賞レース偏重ってどう?そしてこれからのお笑い界【ヤーレンズ出井隼之介「可否伝」14杯目】

ヤーレンズ・出井隼之介さんが物事の良し悪しを綴る連載『可否伝』。出井さんセレクトの「今月のコーヒー」情報とともに、心が揺れた“良し悪し”を語ります。

11月の可否

ありがたい話、街で声をかけていただく事が多くなった。ありがたいなぁ〜(ドドん)

声をかけて下さった方には高確率で「M-1頑張ってください!」「今年は優勝して下さい!」と言われる。

去年のM-1で我々を初めて知った人が多いからだろうが、それにしてもこんなに「M-1頑張ってください」と言われる人も珍しいんじゃないだろうか。昨日は駅のホームですれ違い様にも言われたし、この前は青森のスーパーでも言われた。

また、主に同業者には「もう出なくていいでしょう」「もう人生変わったでしょう」とも言われる。

これに対しては「優勝しても満足できずに出る奴がいるのに、2位で満足できるはずがない」と、令和ロマンに責任全被せの回答を毎回している。令和ロマン出てくれてありがたいなぁ〜(ドドん©︎)。

さあ、今まさにそのM-1の季節。これを書いている時点で3回戦〜準々決勝の一番ピリピリする時期。

この時期の漫才師は……と言ってもあくまで僕の話だが、通常時よりも常に心拍数が20高い。いつもドキドキしている。初めてクラスメイトに恋をしたあの感じ……ではまるでない。それよりももっとどんよりした、動悸息切れ。救心が欲しい感じ。

自分達のYouTube企画で気づいたが、今回で10度目のM-1だ。

その10度のうち6回準々決勝で阻まれている我々は、次の準々決勝が1番の鬼門であると身に沁みて知っている。その準々決勝まで、日が迫っている。

やれやれ、1度ファイナリストになればもっと気が楽になるもんだと思ってたが、まるでそんな事がない。M-1恐るべし。

M-1、M-1だ。出ている以上、一年中頭にある。M-1の事が。これは果たして健全なのだろうか。

現在の時に『賞レース至上主義』と揶揄される賞レース偏重の考えに対して「賞レースが全てじゃない」という考え方もある。それはそれでとても正しい。正しいというか、そうだ。

賞レースはあくまでその時々でのネタの良し悪しを無理やり比べ合っているもので、面白さを測るたくさんある基準の一つであるけど全てではないし、M-1が漫才の全てではない。仮に賞レースで輝かなくてもスターになるべき人はたくさんいるし、みんなが全てを賭けるべきではない。

でもしょうがない、もう「夢」なんだからしょうがない。M-1で優勝する。これは「夢」で、人の夢は止められない。こちとら「夢」に向かう最後の燃料である「意地」にももう着火している。止められるはずがない。

才能も器用さ後ろ盾も本当に何も持ってないし、スターになる素養なんてこれっぽっちもないけど、漫才だけは譲れない。

しかし「夢」は別名「呪い」でもある。賞レースに支配されるばかりに調子を持ち崩した人も、賞レースで思うような結果が出ないがために辞めていった人も山のように見てきた。

恐ろしい、賞レース。賞レースの魔力。賞レース以外にももっと明確に売れるルートがはっきり見えないものだろうか。

そんな事も含めて、これからお笑い界はどうなっていくんだろう。

トップのスキャンダルを見てその動向ばかり気にしてて、誰もこのジャンルの未来を語らないのが気になる。今こそいろんな事を改めたり、考え直す時期なのに。

たまにここにも書くが『完全無欠のお笑い界』にみんなで向かいたいけどな。まあ、ひとまず己の人生に集中なのだが。


~11月の可否~

可→ 夢に向かうこと

否→ 偏り過ぎた基準や未来を見据えない議論

今月のコーヒー【Coffee supreme】

今月のコーヒー『Coffee supreme』(渋谷)

渋谷の仕事の際はここでラテと、それにぴったりのドーナッツを買う事が多い。ドーナッツがいい具合に軽くてラテにぴったり!

PROFILE

ヤーレンズ・出井隼之介

ケイダッシュステージ所属

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文:ヤーレンズ・出井隼之介
編集:堀越 愛
写真&サムネイル:ヘンミモリ