「Abemaでスピーチしてディベートして合コンしてラップやってんだよこっちは!」ネタ中に『本音』をぶつけ合う実験ライブ『のんふぃくしょん』レポート

6月28日(火)、西新宿ナルゲキにて「のんふぃくしょん」が開催された。今回が第1回開催となった「のんふぃくしょん」は、ネタの途中にコンビ同士で本音をぶつけ合う、通称「Tタイム(竹内ズタイム)」を入れ込まなければいけない、という実験的なネタライブだ。不確定要素が多い「ドキュメンタリー」なライブを、本記事では写真と共に振り返っていく。そして、気になった方にはぜひ映像でこのライブを味わってもらいたい。文字と写真だけでは伝わりきらないのが「ドキュメンタリー」ライブの醍醐味だ。

香盤表
【オープニング】
ジャンク
パンプキンポテトフライ
エルシャラカーニ
【中MC】
スタンダップコーギー
ウエストランド
竹内ズ
【エンディング】

竹内「楽しい時間は終わりです」 手探りで進む前半3組

最初に登場したのはMCのまんじゅう大帝国・田中、フランスピアノ・なかがわだ。「仲良し」のふたりとしてキャスティングされたとのこと。

「『仲良し』として認知されてるなら、もっとトークライブ売れても良いだろ」と田中

第一回開催となる今回はまだ未知数な部分も多く、MCふたりも不安を隠せない。「6組で始まって4組で終わるかもしれない」「K-PROが『(そんなライブ)やってない』って言い出すかも」とライブの行く末を案じた。

ここで、今回のライブの主役とも言える竹内ズが静かに登場。竹内はお馴染みの「ぐ〜ん!」を見せることもなく、ライブ開始5分にして「楽しい時間は終わりです」と宣言。

現在の竹内ズの仲は「悪の良」

7月4日にキングオブコント1回戦を控えている竹内ズ。もちろん仲は悪いものの、今は「悪い中でもまだ良い方」だと言う。大事な時期に関係が悪化することを危惧するがまの助は「何かあったら責任取れるんですか?」とMCふたりを責め、「ABC(お笑いグランプリ決勝)辞退してください」となかがわに迫る。

早々に「Tタイム」を始めてしまう竹内

誰もが不安を抱えている今ライブだが、K-PRO側も対策を講じていた。「各コンビネタ後『心が優しくなる曲』が流れ、荒れた場をリセットする」という旨の説明がなかがわからされた。

1組目に登場したのはジャンク、ネタは「酔拳」だ。「酔拳が漫才でも通用するのか確かめるために酒を呑んできた」と、山下が書いた台本通りに言い、酔っ払いのテンションで騒ぐ小森。山下が「やばいやばい。そんなお笑いライブ前にお酒飲んできちゃダメだから」と突っ込むと、小森は突然シラフに戻り「テメーがな」と言い返した。「Tタイム」の開始である。「こんなネタ書いてきて、俺にこれ言わせてるけど、テメーが呑んできてるから。どういうつもり?」と、山下のライブ前飲酒を咎める小森。山下は怯むこともなく「お酒って2杯からよ?」と持論を展開した。

「お酒って2杯からよ?」と山下(右)

「おかしくない? こんなネタ書いておいて自分が呑んでくるの」と食い下がる小森に「ライブは選んでます! 呑んでいいライブは!」と悪びれずに言う山下。曰く「K-PROは呑まない。呑むのは○○だけ」。

「道で拾ったプリクラiPhoneの裏に入れるのやめろ」と反撃される小森(左)

2組目はパンプキンポテトフライ、ネタは「うんちく」。

会場からは「待ってました」とばかりの大きな拍手が沸き起こった

「ちょっと言わしてもらうけど」と切り出した山名。先日のライブのコーナーで上裸になっていく流れになった際、谷だけ服を脱がなかったことを指摘し「上半身裸NGはキモいって」と責める。谷は「俺は脱がないというボケをした」と弁明した上で「お前が一番意味わからん。お前は肌着になってた」と切り返した。

山名は谷に関する様々な暴露を試みるが、全て「弱い」と一蹴されてしまう。「あるやろ女の話とか」という谷のパスにも山名は「そういうのはええねんけど」と決定打を出さない。痺れを切らした谷は「ゴッドタンで喋れ!」と叫んだ。

最後は2人で

3組目はエルシャラカーニ、ネタは「服屋」だ。セイワは登場するなりしろうへの文句が止まらない。「今日は相方ぶん殴っていいライブって聞いた」と「Tタイム」への意欲を見せた。

アストラゼネカ社のことをアウストラロピテクス社と言い間違えていたと指摘されるしろう

漫才が好きすぎて一人称が「漫才」になりつつあるセイワ。このライブにおいても本筋の漫才はしっかり進めていきつつ、ごく自然な流れでしろうへの日頃のストレスをぶつける。しろうも「じゃあこっちも言わせてもらいますよ!」と勢いよく反撃に出るものの、何も用意してきておらず無言になってしまった。「お前は何ならできんねん!」と詰められたしろうは、「新ネタ合わせた後にいちいち怒ってくんなあ! 50にもなって成長するわけないやろ!」と言ってしまい、余計にセイワを怒らせてしまう。

捌けようと試みるしろう

ここで中MCだ。前半にネタを披露したジャンク・パンプキンポテトフライ・エルシャラカーニが登場し、それぞれ感想を述べた。ここで山名が「一個言い忘れてたことあるわ」と、3〜4日前に上野で谷が女性と手を繋ぎながら歩いていたという暴露をした。会場が色めき立つ中、谷の「マジで上野おらん」という一言で、山名が見たのは「ただ谷っぽい帽子をかぶっている人」であったことが判明した。

一気に劣勢に立たされる山名

しろうも負けじと「僕も一個言い忘れてました」と切り出し、「セイワさん昨日、新宿のルノアールにいたでしょ」と暴露。「毎日います」と即答されていた。

三者三様 でもある意味『いつも通り』の後半3組

中MCを挟んで4組目はスタンダップコーギー。ネタ開始2分ほどで三森が「いつも通りすぎる」と気づいてしまう。スタンダップコーギーのネタは普段から「のんふぃくしょん」だった。「ギスギスしたところも見せないと」と、どうにか「Tタイム」に持ち込もうとする三森に、「いつもすっごい仲良いみたいな言い回ししましたけど」と奥村が口を挟む。「え、すっごい仲良いんだけど!?」と三森が返すと「あえーーっ!嬉しいアンジャッシュさん!」と、平和な認識のすれ違いが起こっていたことを奥村が喜ぶ。

『水ダウ』解散選手権では51分46秒で最下位だった

その後もいつも通り本題には入れないままネタが進んだ。終盤「ふざけんな、お前のせいで綺麗な泥団子の作り方1個も教えられなかったじゃねえかよ」という奥村の言葉で、ネタタイトルが「綺麗な泥団子の作り方」だったことがようやく判明し、爆笑が起こった。

なぜ爆笑が起こったのかわからず、硬直する奥村

5組目はウエストランド。登場するなり2分ほど井口が河本をひたすら罵ったあと、先ほどのスタンダップコーギーと同様に「いつものネタじゃねえか!」と気づいた。一通り河本への愚痴を言い切った井口。「今日のは言い合うやつなんだから」と河本のターンを促すも、なかなか強いエピソードが出てこない。「こいつは俺が楽屋で孤立しててもいじって輪の中に入れてくれるくらい男気ありますからね」「楽屋で一回も怒られたことない」「家族を養ってくれてる」と良い方のエピソードを言ってしまい、「やりづらいんだよ!」と逆に井口が追い詰められてしまう。

「それ言ってもなぜか僕の好感度が上がらないんだよ!言わせてると思われてるから!」と井口

その後河本が「井口の直してほしいところ」として「楽屋の洗面台をびちゃびちゃにしている」ことを指摘、その面白くなさから井口が解散を切り出した。河本が去ってしまった後、舞台上は文字通り井口の独壇場となった。「相方に文句言ってる全若手に言うけど『俺がネタ書いてるから』じゃないんだよ! ぬるいから!」「竹内ズどっちが悪いか知らないけど、どっちも悪いわあんなもん!」「実力があれば1人でも売れられるんだよ!」と言う井口に会場もつられて興奮が高まり、拍手笑いが連発された。ラスト1分半の井口の1人喋りと、そのパワフルさ、ぜひ配信で見てもらいたい。

「Abemaでスピーチしてディベートして合コンしてラップやってんだよこっちは!」

6組目は真打・竹内ズ。ふたりが登場した瞬間から、会場の期待感も最高潮に達した。ふたりの言い合いは静かに始まる。口火を切ったのはがまの助だった。「んー…どうしようかなあ…」と慎重に弾を選び、「竹馬なんですけど…」と切り出した。がまの助は淡々と「竹内に貸した小道具の竹馬を壊された」というエピソードを語り、「謝りもしなかった」と竹内を詰り、「謝ってほしい」と促す。 

がまの助の話が長すぎてよそ見をしている竹内

がまの助の苦情を「長いな…と思った、今」とまず一蹴した竹内。「竹馬が壊れて俺も怪我をした」「その方がヤバくないですか」「竹馬がまず竹馬として成立してない」と流れるような反論を繰り出した。「竹内くんが変な乗り方してたからじゃないの」というがまの助の指摘にも「変な乗り方って何? 竹馬乗ったことあんの?」と言い返し、竹馬に乗ったことがないというがまの助は劣勢に立たされてしまった。

竹馬の乗り方が適切だったか/不適切だったかという話をしている竹内ズ

「YouTubeとかで検索すれば竹馬の楽しい映像が出てくる」「こういう乗り方もしてるよ竹馬って楽しいから、本来」と畳み掛けていく竹内。そして「俺はその楽しい竹馬をめちゃくちゃにされた側」という主張に持ち込んだ。

竹内の反論に言い返せないがまの助 「面白い顔をして笑わせる」という手段に打って出る

竹馬の話一本で真剣に言い争って10分を使い切った竹内ズ。お互いに関する様々な話題をぶつけ合って楽しく10分を消化した他コンビとの格の違いを見せつけた。ネタ終わり、がまの助が言うに事欠いて放った、捨て台詞ならぬ捨て下ネタにも注目だ。

エンディングMCでは後半にネタを披露したスタンダップコーギー・ウエストランド・竹内ズの3組が登場。三者三様の苦労が語られた。各コンビの関係性やパワーバランスを浮き彫りにされたが、「竹内ズ以外は普通に仲が良い」ということを再確認できるライブとなった第1回「のんふぃくしょん」。「本音をぶつけ合う」ということだけ決められていたライブだが、各コンビの話題の選び方・ぶつけ方にも個性が出ていた。「言うことが何も思い浮かばない」という場面も散見されたが、それも含めての「関係性」といったところだろう。


井口は「もっとコント師とか、パワーバランスの近い人が良い」とフランスピアノを次回出演者に推薦したが、なかがわは「ちょうど見てらんないかも」と懸念を示した。とはいえ、「この趣旨のライブにしては、ちょっと今日は盛り上がりすぎた」と反省点?も上がった。次回「のんふぃくしょん」は「ちょうど見てらんない」通好みのライブとして帰ってくるかもしれない。

第2回はあるんですかね?というなかがわの問いかけに、田中は食い気味で「ないないない」と即答

文・写真:ふじもと 編集:フクダ