AIやロボットが発展しても、無くならない仕事とは?「レンタルぶさいく」「漫画家」《春とヒコーキ「VIP ROOM HARUHIKO」第27回》

『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。

今月のテーマは、「AIやロボットが発展しても、無くならない仕事とは?」。


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theme. AIやロボットが発展しても、無くならない仕事とは?

ver.ぐんぴぃ

“「仕事」とは他人から見た「不可能」を、日々の努力で「当たり前」にすること”

Xで流れてきた漫画『今どきの若いモンは』で展開されていた仕事論です。うーん納得!Xで流れてくる漫画ってバカにできないですよね。

僕からしたら、芸人の仕事以外は「不可能」に見えます。美味しい料理を振る舞うなんて無理、1年かけてお米を作るなんて無理、人を魅了する絵を描くなんて無理、処方箋から薬を調合するなんて無理、Excelを使いこなすなんて無理、長距離を爆速トラックで走るなんて無理。それぞれの職業が当たり前にこなしている仕事。そのための日々の努力を、AIは簡単に取っ払ってしまうんだからとんでもない。どんな仕事も一溜まりもありません。

父親に芸人になりたいと伝えたら「AIにできない仕事だからいいんじゃない」とあっさり認められたという、令和ロマン松井ケムリのエピソードは、聞くたびに惚れ惚れします。さすがケムリのダディ、慧眼な方に違いありません。ただ、本当にお笑い芸人はAIが発展しても無くならないのでしょうか。

AIの進化を鑑みると、いつか芸人もAIに敵わない日が来るのでは、と心配でなりません。現時点でもChat-GPTに大喜利を振ると、芸人顔負けホームラン級のボケを答えるときがあります。しかも量産できる。100個出して、と指示すれば秒で100個出す。いずれは将棋や囲碁のようにお笑いでもAIにボコボコにされる未来が来てしまうのでは、と震えています。芸人しか「不可能」だったことが容易に「可能」になる時代。

でもAIには「ニン」がありません。人間の芸人とは比べ物にならないと思われるかもしれません。

でも僕は恐れています。例えばAI美空ひばりみたいに、精巧なAI松本人志が登場したらどうでしょう。

本物そっくりなAI松っちゃん。一家に一台、いつだってトークを落としてくれる。どこでもダウンタウンDXにしてくれる。そうなったら大抵の芸人はお払い箱です。

「面白いことを考える・言う」だけでは芸人は駆逐されてしまいます。

漫才やコントのような身体性を伴う、いわゆる「芸」を磨く職人になるか。人間性まで愛されて消費されるスターになるか。もしくは破滅的な生き方をして笑ってもらうレンタルぶさいくのようなスタイルか。どれもなかなか難しい。ビクビクして生きています。

そう言えばAIに奪われない仕事って「レンタルぶさいく」じゃないですかね。ぶさいくを人に貸す、顔面貸付業なんてAIに絶対奪われないし、見向きもしない職業でしょう。レンぶす氏に言わせたら「バキ童もそうだろ」と言われそうですけど……。


ver.土岡

AIに仕事がとられると言われはじめたころは「そんなことないでしょ」と思っていたが、何年経っても言われ続けているので、どうやら本当なんだろう。この気づきの遅さ、AIにはできない。

でも、AIやロボットができる作業ならどんどん押し付けて、人間の負担が減ればいいと思う。そしたら人間はやりたいことだけやればよくなる。

でも、そうするとどうなるか。人間ひとりひとりの手間が減って、自由時間が増える。自由時間が増えると、みんな息抜きのエンタメを見るのに費やす時間が増える。だから、どんどんコンテンツを出さなきゃいけなくなって、エンタメ業の人間だけは仕事が増えてしまう。

じゃあエンタメもAIに任せようか。イラストや文章は作れるし。でも、マンガや映画は、やっぱり人間が作らないと人気に火がつかないと思う。理由は、人間の作者がいないと、敬意も不満も誰に抱けばいいのか分からないから

もし『鬼滅の刃』をAIが描いていたら、ファンは吾峠先生のことを思ったようにAIのことを思えただろうか。「別に作品のファンであって作者のファンではない」という読者も、読んでいる途中に「これ、この人が描いてるんだよな」と意識する瞬間はあったはず。人間が作ったものだから、この人はなにを言っているのか聞いてみようと思える。

AIではないけど、誰が作ったか分からなくなった途端に盛り上がらなくなった例として『スター・ウォーズ』のエピソード7〜9の話をちょっとします。

それまでのスター・ウォーズは生みの親のジョージ・ルーカスに思いを馳せればよかった。それが、エピソード7〜9はいろんな大人の思惑が絡んで、誰が指揮をとったのかよく分からない。だから、好きなとこも嫌いなとこも、誰が作ったと思えばいいのか分からない。エピソード7〜9にファンが少ない理由はそれだと思う。

人間はAIのことを好きにも嫌いにもなれないから、AIの作品は読めても、「AIが自分に作品を届けていること」には気分が盛り上がらない。漫画は特に、作者ひとりの手でできているイメージが強い。だから、エンタメ業の中でも「漫画家」は、AIには代わりがきかないと思う。

あと、「落語家」も。40代で十分ベテランのはずなのに、90代で現役の人もいるから、「70代からが本番」みたいな空気さえある職業、謎すぎる。人間にも理解できないので、まだAIにとってかわられることはない。お年を召した人間国宝が「頭金」という言葉がスッと出てこなくて「あぁーーー、たまきん!」と言ったのを生で見たことがある。それで「いいもの見たな」って思われる職業、謎すぎる。


文:春とヒコーキ
編集:堀越 愛、サムネイル:つるみ32

PROFILE

タイタン 所属

左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗

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