「これも、あれもできない」 ― そこから見つけた、“ネタを極める”という目標【ストレッチーズ インタビュー(前編)】

高校時代の同級生が大学でコンビを組み、今年で結成7年目のストレッチーズ。東京のライブシーンでは欠かせない存在のお二人が、今胸に秘めている想いとは?インタビューは前編・後編の2部作。前編ではコンビ結成までの軌跡や長年お二人で楽しんでいるあるゲーム、そして今後のアツい目標など幅広く語っていただきました。

ストレッチーズ結成までに出会った、2冊の本

― 出会った当時から、お二人の笑いに対する温度感は同じでしたか?

高木貫太(以下、高木): 最初はお笑いっていう感覚ではなくて、ギャグ漫画がお互い好きだったんですよ。福島は『すごいよ!!マサルさん』っていう漫画が好きで。食べてるんだっけ?

福島敏貴(以下、福島): 食べてる。

高木: 食べれるぐらい好きっていうバイブルで、「マサルさんになりたい」っていう感じだったんですよ。僕も初めて自分のお金で集めた漫画が『すごいよ!!マサルさん』だったので、仲良くなって。二人とも高校のときから目立ちたがり屋だったので、マサルさん的な発想でギャグ漫画みたいなことをふざけてやってましたね。圧倒的に強かったんですけど、福島が(笑)。僕は当時からギャグ漫画好きとして面白いなって思ってました。

― そうなんですね。その後『大学生M-1グランプリ2012』で優勝されてから、プロになるまではスムーズでしたか?

高木: いや、そんなこともなかったですね。僕は就職しようと思ってました。福島が誘ってくれてたんですけど、二人で漫才をほぼやったことなかったので踏み切れなくて。そこで、大学3年生の就職活動ギリギリのタイミングで賞レースがあったので、決勝8組に残れなかったら就職しようと思って出たんですよ。そしたら、8組に選ばれた上に運よく優勝できたので、「これは前向きに考えよう」と。

―福島さんは高木さんと漫才をされて、「今後も続けたいな」という気持ちは高まりましたか?

福島: そうですね……最後の決め手は、自己啓発本でした。

高木:(笑)。

福島: 『手紙屋』っていう喜多川泰さんの本を読んで、お笑い芸人になろうと決めて。で、高木がまだ悩んでたときに「これを読めば、同じ気持ちでやってくれるんじゃないか」って思って貸したんですよ。そしたら、半年後にボロボロになって返ってきて……。1ページも読んでないっていう(笑)。

高木: 一応ずーっと入れてたんですよ、鞄の中に(笑)。「福島が言ってるし、いい本なんだろう」っていう気持ちだけでずっと鞄の中に入れてたんですけど、どんどんボロボロになっていくだけで。

福島: 汚かった……。

高木: 申し訳なかったわ、お前が進路を決めた本をボロボロで返して。僕はもう、『手紙屋』ではなく単純に決めました、一通も手紙を読まずに(笑)。

日常のゲームが人付き合いを支える要に……!?

― お二人は普段も会話は多いですか?

高木: 「二度と会わないであろう人の名前を覚えてクイズを出し合う」ってゲームはよくしてますね。こういう仕事をしてなくても、マジで1回しか会わない人とかいるじゃないですか。そういう人の名前をできるだけ覚えておいてクイズを出すっていうのが、すごい楽しいんですよ。たとえば「〇〇の営業に行ったときに案内してくれた人の名前覚えてる?」みたいな、3年前に1回だけ行った営業の話とかを出し合うのは共通して遊べるので、できるだけその問題のストックは作ってますね。

福島: 本当に一生会わないだろうなっていう、奇跡みたいな人だから盛り上がる。

高木: ただこれ、本当に思い出せないんですよ。たまに福島がネタ合わせ中にクイズ出してくると、気になって次に進まなくなって……マジで1時間ネタ合わせが止まるっていう。だから単純に芸事に支障が出てるってレベルなんですけど(笑)。

福島: あとは移動中の電車の中でやるんですけど、一度高木だけ正解が分かってて僕が出てないって状況があって、これは悔しいと。もちろん答えは聞きたくないし、僕も自分で出したかったんですけど……このゲーム、本当に体力いるんですよ(笑)。

高木: これ本当に体力いるんすよ、マジで(笑)!

福島: もうゼェゼェ言うくらい、ずっと考え込んで。で、電車の乗り換えのタイミングで高木がチャージ足りないって言って、待ってる間にひとりで考えてたらその場でうずくまっちゃって。別に気持ち悪いとかじゃなくて集中して考える人みたいなポーズをしてたら、駅員さんに「大丈夫ですか?」って心配されてしまって。

高木: 福島はただ単に、僕らの高1のときの校長先生の名前を思い出してただけなんです(笑)。僕もライブ前に、昔1回だけライブで一緒になったコンビ名を聞かれて思い出せなくて、そのままネタをやったんですよ。その後にコーナー企画のMCだったんで暗転中に先に出たんですけど、「企画のコーナー!」って言って明転した瞬間にバッと思い出して、つい「あぁっ!!」って言っちゃいました(笑)。

福島:(笑)。

高木: 観てる人からしたら意味分かんないっすよね(笑)。だから普通に、よくないゲームです。

― でもスタッフさんの名前でしたら、今後お仕事していく中で役立ちそうですね。

福島: そういうのは今後あるかもしれないですね。

高木: あぁ、そうしよう!何かふざけてるみたいだけど、芸人として人付き合いって大事なんで、「どんな人の名前でもちゃんと覚える」ってことに繋がります(笑)。

まずは、「ネタで結果を出す」ということから

― 今後の方向性をお二人で話し合うこともありますか?

高木: ありますね。結構、M-1しか考えてないかもしれないです。M-1だけ頑張りたくてこの世界に入ってきた訳でも別になかったんですけど、特技とかもないし、特徴のあるキャラクターとかでも全然ないし……みたいなことを削ぎ落としていったら、可能性は低いけどM-1しかないかもっていう気持ちになったんです。才能あるかは分からないけど、とりあえずM-1は頑張ろうって気持ちでやってますね。

福島: 最初に受け入れてくれたのがM-1だったかもしれないです。同期の8.6秒バズーカーとかがリズムネタでバーンといったり、宮下草薙が『おもしろ荘』とか色んな番組に引っかかっていく中で、僕らも同じようにオーディションを受けてるけどどの番組にも引っかからない。でもM-1で初めて、同世代の中では3回戦・準々決勝までちょっと早めにいけたのかなっていう。もちろん決勝にはいかなきゃいけないですけど。初めてM-1側からきてくれたので、「これだ!」って思ってやってます。……でも何だかんだツンデレ状態で、M-1も。最初はすごい好意を示してくれたのに、最近あんまり興味ない感じになってきて。こっからまた好きにさせなきゃいけないなって思ってます。

高木: 今、倦怠期っすね。

福島: 早くマンネリを打破しないと。このままだと、結婚できないってなっちゃう。

高木: 浮気とかはしてないんですけどねぇ。

福島: そうですね。

― カップルのような(笑)。

高木: だから今、テレビでどう活躍していくかは割とうっすらしか考えてなくて。ネタを頑張ろうっていう感じです。

― 今テレビやSNSで活躍する芸人さんも多いと思うんですけど、やっぱり漫才で一番になるということが最大の目標ですか?

高木: それこそ「これもダメだ、あれもできない」っていうものの中にSNSもあって。やってみようとしたことも、もちろんあったんですけど、本当にことごとく上手くいかなくて……「もっとやれよ」って言われたらそれまでなんですけど。YouTubeも企画をやれたら楽しそうかなとは思いつつ、中途半端にはやりたくないし。あと、YouTubeを頑張ってYouTube芸人としてハネてからネタに力を注ぐっていう感じのビジョンはあまり見えてなくて。どっちかっていうとネタで結果を出して、世の中に知られてからYouTubeとかで企画をやっていきたいですね。

<ストレッチーズ|プロフィール>
2014年4月1日結成。太田プロ所属。

左:福島 敏貴(ふくしま としき)
1992年3月19日生まれ。O型。180cm/73kg。埼玉県出身。慶應義塾大学総合政策学部卒。趣味はスポールブール。特技は全国のドッジボールチーム名を50音からすぐ言えること。

右:高木 貫太(たかぎ かんた)
1991年7月24日生まれ。O型。174cm/60kg。埼玉県出身。慶應義塾大学理工学部卒。趣味はバスケットボール、麻雀、ぷよぷよ。特技は数学(数学検定準1級)、トランプ大富豪。

★公式サイト:https://www.ohtapro.co.jp/talent/stretchees.html
★公式YouTubeはコチラ

インタビュー:カラカマ、撮影:秦 法爾、編集:堀越 愛

PERFORMERS

  • ストレッチーズ/福島 敏貴

    太田プロダクション所属

    Twitter:@fukushimatoshi

  • ストレッチーズ/高木 貫太

    太田プロダクション所属

    Twitter:@komekami2010

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