ひとつだけ超能力を得られるとしたら?「時間停止」「他人の体と入れ替わる」《春とヒコーキ「VIP ROOM HARUHIKO」第26回》

『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。

今月のテーマは、「ひとつだけ超能力を得られるとしたら、どんな能力がほしい?」。


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theme. ひとつだけ超能力を得られるとしたら、どんな能力がほしい?

ver.ぐんぴぃ

「時間停止」です。やっぱりこれでしょう。検索したら『憧れの超能力 人気ランキング』というものが複数ヒットしました。欲しい超能力系のランキングは何度も集計されているのですが、見たところだいたい1位が時間停止系です。人気ですね。

時を止めてる間にせかせか動いて、瞬間移動を演出するのなんて絶対に楽しい!時間を操るキャラクターってみんなカッコイイし。十六夜咲夜みたいに時計の針を止めているうちに数多とナイフを投げ、先方に絶望感を与えるアレもすごく憧れます。

忙しい人はタイムストップ中に、あえてゆっくり過ごすのもいいでしょう。溜まっているNetflixなんかを消化できるかも。タイパ重視で倍速視聴しなくたっていい。僕も積ん読に取りかかりたいです。課題提出が明日までなんてタイミングで、何度「時間を止めたい」と願ったことか(今も原稿の締め切り直前に焦りながら書いています)。時間に追われる現代人には応用性がありそうで、人気なのも頷けます。

時間停止中にエロいことをするなんて、男の夢です。セクシービデオでも時を止める能力を題材にした作品が多く存在します。しかし残念ながらAV作品における「時間停止」はほとんどガセで、9割はヤラセという噂です。だいたい犬が動いちゃってるし。

いっぽう「犬には時間停止が効かない」「その犬が時間停止を無効化する能力の持ち主だった可能性」「主人公が動物愛護の観点から、可哀想なので犬に時間停止効果をかけなかった」という反論もあり、1割は本物の可能性も残されているとのこと。やはり夢がありますね。

希望だらけの「時間停止」ですが欠点もあります。

時間が止まっている間もじぶんの心臓は動いています。つまり時を止めれば止めるほど、他人より早く老けて、早く寿命を迎えてしまいます。ディオのように不老不死じゃないと、思い切って使いづらいですね。まぁ楽しい時間を引き延ばすにはこれぐらいの代償は必要でしょう。今、この一瞬を味わい続けるために、時を止める。俺は今なんだよ、と。

そういう意味では、感覚が冴え渡ることによって、気持ちいい快楽が永遠に続くかと思うぐらい味わえると評判の「キメセク」も「時間停止」に近いかもしれません。早く寿命を迎えるし。

あと興味深かったのが、「時間停止」が欲しい超能力1位になる国って、日本ぐらいらしいです。海外の方はそもそも時間をそんなに気にしていないそうです。

「時間停止」が人気なのって、日本人がダントツで時間に厳しいことの裏返しですよ。電車が定刻に発着するのは日本だけ。

確かに、フィリピンで友達とクレープを頼んだら小一時間出てこなかったことあるもんな。

さすがに遅すぎるから店内を覗いたら店員が4人いたんですが、そのうち2人が談笑したり、鼻歌まじりにゆ~~っくり調理してて、残り2人はキッチンじゃないところでダンスを踊っていました

現地に住む日本人に聞いたら「この国の人の辞書に、‟急ぐ”という文字はない」と言っていました。南国らしくゆったりとした空気が流れている。急がない人たちは時間を意識することもきっと少ないでしょう。

急げばよりお金を稼げるかも知れないが、それより大切なことを知っている人たち。羨ましくなったのを覚えています。「時間停止」は普遍的に優れた能力というわけでもなさそうです。そう思うと、ちょっと色褪せて見えてきました。

余談ですが、日本人が時間に厳しくなった理由は日本の稲作に起因している、という論がとても面白かったです。

なんでも日本はずっと昔、鎌倉時代から米麦二毛作を行ってきました。秋に麦を植えて、初夏に刈り取る。すかさず同じ場所に稲を田植えしてまた秋に収穫する。一年中休みなく、働けば働くほど収穫量が増えました。

いっぽう、ヨーロッパは寒いので稲が育たず麦オンリー。耕地に麦の種を蒔いたら収穫までのんびり放っておく農業スタイルです。一定以上は働いても収穫量は変わらないので、手間をかけない農業が主流になっていきました。

次々と時間に追われながら重労働を繰り返す日本の農業スタイルは、世界的にみても独特で、勤勉を美徳とする日本人の価値観、および時間を意識する元になったという。面白いです。

ヨーロッパの人がちゃんと休みを取るのはそういうことかも、とか。

あと海外はドラッグも流通してますから、いまさら時間停止なんていらない説も唱えておきます。なんか今回のコラムで、クスリが欲しい人みたいに思われたら困るなぁ!!


ver.土岡

ぼくが欲しい超能力は、「他人の体と入れ替わる」能力だ。なにをしたいかと言えば、スポーツ選手の肉体を使ってスポーツがしてみたい。動体視力なども込みで野球選手やサッカー選手の体になってスポーツができたら、相当楽しいと思う。 

どんな超能力が使えたらいいか、候補がたくさんあって悩んだ。けど、時間を止めるとか透明になるといった、現実に誰にもできないことをするための能力は、欲しいものが多すぎてキリがない。だから、現実に誰かができていることを自分もやってみたいとしたらなにか、という考えにシフトしてみた。他の人ができていることで言うなら、スポーツを、強い肉体と技術でハイレベルにやってみたい。

芸人で草野球やサッカーをやっている人も多く、誘ってもらったことも何度かある。一度、先輩芸人のイッペーさんにサッカーに誘われたとき、「スポーツが得意じゃないので上手な人たちとやるのは気が引ける。でもちょっとやりたいので、スポッチャ行きたいです」と返事をしたことがある。イッペーさんが人を募ってグループLINEを作って、スポッチャに行く段取りをしてくれた。メンバーも、ぼくの要望に合わせてスポーツ好きな人は呼ばず、普段運動していない芸人ばかりで集まった。アニメや本などカルチャーが好きな、話の合うメンツだった。当日、みんな15分でバテた。普段自分の体を動かさずに能書きを垂れて文化系と言い張っているメンツだった。バスケもしたけど、最初から全員、終盤の三井寿くらい限界を迎えてた。誰もスリーポイントは入らないのに。3時間パックでスポッチャに入ったが、だましだましなんとか1時間はスポーツをし、1時間クレーンゲームをして、1時間余らせて帰った。

サッカーボールを思ったところに蹴れたら、剛速球をバットで打ち返すことができたら、それを長時間続けるスタミナがあったら。もちろん、そんなことできなくても、たまの運動は楽しいし気持ちいい。でも、スポーツ選手の体でそれができたら、「楽しいし、、、気持ちいい!!!」と思う。

スポーツ観戦には、その疑似体験ができる楽しさも乗っかっているのだろう。プレーを客観的に見るだけでなく、気づかないうちに自分が選手になった気分で見ている人も結構いるんじゃないだろうか。そうなれるなら、スポーツを観ようと思う。そして、自分の肉体でもやってみたくなって、またスポッチャに行く。次は1時間余らせないように、クレーンゲームを2時間やる。


文:春とヒコーキ
編集:堀越 愛、サムネイル:つるみ32

PROFILE

タイタン 所属

左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗

★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
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