『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。
今月のテーマは、「憧れている芸人」について。
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theme.「憧れている芸人」について
ver.ぐんぴぃ

今月はTBSの特番『お笑いの日2025』に出演させていただきました。
と言っても本当に何もできませんでした。4時間ほどスタジオにいたわけですが、役割などは特にありません。雛壇のいちばん奥で、豪華なセットや演者に怯えていたのです。テレビは難しい。
この日の目玉は、明石家さんまさんと爆笑問題・太田光さんの一日限りの漫才でした。多くのお笑いファンが目にしており説明を省きますが、あれを生で目撃できた幸運を噛み締めて今後は生きていくのでしょう。怪獣同士の暴れ合い。街はひとたまりもありません。
生放送だけあって、太田さんの危険度はビンビンに高まっていました。僕らが一番好きな太田さん。彼が「私が米倉涼子です!」ととびきり良くないことを叫んだ時、雛壇の芸人たちがカメラに抜かれました。一同気まずい表情を浮かべています。春とヒコーキを除いて。特に土岡は大笑いしていました。
よく太田さんが過激なボケをブチまけた際に「周りが気まずい顔をしちゃってる」と茶化すことがあるんです。これのことかと、身に沁みて思い知る。そして、気まずい顔をするのがテレビ的にはきっと正解なんですね。我々だけドカドカ笑っちゃって。つくづく素人だなぁと、SNSに投稿された番組のスクショを目にして思いました。
「素人はSNSをやるな」もイジってましたよね。MC席にいたチョコプラさんがすかさず「おい!!」と反応します。番組も終盤でしたが、ここまで騒動についてコメントやイジりはありませんでした。
すると、さんまさんがチョコプラさんに近づき「そこは、“ワシやないかい!”や!」と指摘します。さんまさんの定番「それワシやないかい」と返せと。いや〜イカツい。
これを書いている現段階で、松尾さんの騒動はネットなんかじゃ、まだ怒っている人がいます。消火し切ったというよりは、遺恨をやや残した状態です。火に油を注ぐ態度を示してしまうと、いつでも再燃しかねません。「ワシやないかい」なんて言えば反省していないように見えるし、言わない方がいいです。
でも、そんなことはさんまさんには関係がないんですね。イジられたのだから「ワシやないかい」と返すべき、という“さんまルール”が世間の炎上より優位に立った。少なくともあの場所では。痛快極まりなかったです。面白いやつが勝つ。
不謹慎なことに触れづらくなってきた世の中ですが、僕はまだ「不快なことも、面白過ぎてしまえば炎上しない」と信じています。極論、つまんないから炎上するんです。怒りなんて吹き飛ばすくらい面白ければいい。
そんな道を見せていただいた、夢のような一日でした。だからこそ芸を磨く価値がある。
『お笑いの日2025』放送終了直後。とにかく生放送の『キングオブコント』が見たかったので、ものの10分後にはタクシーチケットを受け取り、局を飛び出てでタクシーを探していました。
すると異様にゴツくて真っ黒なベンツがぬっと現れました。中を覗くとさんまさんが運転しています。
驚く僕を見て、窓の奥から手をあげて挨拶してくださり、颯爽と赤坂の夜に消えていきました。さんまさんも爆速で局を出るんだ。カッケェなぁ。
ver.土岡

まずは、南海キャンディーズの山里亮太さん。M-1グランプリ2004で初めて見て震えた。ぼくは中学1年生で、人が人生を変える瞬間を初めて見た。前の日までテレビの世界にいなかった人が、次の日からずっといる。そういう意味でも自分にとって鮮烈だったし、やはり漫才の内容がすごかった。
ツッコミで「今どういう面白いことが起きたのか」を解釈して面白くするのが衝撃だった。ぼくは「解釈」というものが好きで、例えば映画の感想を持つことや、落語の了見など、同じものをどう捉えるかで自分なりに楽しむのって最高だなと思っている。そこにもこのときの衝撃は影響しているかもしれない。面白いことを「面白い見方」によってもっと面白くする。自分が主役になりにいくのではなく、あくまで切り取る側。でもその視点と表現が面白すぎて、みんな夢中になる。そんな人を中1で見て、ひっくり返らないわけがない。
芸人になって、山里さんとお会いすることができた。マイナビラフターナイトのチャンピオン大会で、MCが山里さん。ネタ披露後のトークで少しだけ絡ませていただいた。2回目に決勝に出たとき、トーク中のぐんぴぃのボケにぼくがツッコんだのだが、ぼくが力みすぎていて誰も聞き取れなかった。たしか「賛否両論あるんだからやめろ!」と言おうとして、「ザーピリョーロアランガ、メロゥ?」と言っていた。みんながポカンとしたあと、山里さんが「土岡くん、フランス語しゃべった?」と言ってくださり、どっとウケた。自分の反省をしなきゃいけないところなんだけど、自分が山里さんの手腕にさばいていただけたことが嬉しくて、噛み倒したくせにホクホクで帰った。
そして、ラーメンズ。ぼくが中3のときに姉が友達からDVDを借りてきた。コントってこんなにすごいのかと思った。SFやファンタジーな設定の中での妙なリアリティや、みんなが分かるものでも不思議なものにしてしまう感じに魅了された。
芸術的と言われる面だけじゃなく、ふざけているしパンチがあるから笑っちゃう。ぼくは「プレオープン」というコントの片桐さんの顔で笑い続けた。結局、バカらしさのために肉体と思考を使っている。お笑いで自分を表現できることと、お笑いは表現じゃなくてお笑いなんだということを学んだ。
昨年、片桐さんと飲みに行かせていただいた。ぐんぴぃがドラマ「新空港占拠」で片桐さんと共演し、ぼくがラーメンズのファンであることを片桐さんに伝えてくれて、プロデューサーさん交えて4人で飲みに行った。目の前に片桐さんがいて、ぼくを認識していて、会話をしている。そんな日が来るとは思わなかった。片桐さんは、バキ童チャンネルに投稿した「土岡の人生ぜんぶ語る」という動画を観て来てくださっていた。そんなことあるのかと驚きっぱなしだった。
ぼくは片桐さんに、コントの裏話と、昔ラジオで話していた大学時代に教育実習先の生徒から「先生、童貞?」と見抜かれてパニックになってブラックアウトした話の詳細のどちらを聞こうか一瞬迷って、「……あのライブのメイキング映像でされてた話って」とコントの質問をした。あってたと思う。
ぼくが「プレオープン」が好きと言うと、片桐さんは「おが屑のやつね」とおっしゃった。「おが屑」は印象的なワードなんだけど、ご本人もそう覚えてるんだと思って嬉しかった。
ぼくは大学で落語研究会に入って、落語をやることにのめり込んだ結果、芸人になっている。落研に入ったのは、ラーメンズが多摩美の落研だったのと、高校生のときに東京に観に行ったライブで山里さんがやっていた「子褒め」を見て落語って面白いんだと思ったから。この人たちがいなかったら、今の自分はない。
あと、バッグス・バニーと首領パッチにも憧れている。かっこいい芸人だと思う。
PROFILE

タイタン 所属
左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗
★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
★公式YouTube:春とヒコーキ / バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】
INFORMATION

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