2023.06.30

故郷に想いを馳せながら、話題作『怪物』を語る【シアターフニャオ〜ダンビラムーチョ原田の日常〜 vol.13】

実は映画通の芸人、ダンビラムーチョ・原田フニャオさん。フニャオさんが日常で起きたエピソードとともに映画を紹介するコラム『シアターフニャオ』は、この6月で2年目に突入！（月1回更新）　今月のテーマは「思い出」。生まれ故郷の思い出とともに、現在公開中の超話題作について紹介します。

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思い出

「たぶんやけどこのサイトの話をしてる芸人、オレらだけやと思うで」

GAGの福井さんとワラパーの話をした。最近ワラパーという名前に変わったことや、「なんで連載フニャオ氏だけやねん」といった話を。
ただみんながあまり知らないからこそ、俺らがワラパーを盛り上げていくワラパー兄さんになるんだと誓い合った（心の中で勝手に）。

そんなこんなでコラムを書こうと無限大ホールに向かった。
楽屋に入るとスパイクの松浦さんが声をかけてくれた。

「ヨシ坊！聞いてよ！」

松浦さんは、俺のことをヨシ坊と呼んでくれる。

「最近ヨシ坊が夢に出てきたんだよー！」

こんなこと言われたら喜んじゃう。

「ただヨシ坊が結構重い病気にかかってて本当に悲しくてさぁ、起きても悲しかったくらい。で夢占いで調べてみたんだよ。そしたら、
『その病気になってる人は心の底から縁を切りたい人です』
って出てきたんだよー！私ヨシ坊と心の底から縁切りたいらしい！ハーッハッハッハ！！！！」

いやハーッハッハッハ！！！！じゃないんだよ！すごいこと言ってる！悲しいとか言ってたのなに？！

そんな「もう！まったく松浦さんったら！」というテンションで書き進めていく、記念すべきシアターフニャオ2年目第1弾のコラム。

今回紹介する映画は『怪物』。

監督・是枝裕和 × 脚本・坂本裕二 × 音楽・坂本龍一の、夢のようなクリエイター陣のコラボで撮影された、現在映画館で上映している映画だ。
初めて映画館で公開されてる映画を紹介するのだが、もういてもたってもいられない。なぜなら舞台になっている町が、俺が18才までずっと住んできた故郷だからだ。

皆さんも、映画やドラマを見ていて知っているところが出たときに、テンションがフワッと上がったりしたことがあると思う。僕はこの映画を見ている2時間、ずっとテンションが上がり続けていた。もう普通のシーンで「あーっ！」とか言っちゃってた。

物語の中心になっている二人の少年、湊と依里が、色々なところに行くたびに思い出が溢れてくる。湊が住んでる家の近く、ここは小学校の頃友達の家に行くときによく通ってた道だ。

そこで思い出すのは、トウジョウさんという羊飼いの70才くらいのおじいさん。

トウジョウさんは、毎日羊を2匹連れて一輪車を押して町中を歩いていた。トウジョウさんが着ている服がいっつもボロボロのヨレヨレで、メガネも割れていた。そのメガネの割れをガムテープでとめていて、見るたびにガムテープの面積が増え、ついにはメガネ全体をガムテープが覆ったときに、「なんのためのメガネなんだろう」と不思議に感じたことを思い出す。

安藤サクラ演じる早織が車で通る道も、通ってた高校の前だ。

そこで思い出すのは、高校生のとき好きだったサトミちゃんという女の子だ。
ある冬の学校終わり、一緒に帰れることになった。ドキドキしながら帰っていると「手袋片方貸してよー」と、まるでBUMP OF CHICKENの歌詞にありそうなことを言ってくれた。フガフガしそうなのをおさえクールに手袋を渡し、サトミちゃんが一言つぶやいた。

「いやタバコ臭っ」

お父さんの副流煙を十分に吸った手袋は、すぐに返ってきた。
そしてなんやかんやサトミちゃんに3回告白して3回ふられた。
そんなことを思い出す。

湊と依里が通っている城北小学校。

ここで思い出すのは、城北パワーズという野球チームだ。俺が入っていた高島ウイングというチームもめちゃくちゃ弱かったけど、唯一勝てるくらい弱かった城北パワーズ。
高島ウイング対城北パワーズは、どっちも弱いので基本ピッチャーはストライクが入らない。フォアボールを出しまくり押し出しでたくさん点が入る。なのでちょっとでもフォアボールが少なかった方の勝ちという、なんの見応えもない試合になってた。

他にも色々な思い出がある場所が出てくる、ただエピソードはここらへんにしよう。
なぜなら『怪物』の面白さが全く伝わってないからだ。

映画を紹介するコラムでこんなことは絶対言っちゃいけないと思うけど、まずは見て欲しい。なにを言ってもネタバレになりそうで、なんにも言えない。

「そんなバカな！」

そう思うと思う。ただ、なにかを言ってなにかが変わってしまうのが怖い。

「楽してるだけだろ！」

うんうん、わかる。その気持ち。
ただ、見たら俺の言ってることもわかると思う。

「〆切過ぎてるから早めに送りたいだけだろ！」

確かにまた提出の〆切を過ぎてしまってる。

まずは予告を見て、なにかうずくものがある人は是非とも映画館に足を運んで欲しい。
見たら必ずや、皆さんの良い思い出になるはずだ。

★『怪物』公式HP：https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
★『怪物』上映館：https://theater.toho.co.jp/toho_theaterlist/kaibutsu-movie.html

文：原田フニャオ（ダンビラムーチョ）
編集：堀越愛、サムネイルデザイン：つるみ32