「銀シャリの銀シャべくリ食堂」が10月8日に東京・新宿の紀伊國屋ホールで開催された。
このライブは銀シャリのレギュラーライブ『銀シャリ食堂』のしゃべくり漫才師版。オズワルド、ストレッチーズ、キュウ、赤もみじの銀シャリが太鼓判を押す4組が登場し、ネタとコーナーで盛り上がった。オンライン配信も行われ、筆者は配信で視聴した。
橋本「ここからチャンピオンを出しましょうよ!」
開演とともに登場したのはMCの銀シャリ(鰻和弘・橋本直)。橋本は「令和のしゃべくり新選組」「未来の日本代表」「先輩ですけど尊敬しちゃう」とまだ舞台に登場していない後輩たちを褒めちぎる。鰻は「すごい奇跡が起こっている。『食堂』なので偶然全組のコンビ名に食材が入っている」と説明し、出演者を呼び込んだ。
まず紹介されたのはオズワルド(伊藤俊介・畠中悠)。畠中が開口一番「しゃべくりのすごさを伝えていくライブを、僕らのためにも銀シャリさんが率先してやっていってほしいです」と語ると橋本も「定期的にやりたいですよね。ここからチャンピオンを出しましょうよ!」と意欲を示した。銀シャリの2人は「品がある」「世界観に引きずりこまれる」と早速べた褒め。伊藤が「あんまりハードル上げないでもらっていいですか」と話すも、橋本は「年間のどのライブよりもテンション上がってる」と、喜びを隠しきれない様子。オズワルドはコンビ名に食材が入っていないと指摘されると鰻は「スイスのオズワルド社の野菜コンソメが有名」と説明。しかし、舞台上にも客席にも知っている人がおらず一組目から「奇跡」が崩れてしまう。鰻は「伊藤ハム」と個人名に焦点を当てることでなんとか食材縛りを継続させた。
「テレビにほとんど出たこともなく、業界人からの注目もない。銀シャリさんの支えのみで生きてる」と感謝を口にしたのはストレッチーズ(高木貫太・福島敏貴)。橋本は「漫才のテーマも毎回『やられた~!』ってなる」「『笑けずり』から100倍くらいおもしろくなっている」と2人を絶賛。食材縛りについて鰻は「ストレッ『チーズ』ね」と説明した。
続いて紹介されたのはキュウ(清水誠・ぴろ)。銀シャリは「単独ライブのvol.2(キュウ第2回単独公演『時空無きモノ』)は名盤」「清水君の顔がめっちゃおもろい」とまたしても絶賛。橋本は「キュウのDVDを見た次の日には、清水くんが自分の中に入ってしまう。睨んだり考えるふりをしてしまう」と、清水の目つきと演技力にスポットを当てた。キュウに関連した食材について鰻は「キュウリ」と回答。しかし、ぴろが唯一食べられない食材がキュウリだと判明。そこから鰻とぴろがキュウリについて語る時間がしばらく続き、しびれを切らした伊藤が「すいません。今日これ4時間ライブですか?」とツッコむと客席からは大きな笑いが。そのやり取りを見た橋本は「漫才が生み出されそうでたまらなかった」と漏らし、後輩の漫才師とのトークに胸が弾んでいるようだった。
最後に紹介されたのは赤もみじ(阪田ベーカリー・村田大樹)。「2人とも顔がいい」というところから話題の中心は阪田のあごに。「あごはいらない」と語る銀シャリと村田が「あごが欲しい」と言う阪田と対立する構図になり「あごがなくても日常生活に支障はない」「唯一無二」「あごがない分、のどが2倍ある」となぜか阪田が矢面に立たされる。客席から咳払いが聞こえると橋本は「お客さんが『そろそろ終わらせろ』と言っている」と語り、会場の笑いを誘う。赤もみじにまつわる食材は「大阪・箕面市名物のもみじ天ぷら」と鰻が説明したところでライブはネタコーナーへ移った。
実力者たちのしゃべくり漫才5連発! 各コンビの個性際立つ
トップバッターは赤もみじ。『ゴッドタン(テレビ東京)』の「この若手知ってんのか!?2020」にて『「こいつは天才だ!」と一目置かれている芸人』第1位を獲得するなど、お笑い界からの視線が集まる2人。阪田のけろっとしたボケと村田の怒鳴りツッコミが絡み合い、見事に客席の心をつかんでいった。
続いてネタを披露したのはオズワルド。今年はABCお笑いグランプリで準優勝、マイナビLaughter NightチャンピオンLIVEで優勝など、勢いに乗る彼ら。世界観はそのままに、会話のラリーが増えたことでさらにネタに磨きがかかっているように感じた。途中、畠中の言葉がもたついた直後に伊藤もつられて噛んでしまうという微笑ましい一幕も。
巧みなテーマ設定と軽快な掛け合いで笑いを起こしたのはストレッチーズ。筆者がこのネタを見るのは3回目だったが、毎回グレードアップされていることに驚かされる。ネタが進化していく様子を追いかけることができる、お笑いライブの魅力を改めて感じた。
続いてネタを披露したのはキュウ。打って変わってたっぷりと間を取った漫才を展開し、観客は2人の奇妙な会話に引き込まれた。目の動きをはじめとする細やかな所作の一つひとつをはっきりと見ることができるのは配信ならでは。
トリを飾ったのは銀シャリ。とにかく楽しそうな2人のやり取りに会場は笑顔に包まれる。ゆるゆるとした雰囲気の中にもM-1王者の貫禄を感じさせる漫才で5者5様のネタコーナーを締めくくった。
歌とエピソードで大盛りあがりのクイズコーナー
コーナーでは各コンビのプロフィールにまつわるクイズが行われた。
最初に登場したのは赤もみじ。問題が出題される前から回答が止まらずメインのクイズに回答する時間がほとんどなくなってしまうほど大盛りあがり。畠中がボードに印刷されている「出身」を「でみ」と読む回答をし、「どういう問題を想定してた?」と周りからツッコミを受けていた。また、鰻が「村田の妹が女優!」と答えると村田が「伊藤さんの妹が女優です」と話し、さらに伊藤が「女優じゃなくて天才女優ね」と訂正を入れると会場からは拍手が起こった。
オズワルドは畠中のオリジナルソング『コンビニエンスマン』の歌詞からクイズを出題。正解発表を兼ねて畠中が歌を披露すると銀シャリが「YouTubeに上がってたら何回も聴く」「吉田拓郎みたい」「このライブのエンディングテーマを作ってほしい」と大絶賛。予想外の称賛に畠中は「変な汗が出てきた」とはにかんだ。
ストレッチーズは「福島が芸人になると告げた際に父親から言われた一言」から出題。惜しい回答が続出するも、正解は出ず。福島が衝撃の正解を発表すると会場からは大きな笑いと拍手が起こった。
最終問題を出題したのはキュウ。「ぴろの趣味であるSM器具DIYの第1作目は何で何を作ったのか」を当てるクイズに、少し恥じらいながらキュウ以外の4組が回答していく。作った器具を当てる回答もあったが何で作ったかまでを当てることはできず、正解発表へ。ぴろの強烈なエピソードに笑いと驚きが起こったところでコーナーは幕を閉じた。
「年内とは言わず来年も」?「来年とは言わず年内も」!
「(ぴろの)SMがまだまだ気になる」と余韻に浸る銀シャリ。伊藤が「今も(SM器具)つけてますよね?」と聞くとぴろは「銀シャリさんに呼んでもらった大切なライブなんで……。つけてます」と告白。加えて「あとで身体を揺らしてみてください。(器具をたくさんつけているので)『ガシャガシャガシャ~!』ってなります」と語り、その徹底ぶりで出演者を感心させていた。各コンビの告知が終わると、ふいに橋本が「ベーカリーはなんか個人的にある?」と尋ねる。そこで阪田は自身のYouTubeチャンネル『阪田ベーカリーのぱんちゅーぶチャンネル』を宣伝。阪田のパン作りに対するストイックエピソードも披露され、銀シャリは今日の出演者にまだまだ興味津々の様子。鰻が「年内とは言わず来年もやっていけたら」と締めの言葉を述べ「『来年とは言わず年内も』やから。期待を裏切ってんのよ」と橋本からツッコミが入ったところでライブは終演した。
事務所も芸風も異なる5組がしゃべくり漫才という共通点で集まったこのライブ。出演者をしゃべくり漫才師に特化させることで、各コンビの個性が際立っていた。また、銀シャリがキュレーターとなることで、特定のコンビを目当てにチケットを購入した観客にも、他のコンビの魅力が十分に伝わったのではないだろうか。橋本の言葉どおりここからチャンピオンが生まれることを期待せずにはいられない。オズワルド、ストレッチーズ、キュウの3組はM-1グランプリ準々決勝への進出を決めた。赤もみじの追加合格を願いつつ、準々決勝での彼らの活躍に注目したい。
ライター:西田瑞希