《新連載》自分自身を何様だと糾弾する自意識こそが何様であると定義しておきながら、王冠代わりに御を被せた【南 翔太「御何様」第1回】

『御何様』は、芸人・南翔太による写真×文章の連載。
編集部が南に27枚撮り使い捨てカメラを渡し、1か月かけて自由に撮影。撮れた写真から想起する文章を綴る連載である。

使い捨てカメラは、スマホやデジカメとは異なり「現像するまでなにが撮れているかわからない」のが持ち味。どこでなにを撮るのか、そしてどの写真を選ぶのか、何枚選ぶのか、なにを書くのか……すべてを南に委ねてみた。

オナニサマ、スタート

はじめまして、南翔太と申します。

27歳。「サンプル」「オドるキネマ」のボケを担当した元吉本芸人で、現在はYouTubeチャンネル「ニートと居候とたかさき」に居候しながら、時折芸人として各種メディア、ライブイベントなどに出演しています。

この度は、「ニートと居候とたかさき」名義でKADOKAWA様から出版された書籍でご一緒した堀越愛さんのお声掛けにより、連載させていただくことになりました。
すべてのインタビューに遅刻した愚肉にこのような機会を与えてくださった堀越さんにも頭が下がらないのがこの愚肉。ありがとうとごめんなさいが言えません。当方若い頃の父と瓜二つだそうで、ご査収ください。
もとよりこうして名前を出したのも義理ではなく、この連載で不祥事が起きた際の責任者を明記したに過ぎません。悪しからず。
ここまでもこれからも、駄文は堀越さんの校正を経て投稿されます。

表題の「御何様」は造語で「オナニサマ」と読ませます。自分自身を何様だと糾弾する自意識こそが何様であると定義しておきながら、王冠代わりに御を被せたものです。
似た言葉の造語に「オナニー様」がありますが、同義です。


取り急ぎ、写真の才能はなかった。
これはかなり痛い。
自分で撮った写真について語る連載において写真が下手というのは致命傷。語れば語るほど滑稽である。
ベタベタとハンドした直後ではどんなシュートを放ったところでそいつはただのデカいシーブリーズだ。
残り時間は、いっそ退場にしてくれと腹の底で唸りながらも、チームとサポーターのためという最もらしい理由を申し訳程度に添え木した脚で、これ以上カードを貰わないよう細心の注意を払いながら、何もないところでスライディングをして、ただ青春の香りを撒き散らすのだ。

マタニティサムライオトナブルー
サッカー青春日本代表の憂鬱

意味:何か産まれろと割腹した侍もどきが、ただ糞を垂れ流してしんどそうにしているさま。

それが今の俺だ。

綺麗に現像するまでが写真で、帰るまでが遠足で、プレゼントキャンペーンが当たらないからとかではなくフォロー返してくれないから前澤友作のフォローを外したのが元カノだ。


クレヨンしんちゃんのシロが、白のタイルがほとんどの中、プライドを捨てて灰色のタイルに擬態していた。野生の覚悟と、一度有名になった者の生きづらさを体現している。見つかり次第「シロやのに灰色のとこおったわ」と捉えきった顔で共有されるだろう。そんな心配をよそに汚れた身体は灰色のタイルに驚くほどよく馴染んでいた。白か黒かを決めるのが主観だとするなら灰色は俯瞰か。そんなことばっかりだ。


北朝鮮のロケットスタートとなった連載初回。
〆切こそ守れませんでしたが、次回はお任せあれ。なにせ昔飲み会で知り合った黒ギャルにおおまかな形を作ってきてもらい、それをお母さんに仕上げてもら
ホイッスルの音が鳴った。どっちみちだ。疲れた。

追記:写真が2枚では少なすぎるとのことでロスタイム突入。膝から手が離れない。

誰かが撮った誰かとの一枚。
幼い頃の自分の無垢な写真を眺める時間は記憶に無いほど趣深いものだが、物心ついてのそれは心霊写真から血眼で編集の痕を探すような許容できない恐怖である。幽霊も案外こんな気持ちなのかもしれないと思うと可愛い。

何はともあれ、一枚ぐらいはまともな写真を載せられて良かった。ありがとう誰か。ありがとうが言えて良かった。いつの間にか首も垂れている。今日はぐっすり眠れそうだ。堀越愛に見えない足を向けて。

PROFILE

南 翔太

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《ニートと居候とたかさき》
・公式YouTubeチャンネル:ニートと居候とたかさき 
・書籍:嫌なこと全部逃げてみた 

文・写真:南 翔太
編集:堀越 愛
サムネイル・プロフィール写真:つるみ32