2022.05.02
「アドリブで笑うな!」スタンダップコーギーに賛否が噴出 スリルと歓喜の『スタンダップコーギー寄席』ライブレポート
4月26日(火)、西新宿ナルゲキにて、「スタンダップコーギー寄席」が開かれた。スタンダップコーギーはツッコミの奥村がアドリブで暴走し、ボケの三森が制御するという斬新なスタイルの漫才コンビである。そんなスタンダップコーギーの名を冠した「スタンダップコーギー寄席」を言い換えるならば、「なんでもアリのアドリブ寄席」だろう。若手からベテランまで、更にはコント師までもがアドリブで奔走する、挑戦的なライブを写真と共に振り返る。
香盤表
【オープニング】
スタンダップコーギー
大仰天
青色1号
ユースフルデイズ
ニュークレープ
【MC】
まんじゅう大帝国
さすらいラビー
エルシャラカーニ
竹内ズ
【エンディング】
【前半】新語「スタンダってる」の誕生
オープニングには司会のスタンダップコーギーが登場。自己紹介をしながら、「8年かけてこの(アドリブで漫才をする)スタイルに馴染んだ」という三森に、奥村が「結構高めの革靴だね?」と返し、その飛躍した思考回路で早くも観客を惹き込んだ。
続いてスタンダップコーギーは漫才を披露。ツッコミの奥村は、持ち前の純粋さと独特なワードチョイスであっという間に笑いをとり、三四郎・小宮、モグライダー・ともしげなどにも通じる〝マセキイズム〟を感じさせた。三森は柔軟にアドリブに対応し、巧みなコントロール力を見せた。
「大喜利を無くしたい」奥村が、ナルゲキに「大喜利撲滅東京支部」を置くことを宣言し、約6分で漫才を終えた。10分を超えることも多い彼らにとっては、周りの芸人を気遣った結果の奇跡的なタイムだ。
続いて、大仰天・田口がひとりで登場し、おもむろにZARDの「負けないで」を熱唱した。
歌詞がわからなくなってもなお、相方の木場は出てこない。すると、観客席の後ろから辛そうに走る木場が登場。24時間テレビの名シーンがここで再現された。
ところが、その後も木場が舞台に上がる気配はない。
「負けないで」の一番を2度歌い、田口がWANDSの「世界が終わるまでは…」を歌い終えたところで、やっと木場が舞台上へ。何をやればいいかわからなくなったふたりは、まんじゅう大帝国の漫才を真似してみることに。しかし、なかなか進まず、田口が「難しすぎる」というと、木場が「簡単だろう」と例に挙げたモンローズの漫才をモノマネすることに変更。その時、すでに尺は10分を超えており、舞台袖の芸人たちがざわつき始めたところで、大仰天のネタは終了した。
続いて青色1号がコントを披露。ゲームの必殺技を決める会議という設定の中で、榎本と仮屋が互いの直して欲しいところを、技名風に言う流れに。
仮屋の「もっとネタ合わせで意見言え!」というリアルな意見に、榎本も「そろそろ8万9千円返せ!」と辛辣な返しを見せた。さらに、スタンダップコーギー奥村の嫌なところを言うように求められた仮屋は、バイト先での奥村は「仕事がデキる」ことを暴露した。
続いてネタを披露したのは、ユースフルデイズ。
曲に合わせて漫才をする為、常に迫り来るオチに慌てるふたりだったが、いつも以上にダイナミックな動きで観客を笑わせた。
続いて、ニュークレープがコントを披露。
転校生のデビが、新しい学校で音楽の授業を受けると、歌われるのは「オネエの横綱」(オネヨコ)など、聞いたことのない歌ばかり。
さらに、先生役のナターシャは架空のCMソングを歌い出す。ありそうだがあり得ない、絶妙なラインの歌をナターシャが生み出す一方、突然フられたリーダーは困惑。大仰天のネタを受け「もう一回ZARD歌おうか?」と助け舟が入るシーンも。
そして前半が終了し、中間MCへ。ナターシャ先生がネタ尺を発表した。他の芸人が6分程度なのに対し、大仰天だけが13分越えの長尺だったことがわかり、「スタンダってる」という表現が新たに生まれた。
【後半】スタンダップコーギーに集まる批判
後半の幕開けはまんじゅう大帝国。大仰天のモノマネまんじゅう帝国を受け、「本物が登場しましたよ」と観客を沸かせる。
梅干しvsレモンやダイオウイカのニュースなどを、喩えと想像力で話を広げながら、まんじゅう大帝国らしい完成度の高い漫才を披露した。
続いて登場したのはさすらいラビー。開始早々、中田は「基本的にスタンダップコーギーをお笑いと認めてないからな!」と衝撃発言。
さらに、「スタンダった」大仰天も認めてない、お客さんもこういうアドリブ寄席に慣れない方が良い、とイラつきが収まらない中田。
次第に宇野も乗っかり、怒りの矛先はK-PRO代表の児島さんへ。今回の寄席を、「児島さんの娯楽」、「ファンサービスでっせライブ」などと評し、瞬発力を見せつけた。続いて登場したのは、芸歴26年目の漫才師、エルシャラカーニ。先日の『水曜日のダウンタウン』でも話題となったコンビだが、本公演でベテランの実力を見せ、大爆笑を巻き起こした。
顔色を一つも変えずにボケていくしろうに、セイワが矢継ぎ早にツッコんでいく。ノリに乗ったふたりのアドリブを交えた掛け合いは、長い経験と信頼が生んだ賜物であろう。
奇しくも次に登場したのは、こちらも『水曜日のダウンタウン』で一躍注目を集めた竹内ズであった。始まってすぐ、いつも通りのツカミをやらない竹内にキレるがまの助。それに対し、竹内が理詰めし、会場がヒリつき始める。
ガチ喧嘩とネタの合間の空気の中、「吐きそうだ」「こんな気持ち悪いお笑いやりたくない」と言うがまの助。そしてここでも、「スタンダップコーギーをお笑いと思ってない」発言ががまの助の口から飛び出す。
竹内が「スタンダップコーギーに謝れ!」と言い、袖からも笑いが聞こえた頃、見かねたスタンダップコーギー三森が喧嘩を止めに登場。しかし三森は軽くあしらわれ、「解散するか」と竹内ズが合意しだす。
するとおもむろに竹内がスマホを取り出し、ネタ尺が6分台であることを確認。そして『水曜日のダウンタウン』の「不仲芸人対抗 解散スピード選手権」、2位・コンピューター宇宙の記録、7分より早いことを伝え解散が決定した。
想像の一歩先を行く展開で、観客は狐につままれたようになったが、まさに「どこまでがネタで、どこまでがアドリブかわからない」、というスタンダップコーギー寄席の説明通りのネタであった。
エンディング
エンディングでも竹内の喧嘩モードは続いており、仲裁に他の芸人が奔走した。
寄席を振り返った三森が、アドリブには「人(にん)」が現れると語ったが、まさにその通りであろう。多くの芸人たちとって、アドリブでのネタは負担が大きいに違いないが、単なるハプニング笑いだけではなく、コンビ、トリオ間の関係性や隠れた能力が明らかになるといった面白みがある。後半ではスタンダップコーギーへの批判も相次いだが、裏を返せば、それだけ芸人たちから愛され、羨まれている存在なのではないだろうか。チャレンジングな公演ではあったが、次回の開催を期待しつつ、出演した各芸人の今後の動きにも注目したい。