明日から1ヶ月間休みになったらなにをする?《春とヒコーキ「VIP ROOM HARUHIKO」第28回》

『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。

今月のテーマは、「明日から1ヶ月間休みになったらなにをする?」。


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theme. 明日から1ヶ月間休みになったらなにをする?

ver.ぐんぴぃ

青春18きっぷを使った日本ランダム旅をまたやりたいです。

青春18きっぷとはJR区間を自由に乗降りできる、おじさんがちょっと買いづらい名前の鉄道チケットのこと。

大学生のころ、地元の北九州から東京に鈍行で5日間かけて旅したことがあります。これが実に楽しかったのです。お金も荷物も仕事もない、時間だけがあったからできた所業。時刻表をなるべく見ずに早朝から列車を乗り継ぎ、車内ではずっと文庫本を読んで過ごし、お腹が空いたらご飯の気配がする駅で腹ごなしする。気になる土地があれば気軽に降りて散策し、深夜に着いた駅で漫画喫茶を探して泊まる。

窓先に広がる真夏の田園風景に見惚れたり。土地ごとに乗客の方言が変わるのを楽しんだり(姫路あたりで急に関西弁になった)。なんか、さすらいの旅人気分がエグかったです。自分、スナフキンかと思いました。

初日は小倉から広島方面に向かい、岡山あたりで泊まるつもりでした。

ただ山口県の下関駅の乗り換えで間違えたらしく、山陽の広島方面ではなく山陰の島根方面に向かってしまいました。激烈に面白い小説にのめり込んでおり、気がついてスマホ地図を見たら想定と真反対のルートを走っていて驚愕しました。

慌てて次の駅で降りて、引き返そうとするも逆方向の電車が来るまで3時間かかるという恐ろしい田舎具合で。

途方に暮れながら周辺を散策しましたが、そこは知らない街だし、寂れて人を見かけないしで怖くなり。トボトボ歩いていたら、今でも忘れられないのですが、眼前の壁一面に大きくジブリの「魔女の宅急便」が、信じられない程ぐにゃぐにゃに歪んで描かれていました福本作品ぐらいぐにゃ〜っと。パースが崩れきってギリギリ人間の形を保っている、化け物のような顔のキキの落書きをみて「完全に道を間違えてしまった・・・」と泣き出したい気持ちになりました。不気味で仕方なかったのです。完全に道を間違えたと悟るには申し分ない、迷子の最果てにぴったりの壁画でした。

ただ不幸中の幸いで、調べたらその駅から南下して広島方面に向かう電車が日に数本ほど出ていることを知り、数時間待って乗車し、ことなく広島に到着できました。もうめちゃくちゃアドレナリンが出ましたね!もうダメだと思ったところから、リカバリーできるのもランダム旅ならではの醍醐味です。旅好きで知られる伊集院光さんも「旅行は綿密にプランを決めるけど、その計画が破綻する時が一番面白い」と仰っていました。そうだよなぁと。いろいろ旅行をしましたが、ランダム旅に勝る思い出はありません。

1ヶ月あれば青春18きっぷもいいし、海外版ランダム旅も深夜特急ごっこみたいで悪くないかもしれません。また迷子になって、歪みきったキキの絵のような存在に震える経験もしてみたいです。


ver.土岡

1ヶ月の休みがあったら、周りの芸人の付き人をしてみたい。一緒にライブに出ている同世代の誰かに絞って、どんな風に生きてるのかをじっくり見てみたい。ネタ作りやお笑い活動の部分だけでなく、生活や息抜きをどんな風にしているのか。参考にしたいというのが最初に来る理由だけど、それだけじゃなく興味として、生態を知りたい。撮れ高のある情熱大陸的な部分だけじゃなく、「別になんてことない大陸」の部分も見たい。

約4年のルームシェアで、2人の芸人と一緒に住んでいたけど、生態を見る機会はあまりなかったかも知れない。町ルダさん(町田)とマタンゴの高橋鉄太郎という2人なのだが、町田は家にいるときはほとんど自分の部屋でテレビを見ていた。鉄太郎は風呂で長時間寝ていた。なので、生態を見る時間は少なかった。

ちなみに、鉄太郎が長時間風呂から出てこず寝ていそうだったら、ぼくはお風呂場の前で「ア゛ッ!!」と叫ぶようにしていた。起きていればすぐに「ア゛ッ!!」と返ってくる。反応がないときはもう一度「ア゛ッ!!」と叫ぶと、バシャン!と湯船で慌てて動く音が聞こえるので今起きたということ。これは「別になんてことない大陸」でも未公開シーン追加版でギリギリ流れるところ。

もうひとつ思ったのは、1週間だけアメリカに行って、あとは時間割を作って過ごしたい。一日の中盤までは時間割が決められていて、運動、なにかの勉強、行ってみたかったとこに出かける。帰ってきたら、映画か本かマンガかアニメかゲーム。ぜんぶ、普段でもできる。

でも、1ヶ月も休みだと思ってやるこれは、普段と全然ちがう。まだ休みだと思うから焦りなく没頭できる。今はもう、休みがあっても不安でたいして動けない。もったいないからアメリカにも行くけど、ニューヨークの街並みや映画のロケ地をちょっと観光できればいいので、移動含めて1週間あればいい。

「1ヶ月の休みがあったら」を考えているうちに、小中学生のときのような夏休みをもう一度味わいたくなった。ただ時間があるだけじゃなく、休み明けへのプレッシャーもなくワクワクと迎える休暇。それ(に近いもの)を味わうには、不安を減らしてお金を増やさなきゃいけない。バリバリ戦って、働いて、「あがり」の状態にならないといけない。過去のようにもう一回なるために、人生を先に進める。

一回聞いた説だが、時間の流れは、円になって循環しているらしい。なのでタイムマシンで過去に行く場合、猛スピードで未来に行ってぐるっと回ったら、過去に戻ることができるとか。それと一緒で、生き急いで駆け抜けたら、子ども時代をもう一回味わえるんじゃないだろうか。


文:春とヒコーキ
編集:堀越 愛、サムネイル:つるみ32

PROFILE

タイタン 所属

左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗

★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
★公式YouTube:春とヒコーキバキ童チャンネル【ぐんぴぃ】