【これから編】R-1アナザーストーリー「日本一への夢が潰えた日」。5大会連続決勝進出、ルシファー吉岡のこれまでとこれから。

2020年11月25日。2002年から続いてきた「R-1ぐらんぷり」が、2021年より「R-1グランプリ」へと生まれ変わることが発表されました。同時に参加規定も「芸歴10年以内」に変更。これにより、ピン芸人日本一を目指してしのぎを削ってきた多くの猛者たちが参加資格を失うことになりました。2016年より5大会連続で決勝に進出し続けてきたルシファー吉岡さんもそのひとり。毎年、フジテレビのゴールデンタイムに下ネタで挑み続けてきたルシファー吉岡さんに、これまでとこれからについて伺いました。

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日本一への夢が、突如として潰えた日

ー試行錯誤を重ねながら毎年挑んでこられた『R-1ぐらんぷり』ですが、次回2021年大会からエントリー規定が変わり芸歴10年以内の芸人しか出場できなくなりました。ご自身としては、YouTubeチャンネルを開設されたり、デリバリーライブを開催されるなど、次の大会に向けてさまざまなチャレンジをされていた中での突然のアナウンスだったと思います。報せを聞かれた瞬間は、どんな心境だったんですか?

報せを聞いたときは、「まいったなー」って声が自然と出ましたね。そしてどうしようかなと思って、そのまましばらくぼーっとしてました。目標がなくなったんで、無念ですよね。今まで優勝を目指して頑張ってきたんで、それがもう叶うことがなくなって、まずは無念な気持ちでいっぱいでした。R-1で優勝者が決まったあとに紙吹雪が舞って、その後ろで「おめでとう!」ってやるじゃないですか。あれ、ほんとに悲しいんですよ。みんなニコニコしなきゃいけないぶん、余計に悲しいというか。あれを5回も味わったんだから、次こそはオレだろみたいな思いもあったんですけどね。

汚い話で言うと、僕の人生の中であんなに手が届きそうな500万円はなかったので、それを逃して惜しいというもありました(笑)。あとはほんと0.1割くらいなんですけど、ほっとした気持ちもありました。2021年の大会に出られたとしても、準決勝で敗退するといろいろ言われるじゃないですか。そういうプレッシャーも少なからずあったんで。

ー制限がない限り、ずっとそのプレッシャーを背負い続けなければならないんですよね。

優勝するまではね。優勝して、それを終わらせたいという気持ちもありました。一方で、何回も決勝に出続けてたら面白いなってのもありました。「今年で13回目の決勝です!今年は優勝か!?」みたいな。それはそれで面白いので、そこを目指すのもありかなと思ってたんですけど、それも叶わぬ夢になっちゃったんで。

ー当時は『R-1ぐらんぷり』で優勝することが目標だったんですか?それとも優勝した先に目標があって、そのためのステップとして考えておられたんですか?

最初はステップとして考えていました。でも、途中から変わってきた感じですかね。R-1の決勝に出ると、優勝しなくても、テレビ出演の機会は何度かいただけたりするんです。毎回決勝に行っては、いくつか深夜番組に呼んでいただいてネタをやるんですけど、あまり結果を出せなくて。それからですかね、優勝しても僕の実力じゃステップにならないかもしれないって思うようになったんです。そこからはシンプルに、「ここまでやってきたんだから日本一という称号がほしい」という気持ちで取り組むようになりましたね。

ー何回も決勝に進出されてると、心境も変わったりするんですね。

そうですね。正直言うと負けたときの悔しさも、4回目5回目くらいになると少し薄らいできたりします。慣れてくるんでしょうね。4回目の決勝の時なんて、リハから本番までの間に大江戸温泉(大江戸温泉物語)に行ってひとっ風呂浴びてきましたから(笑)。時間の使い方もうまくなるというか。大江戸温泉に行ったのは願掛けの意味もあるんですけどね。実はそこでピン芸人のTAIGAさんがアルバイトをされていて、「やまもとまさみさんとじゅんいちダビッドソンさんが優勝されたときもここにきたんだよ」って仰ってたんです。それで行ってみたら、屋台みたいなところでTAIGAさんが普通に働いてて「ふたりも来たんだから絶対いけるよ!」って。

これまでもこれからもピン芸人として生きていく

ールシファー吉岡さんと同じく2016年大会から5年連続でR-1の決勝に進出されていたおいでやす小田さんが、同じくR-1決勝進出経験のあるこがけんさんとピン芸人同士でコンビを組んでM-1決勝に進出されました。今回の規定変更によりR-1に出場できなくなった芸人さんにとっては、新たな目標のひとつになるのではないかと思います。そのあたりも含め、ご自身としては今後についてどのようにお考えですか?

M-1に出ようとは、今のところ考えていません。小田さんはゆりやん(ゆりやんレトリィバァ)と組んで出場したり、けっこう前から漫才に取り組んでこられてますからね。こがけんさんとも、二人でずっと真剣に取り組まれた上での結果ですから。そんなに甘いもんじゃないですからね。ただ、2021年のM-1はピン芸人同士のコンビが確実に増えると思いますよ。今回のおいでやすこがさんの結果を受けて、ウエストランドの井口さんも「怖いなあ」って言ってました。逆のパターンは散々R-1でやられてきたので、今こそピン芸人の仕返しの時かもしれないですね。

ー個人的な夢や目標はありますか?

目標にしてたわけではないのですが、先日ひょんなことからマンガの原作オファーをスクエア・エニックスさんからいただきまして。『女子高生はおはようって言う』というタイトルのマンガが、『月刊少年ガンガン』で2021年1月号から始まることになりました。ちなみに2019年のR-1で披露した男女共学のネタが題材になっています。スクエア・エニックスの編集の方がラジオ好きで、オードリーさんやウエストランドさんのラジオでよく僕の名前が出るので、興味を持ってくださったみたいで。それでR-1のネタを見て、これはマンガになると思ってオファーをしてくださったようです。

こういう新しい仕事にも、ひとつの作品として真剣に取り組んで、そこで得たものがお笑いにフィードバックされるようないい循環が生まれるといいなと思っています。ただ、ここであんまりPRするとウエストランドの井口さんが「僕のおかげじゃないですか。取り分くださいよ」みたいなことを言ってきそうで嫌なんですけど(笑)。

今後の目標としては、やっぱり単独ライブを広げていきたいなと思っています。もうちょっとたくさんの人を呼べるようになって、それで生活できればいちばんいいですよね。そのためには知名度やネタのクオリティーをもっともっと高めていかないといけない。基本は、そこに向けて頑張っていきたいですね。

月刊少年ガンガン/「女子高生はおはようって言う」
https://magazine.jp.square-enix.com/gangan/introduction/jk_ohayou/

ー最後に、ルシファー吉岡さんにとって『R-1ぐらんぷり』とは、どんな存在でしたか?

そうですね。目標であり、お尻たたき役的な存在ですかね。追いかけるものであり、後ろから背中を押してくれる存在でもあったように思います。

<プロフィール>
ルシファー吉岡

マセキ芸能社所属。
1979年10月13日生まれ。東京電機大学・大学院修了。マセキタレントゼミナール出身第1号。第5回(2014年)「お笑いハーベスト大賞」優勝。R-1グランプリにおいては、2016年から5大会連続で決勝に進出。テレビ朝日系列「激レアさんを連れてきた。」にてナレーションを担当。

★公式サイト:https://www.maseki.co.jp/talent/lucifer_yoshioka

インタビュー:ことばのラジオ、撮影:秦 法爾、編集:堀越 愛

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