『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。
今月のテーマは、「カラオケ、好き?」
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theme.カラオケ、好き?
ver.ぐんぴぃ

カラオケには滅多に行きません。音楽に明るくないのもあり、歌える曲が少ないのです。
最近歌ったのは、先輩芸人の木場事変さんに田舎の温泉に連れて行ってもらった時です。2階がカラオケ付きの宴会場になってるタイプの温泉施設でした。畳の大部屋にカラオケ機が1台あり、居る人全員で交代で歌っていました。
部屋に入ると気持ちよさそうに演歌を歌うおばあさんがいました。
知らない人の知らない歌はかなり退屈です。しかし座って聴くご年配の皆さんにはきっと馴染みの曲なのだろう。そう思って部屋を見渡すと、すぐに異変に気付きました。聞き手たちの様子がおかしい。
皆、鋭い眼光で歌い手を睨みつけているのです。刺すような目つき。カラオケらしからぬ殺伐とした雰囲気。「和気あいあい」の逆の言葉があればちょうど使いたいぐらい、異様な空気なのです。
よく見ると、老人たちは手元の紙に黙々と何かを書いています。「87」「90」「84」。2桁の数字?それを白髪の従業員が手際良く回収していく。おばあさんが歌い終わるとカラオケの点数が表示されました。
「ああっ」「外した!!」「チクショウッ」
ため息と失意の声が部屋のあちこちから聞こえました。
結論から言うと、皆さんは賭博をされていました。
カラオケの点数を予想して賭けていたのです。
※その温泉でのみ使えるお金(ペリカ的なもの)を賭けてました
賭博大会が終わるまで1時間ほどかかるらしく、それまでカラオケに参加できる感じではありません。かなり気まずいですが、こんな景色は滅多に味わえないので辛抱してギャンブル用の歌を聴きました。
大会が終了。博徒がゾロゾロ帰り支度を始めています。
ようやく歌えるとのことで僕は和田アキ子の「古い日記」を選曲しました。数少ない持ち歌で「二度と声が出せなくてもいい、ありったけの声量を」という覚悟で「ハァッ!!!!!!」と絶叫するのが気持ちがいい。カラオケとは声量ですから。気まずい時間を耐えたフラストレーションを声帯に叩きつけました。
「ハァッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
歌という体裁を保っているかも不安なほど絶叫しましたが、世代間が合ったのか、ご高齢の皆様が楽しんでくれているのが分かりました。グルーヴが広がる手応えがある。終盤は博徒も含めた全員で「ハァッ!!!」と叫んでいました。曲が終わると拍手をいただき、鴻上尚史にそっくりなおじいさん博徒が「100点!いぃや!500点だ!!」と快哉を上げてくれました。
———そうだぜ。音楽に賭博は要らねえのさ。楽しく歌うだけでいいじゃないか——
堰を切ったように皆、楽しげに歌い出しました。一緒に行った人たちも昭和歌謡を歌って。ピンクレディー、山口百恵、木綿のハンカチーフ。名曲たち。会場全体が盛り上がる。この一体感はカラオケボックスにはない魅力です。知らない人の熱唱も意外と楽しい。
しばらくして、じっと様子を見ていた木場事変さんがついにマイクを持ち「俺も昭和世代が喜ぶ曲にしよう」と言いながら『トウキョウ・シャンディ・ランデヴ』を歌うというボケをしたら、ご高齢の方々が興醒めして全員帰ってしまいました。あんなに盛り上がっていたのに。冷や水をぶっかけたように会場が静まり返ったの、最悪すぎてめちゃくちゃ笑ってしまいました。楽しい思い出です。
色々書いているうちに、なんでカラオケに行かなくなったか思い出しました。
学生時代に土岡と二人きりでカラオケに行ったことがあるんですけど、全てのカラオケの中で一番盛り上がらなかったです。何を歌ったとか覚えてませんが、本当につまらなかった。お互い「流石につまんなかったね」と言い合いながら帰途についたのを覚えています。悲しいほどに陰気な二人です。
ver.土岡

カラオケ、今はあまり行かないけど好きだ。心と体からパワーを出して歌うのは、みなぎる。「歌う」という動詞があるということは、人間の選択肢としてありえるということ。「食べる」「踊る」「愛でる」「訴える」。動詞はすべて人間が取りうる選択肢なんだ。
カラオケ、地元ではほぼ行かなかった。中学はイケてない者だったし、高校は友達がいなかったので行かず。だからマンガやアニメで中高生の主人公がクラスメイトとカラオケに行くシーンは毎回「クラスでカラオケなんて行くかい」と思ってしまう。漫画家がそんなに高校時代にカラオケに行っていた人たちとも思えない。みんな言い伝えを描いているんだろうか。
しかし、大学生になった途端、カラオケに行く機会が爆増した。落研でさえも、落語会の打ち上げで2次会3次会がカラオケになることが多かった。そこでたくさんの歌を知った。他の人が入れる歌を聴いて「自分はこの歌を知らないけど、この人は知ってるんだ」と感じる機会が多かった。どこで知ったんだろう、何かこの人特有の好みや体験があってこの曲を知ったんだな。人には自分の知らない一面があるのが見えて感慨深い。終電を逃してカラオケで始発までつぶすことも多かった。徹夜して朝日を浴びながら帰るのは、へろへろでしんどかった。あの朝日を見る度、こんなに太陽に力を奪われて吸血鬼みたいだな、吸血鬼を最初に思いついた人は徹夜明けの朝日がしんどかったんだな、と思った。
一人カラオケにもよく行った。スッキリして気持ちいいのもあるけど、歌うことは落語やお笑いに必要な、心のパワーを的確に口から出すことの練習だと思っていた。歌詞には主人公がどんな人で、どんな出来事があって、ということはあまり具体的には書かれていない。なのに、それをメロディに乗せて歌っていると、なんだか感情が乗る。自分の体から声を出すことで、心のパワーも搾り出される。それを決まったメロディとリズムで発声する。これは落語やお笑いの演者としての部分に生きると思って、大学生から20代半ばくらいまで、たまに一人カラオケに行っていた。
でも、最近はあまり行っていない。一人でも行かないし、学生時代とちがって人と行くことも滅多にない。
と言いつつ、今この文章をカラオケで書いている。芸人で集まってボードゲームをやっている。人間横丁・内田紅多は言う。「カラオケってネタ合わせでたまに来ますよね」。こたけ正義感は言う。「ピン芸人だから別に来ない」。警備員は言う。「このスニーカー、地元に帰ったときに買ったんですよ」。カラオケボックスはそれぞれの思いが渦巻く。そんな人間交差点。さあ、人生を歌おう。
PROFILE

タイタン 所属
左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗
★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
★公式YouTube:春とヒコーキ / バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】
INFORMATION

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