「芸人のトークライブ」と聞いて、どんな光景を思い浮かべるだろうか。芸人と言えば、しゃべりのプロ。日常生活や芸人仲間とのエピソードを、言葉巧みに、赤裸々に語り尽くす様子を思い浮かべるのではないだろうか。「芸人のトークライブ」とは、そういうものだ。
2023年8月21日(月)、歌舞伎町スパークルにて真空ジェシカ・ガクによるトークライブ『エピソード0』が開催された。
ガクによる『エピソード0』は、いわゆる「芸人のトークライブ」の概念を覆すものだった。ライブに参加した観客の反応は、下記の通り。 ※X(旧Twitter)より抜粋
「開始10分くらいで全員が悟り出した」
「トークライブなのに無言という罠」
「1時間無言を貫いたガク」
「最高な時間だった」
「謎に包まれてて怖かったけど楽しかった」
・・・・・・トークライブを謳っていながら、「1時間無言」とは?それなのに「最高だった」とは?しゃべっていないのに「楽しかった」とは・・・・・・?
感想を見ただけでは、なにが起きたのか、もしくはなにも起きなかったのか、よく分からないガクのトークライブ『エピソード0』。その様子をレポートする。
オープニングトーク
開演時間となり、舞台は明転。お客さんの拍手に迎えられ、ガクが登場した。
所在なげに手を組んだり、口を開いたり閉じたり、歩いてみたり。客席の全員が、ガクの一言目を待つ。しかし、ガクはしゃべらない。ひたすらに続く静寂、静寂、静寂……。
サイコロトーク
無言のまま5分ほど経ち、スクリーンには「サイコロトーク」という言葉が映し出された。客席から拍手が沸き起こる。そろそろ喋るか?
「サイコロトーク」とは本来、サイコロを振って出たテーマに沿ったエピソードを話すものだ。しかし、ガクはサイコロを振るだけ振ってなにもしゃべらない。
ガクは何度もサイコロを振るけれど、なにもしゃべらない。サイコロを振る、でもしゃべらない。また振る、やっぱりしゃべらない……。この頃には、観客たちも薄々察し始めている。「もしかして、ガクさん今日しゃべらない?」。でも、意図が分からない。
質問コーナー
このまま、永遠にトークしない「サイコロトーク」が続くのだろうか……そう思ったとき、スクリーンの文字が変わった。次は「質問コーナー」だ。
最初の質問は、「地毛はどのぐらいまで伸びたのですか?」。
2つ目の質問は、「ビートが効いてて面白いなと思う後輩芸人は誰かいますか?」。ビートが効いている、とは?ガクの回答を待つ。ここもやはり、続く静寂。
3つ目の質問は、「今日の私の昼ご飯は何がいいと思いますか?」。もちろん静寂。
4つ目の質問は、「ハムスターはどうやって海外から日本へやってきたのですか?」。奇想天外な質問に驚きの表情を見せるも、静寂。
5つ目の質問は、「今日の夜ごはんは何を食べればいいですか?」。……当たり前のように、静寂。
6つ目の質問は、「『そろそろコイツは潰しておかないと…』と思っている人力舎の後輩は誰ですか?」。深まる静寂。
スペシャルゲスト
無言に無言を重ねるガク。静寂が支配する劇場。また、スクリーンの文字が変わった。次は「スペシャルゲスト」コーナー。
登場こそ音楽が鳴ったが、また静寂。沈黙の中、ジェスチャーでなにかを伝えようとする村上、それを受け止めるガク。ひたすらに続く静寂。ふたりにしか聞こえない音があるのだろうか。
エンディングトーク
ゲストコーナーが終わったようで、無言のままエンディングに突入。ライブは、このまま無言で終わってしまうのだろうか。
暗転。ついにライブは終わってしまったようだ。いったい、この1時間はなんだったのだろうか……。
アフタートーク
……さて。ガクのトークライブ『エピソード0』は、本当にただの「無言トークライブ」だったのだろうか。実は、この実験的で不思議なライブには、隠された“なにか”がある。その全容は、9月15日(金)以降に明らかになる……かもしれない。
文, 編集:堀越 愛