思い出の「道頓堀ZAZA」閉館に寄せて ~シチガツ第3回単独ライブ「ニガツの回」より~【「ゲイニンマンガ」5月号(漫画&文 畠山達也)】

芸人兼漫画家として活動する畠山達也さんが、独自の視点で「芸人」を見つめる連載『ゲイニンマンガ』。漫画とコラムで、畠山さんから見た「芸人」を描き出します!

コント『コンビニ』

「ドラ川死んだ」

2024年5月6日、大阪の劇場『道頓堀ZAZA』が閉館しました。

大阪で活動していたころに出させて頂いていた劇場がなくなってしまうのは、やはり寂しいです。

ZAZAには色々な思い出がありますが、閉館すると聞いて思い出したのは冒頭のマンガです。  これは『シチガツ』を組んでいたときにZAZA HOUSEで開催した第3回単独ライブ『ニガツの回』での出来事です。
以下、コントの概要になります。

コント『コンビニ』
相方、浮田扮するドラキュラがコンビニで深夜勤をしている。
そこに畠山扮する早朝勤務の大学生の男が出勤。

浮田「さてそろそろ5時だ。あがる時間だな」
畠山「おはようございます」
浮田「おはよー」
畠山「あの……ドラ川さん、ちょっといいですか?」

ドラ川という小学生が付けたのかと思う役名は目を瞑って下さい。

畠山「このコンビニの深夜勤て何時まででしたっけ?」
浮田「え?7時までだけど」
畠山「今何時ですか?」
浮田「え?5時だけど」

最近の人間の血が不味く食事が出来なくなったドラ川(目を瞑って下さい)はかろうじて人間の飯は食えることに気付き、食費を稼ぐためにドラキュラということを隠しコンビニで深夜勤をしている。
しかし陽が昇る前に屋敷に帰らないと太陽の光で死んでしまうので、店長に適当な嘘をつき本来7時上がりのところを5時であがっている。
それに早朝勤務の大学生は不満を感じていたため、帰ろうとするドラ川(恐らく下の名前キュラ夫)を止め文句を言う……という内容です。

そしてここからはオチまでの流れです。

浮田「いやもう陽が昇るから急いで帰らないと!」
畠山「なんですかそれ!とにかく今日はちゃんと7時まで入ってもらいますから!」
浮田「いやもう本当に急がないと!」
畠山「ちょっと待って!」
浮田「あと引き継ぎ!今日レジ金マイナス1万出てるから!」
畠山「ふざけんな!」
浮田「じゃあお疲れ!!」
(浮田ハケる)

という内容の予定でした。

相方はこの最後のセリフ「うわ~やっぱり間に合わなかった~!!」を言うのを忘れてしまい楽屋に戻って次のコント衣装に着替えていたのです。

本来であればシャツからドラキュラを狩る者に与えられる証みたいなのを取り出し「退治完了~」とだけ言う、観ている人に全てを説明せずに余白を残す単独ならではのオチ。

しかし
浮田「……(無言)」
畠山「……時間稼ぎ出来たな……退治完了~」

は意味不明にも程があります。
余白どころではなく白が多過ぎます。

オチゼリフをアドリブで他のセリフにすることも出来ません。リハーサル通りに「退治完了~」と言わないと暗転されないからです。

絶体絶命……。

まぁしかし、このとき私もそこそこの芸歴。
ネタを飛ばすのは今までお互いに何度かありました。なのでこのくらいのアクシデントには多少動揺しても、違和感を感じさせることなくオチまで持っていくことができるのです。

ではその後どうなったのかご覧ください。

動揺しまくり、なんの前触れもなく「ドラ川死んだ」と言う畠山!
お客さんポカーン!
テンパリにテンパリ、説明しないはずだった設定をもごもご喋りだす畠山!
観ている人に1ミリの余白も残さずfinish!!
っていうか元々大した設定じゃないのにそれをもごもご喋られてお客さんポカーン!
暗転!!
たまにある現象、「……え?終わり?終わったの?」みたいな感じにお客さんがなって、拍手していいのかどうか分からず転換中の曲がなってようやくまばら拍手!!

となりました。
めちゃくちゃ動揺し、引き攣った笑顔で僕は暗闇へと消えていきました。

ま……まぁ……
「ドラ川太陽で死にました!良かったです!どうもッありがとうございましたー!!」にならなかっただけ良いんではないでしょうか……。
その後残りのコント数本を終え、単独はなんとか終了することが出来ました。

あのときはテンパリましたが、それも良い思い出です。

そんなお世話になったZAZAは浪速区・新世界へと移転するそうです。
またいつか新世界ZAZAの舞台に立つために、なにが起きても動揺しない心とネーミングセンスを養いたいと思います。
道頓堀ZAZA、舞台に立たせて頂きありがとうございました。

追記:今回のコラムのために浮田に「ZAZAでやった単独の話コラムに書いていい?」とLINEしました。

「ええよ!あれやんな?取り調べのコントでめっちゃシリアスな入りしなきゃいけないのに、俺が椅子引くときにどデカい音出して、その後噛みまくって変な感じになったやつよな?💦」

僕はすっかり忘れてましたがコンビニ以外にもやってました(笑)。

取り調べのコントということも相まって、こっちが聞きたかったことと違う余罪を言ってしまう犯人みたいになった浮田なのでした。

漫画・文:畠山 達也
編集:堀越 愛
協力:秦 法爾
サムネイル:つるみ32

PROFILE

畠山 達也

・X(@hatatatsu1124
・Instagram(hatatatsu
・note:https://note.com/hatatatsu112429/
・YouTube:ハタタツチャンネル


~作品情報~

●読切りマンガ『凡太は普通に生きている』(少年ジャンプGIGA 2016 vol.4)
●読切りマンガ『しろすぎ!アクノソシキ』(週刊少年ジャンプ/2016年11月)
『未読無視してんじゃねぇよ』(原作:畠山達也、作画:杠憲太)
●『山田夢太郎、外へ行く』(原作:畠山達也、作画:修行コウタ)
『カスミの地味な未確認生物的返済生活 1巻』(原作:クロスバー直撃・前野、作画:畠山達也)