漫画『ハンカチのご用意を』(原案:ファイヤーサンダー﨑山 祐)【畠山達也「ゲイニンマンガ ~ボツネタ再生工場~」2025年3月号】

芸人兼漫画家として活動する畠山達也さんによる連載『ゲイニンマンガ ~ボツネタ再生工場~』。ゲストに芸人を招き、「なんらかの理由で実現できなかったネタの種」についてヒアリング!舞台上ではできなかったネタを、“漫画”で実現します!

今回のゲストは、ファイヤーサンダー﨑山祐さん。畠山さんのInstagramを﨑山さんがフォローしてくれたことがきっかけで、ずっと「話してみたい」と思っていたそう。次ページには、﨑山さん×畠山さんによるおまけのトークも!漫画と併せてぜひご確認ください。

漫画「ハンカチのご用意を」(原案:ファイヤーサンダー﨑山 祐)

漫画「ハンカチのご用意を」 制作会議

畠山達也(以下、畠山): ネタについて聞きたいんだけど、全部﨑山君が書いてるの?

ファイヤーサンダー﨑山祐(以下、﨑山): そうです。

畠山: 全部台本にしてるの?

﨑山: はい、全部台本に起こしてます。

畠山: ツッコミ台詞から、なにからなにまで?

﨑山: はい、一字一句。なんなら「え、~~なん?」の「え」も書いてます。

畠山: じゃあ、こてつ君には「一字一句台本通りやってくれ」と?

﨑山: はい。台詞を言いづらいときは「こうしても良い?」と聞かれることもあります。別に良いと思えば直すし、「そこは大事やから」ってときは台本通りやってもらってます。

畠山: 過去のインタビュー記事を読んだりもしたんだけど、けっこうギリギリにネタができるんでしょう?

﨑山: そうですね。

畠山: 俺もそうなんだけど、前日に数時間でつくることもあるんでしょう?そのときに、台本も書くってこと?

﨑山: 書きます、相方に送らなきゃいけないので。夜中に送りますね。

畠山: で、ライブ当日に合わせるの?

﨑山: そんな長いネタじゃないんで。

畠山: でも一字一句覚えるのすごいね。

﨑山: 覚えるのどんどん早くなってますね。

畠山: ネタのGOサイン出るまでも、けっこうかかるんでしょ?

﨑山: そうですね。

畠山: すごい気持ちわかるよ。

﨑山: そうですよね。弱いネタだと「一回置いておこう」って寝かせたりするんですけど、結局締切ギリギリになって、結局「あぁもうこれしかない」って書くみたいなこともあります。

畠山: GOサイン出す基準は?

﨑山: 最初の笑いどころを大事にしてるんで、そこが強ければ……。とりあえず「どれくらいウケるか1回やろう」ってこともあります。

畠山: 俺もGOサイン出すまでめっちゃかかるんだけど、そのとき誰かに相談する?

﨑山: 後輩にはよく相談しますね。よく、にゃんこスター・アンゴラ村長と、元ゼンモンキー・ムニエルと三人で、Zoomでネタ作ってます。そこでバーッと説明して「どれが良いと思った?」と聞いたりはします。

畠山: 誰かに良いって言ってもらうと、「いっか」ってなるよね。

﨑山: そうですね、ひとりだと踏ん切りがつかないんで。

畠山: じゃあネタづくりの段階では、こてつ君には聞かないんだ。

﨑山: 全部できてからですね。

畠山: よく、二人は不仲みたいな話も聞くよ。アンガールズさんのラジオが好きで毎週聞いてるんだけど、そこでも話題になってたよね(笑)。俺もガスマスクガール時代はすっごい仲悪かったんだけど、ネタに対しては、二人とも方向は一緒で。ファイヤーサンダーも?

﨑山: だと思います。

畠山: 仲が悪いって言っても、ほんまに憎んでるってことではないんでしょ?

﨑山: プライベートで全然関わらないだけですね。

畠山: それっていつから?

﨑山: 最初は本当に友だちだったんですけど、どうなんすかね……東京来て、半年くらいして徐々にだと思います。最初はネタ合わせで集まったりしてたんですけど、やっぱりイライラしちゃいますし、向こうも長くて嫌だろうなと思って。5~6年前くらいから全部ひとりでやるようになって、ネタをやる日以外は会わなくなりました。

畠山: でも逆に、そのほうがこれ以上仲悪くなりようがなくて良いよね。

﨑山: はい、それで良いと僕も思ってます。

畠山: 二人ともネタが「面白い」と思えていたら、それで良いよね。YouTubeでけっこうネタ観たんだけど、とにかく全部さ、一発目でめっちゃウケるよね。そこから先ずっとウケ続けるのがすごいと思ったよ。着想はどうやってるの?

﨑山: どんどん変わっていってる気がするんですけど、映画とかドラマ、マンガとかもそうですし、最近は「作らなきゃヤバイ」となったら、起きたらテレビをつけてとりあえずなにか流したりしますね。あとネットカフェ行って、適当に手に取った漫画の1巻を読んで、引っかかったところをメモして……とか。無理やりいろんなものを入れます。ドキュメンタリーとかも観ます。

畠山: 自分の好きなものだけじゃなく、いろんなものも見まくるんだね。

﨑山: そうですね。結局好きなものになってる気もしますけど。

畠山: ほんっとうにできないときはどうしてる?

﨑山: 10数年やってるんで、過去にボツにしたネタを引っ張り出すこともけっこうありますね。でも、意外と何年か寝かせたやつがめっちゃ良くなったりするんですよ。定期的に新ネタライブをやってるんですけど、そのために新しく考えたネタを採用するより、過去ボツにしたものを採用することを繰り返してるというか。

畠山: なるほど。コントのこだわりみたいなものってある?コントってツッコミとかボケの仕方とか、演技とか、いろんな側面があると思うんだけど。あと「こんなこと言わんやろ」ってことは言わせたくないとか、細かいこだわりがあったりするのかなぁと思って。

﨑山: こだわってるのは、「裏切りたい」「驚かせたい」ですね。「そういうことか!」と思ってもらえるようなネタが一番好きではあります。

畠山: 本当にすごいよね。ネタ中ずっと展開もあるし、構成もすごいなと思って。

﨑山: ありがとうございます。

畠山: 過去、なにか理由があってボツにして、ネタにできていないものってある?

﨑山: さっきピックアップして、マンガにしてほしいなって思うネタが何個かありました。まずは……同期でライバル関係のプロ野球選手がいて、ひとりはエリート、ひとりはダメ。ずっと見下されてて「いつか絶対に見返してやる」と思っていて、引退した後にバラエティ番組のトークでめちゃくちゃ圧倒するという話ですね。現役時代のエラーとか失敗話をするんですけど、エリートのほうはバラエティでなんもできない、みたいな。コントでやろうと思うと場面がけっこう変わるし、服も変えなきゃいけないし、人数もいるし……で、実現できなかったんです。

畠山: 面白いね。

﨑山: あと、人数がいるっていうのでできなかったのが……導入だけなんですけど、水族館で子どもがぐずって、お母さんがご機嫌取りのために「ほら見て、なんとかガニさんだよ」とか言っているのが職員さんのテンションのようになって、どんどんまわりに人が集まってきたら面白いかなとか。あとどういうシチュエーションなのかわかんないですけど、「皆様、ハンカチのご用意を……」みたいなセリフってあるじゃないですか。司会の人がそういうことを言って、いざしゃべり出したらめちゃくちゃ唾飛んでくるみたいな。で「このためのハンカチなん!?」と(笑)。さすがに唾は飛ばせないので、ボツになりました。

畠山: たしかにそうだよね(笑)。

﨑山: あと1回コントにしたけどあんまりウケなかったのが、ビールの売り子さんがずっと「ビールどうですか」って言うけど全然売れない。実はグラウンドの選手に向かって呼び掛けていたってネタで、マンガのほうが表現しやすいのかなと。

畠山: スタジアムの感じとかね。

﨑山: 「う、運動してるし……」みたいな。

畠山: どれも面白いなぁ。

﨑山: あとレストランで喧嘩している人がいて、「辛気臭い顔するな、メシまずなるやんか」みたいな。で、食べたら美味しくて、シェフが「舐めんなよ」って言うネタとか……。

畠山: 面白いね。

﨑山: そんな感じっすかね。

畠山: どれも面白いなぁ。

﨑山: 野球選手のは長くなっちゃいますかね。ハンカチのやつだったら2ページくらいでも構成できますかね?

畠山: そうだね。たぶんできると思う。

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