居場所を作りたかったあの頃

主催ライブを行う芸人にコラムを書いていただく不定期連載、第3回はキズマシーン・カミノシュウヘイさんに寄稿いただきました。定期的に実施している『すごいんだから、やる気とか』やゲストを呼ぶ単独公演など、数々のライブを主催しています。主催せずともライブ出演は可能ですが、なぜ自らライブを主催するのでしょうか。そのきっかけや想いを執筆いただきました。

●第1回:生きるためのお笑いライブ(レッドブルつばささん)
●第2回:楽しい主催ライブ(竹内ズ・がまの助さん)

ケイダッシュステージ所属、キズマシーンのカミノと申します。まだ何者でもない僕までをもカバーしているWLUCKさんの守備範囲に驚きを隠せないままこの文章を打っております。僕が主催ライブをやっていること、一体どこで嗅ぎつけたんですか?

さて、そんな僕の主催ライブは6年前、池袋西口GEKIBAで幕を開けました。そもそもは、キズマシーンを組む前にやっていたコンビで単独ライブをやるために劇場を借りていたのでした。しかし、劇場を借りた矢先にそのコンビは解散してしまい、その数か月後に組んだキズマシーンで何か主催ライブをやって穴を埋めようとしたのがキッカケだったと記憶しています。そこでやったのが企画大喜利ライブ『ギリマシーン』と長尺ネタライブ『表現の自由』でした。

年季を感じるラインナップです。胸が熱い。

大喜利が好きだったから主催した『ギリマシーン』で、主催者なのにスベりすぎてしまい、結果的に大喜利に苦手意識を持つようになってしまったのは今となってはいい思い出です。

『表現の自由』は、当時僕らが出ていたフリーライブのネタ尺が3分程ばかりで、「3分で俺らのやりてぇことできっかよ!」という尖りから産声を上げたライブでした。

企画やお題の準備もブッキングもネタ作りも大変でしたが、終わったときの充実感とやりたいことを全力でやれているという紛れもない事実が僕の背中を押し、特に『表現の自由』なんかは毎月開催するようになっていきました。

仕方なしに始めた主催ライブでしたが、今思えば、主催ライブは僕にとって居場所作りだったのかもしれません。誰に誘われることもなく養成所にも行かず勝手にお笑い芸人を名乗り始めた僕も、15歳でこの世界に飛び込み、養成所を経て事務所に所属したものの間もなくして事務所を退社した相方のSAMIDAREも、結成当時はどっちも野良犬みたいな状態で、劣等感と不満を持ちながらずっと何かに飢えていて、だから自分たちで居場所を作ろうとしていたのかもしれません。もう昔のことだから覚えていませんけどね。

でも、やはり二人の中にあったのは、力を蓄えるための場所、自分たちをアピールする場所がないなら自分たちで作ればいいじゃん、ということでした。

だから、「年始全然ライブなくて嫌だな!」と思って『カミノシュウヘイとザ・ロケットスターターズ』というライブをやったし、「俺たち二人ともネタ書けるってところ見せてやろうぜ!」という気概で『SAMIちゃんvsカミちゃん』という各々がネタを3本書き下ろす新ネタ6本ライブをやったし、「YouTubeにアップするネタを撮りてぇ!」からやったのが『KIZ THE FUNK VIDEO』というその1年間の集大成的ベストネタライブでした。他にも、どんなに苦しくても定期的に新ネタを作り続けるために始めた『すごいんだから、やる気とか』。これも前身の『一等賞になりたいの』から数えるともう長いことやっている愛しい愛しい主催ユニットライブです。(今はコロナの関係で休止状態にありますが……。)

こうやって文章を書きながら省みると、自己中心的に周りを巻き込んでいるのかもしれないと恐ろしく不安になってしまいますが、それでも快く出演してくださる芸人たちには感謝の気持ちでいっぱいです。特に『すごやる』のメンバーなんかは会うたびに「早くやりたいね」と声を掛けてくださるので、もう本当に愛してるよとこの場を借りて伝えたいです。そして、この「愛してるよ」にこそ僕の主催ライブへのこだわりが詰まっていて、それは大好きな芸人しか呼ばないというすごくシンプルなものです。
自分が客席から観たいくらいだわと思うようなメンバーを集めてライブをやる、それはつまり自分の「好き」に囲まれているわけだからこんな幸せなことは他にないわけです。結局自己中心的な考えですね、すみません。
だけどそれは案外良いように働いていて、一方的に好きだからという一点のみで面識のない方々を急に呼んだりもするし、するといつものメンツにならないというか、偏りのないメンバーでライブができるから色んなお笑いが観られる、というのは僕の主催ライブの強みの一つかなと思います。
あと、ほんのちょっとのこだわりですが、たぶん僕の主催ライブの客入れ音楽は関東で1,2を争うくらいハイセンスだと勝手に思っているので、早めに会場来て良い音楽聴きながら体揺らして待ってなよという気持ちがあります。

こんな状況下ですので、以前のように複数の主催ライブを打つことはできていませんが、それに対する鬱憤は今、全て『コント!!キズマシーンのライブ!』というライブにぶつけています。
このライブは、毎月実力派コント師を2組ゲストにお呼びし、我々がネタを3本披露するというものです。これもまた僕たちの大好きリストの中からゲスト様を選ばせていただいており、もちろん出囃子も客入れの音楽もゴリゴリに僕の趣味全開です。この少ない組数でのライブは、こんなにも純度が高く濃密な時間を過ごせるのかと毎回緊張しながらも楽しくやらせていただいております。
今はとにかくこのライブを通して今まで我々を知らなかった皆さんにも存在をアピールしたいと思っていて、だから、一度でいいから遊びに来てほしいものです。次回ゲストのママタルトさんとにゃんこスターさん(特にアンゴラ村長)は奇しくも僕の主催ライブを通して仲良くさせてもらうようになった2組です。なんと胸が熱いことか。
最後に、これからも僕たちは場所を作って待っていますので、仕事で嫌なことがあったとき、勉強も恋愛も上手くいかないとき、ただ笑いたいときはここに来て、是非「あなたの居場所」にしてくださいね。最高の思い出を作りましょう。


<プロフィール>
カミノシュウヘイ(キズマシーン)

ケイダッシュステージ所属

1991年3月18日生まれ。AB型。青森県出身。趣味は、音楽鑑賞(主にインディーズロック、ポップスなど)・散歩・ネタ作り。特技は野球。

Twitter:The_Kamino
Youtubeチャンネル:きみだけのキズマシーン