『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。
今月のテーマは、「一番好きな曲」。
★春とヒコーキが読者のお悩みに答える連載「VIP ROOM HARUHIKO ~秘め問い~」はコチラから
theme. 一番好きな曲
ver.ぐんぴぃ

松任谷由実の「ルージュの伝言」です。
ジブリ版「魔女の宅急便」のオープニング曲として有名ですね。
浮気をされてしまった女性が、不安な気持ちを押し殺しながら、あてどなく家を飛び出すという内容で、聞くところによると、ユーミンが矢沢永吉の夫婦喧嘩を題材にして作った歌らしい。
暗い心情のはずなのに、妙に明るい歌詞と曲がミスマッチでいいですよね。辛いシーンだけど思わずウキウキと踊り出したくなります。
この明るすぎない感じがいいんです。「嫌なことあったけど、落ち込むのも癪だから。無理やり明るくいましょう!」って具合の。辛い人に元気や勇気を与える応援ソングでは全くないんですけど“から元気”を出してる人特有の、コミカルな癒しの雰囲気が感じられて好きです。
子供の頃はCDプレーヤーやウォークマン的な機器を持っておらず、歌を聴くのは家族でドライブする車の中だけでした。
そんな中学生ぐらいの時に祖父が死にまして。初めて身近な人がこの世からいなくなる経験をして、整理がつきませんでした。葬式で煮干しのようになってるじいちゃんの顔を見て「ウソみたいだろ、死んでるんだぜそれで」というよりは「こりゃすっかり死んでますな」という所感。火葬したらカリッカリに骨だけになって「魚みたい。あんな素敵なじいちゃんも魚」などとサルゴリラさんのネタみたいな感想を抱きました。悲しいのももちろんですが、困惑し切ってしまった。生きる価値とか。どうせ死んだら魚になるんだ、とか。
葬式の帰り道、しんと静まり返った車で帰途についていました。家族は一言も発さない。愛された祖父でしたから、それぞれの追懐があったのでしょう。そんな中、ラジオかCDかは忘れましたが「ルージュの伝言」が流れたんです。
辛気臭い時間に疲れていたのもあるかもしれません。全員が無言ながら、ちょっとずつノっちゃったんです。から元気を出そうと歌う女性の姿に励まされるように。落ち込んだってしょうがないじゃんと。気づけば一同ノリノリでカラオケ大会のごとく口々に歌っていました。泣いていたかもしれないけど、手つきをつけて踊りながら、合唱しながら楽しく帰りました。
家族に聞いたら誰一人覚えていませんでした。でも僕の中では祖父の葬式の帰り道は楽しい思い出になっています。
陰気な時間への反動としての乱痴気さわぎだったと思います。でも大事な人が亡くなっても、こんなに元気をもらえるなら「音楽ってすごいもんだな」と、心に刻まれています。湿っぽいのは嫌ですからね。僕が死んだら「ルージュの伝言」を流してください。「バキバキ童心です」はできれば流さないでください。
ver.土岡

東京事変の「透明人間」。
高校1年生の秋、家のテレビから怖くてかっこいい曲が聴こえてきた。流れていたのは、まもなく公開の映画のCM。そして、右下に[東京事変「金魚の箱」]と、主題歌のアーティスト名とタイトルが書いてあった。そこから東京事変と椎名林檎の曲を一気に聴いた。
(高校で友達ができなかった自分には、お笑いとテレビと映画と海外ドラマとスコーン・バーベキュー味を除けば楽しいことなんて何もなかった。この出会いで世界に色が増えた)
もともと椎名林檎のイメージは、ナース服でガラスを殴り割る「本能」のときの姿で、過激な印象だった。いろんな曲を聴いたら、その過激さもやはりあったし、明るさ、優しさ、勇ましさ、可愛さ、堅さ、軽さ、何もかもがあった。「本能」のCMは、何かしらのアニメを録画したビデオに入っていて、繰り返し見ていた気がする。
(ずっと「忍ペンまん丸」を録画したビデオだと思っていたけど、「忍ペンまん丸」放送時はまだ林檎さんはデビューしていない。架空の忍ペンまん丸の記憶)
高校を卒業した春休み、全国ツアーで地元の宇都宮文化会館にやって来た東京事変の演奏を生で聴いた。人生で一番の衝撃だったかも知れない。たくさんのお客さん、そして何より自分がとてつもなく感動と興奮をしていることに、人間ってこんなに人を揺さぶることができるのかと驚いた。大学生になって部活で落語をやるようになってから行ったコンサートでは、本当におこがましいけど「こんなに人を魅了してるの見せられて、悔しいなぁ!」と思って帰った。
(悔しいと言えば、高校生のときに漢検2級の試験で1点足らず不合格になった。勉強中に出てきた「煮沸」という単語に妙にハマってしまい、「煮沸」さえ書ければ満足してしまったことが要因。大学生のときもう一度受けて合格した)
「透明人間」は、可愛いメロディと歌声で、歌詞は健気で切実な曲。歌詞を見返すと、もしかしたら高校時代の自分と重ねていたのかもと思う。透明人間で、自分を主張することができない。浮いてることで悪目立ちするくらいなら、それを通り越してみんなの認識から取りこぼされたい。でも、この世に好きなものはたくさんある。気持ちを表すのが下手でも、気持ちなんてあるに決まってる。自分の感動を味わえている幸せが確かにある。そんな風に思わせてくれるけど、希望があるのか世知辛いのか綱渡りのような歌詞だ。それをメロディとサウンド、歌声の可愛さ、明るさで包み込んでいる。林檎さんと事変の中からどの曲を挙げるか悩んだけど、一番好きな曲は東京事変の「透明人間」。
(初めて買ったCDはグッチ裕三の「タナカ de シュビドゥワ〜」。アニメ「うちゅう人 田中太郎」の主題歌。田中太郎は宇宙人だよ、ビックリだよね、という歌詞だ。それを「グッチ裕三が歌っているな」という歌声で包み込んでいる)
PROFILE

タイタン 所属
左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗
★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
★公式YouTube:春とヒコーキ / バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】
INFORMATION

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