2021.01.22
2020年を締めくくった人力舎ライブ 感動とオモシロが共演する「紅白歌うま合戦!」
2020年12月18日(金)・19日(土)、新宿バティオスにてお笑いライブ『どっきん!』が開催された。『どっきん!』は月1回開催されている人力舎主催の若手ライブ。今回は2020年最後ということで、『年末恒例!人力紅白なんでも合戦!!!』として2日間で5ライブを実施。19日は出演者が紅白に分かれ、第1部「紅白ネタ合戦!」、第2部「紅白大喜利合戦!」、第3部「紅白歌うま合戦!」と様々な合戦が繰り広げられた。ここでは、第3部『紅白歌うま合戦!』の様子をレポートする。
年末の時期に毎年恒例となった「紅白歌うま合戦!」は芸人が本気で歌を披露し、審査員と客席の投票により優勝者を決める大会だ。
出場者はみたらし祭り・りゅうせい、さきぽん、コガラシガーナ、しんぷる内藤、本田兄妹・あやの、凛凛パーカー・レオ、三福エンターテイメント、本田兄妹・ひでゆき、くぼゆうき、ネギゴリラ・細野、パルテノンモード・宮治(ホソノユウサク×ミヤジシンゴ)、キャプテンバイソン・高野。MCにリニア・酒井、審査員にGroovy Rubbishを迎えた、個性溢れるメンバーでお届けする。なお、会場の客席は少人数に限定し、安全対策を十分に行い、実施された。
Groovy Rubbishのオープニングアクトで開幕!
開演時間の少し前、前説としてコガラシガーナ(鈴木ジェロニモ、丸山智貴)が登場。開口一番、「今日はお笑いライブではございません。一生懸命歌ってる人に対して笑ったら失礼なので、笑わないでください」と呼びかけ、客席を笑わせた。さらに、鈴木が「今年一年いろんなことがあったけど、歌を聞いて来年も頑張ろうと思ってもらいたい」と意気込みを語ると、丸山が「ミュージシャンのテンションでしゃべんなよ」とツッコみ、会場を温めた。
前説が終わると、MCのリニア・酒井啓太が登場。「みなさん、どのくらいの感じだと思ってます? 俺、めちゃくちゃ軽い気持ちで来ちゃったんですけど、ガチの大会ですよ。普段、誰もそんなことしないくせに、裏でみんな『アーアー』って声出ししてる」と本気度の高さを伝えた。そして、審査員のGroovy Rubbish(類家ドラマティック、真野5.1ch)を呼び込み、二人はオープニングアクトとして、『キマグレン/LIFE』を披露した。
パフォーマンスが終わると、客席からは大きな拍手が。酒井も上手いと褒めつつ、「真野さん、ちょっとふざけてた? ちょこちょこものまねしてました?」と指摘。真野5.1chは「そんなことないです、尊敬してるんでリスペクトの歌い方です」と答えるも、再度歌ってみたらやっぱりものまねをしていたことが発覚し、会場は笑いに包まれた。
前半からレベルの高い戦いに大盛り上がり!
審査員が席に着いたところで、さっそく「紅白歌うま合戦!」が開幕! 1組目は紅組のみたらし祭り・りゅうせい。『エレファントカシマシ/今宵の月のように』を力強い歌声で、想いを込めてストレートに歌い上げた。
酒井は「ハートにがっつりきたよ!」とコメント。審査員の類家ドラマティックは「気持ちが入ってて、声の厚みもあってよかったんですけど、短パンで歌う歌じゃないなって思いました」と辛口な意見を述べた。それにはりゅうせいも、「動かないつもりが、動いちゃった」と反省。りゅうせいは「この曲に出会ったのが1か月前だったんですよ。すごい曲だなと思って、この曲を歌うしかないと思った」と語ると、酒井から「歴みじか!」とツッコまれ、客席からも笑いが起こった。
2組目は紅組のさきぽん。舞台に登場すると「みなさん、こんばんは。さきぽんです」と小さな声で囁き、「大黒摩季さんの曲を歌おうと練習していたら、喉が潰れてしまいました」と衝撃の告白が。そこで、急遽お願いすることになった代打のデッドリードライブ・唐戸デスマッチを呼び込んだ。デッドリードライブ・唐戸デスマッチはさきぽんに代わり、『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』の主題歌である『井上大輔/哀 戦士』を披露。「ヘイ!」「カモン!」と客席にレスポンスを求めながら、上着を脱ぐパフォーマンスも入れつつ、会場を盛り上げた。
終わるやいなや「勘弁してくださいって!きついっすよ〜!」と嘆く唐戸デスマッチ。酒井は「こんなに楽しそうに歌う人、久々に見た」と笑った。類家ドラマティックは「急に決まったから何も準備してないってフリを入れて始まったけど、本当に何もなかった。間奏を持て余してウロウロしていたが、あの間を怖がらずニコニコできるのがすごい」とコメント。的確な審査に唐戸デスマッチも凹んでいたが、舞台の袖からさきぽんがずっと優しい笑顔で見守っていたことが判明すると、場が和んだ。
続いては白組のコガラシガーナ。『坂本九/上を向いて歩こう』を歌い出すと、ハモりの上手さに客席からは驚きの声が。間奏では丸山が口笛を披露したり、最後はアカペラで歌ったりと“歌うま芸人の実力”を見せつけた。
真野5.1chは「二人ならケミストリーとかもできるのに、あえてハモらない曲を選んだのがすごい。ゆっくりハモるのは難しいので、実力がないとできない』と絶賛。そして、丸山の口笛の最中に鈴木が不服そうな顔をしていたことに触れると、鈴木は丸山の特技である口笛をアピールするためにこの曲を選んだが、「僕は前フリみたい。こんなことをするために人力舎に入ったんじゃないと思えてきて顔に出た」と愚痴っていた。
4組目は白組のしんぷる内藤。『森山直太朗/生きてることが辛いなら』が始まるはずだったが、歌い出した途端にマイクが入っていないというアクシデントが発生した。酒井からストップがかかると客席は大爆笑。気を取り直してもう一度歌おうとすると、今度は照明が暗すぎてストップ。これにはしんぷる内藤も「いじんなや!俺、今日ガチできたのに」とキレ、酒井が謝罪することに。3回目は無事に歌うことができ、会場に響き渡る歌声で客席を魅了した。
しんぷる内藤がアクシデントについて嘆くと、酒井が「上手かったし、じゃ優勝で」、Groovy Rubbishも「素敵な歌でした」「高音きれいでした」と、軽くあしらわれてしまう展開に。「逆にアクシデントがなかったら見てらんなかった」というコメントに対し、しんぷる内藤が「まじかいな!」のリアクションで返すと笑いが起こった。
続いては紅組の本田兄妹・本田あやの。MISIAの曲を歌うということで、馬のぬいぐるみに乗りながら「今日は馬で来ました」とニュースになった話題(!?)を取り入れながら登場。そして、圧巻の歌唱力と表現力で『MISIA/逢いたくていま』を歌い上げ、客席を楽しませた。
酒井が「歌はめちゃくちゃ上手だったと思うんですけど、(相撲の)張り手みたいな動きが気になった」と話すと、本田はすぐさま「いやMISIAさん、こんな感じなんで」と切り返した。類家ドラマティックが「芸歴を重ねれば、ボケたくなるんだなって思いました。途中、怖かったから変な動きを足したんじゃないですよね?」と問い詰めると、本田は「怖かったです」と白状し、笑いを誘った。
次は白組の凛凛パーカー・レオがギターを持って登場。『L’Arc~en~Ciel/HONEY』を完全なエアギターで演奏した。また、歌の途中にご本人登場のサプライズとして、HYDEに扮したデッドリードライブ・本田りんも登場し、客席を驚かせた。
審査員にハマらなかったようで、Groovy Rubbishからは「歌唱力的にも、お笑い的にも0点でした」という辛辣な感想が。酒井も「お笑いの審査はやめてください!」とフォローするも「ギターを弾いてるフリ史上、一番下手」と指摘。そこは凛凛パーカー・レオも素直に認め、話題はHYDEへ。「HYDEさんはどうでしたか?」と聞かれると、「帰ります」と言ってダッシュで舞台を後にした。
接戦を制した優勝者は二人!?
「紅白歌うま合戦!」も後半戦に入ると、白組の三福エンターテイメントがピアノを抱えながら緊張気味に登場。なんと、約1か月前から始めたというピアノでオリジナルソングを作ってきたとのこと。曲のタイトルは『拝啓、まとばゆう』または『拝啓、パーマ大佐』で、自身がピアノを始めた想いを正直に綴った歌詞と、つたないピアノ演奏で客席の心を掴んだ。
演奏が終わると、「心に刺さった。ちょっと泣きそうになった」と酒井。類家ドラマティックも「ミスったところはあったけど、僕も感動した。めちゃくちゃかっこよかったです」とコメント。三福はプロ野球のトライアウトに挑戦した新庄剛志氏を見て感化され、自身も曲づくりに挑戦したと語りつつ、もう一回演奏しようとして酒井に止められる場面も。
8組目は紅組、人力舎1年目のキャプテンバイソン・高野。平井堅のビジュアルでサングラスを2枚かけて登場し、『Foorin/パプリカ』を歌い出した。思わず体が揺れてしまうくらい心地よい歌声と歌の上手さに全員が聴き入ってしまった。
「シンプルにめちゃくちゃ上手いやつが登場しちゃった」と酒井。Groovy Rubbishも「久しぶりに本格派が出てきた。歌い方の構成がよかった」「Aメロ、Bメロがめちゃ上手かった。強く歌いがちだけど、ハイトーンで歌うところもよかった」と絶賛。高野は「久々にこんなに褒められて気持ちいい」とうれしそうに答え、唐突にキャプテンバイソンのポーズを披露したが、「そのポーズは観たくなかった」と不評に終わった。
次は紅組の本田兄妹・本田ひでゆき。フレディ・マーキュリーの装いで「ハロージャパン、アイムフレディ・マーキュリー」と手を振りながらステージへ。見た目を無視した『フジファブリック/若者のすべて』を歌うも、途中でスタンドマイクに差したマイクが取れなくなったり、間奏部分でフレディ・マーキュリーになりきったりとアドリブを展開。客席のテンションも上がり、拍手が沸き起こるほどの盛り上がりを見せた。
パフォーマンスが終わると、周囲から「本田兄妹って何なの?」「何やってんすか?」「曲間違ってません?」とツッコミの嵐が。本田はフレディ・マーキュリーになりきったままハイテンションで舞台上を動き回り、最後は「バイバイ〜」と満足気な表情で帰って行った。
次にステージに登場したのは白組のくぼゆうき。自前のピアノを持参し、「尊敬するアーティストの曲を歌わせていただきます」と歌い始めたが、「なんでだろう〜なんでだろう〜♪」と聴いたことのあるフレーズが。最初は客席もざわついていたが、テツandトモの『なんでだろう』のカバーであることが分かると笑い声に変わった。
Groovy Rubbishは「めちゃくちゃいいアレンジだった」「カバーは新しい。このままネタとしてやったら『R-1グランプリ』もいける!」と褒め、どんどん悪ノリする流れに。それに対し、くぼは「アレンジすればネタにしてもOKとかないです!」と笑いながら返した。
トリは一昨年・昨年の優勝者がタッグを組んだミヤジシンゴ×ホソノユウサク。落ち着いた佇まいで「今日は来てくれてありがとう」とミュージシャンのスタンスで話すと、周囲からは「腹立つな」「カタカナ表記と×(カケル)がうっとうしーな」と野次が飛んでいた。二人は、最近恋をしてる娘(=スニーカー)への想いを歌にしたオリジナル曲、『ニューバランス』を披露。
酒井が「ニューバランスの歌だけど、まるで好きな女性に向けた歌に聞こえて、すごく心に響きました」と感動を伝えると、ミヤジは「はい、好きなんで。愛を歌いました」と未だにミュージシャンのスタンスで返答。その様子を見かねた類家ドラマティックは「チャンピオン同士なら“1+1=2”じゃいけない、掛け算じゃないとみんなの期待を超えられない。“×”の表記に見合っていたのかな?」と切り込んだ。酒井が二人に「スタンスに楽曲が追い付いていないということですが、どうですか?」と尋ねると、ミヤジは「うるせえ!」と一蹴し、客席は爆笑。ホソノは「僕はちょっぴり凹んでます」と本音をこぼした。
以上で全11組のパフォーマンスが終わり、審査員と客席の投票タイムに突入。集計中は、酒井とGroovy Rubbishが「非常に難しい大会でしたね」「歌が上手だったり、お笑いがあったり、感動で泣きそうにもなったりと、大会的にはすごくバランスがよかった」と、本大会を振り返った。
集計が終わり、いよいよ優勝者の発表へ。酒井が「同率で二人います! 一人目はフレディ・マーキュリーさん!!もう一人はキャプテンバイソン・高野!!おめでとうございます!!」と叫び、優勝を制した紅組の二人が舞台へ登場した。
フレディ・マーキュリーこと本田兄妹・本田ひでゆきは「チャンピオン?ワンダホー!!」、高野は「ありがとうございます!!」と喜びを表し、二人で舞台上をグルグルと歩きだした。酒井が「何も思いつかなかったら手を挙げてください」と言うと、本田がすぐに挙手し、客席は大爆笑。なお、3位は同率で三福エンターテイメント、コガラシガーナ、ミヤジシンゴ×ホソノユウサクが並び、接戦だった模様が伺える。
酒井の「2020年の人力舎ライブは今日が最後です」に対し、「これが最後ですか?」とツッコミが入るも、「すごい感動したし、笑えたし、よかったんじゃないですか?」と上手く収めた。「来年もよろしくお願いします!!」の挨拶で締め、「紅白歌うま合戦」は大団円で終了した。
ライター、撮影:なきごろう