【「M-1グランプリ2024」決勝進出会見レポート】初進出、ラストイヤー、下剋上!勝負の決め手は「M-1への愛」?

ついに20回目を迎えた“漫才頂上決戦”『M-1グランプリ』。12月5日(木)、その準決勝が東京のNEW PIER HALLで行われた。『M-1グランプリ2024』のエントリー数は、過去最高の10,330組。準決勝に残ったのは、わずか31組だ。

即完となったプラチナチケットを手に入れた観客が固唾を呑んで見守るなか、16時から準決勝はスタート。トップバッターのロングコートダディから、ラストのトム・ブラウンまで、31組のネタが次々と披露され、終演は19時ごろ。ついさっきまで熱戦が繰り広げられたその場所で、決勝進出者が発表されたのは21時を回るころだった。

決勝記者会見のMCを務めたのは、昨年に続きマヂカルラブリー。登場早々、野田は「うわー!今年もマヂカルラブリーだー!!!」と絶叫。前回「あんまり評判がよろしくなかった」(村上)ことに触れつつ、MCへの想いをたぎらせながら会見スタート
「よろしくお願いします」しかセリフが無かったため、野田はカンペ持参せず

今回のファイナリストは発表順に、ママタルト、令和ロマン、ジョックロック、真空ジェシカ、エバース、トム・ブラウン、ダイタク、ヤーレンズ、バッテリィズの9組。

ここでは、ファイナリストたちが登場した記者会見の模様をレポートする。

ヤーレンズ・楢原「二人の時間が最高!」

現王者が再び戴冠するのか、あるいは決勝の舞台で辛酸をなめた者たちの下剋上か。はたまた新参者が大会をかき回すか。ラストイヤー組の爆発か──。

TVerで配信された決勝進出者会見。このファイナリストのラインナップから、今年のドラマへの期待も膨らむ。しかし、ディフェンディング・チャンピオンの令和ロマンの髙比良くるまは、お笑いファンの無数の妄想をなぎ倒すかのように、決勝進出を「通過点、ただそれだけです」とうそぶく。さらには「負けるわけにはいかないので、すべての子羊漫才師を、檻に帰す」とボケながらも、ラスボスとして立ちはだかる覚悟を示した。

令和ロマン(左:髙比良くるま、右:松井ケムリ)。くるまはアルカイックスマイルを湛え登場
決勝進出が決まった直後、令和ロマンのもとに駆け寄ってくる芸人はいなかったという。「やることないのハズイなぁ」の空気になっていたマユリカ・阪本だけがハグしてくれた
ケムリは“忘れ物(賞金)”を取り返しに来た。昨年の優勝賞金1,000万円は、すべてくるまにあげたため

そんな圧倒的王者に挑む、昨年準優勝のヤーレンズ・楢原真樹は「憎き令和ロマンを倒すため、今年はパワーにパワーを重ね、筋トレに筋トレを重ね……」と、とにかく力を蓄えてきたことをアピールする。「ほかの芸人とうまく絡めていない」と舞台上での芸人同士の絡みに若干の苦手意識を見せるも「ラジオだけ4本決まった」「二人の時間が最高」と自画自賛で気持ちを立て直し、二人きりの漫才ならば誰にも負けないという意地を示した。

ヤーレンズ(前:楢原真樹、後:出井隼之介)。カメラマン泣かせのスピードでサササッと登場
「今年1年ヤーレンズと共演すること多かったけれども、みんな絡みづらそうだった」(マヂカルラブリー・野田)、楢原いわく「絡みづらい絡みづらいとレッテルを貼られ」た結果、ラジオの仕事が決まった。そんなラジオは「くそ面白い」(野田)
「持た“ざる”」とサル風の発言してしまったことで、真空ジェシカ・川北が起動。出井が絡まれた。「好きにやってください、そっちで」……マヂカルラブリーは匙を投げた

2021年から4年連続の決勝進出となった真空ジェシカは、お決まりのふざけっぷりで司会のマヂカルラブリーを呆れさせる。野田クリスタルの「お前ら会見だけ来るな」というセリフに、「かまいたちさんなら、そんなこと言わない」と反撃する川北。かまいたちが司会を務めた2022年大会の決勝進出者発表会見を、このなかで唯一知っている川北ならではの切り返しだ。しかし野田も黙ってはいない。「ここ(司会のポジションでも)賛否両論ある!?」と、「漫才か漫才じゃないか論争」の当事者にしか言えない切り返しで応戦した。両者のやりとりも、今年で見納めとなるのか否か。

真空ジェシカ(左:ガク、右:川北茂澄)。「お前らのせいで俺らの評判悪い」(マヂカルラブリー・野田談)
川北はさっきまで犬だったため、まだ犬が抜けていないとのこと。ガクは静観
ジョックロック・福本とのシンクロ芸

フレッシュな初決勝組

実力者たちが会見場の空気を掌握するなか、4組の“初決勝”コンビも存在感を見せた。なかでも結成2年半の大阪の雄・ジョックロックは、福本ユウショウのアキレス腱を伸ばすようなポーズで行うツッコミスタイルが、会見でも大いにハマる。「これめちゃくちゃCMにも使いやすいので!」とアピールし、M-1後のブレイク候補筆頭に名乗りを上げた。

ジョックロック(左:福本ユウショウ、右:ゆうじろー)。どのコンビよりも長く深々とお辞儀をしていた
めちゃくちゃ嬉しいーーー!!!
ジョックロックが結成したのは2022年4月。ゆうじろーは5年目、福本は12年目の芸歴7年差コンビ。「10年超えてるヤツの出方」(マヂカルラブリー・村上)、「落ち着いてるもん」(マヂカルラブリー・野田)

同じく初決勝組のママタルトは、大鶴肥満が体重190kgあることから、決勝ステージの設営スタッフも「肥満仕様」へのアップデートを余儀なくされているとか。すっかり肥満の代名詞となった(?)「まーごめ」(まーちゃんごめんね)とともに、ついに全国区となる日も近い。

ママタルト(左:檜原洋平、右:大鶴肥満)。まーごめ
初決勝が決まった気持ちを問われ「みんなはこれをゴールインと呼ぶが、私はこれはスタートなのかなと思います」と肥満。出典はサツマカワRPGとでか美ちゃんの結婚式
「いちウケ」のように「いちデカ」と言われたことが、自信につながった

今年、数々の新人賞レースで活躍したエバース。ファイナリスト発表時、「ゾーンに入ってた」という町田だが、実は緊張しやすいのだとか。相方の佐々木は「この2週間、緊張しないように全部のライブ、本当に準決勝だと思ってやろう」と決めたところ、すべてのライブで町田がセリフを噛んだと明かす。決勝では町田がゾーンに入れるかどうかが、カギとなりそうだ。

エバース(左:佐々木隆史、右:町田和樹)。写っていないが、COWCOWポーズで登場 ※影を見るとわかりやすい
町田は会見時もゾーンに入っていた。「コントロールできないんすよ、まだ」(町田)。
町田はM-1決勝を「全国大会」と称したことで、マヂカルラブリー・野田から詰められていた

そして、マヂラブ・村上が「面白いなと思って見てました」「かわいい!」と絶賛したのが、バッテリィズ。結果発表で名前を呼ばれたときの心境を語るエースの「(名前を読み上げられたのが)最後やったんで、呼ばれへんかなと思ってたら呼ばれたんでうれしい」という、素直な言葉に、会場も温かい笑いに包まれた。質問されても、エースは「ごめんなさい、なんですか?」と聞き返してしまう。錦鯉・長谷川雅紀や、モグライダー・ともしげ の枠を今大会で担うのは彼かもしれない。

バッテリィズ(左:エース、右:寺家)。エースは誰よりも満面の笑顔で登場
エースは会見中なのに集中力を切らしていた。「心配だよ、今田さんとの絡み」(マヂカルラブリー・野田)
優勝賞金1,000万円は、コンビで500万ずつ分けて「全部親にあげます」とエース。「親にあげたら、喜ぶんで」(エース)、「500万の前にもう喜んでるよ」(マヂカルラブリー・野田)

ラストイヤーの承認欲求と出所明け

フレッシュな顔ぶれとは反対に、「結成15年以内」という大会規定によって“ラストイヤー”を迎えたトム・ブラウンとダイタクの二組にも注目だ。

2018年大会以来、6年ぶりに決勝の舞台に帰ってきたトム・ブラウン。ギラギラした目で当時の思い出を語るみちおだが、相方の布川ひろきが「みちお、かかっててムカつきますね」と言い出す。結果発表時、やたらと「えずいていた」というみちお。しかし布川は「あれ、承認欲求ですよ」と、ぶっちゃける。喧嘩するほど仲が良い二人の一触即発に場も盛り上がる。

トム・ブラウン(左:布川ひろき、右:みちお)。二人の挙動を見て「なにも反省してません、なにも変わってません」とマヂカルラブリー野田
「かかってる」と責める布川と、嬉しそうに人差し指を合わせようとするみちお
初決勝の際、優勝を目指しているにもかかわらず「飛び道具」「爪痕残せれば良い」と言われていたことに「ムカついていた」みちお。6年越しに雪辱を晴らすチャンスということで「死ぬほどうれしいです」

トム・ブラウンの所属事務所であるケイダッシュステージからは今回、ヤーレンズも決勝に来ている。同一大会で吉本以外の事務所から2組のファイナリストが誕生したのは、2001年、2002年、2022年以来、4度目の快挙だ。盟友たちの『M-1』最初で最後の共演からも目が離せない。

トム・ブラウンかヤーレンズが優勝すると、M-1最高順位が“準優勝”であるケイダッシュステージにとって「初トロフィー」となる

そして、なんといっても発表時に一番芸人たちを湧かせたのが、ダイタクだ。6回目の準決勝で、ようやくファイナリストになれた双子の二人。兄の大は、コンビ名をコールされたときには泣かなかったものの、「(芸人仲間たちが)出所明けくらい来てくれて、そのときにやっぱ泣きましたね」と語る。15年間、愚直に腕を磨き続けてきた二人は、芸人仲間からの人望も厚い。「ラストイヤー×初決勝」の舞台にどう挑むのか。

ダイタク(左:吉本大、右:吉本拓)。東京吉本の期待を背負い、満を持して決勝へ
「(決勝進出を諦めかけたところで)呼ばれて、嬉しかったです」と、バッテリィズ・エース級の感想で芸人たちを沸かせた大
名前を呼ばれた際のリアクションを考えすぎてしまったという拓。「大とかぶったら『双子だな』と言われるし、かぶらなかったら『双子なのに合わない』」と思われてしまう……

M-1への愛が問われる大会に?

会見後、9組は各メディアからの質問に答えた。「前年王者が敗者復活ではなくストレートにファイナルに駒を進めた心境」を問われた令和ロマン・くるまは「実はちょっと意識していました。敗者復活に行ったらマジで炎上するだろうなと思ってたんで、それはよかったです」と、実はホッとしている胸の内をここで明かした。さらに「勝負の決め手は?」という問いには、「M-1への愛じゃないでしょうか!」と豪語する。

20回の節目を迎えた『M-1グランプリ2024』。実力伯仲。勝負を最後に決めるのは、時の運と、M-1への愛なのかもしれない。

決勝戦は、12月22日(日)18時30分からABCテレビ・テレビ朝日系にて放送される。また、決勝戦に先立って、22組のセミファイナリストによる敗者復活戦の模様も15時から放送される。

文:安里 和哲

編集, 撮影:堀越 愛