形骸化とは、実質的な意味を失い、形式だけが残ること【南 翔太「御何様」第2回】

『御何様』は、芸人・南翔太による写真×文章の連載。
編集部が南に27枚撮り使い捨てカメラを渡し、1か月かけて自由に撮影。撮れた写真から想起する文章を綴る連載である。

使い捨てカメラは、スマホやデジカメとは異なり「現像するまでなにが撮れているかわからない」のが持ち味。どこでなにを撮るのか、そしてどの写真を選ぶのか、何枚選ぶのか、なにを書くのか……すべてを南に委ねてみた。

形骸化

早くも第二回となった。
ワラパーのWeekly Rankingで1位になってぬか喜びしていたが、なにを言いたいか理解りたいといった好意的ではあるが眉間に皺を寄せた感想が目についた。

以前、後輩のイチゴ・イクトから普段の俺の言動について咎められたことがある。
「あんた伝わらなければ伝わらないほどいいと思ってるでしょ、来世で数学の問題とかになった方がいいよ」
死ねという意味だ。彼からは定期的に死ねと言われるが、この言葉の前後だけ丁度死ね一つ分の間隔が空いていたことからも明らかである。
メモや日記と、他人の目に触れる文章の大きな違いは、伝わるように書くかどうかだと思う。
読者層を弁えずに難しい言葉を使うと、受け取り手には難解な印象だけが残り、内容や精神のこもっていない形骸化した文章となる。

形骸化とは、実質的な意味を失い、形式だけが残ること。いくつか例をあげよう。

コンビニの前にあった駐輪禁止だったもの。まさに形骸化。

ここにチャリンコを停めてみよ!と将軍から命を受けた一休さんが、駐輪禁止部分をワンパンでぶち抜いた脳筋回のロケ地である。

写真左から大原と恵太。
帰省した際に会った高校時代の同級生。一見形骸化とは無縁そうな彼らだ。
当時、大原には石原さとみ激似の姉がいた。そのため彼は石原さとみを可愛いと思ったことがないと豪語していた。
しかし、現在大原の姉はメイクや体型の変化を経て石原さとみからは距離を置いた風貌となったそうだ。その結果なんの因果もなく石原さとみを可愛いと思わない化け物となっていた。もちろんフリーターだ。

恵太はギリギリまで寝るため、髪をサッとお湯にくぐらせてから家を飛び出し向かい風で髪をセットするというしゃぶしゃぶと同じルーティンを毎朝こなしていた。顎を上げて首を前後に揺らしながら早歩きで登校するその姿とトサカみたいな髪型から、朝に弱い鶏の名を欲しいままにしていた。
しかし、現在の彼は落ち着いた髪型でありながらリズミカルに歩く癖が抜けず、強いて言うなら鶏みたいな歩き方の変態と化していた。言うまでもなくフリーターだ。

形骸化したお刺身3点盛り。
お刺身3点盛りとは本来、3点あればいいものだと思っていたが、そうではないことに気づかせてくれた一品。正直マジでエグい。
3点とも白でええ訳ないやん。
せめて皿赤せぇよ。そこの潔さいらんやろ。
厨房で「12卓さんの刺身3点盛りまだですか?」「それもう乗ってるよ!」「すいません」の時間あったやろ。
最初皿だけ来たんかおもたわ。
洗い場ちゃうぞ俺の卓。
タイ、タコ、イカて。
3分の2歯応えやん。
なんでタイも歯応えあんねん。
わし歯応えのある皿食うてんけ。

形骸化の形骸化。

PROFILE

南 翔太

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《ニートと居候とたかさき》
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文・写真:南 翔太
編集:堀越 愛
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