【WEST ANTSストーリー-vol.8 シンバルモンキー(後編)】激動のお笑い人生、栄光と再起動 ~西の地下で轟く、新たな笑いの息吹~

2021年4月、大阪のライブシーンで活動する9組18人の芸人によるユニット『WEST ANTS』が誕生しました。発起人は、大阪・西心斎橋で「BAR舞台袖」を営む加藤進之介さん。大阪のお笑いを盛り上げるべく、本当に「面白い」と思う芸人を集めました。(加藤さんインタビュー:大阪を「芸人が飯を食える場所」にしたい

シンバルモンキーの結成前について聞いたインタビュー前編に続き、後編では芸人になったきっかけやネタに対する思い、そしてユニット「WEST ANTS」のメンバーとして駆け抜けた1年について話を聞きました。結成から1年経たずしてユニットに所属することとなった背景には、一体何があったのでしょうか。大阪のフリー芸人を盛り上げたいという強い想いが、運命の出会いを引き寄せます。(インタビュー前編はコチラ

【WEST ANTS ストーリー -vol.0-】大阪お笑いに、新たな息吹!芸人ユニット『WEST ANTS』とは

シンバルモンキー(左:イオリ・ジャンバック、右:ジンリキ)

これで食えたら人生幸せや

———芸人になろうと決めたのはいつ頃でしたか?

ジンリキ: 芸人になる……。お笑い好きなのはずっとやったけどなぁ。プレイヤーとしてっていうのはいつだろ。イオリは早かったんか。

イオリ・ジャンバック(以下、イオリ): 俺は中学のときですかね。中学校の卒業アルバムにも「芸人になる」って。

ジンリキ: 絵に描いたような芸人。

イオリ: そう、書いちゃってるんですよ。一緒に校庭で漫才してた頃、卒業間近で“ラストステージ”みたいなときにさ、校長先生とかまで観に来てくれたん覚えてない?
 
ジンリキ: 覚えてない! そうだったん!?

イオリ: すごかったんすよ! 校長先生も含めて、ほぼ全校生ちゃうか? っていうくらいの人数が見てくれて。なに言うてもウケて、めっちゃウケて。それがもう気持ち良くて、「芸人になろう。これで食えたら人生幸せや」っていう。

ジンリキ: 確かにな。

イオリ: 僕は、これがきっかけですかね。そんときのコンビは、奇しくも「3LDK」ではなくて、当時組んでた「シンバルモンキー」。

ジンリキ: ええわぁ。初代シンバルモンキー。

———じゃあ、有名人ですね。

ジンリキ: いやーめちゃくちゃ……

イオリ: 中学ではっすよ!

ジンリキ: 中学では、めちゃくちゃ凄かった。

イオリ: “井の中の蛙”もええとこです。

ジンリキ: いやー凄かった。

イオリ: 中学校では知らない人はおらんかった(笑)。指揮もやって、お笑いもやって。

ジンリキ: 凄かった凄かった、確かに。

イオリ: 井の中の蛙だから、そんな言わんで(笑)。

ジンリキ: 人前に立ってるイメージやな、イオリは。

イオリ: お前は(お笑いをやろうと思ったのは)いつ?

ジンリキ: 「漫才やりたい、できるな」ってなったのは、シンバルモンキーを組んでからやで。「やりたいな」っていうのはぼんやりあったけど、目指してるわけでもなく、遊びでやれたらいいかなみたいな。結婚式とかで漫才したりはしてた。

イオリ: めっちゃやってましたね。

ジンリキ: そういうのは高校のときからやってて。でもお笑いが好きな分、逆に「(プロで活躍してる)この人達と一緒にやるのなんか無理やろな」みたいなタイプやったんで。なりたいっていうのは、ほんまに組んでからです。2、3年前くらいかな?

ジャンベに関してはルールが無い

———ネタ作りについて質問です。ジャンベなどあまり見慣れない楽器を使ったネタが多い印象ですが、どのように作られているのでしょうか?

ジンリキ: もう、囚われてます。

イオリ: 今までは僕が書いてて、最近はジンリキが全部書くようにしてるんで、多分(ネタの作り方は)別々かなと思います。僕はそもそも、最初は「ジャンベを使う」か「AR技術を使ってやるか」っていう、意味のわからん二択やったんですよ。で、AR技術はあまりにも場所を選んでしまうし、モニターが無いとできないってなったんで、ジャンベに。
次に「ジャンベを使う」ってなったけど、自分達ではよう考えられんくて、ハクション中西さんっていうレジェンドみたいな芸人にアドバイスを頂きました。それで、既存の曲をジャンベで演奏するような音曲漫才をしてたんです。でも『M-1』とかなったときに著作権が関わってくるから合わんなってなって、次に、日常生活にある音をジャンベにしちゃうような作り方になっていって。で、最近ようやく、あんまり音に囚われんくてもできるようになりました。コイツ(ジンリキ)が書いたネタですけど、「動物はエスニックな楽器の音に惹かれる」みたいな……もうほんま、なんでもあり。

ジンリキ: むちゃくちゃです、最近は(笑)。

イオリ: 最近ようやくそうなってきました。なんか意識してることある?

ジンリキ: イオリが書いてたネタもめちゃくちゃ良いと思うんですけど、最近は“設定から変”にして、ジャンベを使ったとしても“ジャンベが設定に負ける”くらいのを作ってますね。ほんまにめちゃくちゃなことをしよう、っていう。

———では設定から入って、あとで音をつけていく感じでしょうか?

イオリ: そうですね、最近はそうかな。もともとはあくまでジャンベありきやったんですけど、最近に関しては変な設定が先にあって、たまたまジャンベがここにあった……みたいな。「おぉ、ちょっとこれ使ってやってみるか」みたいなネタが多い。

ジンリキ: 昔はちゃんと「ジャンベっていうのは……」みたいな導入をちゃんとやって、フリもちゃんとして……と真面目にやってたんですけどね。最近は、色々やってみてって感じです。

———ネタの中でジャンベの叩き方や音を調整することもあるのでしょうか? 「この叩き方よりこっちの方がウケそうだな」みたいな。

イオリ: あーいや、どうなんですかね(笑)。ジャンベ叩きながら喋らなあかんときとかは、さすがに音量調整します(笑)。でもそのレベル。

ジンリキ: 音楽家やな(笑)。

イオリ: ジャンベ叩くときって、もうジャンベだけっていうシーンが多いんです。だからもう、めちゃめちゃ叩いて。

———ジャンベはフリーなんですね(笑)。

イオリ: あぁそうです。ジャンベに関しては、ルールは無い。

ジンリキ: やかましいわ! 「ジャンベに関しては、ルールが無い」……今の、太字にしといてください(笑)。

イオリ: おい!太字にすんな!

ジンリキ: とんでもない名言出ました。

———小見出しにしますね。

イオリ: 「ジャンベに関してはルールが無い」、うわぁきしょいなぁ(笑)。

ジンリキ: 気持ちわるぅ。

準々の怖さをコンビで味わいたい。

———先日開催された『R-1グランプリ』では、イオリさんが準々決勝まで進出されましたね。『M-1』や『キングオブコント』も含めて、賞レースに対する想いを聞かせていただきたいです。

ジンリキ: 賞レース、めちゃくちゃ獲りたいですね。ほんまに。

イオリ: それも、太字にしといてほしい。

ジンリキ: ははは! なんでやねん、これはみんな言うやろ!

イオリ: いやこいつ、ほんまにね、先輩とかに「お笑いでどうなん? 食べていきたい?」みたいなこと聞かれたときに「楽しかったら良いっす」くらいしか言わなくて、あんまり表に出さなかったんですよ。

ジンリキ: 恥ずいし。

イオリ: 恥ずかしがってたんですけど、最近ようやく言うようになって、 

ジンリキ: 秘めてるものをね。

イオリ: そうそう、出すように

ジンリキ: ついにね。

イオリ: 語ったってください。

ジンリキ: なんやねん「語ったって」って嫌な言い方されて。いやでもほんま、変な漫才やってる分寄席っぽくなるんですけど、ちゃんとウケるところ作りたいし、『M-1』も今年三回戦以上はめっちゃ行きたい。ほんまに思ってますね。

イオリ: そうですね、三回戦やな。インディーズ界隈って特に、「二回戦止まり」と「三回戦まで行ってる」って、すごい大きいと思うんですよ。僕らはまだまだ「その他大勢」やなって自分達で思ってて。やっぱ実績をちゃんと出さないかんなという。あと、『キングオブコント』も準々はほんまに狙いたいなって思ってます。『R-1』、一人で準々行ったときに、めっちゃ怖かったんですよ。準々ってなったらもう、周りのメンツが変わるんで。

ジンリキ: まぁな。

イオリ: この感覚を、コンビで味わいたいんですよ。ジンリキにも味わってほしいっていう。だから『キングオブコント』も『M-1』も、ほんまに準々狙いたい。

ジンリキ: そうやな。準々行ってみたいな。

イオリ: ほんまに、『キングオブコント』も『M-1』も著作権が一番の敵かもしれないです。

ジンリキ: でも演奏は良いって聞くやん。

イオリ: え、でも去年『キングオブコント』でさぁ、QUEENの「We Will Rock You」やったやん? あれなぁ、一発KOやったらしいで。外国曲はNGって。

ジンリキ: あぁ、そうなんやな。

イオリ: 演奏もNG、外国曲は。紙にちゃんと書いてあった。

ジンリキ: 書いてたんや。

イオリ: それなのに俺ら気付かずに「We Will Rock You」去年やっちゃってるんすよ。だから去年は、大ウケしてたとしても行かんかったらしい。

ジンリキ: なるほど。めちゃくちゃスベったからな(笑)。

イオリ: スベった(笑)。だから今年は著作権問題とかも気にしながらネタ作ってますね。

———そうなんですね。戦略を練らなきゃですね。ルール読んで。

イオリ: 学びました。

———ジャンベにはルールがないけど……

イオリ: そうですそうです(笑)。

ジンリキ: めちゃめちゃあったやん(笑)!

イオリ: ジャンベにはルール無いけど『M-1』にはあった! っていう。

ジンリキ: 囚われてたぁ。

イオリ: 矛盾が生じてる。おもしろぉ。

ジンリキ: ありましたねぇ。

———コンビとして、ジャンベ・人力車・兼業など持っている要素が色々あると思うんですが、シンバルモンキーとして1番推していきたい特徴はなんですか?

ジンリキ: イオリの音楽技術ちゃうん? そこは。

イオリ: 嘘つけぇ。初めて聞いた。ちょっと目わろてたやんか。

ジンリキ: えぇ、目が(笑)?

イオリ: いやでも、「これを1番推したい」とかはほんまに無いですね。てか、逆にそういうの言うていただけるんなら僕らがもっと活かすべきなのかもしれないですけど。そんなに、人力車やってる・ジャンベ持ってる・兼業芸人とかをあんま特別視してないですね。結局面白くないと売れないし。ましてや事務所にも所属してないっていうので……でもそやな、しいて言えば「ジャンベを使った変わった漫才してる」っていう、ここちゃうか? やっぱり。

ジンリキ: まぁそやな。

イオリ: 「ジャンベを使おう」ってなったのは、WEST ANTSが思いっきりきっかけなんですよ。それまではめっちゃシンプルに、香川県出身なんで讃岐弁を使った漫才をしてたんですよ。香川漫才みたいにファンの人は言うてくれてたんですけど。でもそれじゃあ埋もれるというか、WEST ANTSのあのメンツの中では全然歯が立たないっていうのを『M-1統一模擬試験』っていう集結ライブでズタボロにやられて分かって。で、「うわーこのままじゃあかんぞ」と。それが『M-1』前月とかやったんで、急ピッチでなんか考えないかんってなったときに、僕がずっとジャンベやってたんで、ジャンベ使ってみるかみたいな。コントでもジャンベを使ってたんで、漫才で使う発想は全く無かったんですけど、やってみたらそこそこ手応えがあったっていう。ブルーウェーブさんの記事で、西澤さんが「シンバルモンキーは僕の中では無い」って言ってて。

※参照)【WEST ANTSストーリー-vol.7 ブルーウェーブ(前編)】「リアリティの中で、どんだけ変わったことができるか」

ジンリキ: ずっと言ってるからな。

イオリ: そうそう。あの人はリアリティで、人の面白さで笑わしたいから。それで言うたら、もうイロモノ中のイロモノなんですけど、それは僕らも自覚してて。そもそも、無所属のフリーっていうの自体、多分『M-1』からしたらイロモノやと思うんです。だったらもう、事務所に所属してない分むちゃくちゃやったろう、っていうのでジャンベ使って漫才したりしてるんで。質問の答えとしては、「変わったことしてる漫才で跳ねたい」っていうのがあります。

一夜限りでもスターになれたら

———お二人にとって「売れる」とはどういうことでしょうか。

イオリ: 深いですよね。みんなやっぱ、お金のこと言うと思うんです。たとえ知名度が無くても、劇場でお笑いで食べていけたら、これは「売れてる」じゃないか? みたいな。それももちろんあるんですけど、僕は逆に、知名度かなぁとも思ってて。なんやろ、一発屋とかでも僕は全然良くて。中学校のときに僕らのお笑いを見てくれた人全員が、「またあの人達お笑いやってんねや」ってなったら……

ジンリキ: はははは(笑)! スター気質やな。

イオリ: 一発で……一晩でもいいわ。全員にバーンッて知れたら、「売れたぁ!」って。その後もし一発屋芸人さんみたいなって、一生テレビで見れんくなっても、その一回がバーンッて跳ねたらもういいかな、ゴールかな。知名度一発バーンッなったら、その後も細々と食っていけるかもしれんし。 

ジンリキ: むちゃくちゃムズいもんな、それも。

イオリ: そうよ。

ジンリキ: 一発跳ねるのが、とにかくムズいからな。

イオリ: 一個のゴールとして、まずは一晩でもいいから俺らのことを中学校のときに見てた全員が「おぉ! またシンバルモンキーや!」ってなったら。

ジンリキ: そんな覚えてるか? 

イオリ: きっと覚えてるよ。

ジンリキ: ええわ! 覚えてないやろ絶対。絶対覚えてない。「誰や」なるやろ! 自分だけちゃうか?

イオリ: おお、なんちゅうこと言うねん!

ジンリキ: ははは(笑)!

———理想の芸人像について教えていただきたいです。

ジンリキ: 賞レースで結果残してネタ番組で呼ばれて、「面白いな」がやっぱり理想ですね。周りの芸人さんたちにおもんないって言われたくはないんで。まずはお客さんウケももちろんっすけど、芸人ウケ・袖ウケみたいなのも意識したいなっていうのがあります。

———変わった漫才をしているからこそ、芸人ウケも気になるのでしょうか。

イオリ: そうっすね。

ジンリキ: もし俺がシンバルモンキーを俯瞰で見たときに、「ジャンベなんやねん」ってなるけどな、若干。その、なんか……西澤さん的な感じにはなるよな。

イオリ: なるよなぁ。だから、そこを認めさせたい。飛び道具的な……、すゑひろがりずさん?

ジンリキ: あれは最強やな、確かに。

イオリ: ポンポンッて、あれみんななんも言わんやん。

ジンリキ: 『M-1』決勝行ってるからな。賞レース出てるから。

イオリ: やな、やっぱり。(理想の芸人像)で言ったら、すゑひろがりずさんです。

———賞レースで、みんなを認めさせる?

ジンリキ: そうっすね。賞レースです、もうほんとに。

———ありがとうございます。では、今後の目標を教えていただきたいです。

ジンリキ: 近々では、僕は『M-1』ですね。準々頑張りたいですね。

イオリ: フリーとか大阪で売れるみたいなんに、ちょっとでもシンバルモンキーも貢献したい。POLOTも含めて。で、自分たちもしっかり売れたい。

ジンリキ: これって、ボケたりとかしてないんですか? みんなここで。

イオリ: いやみんな真剣に……俺、ちゃんと読んだけど。

———ありがとうございます。

ジンリキ: ボニーさんとか、俺読んだとき結構ちょけてた。

※参照)【WEST ANTS ストーリー -vol.5 ボニーボニー-(後編)】「面白いもの見せてやっから、ワクワクしてついて来いよ!」ステゴロ漫才で痺れさす

イオリ: ボニーさんはめっちゃちょけてた。俺らはそやな、もっとジャンベの技術を上げたい。

ジンリキ: ええわ、ほんで高いやろジャンベの技術。あんま分からんと思うんすけど、ジャンベの技術多分エグいっすよ。

イオリ: アフリカで単独ライブしたいです。ジャンベで。

ジンリキ: なにしてんねん! アフリカの方がウケるかもしれんけどな(笑)。

取材後、イオリからジンリキへ誕生日プレゼントが渡された

WEST ANTSは精神と時の部屋

———WEST ANTSに入った経緯について教えてください。

イオリ: 僕らって他のコンビと違って、ちょっと特殊なんすよ。実はPOLOTが関わってるんですけど、加藤さんが単独ライブをするってなったときに動画の編集を手伝ってくれる人を募集してて。(POLOTとして)「僕ら手伝いますよ」って言って、加藤さんと貸会議室で合流したんです。だからそもそも、WEST ANTSの話で会ったわけではないんです。で、動画編集を始めたときに、作業しながら雑談するじゃないですか。その雑談で、「POLOTさんってどんな想いでやってるんですか?」って聞かれて。僕らの想いを言ったら、「え! ちょっと、僕が考えてることも言っていいですか?」と。そこではじめてWEST ANTSの話を聞きました。で、加藤さんは生活賭けてるからレベル違いますけど、「ちょっと通ずるものありますよね」と。それで、「WEST ANTSの広報活動とか手伝わせてくださいよ」ってなったときに、「広報とか裏方だけやったら変な感じになりません? シンバルモンキーも一緒にやりましょうよ」みたいなのが始まりなんです。だからほんま、僕らは実は裏方がきっかけみたいな。
加藤さんから話を聞いたとき、POLOTでやろうとしてたこととすごく通ずるものがあって、そこに芸人としてもちゃんと関われるっていうのはめちゃめちゃ嬉しかった。で、ジンリキには加藤さんとの話が終わったあとに、「おい、WEST ANTSっていうグループがあってな! それに入れてくれるようになったぞ!」、「へ~」って。

※参照)【WEST ANTS ストーリー -vol.1 加藤 進之介-】大阪を「芸人が飯を食える場所」にしたい

ジンリキ: 何の話か分からんから(笑)。

イオリ: っていう感じでしたね。

ジンリキ: 僕ら、大穴馬券なんで。

イオリ: そうですね、他のコンビとは、実は最初の入りが違うんです。

———芸歴も、結構差があるんですか?

イオリ: 一番若いですね、チームクボさんより若い。

ジンリキ: だってあれやもんな、WEST ANTS入った時点では、1年くらいしかやってない。

イオリ: そうっすね、でももっと言ったら半年くらいです。初舞台が(2020年)7月11日で、加藤さんを手伝い出したのが(2021年)3月か2月末くらいやから。だから「WEST ANTS組みました」ってSNSで告知がされた時点では、初舞台から1年経ってないっていう感じっすね。

———誘われたときはすぐ「入ります!」と?

イオリ: いやむしろ、「良いんですか?」っていう。だからこそ、どこのコンビよりもほんまに急成長せなあかんっていうのがずっとあって。だから去年の4月から、東京遠征だなんだっていう1年間はもう、めっちゃしんどかったっすね。

———しんどさが勝つんですね。

イオリ: いやまぁ、楽しかったですし、ほんまに貴重な経験です。ほんまにポジティブな感情しかないですけど、めっちゃ大変でした。芸風も、芸名も、衣装も、全部変わりましたから(笑)。

ジンリキ: ジンリキと、イオリ・ジャンバックでね、やらせてもらってます。

イオリ: もともとは、原田タカヒロとイオリ(笑)。

ジンリキ: 普通の名前でやってた。全部、先輩の飲み会のノリで、二人とも名前付けられました(笑)。

イオリ: ハノーバーの、良元カルビさんの(笑)。

ジンリキ: 「おー、お前ら飲み会するから来いやぁ!」みたいな。で、東京芸人さんとかもいるときに、自己紹介して「こいつになんか付けたってくださいよ!」みたいな感じで。「じゃあお前、ジンリキやな」みたいな……そのノリを食らってイオリに報告して。で、後日また東京芸人と飲む機会があって、また全く同じノリが起きて、ゾッとして「うわ、あかんあかんあかん!」と思って喫煙所逃げてタバコ吸ってたら、イオリが「イオリ・ジャンバックなったわ」って来て。ほら見ぃ、ほら見ぃって。あのノリあかんで、良元さんのアレ(笑)。真ん中連れて行かれてなぁ。

イオリ: そうそうそう。逃げれんすからね。

ジンリキ: まぁありがたいです。カルビさんはそうやって若手の面倒めちゃくちゃ見てくれるんで。

イオリ: 今となっては。はい。ほんまに気に入ってるというか、大事にしていこうっていう名前です。

———ユニットで1年間活動してみて、たくさんの変化があったと思いますが、1番印象に残ってることはなんですか?

ジンリキ: 僕は一発目の東京遠征ですかね。初めての東京やし、芸歴も無い中で、あんだけおっきい箱でやるのも初めてくらいやって。一応認めてもらった感があって、まぁあったかい客さんやったんすけど。そこである程度、「あぁ、こんな感じで笑ってくれんねやぁ」みたいに思えて、それが一番印象に残ってますかね。

イオリ: 確かになぁ。

ジンリキ: K-PROさんでは、めちゃくちゃ良い経験させてもらった。

イオリ: 確かに、初めて報われた感があったかもしれないです。『M-1統一模擬試験』でズタボロにやられて、WEST ANTSのメンバーに自分たちはどう考えても届いてないっていう意識があったんで、まずはスタートラインに一緒に立ちたいっていう。先輩たち優しかったんで、「そんなことないよ」って言ってくれてたんですけど、「いやいや」って思って、グッと芸風も変えて。なんとか『M-1』で二回戦行けたりなんやしてっていう中での東京遠征で、ちゃんと笑っていただいて。ほんまに、一個答えを見付けたというか。しかも一回目の東京遠征終わって次の日が、『関西演芸しゃべくり話芸大賞』っていう大会やったんですけど、そこで同じネタやって奨励賞が取れたんですよ。ほんまにWEST ANTSに成長させてもらったなって。

イオリ: そうそう。ドラゴンボールの「精神と時の部屋」って分かる?

ジンリキ: え?

イオリ: WEST ANTSは、僕のイメージでは「精神と時の部屋」に入ったみたいな感じなんです。「時間」っていう感覚がなくて、そこで成長できんねん。すごい短期間で成長できる場所。言うたら、ほんまにWEST ANTSは精神と時の部屋でした。(ブルーウェーブ・すみかわさんの手の動き)

ジンリキ: やめろその、おもんない動き!

イオリ: おいなんてこと言うねん、大先輩の動きや!

———では、WEST ANTSの一員としての目標を教えてください。

イオリ: 僕はそもそも「動画とか作ってそっちで貢献する」みたいなんをずっと言ってて。そしたら先輩たちが「いやお前は芸人としてちゃんと面白いんやから、そんな裏方みたいな意識もう忘れてええよ」みたいに言ってくれて。これめっちゃ嬉しかったんです。

ジンリキ: 花崎さん?

イオリ: いやこれ、まさかのいわしさん。

ジンリキ: あぁいわしさん!

イオリ: いわしさん本人が覚えてるか分からんすけど。

ジンリキ: 忘れてたら嫌やな。

イオリ: いわしさん、「そんなん言うてないよ、裏方として(貢献して)」……。

ジンリキ: めちゃくちゃ怖い(笑)。

イオリ: シンバルモンキーは、最初裏方として入っちゃってるから、「裏方としてなんとか貢献していきたい」とかずっと言ってたら「いやぁもうそんなんええから! おもろいから!」って言ってくれて。だから今後、僕らが誰よりも先に賞レースとかで結果出して、「WEST ANTSこんなおもろいやつおんねや」っていう……WEST ANTSが世に出るきっかけになれたら。ちゃんとお笑いとして、芸人として(きっかけに)なれたらなっていうのはめっちゃ思いますね。うわごめん、真面目に言ってしまった。ボケて。

ジンリキ: 活躍して、ちょっと大きめの人力車買いたいですね。

イオリ: WEST ANTSの20人が全員乗れる、人力車?

ジンリキ: 一番でかい人力車(笑)。

イオリ: まじで、それ使ったらテレビ出れる。ナニコレ珍百景とか出れるぞ(笑)。デカ人力車。

ジンリキ: 俺だけ(前で引いて)刃牙みたいに。

———では最後に記事を読んでくださる方にメッセージをお願いします。

ジンリキ: 僕らの存在を知っていただけるように頑張るので、みなさんお願いします。

イオリ: シンバルモンキーがっていうか、僕がかもしれないですけど、WEST ANTSめっちゃ好きなんですよ。もしかしたらメンバーの誰よりも好きかもしれない。これ甘いかもしれないんすけど、シンバルモンキーがたとえどんなに売れても、僕はWEST ANTSを推して行きたいなっていうのがあって……

ジンリキ: めちゃくちゃアツいなぁ。サンサーラだけかけてほしい(笑)。

イオリ: シンバルモンキーもですけど、WEST ANTSもこれからどんどんおもろいことしていくんで、これからも応援お願いします。

【前編を読む】「変なふたり」だから最強!中学で出会った同級生コンビ

取材(文・写真):藤田うな
編集:堀越 愛


<シンバルモンキー|プロフィール>
フリー。ユニット『WEST ANTS』に所属。

左:イオリ・ジャンバック
右:ジンリキ

★プロフィール:https://kumanbachi.polot.me/geininzukan01/
★Twitter:@Cymbals_monkey_
★Instagram:cymbals.monkey

PERFORMERS

  • イオリ・ジャンバック/シンバルモンキー

    1993年 5月 30日生まれ
    香川県高松市出身

    Twitter:@iori_cymbals

  • ジンリキ/シンバルモンキー

    1994年 3月 23日生まれ
    香川県高松市出身

    Twitter:@Cymbal_zinriki

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