漫才至上主義』の直前、メンバーにインタビューを決行。EAST（シシガシラ・ダイヤモンド）、WEST（黒帯・チェリー大作戦）に分かれ、それぞれが想う『漫才至上主義』について話を聞いた。

一筋縄ではいかない変化球漫才ながら、圧倒的な実力でお笑いファンから熱視線を注がれる黒帯とチェリー大作戦。彼らにとってこの『漫才至上主義』は大阪芸人が『M-1』で勝つための絶好の機会だと言うが、その真意とは？

★EAST（シシガシラ・ダイヤモンド）インタビュー：正統派ではない、似て非なる4組は「相乗効果で強くなれる」

大阪芸人が『M-1』を獲るには

———『漫才至上主義』メンバーの目指すところは、やっぱり『M-1』というのが大きいんでしょうか？

大西 進（以下、大西）：　『M-1』はどうしてもチラつきながらネタを作ってますね。

———今日は無限大ホールでの公演でしたが、『漫才至上主義』は大阪や沼津などでも公演をされています。いろんな劇場で漫才をするメリットはなんでしょうか？

宗安：　それぞれの場所でウケ方を確認できるのはいいですね。大阪だけでウケる、東京だけでウケるっていうのはどうしても怖いので。

てらうち：　知ってもらえる場所がたくさんあるっていうのはいいですよね。大阪の芸人が『M-1』で勝つためには、東京のお客さんに知ってもらっとかないと厳しくて。『漫才至上主義』が東京のお客さんに好きになってもらう場所になってくれてるのはありがたいです。ゆうても大阪も田舎ですからね。

———名前を売っていく場所として『漫才至上主義』がある。

てらうち：　界隈で面白いとされてる人の方がやっぱり有利ですよね。

宗安：　もうほんまに、知ってもらえてるかどうかででウケが全然違うんですよ。

てらうち：　ネタが面白いのと同じくらい、知名度というか「この芸人知ってる！」のパワーって大きくて。

宗安：　芸歴制限が15年になって、テレビに出てるくらい有名な芸人さんもいっぱい出るようになったじゃないですか。そうなったら知名度は大事な要素にはなりますよね。

———知名度の話は敗者復活の国民投票だけかと思っていましたけど、それだけじゃないんですね。

てらうち：　今の『M-1』はそうやと思いますね。ほんまに総合格闘技状態というか。

大西：　準決勝とかになるといよいよ大阪の芸人は東京で知ってもらってないとなかなか受け入れらない。それで苦労された大阪の先輩もいるでしょうし。

鎌田 キテレツ（以下、鎌田）：　顔見せをすましてからようやく戦えるようになるというか。　

大西：　知ってもらえたらお客さんの期待値も上がりますし。

———期待値ですか？

てらうち：　お客さんが「今年は何してくれんねやろ」って思いながら見てくれる方がやっぱやりやすいんですよね。

大西：　「待ってました！」にならないとなかなか上にも上がれない。「期待を持って見られる人たち」のラインに乗る、というか。

てらうち：　僕らも２年前ぐらいからちょっとずつ『M-1』で注目してもらえるようになったんですけど、前よりも有利な状況になったんかなと実感として思います。それで言ったら、チェリーはこのライブがあってマジでラッキーやったんじゃない？

鎌田：　めちゃめちゃラッキーです。知ってくれる場所があるのとないのとじゃ全然違いますから。

宗安：　マジで僕ら人気ないんですよ！『漫才至上主義』も「チケットの券売足張ってんのお前らや」って言われてましたからね（笑）。

てらうち：　でもみんなチェリーのことおもろいとは思ってるやんか。

鎌田：　「なんかまあ面白いらしいぞ」というくらいには。

宗安：　おったらラッキーくらいの……。

てらうち：　メインで追いかけてないにしても、この人たちが出たら嬉しいっていう位置にチェリーはなってるんで。

鎌田：　そのラインに乗れたのはこの『漫才至上主義』のおかげですね。

てらうち：　一番後輩で大変やけどようやってるなと思いますね。

このライブではスベれない

———チェリー大作戦さんから見た先輩方はいかがですか？

鎌田：　めちゃくちゃよくしていただける兄さんがこんなに増えたのは本当にラッキーですね。

宗安：　ほんまですね。一番下が一番ラッキーかもしれない。背中も見れるし、ケツも叩かれるんで。

鎌田：　ネタを仕上げていく過程も近くで見れますし。

宗安：　いくら後輩でも先輩３組のネタに引けを取るのはダメじゃないですか。なのでこのライブにはいいネタ持ってかなっていう気持ちが強いですね。

てらうち：　それはみんなあるんじゃないですかね。スベられへんじゃないですけど、ちゃんと作らないとっていう雰囲気が強いライブにはなってると思います。

宗安：　いや、このライブに関しては絶対にスベれない。

大西：　お客さんもしっかりネタを見てくれる人が多いですしね。

鎌田：　『M-1』に近い気がしますね。

宗安：　敏感というか、面白いところでちゃんとウケますし。

鎌田：　でもそんなないですよね、１組だけめっちゃスベるとかは。

大西：　毎回全員ウケますね。僕らなんか東京でちょっとウケすぎてるかもしれないです。

鎌田：　確かに黒帯さんはウケすぎです。

宗安：　引くぐらいウケてる。

てらうち：　東京にはたまにしか来ないんで、俺らを楽しみに来てくれる方もいてくれてると思うんです。そのあたりは冷静に判断せんとな、とは思いますけど。

シシガシラ仕上げるの早すぎる問題

———ユニットを組んで1年弱が経ちますが、『漫才至上主義』での忘れられない事件みたいなものはありましたか？

宗安：　事件じゃないですけど、シシガシラさんが早い時期にネタを仕上げ過ぎてたのは話題になりましたね。

大西：　いや、あれは事件やな（笑）。

宗安：　今年の２月くらいにもう３分尺の漫才やってたんですよ。３分って『M-1』三回戦のネタ時間ですからね（笑）。

大西：　その時期なんてみんな８分くらいネタやるのに。

宗安：　みんなが新ネタを試す時期に、シシガシラさんだけもう調整しに行ってました（笑）。　

鎌田：　シシガシラさんだけ明らかに舞台からハケるのが早かったですもんね。

大西：　とっくに仕上げ終わって、夏前ぐらいに一回テンション低くなってる時期あったもんな。

鎌田：　『M-1』終わったあとみたいな顔して（笑）。

てらうち：　2022年シシガシラ飛ばしすぎ問題はありましたね。あと、脇田さんが一番芸歴が上なんですけど、ご飯行くときにみんなちょっとずつ気を遣いながら奢ってもらってるっていうのもありますね。

大西：　ほんまに早く上に行ってほしいです。

鎌田：　売れまくってほしいですね。

宗安：　余裕で「飯連れて行ってください！」って僕らも言いたいですからね。

大西：　今はまだ完全には奢ってもらってないですから（笑）。

宗安：　「あの時はケチケチしてすまなかったね」とか言ってほしいです。

てらうち：　『漫才ブーム』のミルクさんみたいになってほしいですね。

宗安：　金稼いでも全然ケチやったらおもろいですけどね（笑）。

大西：　まあ色々言ってますけどシシガシラさんは僕らの大将なんでね。どっしり一番ウケててほしいですね。

てらうち：　かっこいい兄さんさんです。

東京メンツのかっこよさ

———黒帯さん、チェリー大作戦さんから見たシシガシラさん、ダイヤモンドさんのかっこいいところを教えてください。

大西：　どっちのコンビも最初はGYAOを観て好きになったんすけど、 今も持ってくるネタが全部面白いなと思います。

てらうち：　面白くないネタを見たことない。

大西：　二組ともちゃんと面白いを最優先で作ってる感じがしますね。

鎌田：　そういえば二組ともコンビで喋ってるところあんまり見なくないですか。

宗安：　確かに、プライベートの話とかしてはんのあんま見たことないですね。

鎌田：　ネタの部分はめっちゃ信頼しあってるお二組なんかなと思います。

宗安：　強いネタで繋がってるというか。

鎌田：　お笑いのとこはパッと出ていったらやっぱバシッと決めてるんですごいですよね。

大西：　あと、ライブの半分近くは脇田さん頼りですね。特に平場は何かあったら脇田さんの方を見ちゃいます。

てらうち：　結局シシガシラさんがなんとかしてくれますからね。

———ダイヤモンドさんはいかがでしょう？

宗安：　色々ネタの種類も多いし、毎回違うことをやってます。すごいですね。

てらうち：　ネタでボケツッコミ変えてるもんな、やっぱ色々考えてんねやろなとは思うんですけど、あんま見せないです。努力してるとことか。

大西：　僕ら同期でもそんな友達いないんですけど、ダイヤモンドは上位ぐらい仲良くなりましたね。まだ出会って１年ちょいぐらいですけど。

てらうち：　『M-1』の境遇が近いんですよ。ずっと準々決勝行ってて、お互いに次はどっちが行くねんみたいな立ち位置でもあるので。

『漫才至上主義』の行く末

———今後『漫才至上主義』はどのようなライブになっていくんでしょうか。

てらうち：　それね、さっきも僕らで話してたんですよ。このライブってどうなるんやろって。

宗安：　やらしてくれんねやったら僕はずっとやりたいですよ。

大西：　僕らはめちゃくちゃ東京来れるようになったんでずっと続けたいですね。今日も神保町で３ステやらせてもらいましたけど、これなかったら入ってない仕事でしょうし。

鎌田：　黒帯さんはあと『M-1』何回出れるんですっけ？

大西：　３年やな。

鎌田：　僕らはあと９回出れますからね。

宗安：　シシガシラさんもダイヤモンドさんも僕らより後に組んでますし。

鎌田：　まだまだ出れる。

てらうち：　目指すべきはミルクさんたちがやってた『漫才ブーム』なんですかね。誰かが優勝したり決勝常連になって、他のコンビを引き上げていく。

大西：　NGKとかでやりたいな。

宗安：　やりたいっすね。

鎌田：　ツアーとか回って。

宗安：　絶対次の日休みにしてもらってね。

てらうち：　どんどん楽しい方になっていってる（笑）。

大西：　漫才も１本にして。なんならトークだけでもええし。

鎌田：　それでも配信伸びるぐらい人気が出れば最高ですね。

てらうち：　まあでもできたら『M-1』のための、っていうのは今年で最後にしたいですよ。

文・編集・写真：フクダ

PROFILE

黒帯
中央右：大西 進
右：てらうち

★YouTube：黒帯会議

チェリー大作戦
中央左：宗安
左：鎌田キテレツ

★YouTube：チェリー大作戦のワーキャー【公式】