ヤーレンズ・出井隼之介さんが物事の良し悪しを綴る連載『可否伝』。出井さんセレクトの「今月のコーヒー」情報とともに、心が揺れた“良し悪し”を語ります。
9月の可否
山本譲二さんが最近知った便利なものはSuica。どうも、ヤーレンズ出井です。
先日訪れた札幌のライブハウスの壁に大きくに「煙草のむな」と書いてあった。
以前、祖父の葬式で会った親戚のおじさんが「いや〜たばこ呑みには肩身の狭いご時世になったねぇ〜」と言っていたのを思い出した。
この「煙草を呑む」はあまり馴染みのない表現だが、誤用ではなく昔ながらの表現だ。
ちなみに「呑む」の他にも「喫む」と書いて「のむ」と読んだりもしたそうだ。つまり『喫茶店』は読んで字の如く茶を飲む店という事になる。
このような昔ながらの日本語の表現がかなり好きだが、今使うと違和感が生じるので使いづらい。これまでも時代の流れによって失われた言葉や表現がたくさんあったのだろう。
『言葉を残す』という事に関して、話芸はその役割の一端を担っているのかもしれない。
例えば、落語の演目で『居残り佐平次』というのがあるのだが、そのオチ(サゲ)は
「人をどこまでオコワにかけやがったか」
「ええ、旦那の頭がごま塩ですから」
というものだ。(オチには他のパターンもある)
一聴しただけではなんのこっちゃ分からない。
「オコワにかける」は「一杯食わされた」という意味で、「ごま塩」は「白髪混じりの短い髪」を意味し、オコワとごま塩がかかっているわけだが、困った事にオチに関わるどちらの言葉も廃れてきている。
しかし、この『居残り佐平次』が演じられる限り、「オコワにかける」や「ごま塩」は残り続ける。これは古典落語のとても大切な一面だと思う。
昔ながらの言葉が好きな反面、嫌いな今の言葉もある。代表的なのは大谷翔平のニュースが連日流れる中で使われがちな『リアル二刀流』である。
今年はバッターに専念しているためにあまり使わないが、ピッチャーとバッター両方で出場した際に使われる表現がこの『リアル二刀流』だ。
全くもって意味が分からない。
まず、どの辺か『リアル』なのか説明してほしい。バッターだけで出場した日の大谷は『フェイク二刀流』なのか?いや、彼ほどのリアルを僕は未だかつて見たことが無い。ちなみに『ショウタイム』や『オオタニサーン』は論外である。
その他にも、モノなどを再利用したり、環境にやさしいという場面で大変よく使われる「SDGsですね」も嫌いだ。
これははっきりと誤用と言える。なぜなら、SDGsとは『持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)』であり、その目標の中には貧困の撲滅やジェンダー平等などかなり多種多様な目標が組み込まれている。
一口に「SDGsですね」といってもあまりに指す範囲が広すぎるのだ。
そもそもSDGsなんて日本のメディアでしか言っていないのに、「SDGsですね」なんてコメントを放送して、自らの手で目標を環境問題のみに矮小化してしまうのはいかがなものか。お前らが勝手に広げた風呂敷だろ。
あと、『アベンジャーズ』もなかなか厳しい。これはオールスター的な意味合いで使われる事が多いが、あくまで『アベンジャーズ』の意味は『復讐者たち』である。復讐者以外の時には使うのをよそう。
「思想強いな〜」もよく耳にするが、これもいかがなものか。思想が強いのは良い事じゃないか。それを押し付けたり争ったりする事が良くないわけであって、思想自体は強くても何の問題もない。むしろなんの思想もなく生きていく事こそどうなんだ。思想強く生きろ!
~9月の可否~
可→ 昔ながらの日本語の表現
否→ 最近の意味の分からない言葉
今月のコーヒー【熊本の三軒】
Coffeedot
AND COFFEE ROASTERS
GLUCK COFFEE SPOT
どれも熊本。
どれも行きたかったお店で、ライブの合間に三軒回って汗だくで豆を買い漁った。一体私は何をしているのか。
PROFILE
ヤーレンズ・出井隼之介
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文:ヤーレンズ・出井隼之介
編集:堀越 愛
写真&サムネイル:ヘンミモリ