2022.12.24

「真剣に僕を愛してくれ！」彼女募集は生半可な気持ちでやってない。目標に向かって常軌を逸した行動力を見せる、今大注目の若手ピン芸人〈GEININ DATABASE file.7 奈良原〉※奈良原の彼女になりたい人必見※

編集部が「次のスター」として注目するお笑い芸人に話を聞く新連載『GEININ DATABASE』。

芸歴や事務所に制限を設けず、今注目したい芸人さんを取り上げる新企画です。お笑い専門メディアを掲げるWLUCK PARKだからこそ、いち早く次のスターに注目したいと考えました。

第７回に登場していただくのは、人力舎所属のピン芸人・奈良原さん。

”彼女がほしい”という目標のもと、ただならぬ行動力でお笑いファンのみならずさまざまな方面から密かに注目を集めている奈良原さんに、彼女獲得までの熱意はもちろん、ひとりのピン芸人としての展望なども詳しく伺いました！

芸人を始めたきっかけは、「思いのほかやれる」

―――奈良原さんが芸人を目指したきっかけを教えてください。

奈良原：　お笑いはずっと好きで、ネタ番組も観たりしていました。でも“芸人なんてなるような仕事じゃない”と思ってたんですよ。僕、中学高校のときは騎手になりたくて。ただ身長が高いので、体格的に騎手になるのが難しかったんです。だから厩務員(※ 厩舎に所属し、調教師の指示の元で担当する競走馬の身の回りの世話を行う職業)になろうと思ったんですけど、厩務員の養成学校の試験に落ちちゃって。はぁ……って思ってたちょうど高校2、3年生のときに同級生と一緒にハイスクール漫才や文化祭で漫才をやったり、下北沢のフリーライブとかに出たんです。そのときに“あれ、思いのほかやれるな”って思ったのがきっかけですかね。

―――ハイスクール漫才のお話もありましたが、コンビで活動するという気持ちはありましたか？

奈良原：　ハイスクール漫才に出てた子と一緒にやってみたいなっていう気持ちはあったんですけど、そいつの人生をを引っ張っていくような覚悟はなくて。人力舎に入ったら誰か見つかるだろうって思ってたんですけど、気付いたらピンでもできるなぁって思っていながら今に至ります。

―――なぜJCA(プロダクション人力舎の養成所)を選ばれたのですか？

奈良原：　キングオブコメディさんが好きで。『キングオブコント』決勝の教習所のネタとかもそうですし、オンバトのネタとかも好きで。DVDも全部持っています。人力舎の先輩のネタが好きだったっていうのがありますね。

―――意識されている芸人さんや、”強いな”と感じる芸人さんはいらっしゃいますか？

奈良原：　僕は常々目立っていてキラキラした人たちばかりに注目が集まっているのはなんかどうだろうなって思ってて。もっとほかにも……それこそ人力舎でいうと新ネタを毎月かけてる『新ネタどうですか？』ってライブがあるんですけど、そこに出てらっしゃる事務所の先輩もめちゃくちゃ面白いですし。そういう人たちに注目が集まってないのが本当に悔しいんですよ。

―――具体的に面白いと思う先輩芸人を教えていただけますか？

奈良原：　井上が来たぞさん、永田敬介さん……。もちろんもっといっぱいいますけど、この先僕が何回戦っても勝てなさそうなくらい面白い先輩です。あとハニカムズさんっていうコンビも。もともとピン芸人だったおふたりがコンビを組んでやっていて、面白いピン芸人が組むとこんなに面白くなるんだって思いました。あと特に僕がここ最近一番びっくりしたネタだと、バイオニさんの影絵を使うネタがめちゃくちゃ面白くて。たくさん挙げちゃったんですが、みんなに取り上げられてるところだけが面白いじゃねえんだぞって言うのは、全員に伝わってほしいですね。

―――奈良原さんが”この人に褒められたい“と思う芸人さんはいらっしゃいます？

奈良原：　ちょっと質問の答えとは違うかもしれないんですけど、前に東京03の飯塚さんにネタ見せをする機会があって、そのときめちゃくちゃ褒めていただいたんですよ。今年の頭にはアンタッチャブルの柴田さんにも面白いって言っていただいて。このおふたりに褒めていただけたらもう“ゴール”じゃないですけど、なんかもういいのかなって思っちゃうくらいうれしくて、コントやっててよかったなって思いましたね。

―――たとえば1年後までにこれやってみたい！のようなお仕事はありますか？

奈良原：　……バチェラーとかですかね。恋愛リアリティーショーに出てみたいなってのもありますし。でもそうですね……やっぱネタ番組出たいですね！　ネタ番組出たらなんかモテそうな気がするんで。……彼女が、欲しいんです。

―――やはり彼女の存在は大きく関わってくるんですね。

奈良原：　そうですね。やっぱり悔しいですよ、彼女がいたらネタがスベって帰っても「いや私は面白いと思ってるからね」っていってくれるんですからね……悔しいっすよね。

並々ならぬ行動力の根源とは？

―――奈良原さんが彼女募集をする行動力のきっかけや理由はあるんですか？　

奈良原：　めちゃくちゃ好きだった女の子に「好きです！　付き合ってください」って言ったら即答で「無理！」って言われたことがあります。そんなことある！？って思いました（笑）。２万円の時計をあげたらその直後にブロックされたこともありますし……もう彼女募集するしかないなと思って、今やってます。

―――彼女を作るために様々な施策を行っていらっしゃいますが、総額いくらくらい費やされたんですか？

奈良原：　普通に３桁……は超えてます。モテるために彼女募集の曲を作ったり写真集を作ったりとかしてるんですけど、スタジオ代も自分でお金払って全部プロに頼んでやってもらっているので。競馬のレース名で彼女募集したこともあるんですけど（芸人奈良原の彼女募集記念）それも全部自腹です。旅費とか現地に行くお金もかかりますしね。

―――クオリティをしっかり担保しているんですね。

奈良原：　最近だとYouTubeとか、あとは電車の中吊り広告で彼女募集の広告を出したんですけど、あれも印刷費用がかかりましたし……。そういえばデザインを後輩の岡本匠って奴にお願いして作ってもらったんですけど、今考えたら彼女ができなかったのはデザインのせいだと思うんですよね。あれも十数万とかしたのに……。TikTokでも彼女を募集したんですけど、今のところなんもないですし。

―――すごいいろんなところでチャレンジをしてますね。

奈良原：　お金は結構かかってます。まぁ全部借りてるんですけどね。でも全然取り返せると思ってて。売れるか、大金持ちの彼女と付き合えば返せるじゃないですか。

―――ギャンブラーの発想ですね。

奈良原：　いやいや！　現状可能性がふたつもあるじゃないですか！　芸人で返せるかもしれないし、大金持ちの彼女が返してくれるかもしれない。どっちかだけだったらちょっとあれかもしんないですけど。だから今の借金ってないんですよ。ほんとに。

―――そういう活動の中で“彼女にしてください！”みたいなDMが来たりとかはしないんですか？

奈良原：　あるんですけど……冷やかしっぽいやつとか、真剣に僕を愛してないだろっていうDMばっかりくるんですよ。怪しいエッチなアカウントとか裏アカみたいなアカウントとか。あとは「奈良原さんのこと好きです！」だけ送って来られることもあって。そういうのって……誠意がないじゃないですか！　僕は人生をかけて彼女を募集してるのに、生半可な気持ちで来られたくないですよね。

―――どんなDMならいいのでしょうか……？

奈良原：　それは自身で考えてほしいですね。

―――奈良原さん的にはお試しで付き合ってみることはないのですか？

奈良原：　ないですね。そんな体験版みたいな失礼なことはできません。

僕は彼女が欲しいだけなのに

―――奈良原さんの彼女募集アクションはいろいろなところで注目されていると思うのですが。

奈良原：　なんか変なDMもくるんですよ。「奈良原さん、うちで広告出しませんか」とか。それって僕に彼女ができないと思ってるから言ってくるわけで、馬鹿にしてるわけじゃないですか。例えば今日街中歩いてたら逆ナンされる可能性だってあるかもしれないのに！　それを否定して「うちで広告出しませんか」ってすごい失礼だと思うんすよね、別に広告を出したくてやってるわけじゃなくて、彼女ほしくてやってるんですよ僕は！　マッチングアプリとかでは正直出会えません！　で、合コンも誘われません！　芸能界のステキなパーティにも呼ばれません！　じゃあどうすればいいって考えた結果、じゃあ大々的に宣伝するしかないからやってるわけで、広告がしたいわけじゃないのに……。広告代理店勤務の人からすごいフォローされたりとか。このやり方は素晴らしい！ってマーケティング関係の意識高い人からリツイートされたりとか。「奈良原さんのやり方は今後も勉強になる！　みんなで学ぼう！」みたいな、僕の知らないところで教材になっていたり(笑)。全部そんなつもりないのに……腹立ちますよねほんとに、そんなんばっかりですよ。

―――借金のお金はどこから捻出されてらっしゃるんですか？

奈良原：　えーっと、まぁ消費者金融さんとか。あとは親とか友達、同級生とか、友達の親とかに借りてますね。ただあんまりいうとその……変な話なんですけど僕、彼女がいたことにしてる時期が結構多いんですよ。デート代って嘘をついてお金を借りてた時期もあって。現にこないだそれで怒られましたし。なんなら今も彼女いることにしたいくらいなんですけど。

モテたい、でも同じくらいネタでウケたい

―――奈良原さんはモテたい気持ちとネタでウケたい気持ち、どちらが強いですか？

奈良原：　どっちもです。モテたいですけどやっぱりウケたいも結構あって。これは本当なんですけど、お笑いのファンの方はまったくそういう目でみてないんですよ。彼女が欲しいっていうのは六本木ヒルズの上の方とかに住んでる、ワイングラス片手に人力舎の『バカ爆走』の配信見てるかもしれない人に向けて言っています。

―――ファンに手を出したいという気持ちはないんですね？

奈良原：　いや、出したいっすよ(笑)。出したいっすけど、僕がそれこそ劇場に来てるお客さんと付き合ったり手出したりしたら、いよいよ笑ってもらえなくなるじゃないですか。ウケないと生きる楽しみがなくなっちゃう。

―――「生きる楽しみ」ですか？

奈良原：　僕は彼女・コント・ギャンブルっていう3つの生きがいで今なんとか生きてるんですよ。今のところ「彼女」がガッツリ欠けてて、頑張ってギャンブルとコントでなんとか保ってる。もし僕がファンの人と付き合ったらコントが消えるじゃないですか、ウケなくなっちゃうんで。ギャンブルだけで僕の人生を維持するのは無理なんで、精神衛生のためにネタはウケたいですね。……いやめちゃくちゃモテたいですよ？　芸能人の方がファンって言ってくれたら全然付き合いますし。だからファンと付き合わないとは断言しないですけど。

―――芸人になる前夜の自分に一言声をかけるとしたら、なんと伝えたいですか？

奈良原：　芸人じゃなくて、ホストの方がいいんじゃないかって言いたいですね。

―――どういうことでしょうか？

奈良原：　芸人はそんなにモテませんから。18歳のときに、高校卒業してJCAじゃなくて歌舞伎町のホストになってたらモテたんじゃないかなっていうのは今でもやっぱり思いますし、この前占い師さん4、5人から同時に占ってもらう機会があったんですけど、その時も全員から芸人やめた方がいいんじゃないかって言われてますからね。

―――最後に読者に伝えたいことはありますか？

奈良原：　彼女の話ばっかりになっちゃいましたけど、人力舎の芸人はみんな面白いんでぜひ事務所ライブに来てほしいですね。名前を知られてない人でも面白い人はたくさんいるので。

―――人力舎所属の芸人さんって人力舎愛があるイメージが強いです。

奈良原：　そうですかねぇ。僕、彼女ができないのは事務所のせいだと思ってて。売れないのは自分のせいだと思ってるんですけど。もうちょっと恋愛バラエティの仕事入れてもらったり、モテそうな宣材写真に加工するとか……。

ーーーすみませんまた彼女の話に戻ってしまって。

奈良原：　でも僕がデビューしたてのときに、永田敬介さんに事務所のフリースペースで愚痴混じりの相談を軽く話していたんですよ。そしたら、永田さんがそこで「本当に売れる人は事務所関係なく売れるからね」って言ったのが今もすごい残ってて。だからなんか、売れないのを人のせいにするのはやめようっていうのは、それは強く思いますね。

文：渡辺陽　撮影：堀越愛　編集：フクダ