★新連載★ 6月19日~7月31日の日記【あさがお 三浦リョースケ『たぶん、これも情緒』第一回】

『たぶん、これも情緒』は、吉本興業所属の芸人・あさがお 三浦リョースケさんによる連載。

いろいろあって10年続けたコンビを解散し、新コンビを結成したばかりの三浦さん。芸人として“リスタート”した三浦さんは、今、芸人人生の過渡期にいます。
『たぶん、これも情緒』は、激動の日々を過ごす三浦さんによる日記コラム。今しか語れない心の動きを、6ヶ月間限定で、ほぼ毎日率直に綴ります(月初に1ヶ月分まとめて公開予定)。三浦さんがセレクトするプレイリストつき。

ここ最近いろいろあったやつ

はじめまして。あさがお三浦です。
このたび、ワラパーさんでコラムを連載させていただくことになりました。
まずは、その経緯を少しお話しさせてください。

たぶんですが、このページにたどり着いてくださったみなさんは、ぼくのことを「ここ最近、いろいろあったやつ」くらいには認識しているのではないでしょうか。

……そうです。いろいろ、ありました。

そんな中、ダンビラムーチョの原田さんとご一緒することが多くなり、その流れでワラパーのほりこしさんにもお会いする機会がありました。
原田さんがワラパーで連載しているのを知っていたので、ぼくも「やらせてください!」と、その場で直談判させていただきました。

たぶん、まっすぐお笑いの道を進んでいるだけだったら、「コラムを書きたい」なんて思わなかったと思います。

でも、一度立ち止まって、自分をリセットしたり、振り返ったりしてみたくなりました
その手段として、言葉を残すことを選びました。

ちなみに、ほりこしさんに初めてお会いしたときの顔、
「この人、いろいろあったもんな〜」という感じがすごく出ていました。

その「いろいろ」を言葉にしていくと、きっと、情緒です。

これからのぼくが、どうなっていくのか。
そして、どう感じているのか。

月に一度、このコラムでまとめて摂取していただけたらうれしいです。
摂取した結果、腸内環境が整う方もいればお腹を壊す可能性もありますが、クレームはなしでお願いします。

音楽が好きなので月間プレイリストなんてものも作りながらコラムを進めていきます。

ここまで読んでくださった皆さん。
これから、どうぞよろしくお願いします。

たぶん、これも情緒。

6月19日~7月31日の記録

6月19日(木)『サイン』

あさがおになって初めてのサインを書いた日。今日のことを忘れないでおこう。今日のことも忘れないでおこう。今日のことを誇れるようにしてもらおう。今日みたいな日をたくさん増やしていこう。あっでも、ウケなかった所もあったからそれは減らそう。


6月20日(金)『同期』

芸人を引退した同期と食事にいった。
同じタイミングでお笑い芸人を志した文字通り同志。
たくさんいたけどたくさん辞めた。
そういえばうちの同期はなんだかんだ立派だと思う。

エバース、かつやま、南、たかさき、木島、ジャンスー、おっくん…
他にもたくさんいることを世間は知らないがぼくは知っている。それぞれがそれぞれの道をしっかり歩めている。
あのタイミングで同じ養成所に通っていたことは確かな礎で、夢でコーティングされたその記憶は灯台のように光を絶やさない。

立派とは何か?
ぼくは社会と繋がることだと思う。目の前にいるこの同期も立派になった。
10年前は人のネタで笑いもしなかった男が、
スナックで他のお客さんが歌うカラオケに手拍子をしていた。そんな彼が好きだ。
結婚おめでとう。引き続きよろしく。


6月21日(土)『歯車』

エンタメって、社会に必要なのか。
無くても誰も死なない。けど、あるとちょっと生きやすい。

この社会は、大きな歯車ひとつで回っているのではなくて、小さな歯車がたくさん噛み合ってカチカチ音を立てて動いてる。

今日は休みだったのでそのカチカチ音がどこからも聞こえず、コンビニでコーヒー買って何度も見た映画をまた見ていた。

自分は、どこかの歯車に入れているのだろうか。いや、たとえ歯車じゃなくてもいい。
せめて誰かがスムーズに回れるように、潤滑油くらいにはなりたい。
────つまり、仕事がしたい。カチカチ音が聞きたい。


6月22日(日)『かざ杜①』

相方のかざ杜は明るくてとてもいいやつ。
母親思いのとてもいいやつ。
新宿駅で落ちてるゴミを拾うとてもいいやつ。

まだ一度もネタをやっていない。

今日は『すいません!差します!』と言いながら日傘を差していた。この『すいません!』は自分だけ日傘を差してすいません?日傘を差す行為自体にすいません?言い方はあれだが男なのに日傘を差してすいません?

かざ杜が何も言わずに日傘が差せる日がきますように。


6月23日(月)『駐車場』

今日、近所にあるなんとなく好きだった広い駐車場が取り壊しになっていた。

なんとなく好きな理由は広い灰色の地面があって、遠くには都庁が見えて、空の色で表情を変えるその空間がなんとなく好きだった。

劇場に行く時も、帰る時も、
上手くいった時も、落ち込んだ時も必ずこの駐車場を通っていた。

壊される理由も、このあと何が建つのかもわからない。

だけど、壊されてる姿を見ていると、
ここにはきっと、新しい何かができるんだというワクワクと、“なんとなく好きだった場所“がなくなっていく寂しさを交互に感じる。

もしかしたら、今のぼくはこの駐車場のように見られているかもしれない。

だとしたらここに建つものが、出来るのものが、誰かが喜べるものであって欲しい。

もう少し、この駐車場を気にかけたくなった。


6月24日(火)『つつみ込むように・・・』

そういえば、このコラムではプレイリストを製作している。
「何にしようかな〜」と悩んでいた矢先のこと。

今夜はレギュラーの西川さんと、天狗の川田さんと食事をご一緒させていただいた。
MISIAさんがデビューした年に武道館でライブをしていた、という話になり。

「1年目がNGKで単独ライブなんか誰もできひんで!」

芸人って、なんでも芸人で例えてしまう生き物だ。
でも、わかりやすいし、たしかにその通りだとも思う。

川田さんから伺ったのは、MISIAさんのライブにずっと同じコーラスやサックスの方が出演されているということ。
デビュー当時から、変わらずその人たちと一緒にステージを作ってきた関係性。
それって、すごく素敵なことだ。

美味しいご飯と、あたたかい会話をご馳走になった夜。
さらに西川さんは、帰り際に「明日のご飯に」とお土産まで持たせてくれる。
ほんとうに優しい人です。

帰り道、MISIAさんのデビュー曲『つつみ込むように・・・』を聴いてみた。
この曲から始まって、武道館へ、そして今のMISIAさんがいる。
そう思うと、なんだか自分も頑張れる気がしてきて……
気づいたら、明日の分だったお土産を食べていた。

初心忘れず。

というわけで、プレイリストの一曲目は
MISIA『つつみ込むように・・・』にしました。


6月25日(水)『期待』

明日があさがおの初舞台。

なぜか薄ら漂う期待感。
準備はしたけど、正直、普通に重圧。

こういう時の攻略法は知ってる。
『楽しむ』、もうこれしかない。

期待も不安も全部ひっくるめて、
楽しむ以外に攻略法は存在しない。

明日の日記が、明るいものでありますように。


6月26日(木)『初舞台』

今日、あさがおとしての初舞台に立ちました。
下北沢・19時30分からのライブ『俺たちいける君』。

劇場所属を決めるファーストステージの前に、なんとか舞台経験を積ませてあげたい──そう思って呼んでくださった主催の方には感謝しかありません。

ネタをやる前、あそこまで緊張したのは久しぶりで、相方・かざ杜もかなりの緊張っぷり。
スリムクラブさん直伝の「袖で握手」をしてから舞台に出ました。
もちろん、ミスもありました。でもそれ以上に、新しいもの、新しい感覚、新しい”何か”を自分の中に感じながら、ネタも平場も、前日に書いた“楽しむ”という気持ちを持って全力でやれました。

何かが、始まった。
そんな手ごたえがありました。

終演後、ラーメンを食べながら
「毎回握手しましょうね!」と、かざ杜が言った。

つまり、そういうことです。
『俺たちいける君』ってことです。


6月27日(金)『かざ杜②』

ネタ合わせを16時ごろにしていたら、かざ杜が疲れていた。

理由はアルバイト。

めっちゃわかる。アルバイトって心身ともにめっちゃ疲れる。身心ではなく心身。

心がとくに疲れる。そんな顔をしてた。

身体の疲労は体に出るが、心の疲労は顔に出る。

ぼくもアルバイトしてた時はめっちゃ疲れて腐りそうになった。というか腐った。

でもアルバイトはジャンプ台みたいなところがあって、大きくジャンプするために必要な所があると今になって思う。

だからかざ杜はもしかしたら今はジャンプで踏み込んでる途中なのかもしれない。

………ん?ていうかぼくはアルバイトをしていないが大きなジャンプをしていなくないか?

もう一度踏み込むためにアルバイトをするか。

いや、やっぱりやりたくないっ。

腐りきる前に動きまくろう。


6月28日(土)『ひたむき』

今日は、特にやることがない。

散歩して、ゆっくりして、ご飯に行く。
そんな日もある。
そんな日は、音楽を紹介したい。
それが、このコラムの良さである。

今日は、SUPER BEAVERさんの『ひたむき』を紹介させてください。
これはもう「紹介させてください」という感じです。

SUPER BEAVERさんをちゃんと聴いたのは、30歳を超えてからでした。
もし十代の頃に出会っていたら、どれだけ強く、優しい人間になれていただろうか。
そう思わずにはいられません。

ぼくは、出会う音楽によって人格が形成される一面があると思っています。
自称・音楽教育論者です。
(※“音楽教育論”なんてものは存在しませんが、そういうのがあると思っています)

SUPER BEAVERさんは、子どもに聴いてほしいバンドNo.1です。
ぼくに子どもができたら、胎教としてまず流したい。
それくらい、心を満たしてくれる曲が多い。

その中でも『ひたむき』は、ぼくにぶっ刺さっている一曲です。

タイトルの通り、“ひたむき”になれる曲。
優しさと強さが、これでもかというくらい詰まっています。

ぜひ、聴いてください。


6月29日(日)『笑えれば正解』

明日は、劇場所属をかけた一歩目。
ファーストステージの日。
なので今日はネタ合わせ。

どうやら、かざ杜は悩んでいた。

ぼくはこれでも芸歴10年。
かざ杜は、芸歴がちょっとややこしいけど芸歴4年。
そりゃ悩む。悩む顔になる。

すごい顔してた。

でも、この世界、真剣な悩みほど笑えてしまう。
不思議だけど、そういうところがある。

笑えたら、なんでも正解。
特殊すぎる仕事。

ぼくは、真面目なところがあって、
真面目に相談を先輩にしてしまうことがある。

そのたびに、ネルソンズの岸さんが
「笑えるように話して」と言ってくださるのを思い出す。

今になって、その言葉の意味が、少しずつわかる。
後輩とコンビを組んで、ようやく理解できた。

笑えれば正解。
そういう職業。そういう人生。

明日、ファーストステージで笑えれば、正解。


6月30日(月)『ファーストステージ』

緊張の一日が始まった。
久しぶりのこの感覚。たぶん、これ一生向き合うんだろうな。

芸人を始めた頃から、ずっと思ってることがある。
「競う必要、なくない?」って。

それはきっと、バレーボールを15年やっていたせいでもある。
バレーボールは1点1点が得点として目に見える。
最初に25点取ったら勝ち。とてもシンプル。だから納得できた。

笑いもそうしてほしい。
「先に25笑い取ったら勝ち」みたいなルールでやってほしい。

フィギュアスケートや体操もやってる人たちも本当にすごい。目の前で点が見えないから。
でも人が審査している競技は、自分の理解が及ばないことがある。
だから時に、納得がいかない。

けれど、それも仕方がない。
この“人が評価する競技”において、ぼくが自分なりに出した答えがある。

それは、
「自分の魅力を最大限に、他人に伝えられたら勝ち」ということ。

比べる必要なんて、本当はない。
誰かの評価に納得できないのは、自分の未熟さ故。
だとしたら、もっと魅力をちゃんと届けられるようになればいいだけ。

今回のファーストステージ、勝てた。よかった。
緊張が、ふっと解けた。

あと2回勝てば、劇場所属。
もちろん、それがゴールじゃない。
でも、あっちの方がいい。
なぜなら、そっちの方が笑えるはず。


7月1日(火)『夏の始まり』

「夏しましょう」
マリーマリーのえびちゃんから、そんな連絡が来た。

聞き馴染みはないのに、言い慣れてるようなその言葉。
夏を動詞にしてしまうあたり、えびちゃんは本当に夏が好きなんだなと思う。

そういえば、自分には“好きな季節”があまりない。
夏生まれだけど、特別好きなわけでもなく、かといって苦手でもない。
冬は動きづらいな、くらいの印象。
昔バレーボールをしてたせいかもしれない。

この日、ダンビラムーチョの原田さん、サンシャインの坂田さん、
あっ、銀河ゆめゆめの坂田さんも。頭を張る3人を中心に、8人が集まった。

立ってるだけで汗をかくような中、ビアガーデンで乾杯。
ビールをたらふく飲んで、肉をかっ食らって、バカみたいに笑って。
何を話したかは、正直よく覚えてない。

でも、それでいいのかもしれない。

この時期、みんな疲弊している。
目の前のごはんとお酒と暑さに夢中で、
何か意味のある時間にしよう、なんて、誰も思っていなかった。

たぶん。
少なくとも、ぼくはそうだった。

でも「夏しましょう」と言われたことで、
夏を意識して生きるのも悪くないなと思った。

そうする方が、たぶん有意義。


7月2日(水)『約束。』

前のコンビからやらせていただいてる狛江のラジオ『コマラジ』の収録。

そもそもはおいでやす小田さんがやっていたラジオをコマラジのスタッフさんが引き継いではいかがでしょうか?
ということでやらせていただくことになった。

そのスタッフさんはぼくらに対して愛情を持って接してくださって、応援してくださって

「おいでやす小田さんみたく売れたらラジオ卒業してね!」

そんな約束をした。

そんな約束をした半年後にそのスタッフさんは、ご病気で亡くなられた。

ぼくはまだ売れてない。

どんな状況だろうと、自分に期待してくれた人の声援に応えたい。

というか、レギュラーがこのラジオ一本だけなので卒業なんかしたらだめ。無職になっちゃう。

これからも、聴いてください。


7月3日(木)『倍倍fight』

みんな知ってますか?

倍倍fight。

強制的に人を元気にさせる曲です。

おじさん過ぎてCANDY TUNEさんのことは知らなかったのですが、

倍倍fightは、ぼくのことを応援してくれました。

早く全員の顔と名前を覚えたいのですが、おじさん過ぎて覚えれない。

ミュージックビデオを見ても、スピーディー過ぎて目で追えない。

ただ、散歩中に聞く、とても元気がでる倍倍fight。

ん?なんか元気出る曲ばかりを紹介してる気がするけどいいっすよね。

プレイリストが出来あがるのがとても楽しみだ。


7月4日(金)『講演会』

今日は講演会に行った。

講演会?

スポーツ系の大学への講演会でぼくがバレーボールをしていたのもあって、オファーをいただいた。

「元バレーボールエース芸人が語る、予測不能な人生の歩み方」

元バレーボールエース芸人が語る、予測不能な人生の歩み方?

かなり色々あった人みたいになっている。

尺は90分。大学生は150人。

でも、振り返れば芸人になる前も予測不能だった。喋ることはたくさんあるから大丈夫。

……なはず。

全く知らない芸人が講演会には来た、というので警戒モードの生徒さんたち。

なんとかほぐしながら、自分の人生とか、芸人になってからとか、悪いことしないでね、とかを伝えた。

講演会が終わったら何人かの生徒さんが質問に来てくれた。

「親に反対されましたか?」
「10年やって違うことやるの不安じゃないですか?」
「やりたいことあるんですけど、やった方がいいですか?」

ちゃんと向き合ってくれてて、ほんとうに嬉しかった。

真摯に答えて、笑顔でお見送りして、一人残された会場で「あっ、ボケてない」と一人で思った。

講演会のオファーお待ちしております。


7月5日(土)『同級生』

山口県下関市というところで小学生を過ごしたぼくですが、

今日は同級生と一緒にご飯に行きました。

7歳の時から知ってる仲。

いま二人とも32歳。
あっ、今年で33歳になる歳。

ほんとに不思議。

よくわかんないけど、会うとすぐにあの頃と同じになる。

ぼくが今何してようが、
どんな人になろうが、
『あの頃』を共有できる数少ない存在。

昔話をいつまでするんだ。

あいつらきついな。

とぼくも思ったことあるけど、そんなことよりも楽しい。

地元の話、先生の話、友人たちのいい話、友人たちのわるい話。

ずっと話せる。

これが何になるのか?わからないけどずっと楽しい。

50歳になっても、たぶん同じ感覚。

歳を取るのも悪くない。

明日も頑張ろう。


7月6日(日)『サバイバルステージ』

今日は劇場所属の入れ替え戦に出られる権利をかけたライブ。
その名も……サバイバルステージ。

とんでもない名前だ。
金持ちが娯楽でやってるデスゲームじゃないんだから。

読んで字の如く、生き残りをかけたライブ。
勝ちと負けじゃ大違いだ。

勝てるに越したことはない。
でもこの「競う」って構造、ほんとうに必要なんだろうか?
そんなことを考えてしまう自分もいる。

けど結局、
這い上がるためには戦うしかない。
勝たなきゃ、先に進めないのなら。
もうやるしかない。
最大限、やるしかない。

昼にライブが終わり、発表は夜。
この「何もできない時間」の長さが一番しんどい。

結果は……勝てた。
ほんとうに、よかった。

気づいたら、すぐにかざ杜にLINEしていた。

7月11日の入れ替え戦に駒を進めた。
ここまできたら、もう勝たなきゃいけない。

頼む。勝たせてくれ。
いや、勝たせる。


7月7日(月)『Teenage Blue』

音楽が好きだ。
ほんとうに、音楽が好きだ。
毎日欠かさずしてることといえば、音楽を聴くことだ。

でも、ひとつだけ良くない癖がある。
それは……
自分より若い人の音楽を、ほとんど聴かないこと。

いや、正確に言うと、
ずっと同じ音楽ばかり聴いてしまうこと。

なぜか。
それは、学生時代に聴いていたあの頃の景色を
簡単に呼び出せるからだ。

思い出の中に戻れるし、
同時に「あの頃より少しは成長したかな」と思える。
そんな曲が、僕にはたくさんある。

だけど、そんな僕の耳に、
ある日ふいに入ってきた。

Klang Rulerの『Teenage Blue』。

この曲は不思議だ。
僕が学生の頃、この曲はまだ存在していなかった。
なのに、聴くとあの頃の空気が流れ込んでくる。

「こんな放課後あったな」
「こんな夜の感じあったな」
臨場感がすごい。

もしかしたらこの曲は、
僕たち世代のために作られたんじゃないかとさえ思う。

そういえば今日は、七夕だったらしい。


7月8日(火)『ライブ開催』

このコラムのトークライブを開催することが決まった。

同期の芸人・みなみと、ストレッチーズのかんたさんと一緒にやる。

みなみは、すでにワラパーで連載を持っていてかなりの人気らしい。
かんたさんは、僕とほぼ同じタイミングで始めたワラパー同期っぽい。

芸人それぞれが考えてることとか、感性が本当に違う。
それが魅力だと思う。

みんな優しいし、受け止め方が上手いし、
色々思うことがあるから……
もしかしたら、みんなの文章に温かさがあるのかもしれない。
そういうところが、僕は好きだ。

学生時代、芸人が出す本をよく読んでいたのを思い出した。
形はどうあれ、このコラムももしかしたら
そこに片足の小指くらいは引っかかっている気がする。

だからこそ、続けていきたい。
というか、何かしらの形にしてみたい。
結局そういうのが、僕は好きなんだと思う。

みなみに会うのは久しぶりだから楽しみだ。

……なんて思ってたら、
明日はゆにばーすの川瀬さんから
はらさんのピン単独の影ナレを頼まれていたんだった。

内容は特に聞いていないけど、
ミスだけはしないようにしよう。


7月9日(水)『スラムダンク』

今日はゆにばーすの川瀬さんから頼まれた影ナレーションの仕事で、渋谷よしもと漫才劇場へ向かった。

何をするかというと…
はらさんが早着替えをしながら色んな人に扮し、
そのキャラクターを僕がナレーションのように紹介していく、というネタの影ナレ。

川瀬さんには、僕が色んなことがあった時期に
ずいぶん支えてもらった。
だからこそ、「できることなら何でもご一緒したい」と思った。

ナレーションが得意かどうかは別として、
「やります!」と即答したのは、たぶん一人の時期を経験したから。
色んなことに責任を持ちたい、と思えるようになったのかもしれない。

はらさんが扮するキャラクターは16人。
思ったより多い。
リハーサルは一度きり。

間とか、言い方とか、着替えのペースとか、
川瀬さんは「大丈夫やろ」と笑っていたけど、
僕は不安で仕方なかった。
お世話になっている人の単独で、ミスは絶対にできない。

本番が始まる。

1人目のモノマネが終わり、僕のナレーション、
「千鳥のノブさんじゃないですか!」
ウケる。
これは台本とはらさんのモノマネのクオリティの勝利だ。

2人目。
「佐々木健介さんじゃないですか!」
ウケる。よし、流れはいい。

ところが3人目、
はらさんの着替えが間に合わず、
そのままの姿で舞台に登場してしまった。

台本通りのモノマネではない。
脳みそがフル回転する。
この後のキャラクター、この後の展開、
“邪魔にならず正確に、でも笑いは取らなきゃいけない”。

その瞬間、周りがスローモーションになった。
まるでスラムダンクの山王戦。
「まだ慌てるような時間じゃない」と頭の中で仙道が言う。ん?山王戦に仙道はいない。

やばい、何か言わなきゃ。

そして僕の口から出たのは…
「セクシーなお姉さんじゃないですか!」

ウケた。
次の展開にもつながる、ベストな答えだった。

そこから16人のキャラクターを紹介し終え、
あとは締めの言葉で完走する。

……噛んだ。

変なウケ方をした。
詰めが甘い。
そういうところが、僕にはある。


7月10日(木)『お初』

今日はキングオブコントに向けて、
あさがおで初めてのコントをさせてもらった。

オダウエダさんが
「アンティン=デ=イタツキマスというライブで
ネタ試したらええやん」
と言ってくれて、やらせていただいた。

僕はコントが好きだ。
作るのも好きだ。

でも…
ぼくの演技が壊滅的だ。

昔、真剣なお芝居の仕事で演技力が無さ過ぎてウケてしまったことがある。そのくらい壊滅的。

根っからのコント師の方たちは、
演技力があって、魅せ方も間の取り方も上手い。
本当にすごいと思う。

僕は演技で魅せることはできない。
だから、ネタの展開や構成で笑いになるように作ってきた。

「なんでもしていい」
それがコントの魅力だと思う。

だけど、
“自分たちにできるコント”が
どんなものなのか、まだ全然分かっていない。

手探りで作り、手探りでやってみた。

やってみた結果…
自分たちの思っているものとは、
少し違っていた。

こんな書き方をしてるけど、
要はウケなかった。

要はウケなかったんです。

まだこれから。
初めてなんだし、これから…だ。

……でも、ウケたかったな。


7月11日(金)『この日を待っていた』

今日は、約一ヶ月ずっと意識していた入れ替え戦の日。

今の劇場のシステムでは、芸歴7年目以下と8年目以上で分けられるため、僕は相方のかざ杜あわせで“芸歴7年目以下”のみんなと戦うことになった。

なお、みんなからは 「やり方がセコイ」 と言われている。

昔、福岡のある高校バスケ部で海外の選手ばかり集めて、その選手たちは実は海外ではもう20歳を超えているのに、日本では高校生としてバスケ部にいた…という話を聞いたことがある。

そのとき僕は、
「セコイな」 と思った。

まさか32歳になった自分が、似たようなことを言われるとは思っていなかった。

でも、真剣勝負だ。
ここで結果を出して、活躍して、これからに繋げたい。

出番はかなり後半。
ずっとそわそわしていた。

出番が来て、ネタをやった。
……かなりの手応えの無さ。

手元から何かが、スルスルと落ちていく感覚。
残ったものは運のみ。

結果は……敗退。

運頼みの段階で、全ては決まっていたのかもしれない。

このときの気持ちを言葉にすると、
「まずい……」
の一言だった。

どこかで、
「順風満帆になれるだろう」
そんな都合のいい未来を信じていた自分がいた。

この日に負けたことに意味がある。
そう思えるように、ここから頑張らないと。


7月12日(土)『キムタクだったら』

昨日の入れ替え戦の負けを、ウジウジ引きずっている…。

そりゃ、甘くねーよ。って話なんですけど、
まだネタ1本しかないし、ライブも5本目だし、
言い訳ばっかり出てくる。

個人的には、結構な出来事があって、
それでもコンビ組んで、速攻で劇場メンバーになって、
「ほら、すごいっしょ」みたいな展開を想像していたんですよ…。

シンデレラストーリー的な?
週刊少年ジャンプの主人公的な?
そういうのはあると思って、この一ヶ月を過ごしてきた。

でも成れなかった。

だから、ウジウジやらせてもらっている。

こういう時に、もし自分がキムタクだったらと考える。

キムタクというのは木村拓哉さんであり、
日本のスターという意味である。

キムタクが昔、笑っていいとも!のスペシャルで
アーチェリーのど真ん中に決めるやつを何度も見た気がする。

キムタクだったら、決めるよな。
キムタクだったら、一発よな。
キムタクだったら、即売れよな。
キムタクだったら、芸人やってないか?
キムタクだったら、月9出ないとか?
キムタクだったら、すごい責任あんのか?
キムタクだったら、有名過ぎてプライベートとか一切ないのか?

…もしかして、キムタクもしんどいか?

とはいえ、おれキムタクじゃないし。
だから、もうちょっとウジウジしよーっと。


7月13日(日)『オーケストラ』

今日は「漫ドリル」という、吉本のライブじゃないところでのライブ。

というのも、主催者の方が数年前に神保町の劇場で進行をやってくれていた後輩で、ぼくの今の状況も相まって呼んでくれた。

ネタをどうしていくか…と考えていたけど、
かざ杜が色々と持ってきてくれたのもあって、
漫ドリルでは新ネタを試すことにした。

芸人を10年やってきたので、
その日にできたネタはその日にクオリティを落とさずにできる、
という技術は身についている。

新しい何かを見つけて、
ネタに落とし込んで、
形にして、
かます。

ただただ、笑ってもらいたい。
その気持ちだけでやっている。

うちまつげのつげさんが、
「その段階、楽しいよねー!」
と言っていた。

わっかるー!

正直に言うと、今とても楽しめている。

状況的には、32歳でほぼ無職になったぼくだが、
なぜか楽しめている。

つげさんとは、ぼくが一年目のときに
お互い可愛がってもらっていた社長と一緒に
お酒を飲んだ思い出がある。

ぼくは、カスタネット程度の小太鼓持ちだったが、
つげさんは肩が凝るほどの大太鼓を抱えて
社長の前でバンバン太鼓を叩いていた。

社長も大喜び。

ぼくもカスタネットで対抗したけど、
つげさんの大太鼓に掻き消される。

ドンドン! タタタ! ドン! ドン! タタタ!

社長を喜ばすだけの、
即席オーケストラの誕生だった。

色んなルートがあるけど、
こうしてこの日にまた一緒にライブができたことが、
素直に嬉しい。

これからも音の汚いオーケストラを誇りに鳴らしてく。


7月14日(月)『新しい靴』

今日は新宿にいた。
帰宅途中、駅前で大きな声を張り上げている40代くらいの男性がいた。
選挙が近いからなのか、人目も憚らず、とにかく叫んでいた。
その内容はかなり汚くて、ちゃんと聴いたら本当に嫌なことを言っていた。
その男性の横を通るとき、下を見ながら歩いていたら、ふと靴が目に入った。
真っ白な、新しい靴を履いていた。
もしかしてこの人、今日、新宿に来るために気合を入れたのかな。
ぼくは田舎者のくせに、もう新宿に慣れてしまったから、
履き慣れたスニーカーで普通に来ている。
だけどこの人は、久しぶりに来たのかもしれない。
あるいは、叫ぶことに本気だったのかもしれない。
とにかく新しい靴を履いて、新宿に立っていた。
背景を汲み取ろうとしたけど、やっぱり駅で大声を出すのはよくない。
うん。よくない。
…もしかして、大声を出すことで
“もう会えなくなった家族に、会えるかも?”とか、
“この靴は、生き別れた親との再会の約束だった”とか。
そんなふうにユニークな思考で今日を終えることも、できなくはない。
でも、やっぱり。
駅で大声は出さないほうが、いい。


7月15日(火)『静かな日』

今日の仕事は、9番街レトロ・京極さんのYouTube撮影だけ。
場所は、六本木にあるとんでもなくでかいビル。
……いつもここ使ってるのかな。
京極さんとは、いろいろあった仲間。
絆というか、部活のキツさを一緒に乗り越えたような感覚に近い。
この人としか分かち合えない思い出が、確かにある。
撮影前に京極さんから「最近どうなん?」と聞かれて、
出てきた言葉は、
「静かに暮らしてます!」だった。
暇ってわけじゃない。ボーッとしてるわけでもない。
ただ、静かに暮らしてる。
たぶん、無理やり何かをやってないから、そう感じるんだと思う。
好きなバンド・Dragon Ashに『静かな日々の階段を』って曲がある。
20年前の曲だけど、今がいちばんしっくりくる。
好きな歌詞はこれ。
「なんとなく携帯の電源オフり 耳すます雑踏の全然奥に」
意味ないのに電源おふる。
めっちゃかっこいい。一生聴く。


7月16日(水)『誕生日』

今日、33歳を迎えた。
大人になるにつれて、この喜びはどんどん薄れていって、
誕生日になった0時には、もう寝ていた。
それくらい、誕生日という日に対する熱量がなくなっている。
子どもの頃から、誕生日にいい思い出があまりない。
そんな大袈裟な話じゃないけど、幼少期はとても貧乏だったから、
誕生日が特別だった記憶があまりない。
だから7月16日は、みんなに祝っていただける日でもあるけれど、
どんな顔をしたらいいか分からない一日でもある。
会う人、会う人に
「もしかしてこの人、おれが誕生日って知ってるのか?」
みたいな心理戦が行われる。
……これ、あるあるですか?あなたもそうですか?
「誕生日おめでとう!」って言われたら、どんな顔をしたらいいんだろう?
でも、今年はこれまでと少し違う。
このコラムがある。
このコラムは、時限爆弾のように数日後に世に出される。
もしかしたら、この7月16日の文章だけ、ちょっと手厚く見られるかもしれない──
そう思うと、逆にこの日へのハードルが上がっている気がする。
33年も生きていれば、ありがたいことにたくさんの人からおめでとうの連絡が届く。
そのたびに、ぼくは返信をする。
プレゼントもいただく。
顔はうまいこと作れていないかもしれないけど、ちゃんと嬉しい。
…矛盾してるかもしれないけど、本当に嬉しい。
もしかして、誕生日って
「一年に一日だけ、どんなことがあっても連絡したり、声をかけたりしていい日」なのかも。
全人類、平等に誕生日は存在しているから、
「誕生日おめでとう!」という名目で、
「元気か?大丈夫か?何かあったら言えよ?」という“存在確認”が許される日なのかもしれない。
「あなたの存在は、確かにここにあるよ」
…そう言ってもらえる日なのかも。誕生日、いいじゃん。
このコラムが時限爆弾っていうのは、ちょっと間違いだった。
タイムカプセルにしよう。


7月17日(木)『生命』

今日は『僕のヒーローアカデミア』の原画展と、久石譲さんのコンサートに行ってきた。
全く違う2種類のワクワク。
でも、どちらも大好きなワクワクだった。
ヒロアカの原画展では、作者・堀越先生の細かいネームや実際の原画が、信じられないくらいの量、展示されていた。
その一つひとつが白黒なのに、光って見えた。
久石譲さんのコンサートでは、ジブリ作品の映像とともに、久石さん率いるオーケストラが音と熱をぶつけてくる。
オーケストラの良し悪しは正直よくわからないけど、久石さんがとても楽しそうだった。
どちらの会場でも、確かに“生命”を感じた。
汗と、血と、心で届けられたものを、ぼくはしっかり受け取った。
堀越先生も、久石譲さんも、自分の創ったもので人を感動させて、動かして、魅力的だった。
…そうあれたら、いいな。


7月18日(金)『英雄』

今日、ずっと続けてきたライブ『英雄』が、今回で最後になった。
40回目の開催だった。
ブラゴーリさんと2組でずっとやってきたライブ。
今回で一区切り。
ぼくはこのライブが好きだった。
毎月、毎月、盛り上がっていて、
このライブがあることで、どこか安心できていた。
2組でやってきたから、どちらかがいなくなれば自然と終わる。
それはわかっていたけど、いざ終わると、寂しい。
自分がやってきたことで、こんなに寂しさを感じるんだな。
それだけプライドを持ってやってた証拠かもしれない。
「当たり前のことなんて、ひとつもない」
そんなことを、痛感した日でしたね。


7月19日(土)『お気持ち』

今日は「ワラパーコラムニストトークライブ」だった。
ストレッチーズのかんたさんと、同期のみなみと、ぼく。
たぶん、この3人でトークライブをするのは、最初で最後になる気がする。
みなみはすでに連載をしていて、ぼくとかんたさんの“先輩”。
いろいろ話を聞いてもらって、アドバイスももらった。
その中で、みなみが言ったひと言。
「お気持ち書いたらええんちゃうん?」
その言葉を真に受けて、
「じゃあ、お気持ちでこのコラムを書いていこう」
と、決めた。
もうすでに、お気持ちで書いてる部分はあったと思う。
そして、このコラムが公開されるときに、どう見てもらえるか……
その期待と不安も含めて、お気持ち。
みなみが言ってた“お気持ち”がちゃんと表現できてるかはわからない。
でも、それも含めて“情緒”なんだと思う。
……にしても、トークライブ、盛り上がってたな。
「後にも先にもこの日だけ」と言ったけど、
やっぱりまた、3人でトークライブやりたいな。


7月20日(日)『焼酎』

今日は、お世話になったお店が閉店するということで、挨拶に伺った。
10年前、一緒にアルバイトをしていたお兄さん・お姉さんたち3人が始めた、下北沢のお店「まぼねん」。
閉店の理由は、ビルの取り壊し。
まだまだ人気のある中での、仕方のない終わりだった。
下北沢に山ほどお店がある中で、
「まぼねん」はたくさんの人に愛される店に成長していた。
そのお三方には、ただただ尊敬しかない。
一緒にバイトしていた頃、仕事終わりに一緒によくお酒を飲んだ。
ぼくはビールで皆さんは焼酎。
当時22歳のぼくは、美味しいお酒のことなんてわかっていなかった。
でもこの人たちに、焼酎の飲み方を教わった。
正直、最初はそんなに好きな味じゃなかった。
でも今では、焼酎ばっかり飲んでいる。
散々お世話になったこのお兄さんたちに、
初めて「1杯、飲んでください」と言うことができた。
その乾杯した焼酎は、ほんとうに、美味しいお酒だった。


7月22日(火)『ぞくぞく』

今日は池袋で、若手大喜利ライブのMCをさせてもらった。
1年目〜6年目くらいの芸人たちが、どんどん大喜利を出していくライブ。
妙な緊張感があるライブで、
1年目だった頃のぼくは、ここで1問も答えられなかった。
滑るのが怖すぎて。
その後、当時3年目だった先輩に呼び出されて、お腹を蹴られた。
それも怖すぎた。
なんで蹴られたのか、今でもよくわからない。
罰ゲームだったことにしている。
そんなライブのMCになっていた。芸歴を重ねちゃいました。
びっくりしたのは、デビューしたての1年目はもちろん、
それ以外のみんなもどんどん答えて、ちゃんとウケていること。
びびって黙る1年目も、誰かを蹴る3年目もいない。
時代は変わった。
ぞくぞくと芸人が登場してきている。
うかうかしてらんないぞ。


7月23日(水)『積み』

今日はキングオブコントの1回戦。
あさがおとして、初めての賞レースだった。
これまでの対策ネタではなく、新ネタでの挑戦。
出番までは、けっこう時間があった。
その間、かざ杜の緊張がひしひしと伝わってきた。
ぼくはというと、意外と落ち着いていた。
思ったより、10年目なんだなと思った。
積み上げてきたんだなと、ふと感じた。
肝心のネタは……うん、まぁ、ウケたという印象。
そして、結果は、一回戦敗退。
厳しいねぇ。でも、わかってる。
頑張るし、見返すし、またやるよ。っていうお気持ちです。
……ただ、積み上げとか関係なく、やっぱり嫌だったなぁ。


7月24日(木)『この日のために』

今日は待ちに待った、あの日。
映画『ファンタスティック・フォー』の公開日。
正式には7月25日なんだけど、0時から最速上映が始まるので、ぼくにとってはもう今日=公開日だ。
この作品は、アメコミ映画「MARVEL」シリーズのひとつ。
このMARVEL作品が、とにかく好きで、今の生き甲斐といってもいい。
MARVEL作品の何が良いかって、その“規模の大きさ”だと思っている。
制作費も、出演者も、キャラクターも、映像も、脚本も、音楽も……言い出したらキリがないほどスケールがデカい。
MARVEL作品の前では、もう白旗。
はい降参、絶対服従。
言うことはすべて聞くしかない。
目も口も開けて、全身で受け入れるしかない。
自分が関与できる隙なんて、どこにもない。
公開初日の劇場には、同じ熱量を持った“MARVEL王政”の国民たちが集まっている。
映画が始まる前に、みんなで拍手する。
……待って、これってちゃんと伝わるかな。ま、いいか。
ファンタスティック・フォーは、やっぱり面白かった。
次のMARVEL作品の公開は来年の7月。
そこまで元気に、生きていよう。


7月25日(金)『ミュージカル』

今日は、3時のヒロイン・かなでさんが出演しているミュージカル『ジェイミー』を観に行かせていただいた。
ここまで大きな規模のミュージカルを観るのは、人生で初めてのこと。
人生で「初めて」を体験するって、やっぱり良い。
この『ジェイミー』という作品は、海外でも人気のあるミュージカルらしく、内容もとてもおもしろかった。
……というか、ミュージカルって、あんなにパワーあるんですね。
正直、知りませんでした。
これまでも何度か舞台は観てきたけれど、ミュージカルはやっぱり特別。
俳優さんたちのエネルギーが、ドカンとストレートに伝わってくる。
昔、神保町よしもと漫才劇場がまだ“お芝居小屋”だった時代に、一緒にお芝居をしていたかなでさん。
そのかなでさんが、今はどでかい舞台で、歌って、踊って、芝居をしている。
ぼくはというと、壊滅的な演技力のおかげで、お芝居の道は早々に諦めた人間なので……
こうして堂々と舞台に立っているかなでさん、そして出演していた皆さんが本当にすごいなぁと、素直に思った。
正直、今まであまり認知していなかった俳優さんたちの中にも、こんなにすごい人たちがいるんだと、驚いたし感動した。
良いものを観たあとは、自分の中にワクワクが残る。
なんだか、栄養補給ができたような一日だった。


7月26日(土)『結果論』

RIP SLYMEが新曲を出していた。
活動休止していたRIP SLYMEが、この一年だけ限定で活動するということで、新しい曲がリリースされた。
ぼくは、ちょうどRIP SLYME世代。大好きなアーティストだ。
一番最初に買ったCDは、RIP SLYMEの『TOKYO CLASSIC』。
ヤンチャで、好きなことをやってるお兄さんたちって感じで、当時から惹かれていた。
いつもは英語や造語のタイトルをつける彼らが、今回は突然、漢字三文字のタイトル。
その時点で、こっちも少し緊張してしまう。
「なんか様子が違うぞ。これは正座して聴く曲かもしれないな」と思って、
帰り道にイヤホンで流すのはやめて、家に帰って一人でじっくり聴くことにした。
…名曲だった。
自分たちの状況や体重(!)までも全部乗せて、音にしていた。
ヤンチャで好きなことをやってるお兄さんたちは、大人になってもやっぱりヤンチャだった。
ちょっとキモいかもだけど、ひとつだけ解説させてください。
PESさんの歌詞に「眠りの中に救いはない」という一節が出てくる。
これ、Dragon Ashの『Viva La Revolution』の歌詞を引用してるんです。
ぼくとしてはもう、ドでかい伏線回収が来た……って感じで。もっと喋りたい。
色々あったけど、「結果よね」って話です。
というわけで、RIP SLYMEの新曲『結果論』、ぜひ聴いてみてください。


7月27日(日)『バレーボールしんや』

今日は、新しいことに挑戦する日。
TikTok。
……なんちゅうものを開発してくれたんや。
「やろう、やらなきゃ」と思ってはいたものの、なかなか動けなかった。
きっかけをくれたのは、バレーボールのお仕事。
全日本のある選手のファンクラブイベントで、MCをさせていただくことになったのだけど、
「そういえば、ぼく……名刺、何もないやん」と気づいて。
ファンの方があのMCは誰だ?となって欲しくないし、全日本の方にもあいつは誰だ?となって欲しくない。
これはもう、バレーボールでTikTokをやるしかないと腹を括った。
後輩芸人のしんやがラグビー界でかなり知られてる。それが理想。
重い腰が上がらなかった理由は、ちゃんとあります。
それは恥ずかしいから。
ちゃんと言います。とても恥ずかしい。
なんでこんなに恥ずかしいのか考えたんだけど、
たぶん、自分の“時代”にはなかった文化だからなんだと思う。
見慣れないものには戸惑うし、理解しきれない部分もある。
ぼくらが学生の頃でいうと、腰パンだったり、ツーブロックだったり、モバゲータウンだったり。
あのとき、大人たちはみんなイヤがってた。はず。
見る分には楽しめる。でも、いざ自分がその世界に飛び込むとなると、やっぱり覚悟がいる。
とても覚悟がいる。
だから、もうひとりの自分を演じるようにして、スマホを構えた。
投稿ボタンを押すまでに、30分かかった。
これで、ぼくもTikTokerの仲間入り。
バレーボールしんやになる。
何か、始まりますように。

https://www.tiktok.com/@volley_miura


7月28日(月)『そういう人生』

今日は、たまにお仕事でご一緒する年上の女性に、こんなことを言われた。

「イケメンとか美女って、努力しないでしょ?
そういう人生を選んで、生まれてきたのよ。

でも、三浦くんは努力をいっぱいしてるでしょ?
三浦くんは、そういう人生を求めて生まれてきたんだと思う。

だから、これからもたくさん努力して、いろんな人を楽しませてね」

……なんだか、すごく深いことを言われた気がした。

でも同時に、
「あ、イケメンじゃないって言われたな」とも思った。

そんな日だった。


7月29日(火)『コーチ』

今日は、お世話になっているクリスタルジムの日。
ぼくは「スタジオトレーニング」というプログラムを担当していて、そこでバレーボールを使った運動をお客さんと一緒に楽しんでいる。
保健体育の教員免許を持っているのもあって、スポーツを通して人とコミュニケーションを取るのが好きだ。
いわゆる、“コーチング”というやつ。
学生時代は体育大学に通っていて、授業でコーチングについて学んだこともある。
たしか、「コーチング」という言葉の語源は“馬車”で、
“乗客を目的地まで運ぶ”という意味があった気がする。
スポーツでいえば、選手をそれぞれの目標達成まで導くこと。
とても素敵な語源だったから、今でも覚えている。
クリスタルジムでは、芸人がコーチングをしているというのもあって、
運動だけじゃなく、笑いもたくさんある。
この日は野田クリスタルさんもジムにいらしていて、
ぼくのエクササイズを受けたお客さんたちの楽しそうな顔を見て、ぼくを褒めてくれた。
野田さんが、ぼくを褒めてくれた。
……お笑いで野田さんに褒められたことなんて、たぶん一度もないのに。
ちょっと複雑だけど、素直にうれしかった。
自分のアイデンティティには、間違いなく“スポーツ”の一面がある。
そして、スポーツをしてるときは、なんだか素の自分でいられる気がする。
というわけで、
楽しいので、みなさんもぜひ来てください!運動苦手でも大歓迎です!
宣伝でした。


7月30日(水)『外練』

今日は、明日のライブに向けてネタの練習をした。
ひさしぶりの外練。
吉本にいるおかげか、劇場やちょっとしたスペースがたくさんあって、
外で練習することなんて滅多にない。
でも、ぼくはまだ劇場メンバーじゃないから、今日は外練。
暑いのは苦手だし、人がいたら集中できないので、最近はスタジオを借りて練習していた。
でも今日は、かざ杜に誘われた。
どうやら、ぼくの財布事情を気にしてくれたらしい。やさしいやつ。
東京では、公園や路上でネタの練習をしている若手芸人を見かけることがある。
人目も気にせず、大きな声でネタ合わせ。
今日のぼくが、それでした。
外練、悪くなかった。
今しかできない経験って、きっとある。
ちゃんと大事にしたいと思う。
あと……あんまり「練習してる」って言わないほうがいいのかもな、とも思った。


7月31日(木)『たぶん、これも情緒』

今日でついに、『たぶん、これも情緒』の初回投稿がひと区切りを迎える。
日記とも少し違う、なんというか、ふわっとした感覚。
毎日「何かないかな」と探すというよりも、
「何もなくても、これはこれで良し」、そんなふうに思える。
それもこれも、魔法の言葉「情緒」のおかげ。
次にみなさんにこのコラムを読んでいただけるのは、一ヶ月先のこと。さて、次はどんな一ヶ月が待っているのでしょうか。
ユーモアがある日も、ない日も、とにかく“ぼくらしく”いられたらいい。
今日はとても、あたたかな情緒で終えられそうです。
みなさんも、「たぶん、これも情緒かな?」と、
そんな言葉を、頭の片隅の、さらにそのまた片隅に置きながら、
日々を一緒に過ごしていけたらうれしいです。

今月のPLAYLIST

1.つつみ込むように・・・/ MISIA
2.ひたむき/SUPER BEAVER
3.倍倍FIGHT!/CANDY TUNE
4.Teenage Blue/Klang Ruler
5.静かな日々の階段を/Dragon Ash
6.結果論/RIP SLYME

PROFILE

あさがお・三浦リョースケ

★X:@DONBAL_MIURA
★Instagram:ryosukemiuraaaaa
★YouTube:ミウライフ
★TikTok:@volley_miura
★note:https://note.com/miura_0716
★公式プロフィール:https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=7020

文:あさがお 三浦リョースケ
編集:堀越 愛
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