2024.02.24

ダンビラムーチョと猫おじの出会い、そして「14歳の栞」の美しい青春もまた、奇跡。【シアターフニャオ〜ダンビラムーチョ原田の日常〜 vol.21】

実は映画通の芸人、ダンビラムーチョ・原田フニャオさん。フニャオさんが日常で起きたエピソードとともに映画を紹介するコラム『シアターフニャオ』（月1回更新）。
最近、電車移動が伴う仕事の多いフニャオさん。今月は、ダンビラムーチョに起きた電車内の奇跡について綴ります。そして紹介する映画も同様に、人生のとある期間を映す“奇跡”みたいな作品です。

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山梨ばっかじゃんけ！

M-1に出たことで仕事の幅が広がり、今年は地方に仕事に行く機会が多くなった。このコラムを書いてる今も大阪帰りの新幹線だ。

数えてみると2月は17回も地方に行かせていただいてる。
とてもありがたい。

もう新幹線の改札を通るときに「あってるよな！？この2枚入れる感じであってるよな！？」と心の中で緊張することもなくなった。

ちなみに内訳は17回中、8回が山梨。

「山梨ばっかじゃんけ！」

自然と溢れ出る甲州弁はさておき、地方に行くということは必然的に新幹線や特急電車に乗ることも多くなる。

そんな電車にまつわる話を綴ろう。

ダンビラムーチョと猫おじ

僕らダンビラムーチョがよく乗るのは「特急あずさ」。新宿から山梨を経由して長野の松本に行く電車だ。
昔「スーパーあずさ」というカッチョいい名前の電車もあった。ただあずさより車両もボロく、死ぬほど揺れるというスーパー詐欺をしている電車で、子どものときげんなりした記憶がある。

そんなことはさておき、ある日相方のダンビラムーチョ大原がこんなことを言っていた。

「山梨に行くあずさに乗ってたら、隣に変な人が乗ってきた」

聞くと、その人は50才くらいのむっちりとした体型のおじさんで、黒い薄手のセーターをピタッと着ている。そしてその黒いセーターに、猫の毛がびっちりついていたらしい。そして、今の時代珍しくCDウォークマンを使っており、それをテーブルに置き、クラシックを大音量で聞いているらしい。

確かに珍しいおじさんだ。
しかもなんと、、そのおじさんと2週連続で隣の席になったらしい。
なんという奇跡だ。

12車両の中の約60席の席数の中の隣を2週連続。12×60×2=1/1440。

カレーうどんを食べて服が汚れない確率と一緒だ。
とんでもない確率。

変な話過ぎるので、最悪作り話の可能性もあるなと思っていた。
そして、月日は流れいつものように僕も『ててて！TV』の日にあずさに乗り、好きなベーコンエピを食べていた。

ノシノシ、、

隣に来る丸いシルエットの男性。
足元からのパーンアップ。
スニーカー、ピタッとしたジーンズ。
そして目線を上げると黒いセーター、、白い毛がお腹から首元までしっかりとついている。
メガネをかけたおじさんは、ゆっくりとフックをひねりテーブルを下ろす。
そして、カバンの中からSONYと書かれた機械を出しカチャリとテーブルに置く。
そしてイヤホンから聞こえてくる、ベートーヴェン、、

あの人だー！！！！
俺も隣に座れたー！！！
キター！！！！！！

おじさんは、怪訝そうな顔でこっちを見ている。おじさんに会えた喜びで、まるでアイドルを見るような顔でおじさんを見ていたからだ。

猫おじに会えたー！
やったー！！

ただちょっと待てよ、、、ありえなくないか？コンビ揃って隣に座れるなんて、、、もしかして猫おじは他の人に見えてないんじゃないか？猫おじは、、妖精？？

そんなことを思いながら猫おじを見ていると、猫おじはさらに怪訝そうな顔になっていった。

Funyao`s recommendation

今日紹介するのは『14歳の栞』。

この映画は、なんと配信もされてないしDVD化もされていない。というか「しません！」と断言している。本当にある中学の2年生のクラスのドキュメントなので、生徒たちのプライバシーを守るためにそうしてる。「SNSでの誹謗中傷もおやめください」とも。

年に数回あるかないかの、映画館での上映を待つしかないのだ。

初めてこの映画を見たとき、上映中ずっと目の中に涙が溜まってる状態だった。本当に普通の中学2年生達なのだが、子どもと大人のちょうど境目で、まだ形になりきれてないやわらかさみたいなものがあるのだ。ただの生活がすごくリアルで、自分の中学2年生のときの記憶とリンクし、わんわん泣くというよりじっとりずっと目に涙がある状態。

ドラマのような青春なんかなく、これが本当の青春。ただこの青春がとっても美しい。

そんな最高映画が、3月から各地で再上映される！やったー！！

猫おじとの出会いも奇跡。出会いと別れの春に見てほしい映画。皆さんもこの機会に是非。

『14歳の栞』
2024年「春限定再上映」情報：https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000415.000024007.html

文：原田フニャオ（ダンビラムーチョ）
編集：堀越愛、サムネイルデザイン：つるみ32