「大人になる」ってどういうこと?《春とヒコーキ「VIP ROOM HARUHIKO」第37回》

『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。

今月のテーマは、「大人になる」ってどういうこと?


★春とヒコーキが読者のお悩みに答える連載「VIP ROOM HARUHIKO ~秘め問い~」はコチラから

theme.「大人になる」ってどういうこと?

ver.ぐんぴぃ

珍しく早く起きたので、朝イチでこのコラムを書き始めています。

いやはや、寝起きでうんこを漏らしてしまいました。

目が覚めたらまず一発ドカ屁を響かせるのが私の毎朝のルーティーンなのです。一日の始まりを知らせる祝福のファンファーレであります。しかし今朝はオナラのふりをしたならず者が飛び出てきました。許されざるペテンです。おかげで跳ね起きましたよ。

今年で35歳になります。国民的パパの野原ひろしと同い年なわけですが、信じられません。ずっと子どものままです。オトナ帝国に頼らずして。35歳の人間がうんこを漏らすなんて子どもの頃には考えもしませんでしたから。小さい頃からよく漏らしてきましたが、歳を重ねれば治ると思ってました。

小学4年生の時に、授業中に催してしまい、みんなの前でおしっこを漏らしたことがあります。我慢の限界で席を立った時にダムが決壊したため、水分が前に座っている古田くんにかかってしまいました。古田くんは慌てふためき、現実を受け止めきれなかったのか「お、お茶?だよな?」と尋ねてきた表情が忘れられません。

あのあと、よくイジメられなかったな。生徒の誰も、僕の前ではその話題すらしなかった。担任だった女性の先生がうまく取り計らってくれたのでしょう。恩人です。あの先生も、当時35歳でした。

汚い話が続いて恐縮ですが。うんこと屁は、お尻が無意識に判断している、という説があるそうです。脳で考えるよりも前に、まず体で区別しているらしい。2段階で制御している。人体って素晴らしい。

そして、漏らすということは、そこがバカになっている。歳を食っても僕は大人にはなれていませんが、体はしっかりオジサンになり、ガタがき始めています。

大人になるということ…。ちょっと考えてみましたが、落ち着いてどんと構えているのが大人に見えるかもしれません。Nintendo Switch2の抽選に落ちて、のたうちまわる僕はかなりキッズだったでしょう。任天堂の社長が謝罪するほどの倍率のなか当選したにも関わらず「なんだ、当たったか」と平常心を崩さない相方・土岡はかなり大人に見えました。というか当選者の中で一番喜んでなかった。転売ヤーよりプレイしてないからなぁ。譲ってくれよSwitch2。30年前と変わらず、ドンキーコングを暴れさせたいんだよ。まだゲームで一喜一憂するとは思いませんでした。

山菜が好きになったら大人。ゼンマイ、タラの芽、フキノトウ。ほどよい苦味の心地よさに気付いたら一人前…。一生懸命に考えたのですが、これぐらいの答えしか出せませんでした。まだ僕が大人になれていないから。分からない、ということで終話させていただきます。


ver.土岡

わさびが食べられるようになったとき。コーヒーを飲めるようになったとき。じゃんけんが何かを決めるための作業になって、じゃんけんそれ自体を楽しまなくなったとき。幼稚園の頃は、ただ「じゃんけんしよう!」と、じゃんけんだけが目的のじゃんけんをすることがあった。何かの順番を決めるためではない。じゃんけんを遊びとして認識していた。それが、何かを決めるためにしかじゃんけんをしなくなった。

人間が大人になるのはいつなのだろうか。映画『14歳の栞』もそんなテーマだった。とある中学校の2年生1クラスに密着したドキュメンタリー映画。一切配信やソフト化がされていない、映画館でしか観られない映画。

ぼくがこの映画を観て思った「人間が大人になる瞬間」の一つは、人生なんでも思い通りにいくわけじゃない、と知ったときかなと思った。少年マンガの主人公は、力を発揮して、その世界の重要人物になる。そんな漫画を読んでいたら、自分もなんでもできるはずと思って疑わない。でも、運動で、勉強で、習い事で、あの子はできているけど自分にはできないことが増えていく。それでも、まだ全能感は失われない。できないことへの執着は薄まり、「多少はできること」に関心が行くから。でも、できることの中で、壁にぶつかって越えられない経験が発生してくる。甲子園に行けなかったとか、行きたい大学に入れなかったといった結果が現実として確定してしまう。「あそこからやり直せたらなぁ」なんて思う過去が出てきたら大人なんじゃないか。そして、ここからやっていくしかない、という再起。

アニメ「ひぐらしのなく頃に」シリーズを見ていたときの話。雛見沢村で起きる凄惨な事件を描いたミステリー・ホラー作品だ。「ひぐらしのなく頃に 卒」が放送されていたとき、ぼくは次の日には録画を観て、YouTubeで考察動画も見て楽しんでいた。その中に、特に考察が詳しくて分かりやすい、毎週必ず見るチャンネルがあった。最終回の1話前の回で、急にそれまでの作風を逸脱して、登場人物が宙に浮いてぶつかり合うドラゴンボールのような戦いを繰り広げた。ぼくはあまりの変化の大きさに笑ってしまった。観終わってすぐ、「あの人は、この回を何て言ってるんだろう?」とワクワクしてYouTubeを検索した。いつもは検索して上位に出てくるのに、出てこない。探しても探しても出てこない。チャンネルがなくなっていた。推測だが、急にドラゴンボールになったことで「今まで真面目に考察してたのは何だったんだ……こんなの、おれが好きな『ひぐらし』じゃない!」と思ってしまった投稿主は、作品への愛が憎しみに変わってチャンネルを消してしまったのだと思う。投稿主の人となりは分からないので既に大人だったかも知れないけど、さらにもう一歩大人になる通過儀礼の始まりだ。今はきっとどこかで、生きがいだったアニメシリーズが自分の納得のいかない形になることもある、という現実を受け入れて、強くなっていると思う。

それと、大人は「人間はいつ大人になるか」という質問に、アニメを観たときの話をダラダラ書かない。


文:春とヒコーキ
編集:堀越 愛、サムネイル:つるみ32

PROFILE

タイタン 所属

左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗

★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
★公式YouTube:春とヒコーキバキ童チャンネル【ぐんぴぃ】